もう行き詰まったので、逃亡したい私〜異世界でこの中途半端な趣味を活かしてお金を稼ぎたいと思います〜

刹那玻璃

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一組の客人

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 3日後……急にトントンと扉がたたかれた。

 琴葉がちょうど洗濯物をベランダに干していた時である。
 柵と低木に囲まれた庭を歩く人に気が付いていたので慌てて降りて向かうと、少し埃まみれで古ぼけたマントを身につけたかなり長身の男性が立っていた。
 ノックしていたからか、地面に大きな古いバッグを置いていて、片腕には小柄な女性を抱いていた。

「はい。お客様ですか?」

 そう声をかけると、小柄な琴葉に少し背を丸めるようにして、頭を下げた。

「急に申し訳ない。ここに兄貴はいるだろうか?」

 ゾクゾクするほど甘いバリトンボイスが響いた。

「えっ? お兄様ですか?」
「あぁ、呼ばれてきたんだが……あ、俺はアルスという」
「あ、えと、まずお入りください。そちらにソファがありますので、どうぞ」

 ここにこられるのは紹介された人間のみだったはず……アルスさんというと確か聞いた名前だということで気軽に部屋に入れたのだが、

「あれ~? アルス、早かったね? それにソフィアも久しぶり~」

今日はパンダ着ぐるみのチャチャを抱っこしたまま、姿を見せたヴァーロが、飄々と手を振る。

「おい、兄貴! 急に呼ぶんじゃねぇ! 全く。俺はスティアナにいたんだよ! この大陸内だからいいだろとか! 3日以内とか、来なかったら送金止めるとかいうか?」

 ソフィアという名前の女性をそっと座らせると、髪に巻いていたターバンのような布を外し、ため息をつく。

「親父殿も親父殿だ! こっちだって暇ばかりしてるんじゃないんだぞ! 薬草を採取したり、少なくなった種子を集めているというのに、『ほんっとごめん! ヴァーロがよんでるんだ~アルス。金庫番を怒らせたら組織が混乱しちゃうから~。すぐ戻っといで~3日以内で、本当よろしく~!』なんて言うし!」
「あはは! 父さんグッジョブ!」
「兄貴! 一日で戻った俺に、なんか言うことないか?」
「お帰り~。久しぶり~」
「コラァ!」

 ガウガウと文句を言いつつ、そっと琴葉を見る。

「あ、申し訳ない。押しかけた上に大声出すなんて。汚れを落としたいんだが、外で水を借りていいかな?」
「あ、この奥にバスルームがありますので、ヴァーロくん、案内してあげてくれる? 着替え……あったかな? こちらの方にも用意しますのでお先にどうぞ。あ、タオルやスリッパわかるよね? ヴァーロくん」
「はーい。アルス。先に案内するよ。チャチャ? ソフィアお姉さんといてね? すぐ戻るから」

 ヴァーロがアルスを浴室に連れて行き、琴葉はソフィアにまずはおしぼりと白湯を出してちょっと準備をすると言い置いて奥に向かい、バッグの中から、新品の男性用フリース上下にざっくり着込める丈の長いカーディガンを出してきて持っていく。
 ちなみに、これは桜智の荷物で、誰のかは聞いていない……琴葉も余計なことは聞かないのである。
 入り口で待っていたヴァーロに手渡し、もう一度戻ると女性用の部屋着とその上に腰まで覆うカーディガンを出し、ソフィアの元に向かう。
 そして、ティーセットとお茶菓子になる野菜チップスとクラッカーとジャムを準備してテーブルに並べた。

「あ、すみません。お茶とお菓子をどうぞ。あの、食べてはいけないものとか、口にしてはいけないものはありませんか?」
「あ、ありがとうございます。そう言ったものはありません」

ほっそりとした華奢な女性が儚げに微笑む。
 全体的に淡い色……髪の色はクリームがかった白い髪に瞳も少しピンクがかった赤。
 抜けるように白い頬の女性に、持ってきていた服を見せた。

「あの、お風呂がありますので、後でゆっくり浸かって疲れを癒してください。この服を使ってくださいね」
「あ、ありがとうございます。急にお伺いしたのにすみません」
「いいえ。膝掛けもどうぞ。女性は体を冷やすと大変です」

 膝掛けは自分用だが用意していたので膝に広げる。
 そして、今日準備したお菓子を説明したのだった。

 しばらくして、ヴァーロに案内され、アルスが戻ってきた。
 少々腕の長さやズボンの裾が合っていないものの、ダークグレーの服を着、編み上げ靴の代わりにヴァーロに渡されたらしいスリッパを履いたらしいが、なぜクマのスリッパを……絶対面白がっている。
 でも似合ってるからいいかも。
 入れ替わりにソフィアにお風呂をおすすめし、アルスが連れて行った。
 その間に新しいお茶や他のお菓子を用意しておくことにした。
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