もう行き詰まったので、逃亡したい私〜異世界でこの中途半端な趣味を活かしてお金を稼ぎたいと思います〜

刹那玻璃

文字の大きさ
39 / 102

アルス夫婦が同居

しおりを挟む
「美味い……これは……」
「カモミールティーですね。私はそのままハーブだけのものでもいいのですが、お茶の葉で最初にお茶を入れて、少し置いた後、カモミールの花や葉を乾燥させた物をパラっと入れて、ほんの少し香りを移しました。カモミールティーは体を温める効果があります。そして、ソフィアさんにはさっきゆず茶に少しだけジンジャーを入れさせていただきました。ジンジャーも内臓からポカポカとさせると言われています。多すぎると刺激になるのですが、ほんの少しなら体にいいと思います」

 琴葉は微笑む。

「ゆず茶?」
「えっと、大まかにいうと、シトラスジャム……果汁を絞った後の皮を刻んで砂糖とコトコトと煮詰めたものをお湯で割って飲むのです。私のすんでいた地域ではよくのんでいたのです。シトラスジャムも体にいいですよ」
「……詳しいんだな。びっくりだ。カモミールは、俺たちは薬草の一種だ。ポーションの材料としか思っていなかった。他にはどんなお茶があるんだ?」
「心の安定というか穏やかになるミントティーもありますね。他にも眠る前に寝つきが良くなるラベンダーティーや、女性の方にはローズヒップティーもいいと思いますよ」
「ローズヒップ……」
「野生のバラの実を収穫して、加工したお茶ですね。少し酸っぱい味がしますが、色鮮やかで女性に人気です」

 考え込んだアルスの横で、ソフィアが目を丸くする。

「コトハさまはお詳しいですね。すごいです」
「あ、琴葉で構いません。それと、昔、田舎ではなんでもお茶にしていて……例えば枇杷の葉や桑の葉、桃の葉茶とか……あ、桃の葉を使ったローションは肌にいいと言いますよ。えと、こっちは実家から送られてきた手作りの茶葉です。枇杷に桑、桃、ニガウリも作っていました。他にアロエ、イチョウ、柿、クマザサもお茶として飲むところがありましたが、私はあまり知りませんでした。確か、アロエは量が難しかった気がします。ヨモギとかもありますね。ヨモギは取って乾燥させて、ヨモギ茶にもできますが、パン生地に練り込んだり、スープに入れてもいいのです。料理にも使えます。ヨモギの産毛を集めてもぐさにして、お灸にも使えます。万能のハーブです」

 言いながら、バッグの中にあった一斗缶の中の袋に、仕分けされ入っていた乾燥した葉やタネの紙袋を出して見せる。
 実家から送られてきた荷物らしく、それぞれの袋には何が入っているか書かれている。
 それらをじっと見つめていたソフィアが、思いついたように声を上げる。

「あの……こちらのハーブの名前と、コトハさんのハーブをすり合わせてみたいのですが……あのっ、絵はありませんか?」
「あ、私の持っている簡単な図鑑見ますか? ハーブ図鑑と植物図鑑。昔実家で使っていた野草とキノコの事典もありますね」

 バッグを引き寄せ、ちょっと擦り切れ気味の本を3冊差し出す。
 一番上のカラー写真の図鑑に、アルスとソフィア、ヴァーロは驚き絶句する。
 そして、表紙の文字にアルスは呟く。

「これは……グランディアの言葉……」
「えっ? グランディアの?」

 琴葉の普段使っていた言語である。

「うん……でもところどころ違う文字はあるよね。この文字はわからないよ」

 一冊取り、ページをめくったヴァーロは頷き、指で示す。

「あぁ、これは数字です。そして私たちの普段使っていた長さの単位の略語を書いています。確か……」

 バッグの中の裁縫道具……その中のものさしを出す。

「この単位……をこう書きます」

 テーブルの上のメモにペンで書いていく。

「そして重さは、ヴァーロくんは知ってると思うけれど、重さを測る単位です」
「フーン……この文字も覚えたら楽だよね?」
「……なぁ……コトハどの」
「あ、コトハでいいですよ……えっと?」

 首を傾げる。
 急にガバッと頭を下げられたらドキッとする。

「コトハ! どうか頼む! 薬草のことを教えてほしい! この言葉を教えてくれないか! どうか……」
「えっ? あ、あの……私は、そんなに詳しいわけじゃなく……ただ昔、実家で祖父母が教えてくれたので……あの、大雑把な言い伝え程度です」
「それでもいい! 俺たちは大陸中を探し歩いて、一つ一つ探し歩いているんだが、どんなものかが全くわからない。それに見つけたとしてもどう服用するべきかもわからないままなんだ。でも、君は乾燥させお茶にして飲むことや、ヨモギというハーブはこんなふうに使えると教えてくれた。どうか、頼む!」
「お願いします!」

 ソフィアも一緒に頭を下げる。

「お金は、兄貴に取られてるので、すぐには用意できないが……」
「それ言わないでよ~」
「えっと……はい……良いです。えっと……お部屋があるかなぁ……なんて」

 そう呟くと、奥でドーン! と凄まじい音が響いた。
 すぐに反応したヴァーロが走り、続いて立ち上がったアルスだが、スリッパでつまずいたものの後を追いかける。
 琴葉もバッグを肩にかけ、続いて追いかけると、奥に向かう扉の向こうの廊下で、ヴァーロが呆然としていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

神スキル【絶対育成】で追放令嬢を餌付けしたら国ができた

黒崎隼人
ファンタジー
過労死した植物研究者が転生したのは、貧しい開拓村の少年アランだった。彼に与えられたのは、あらゆる植物を意のままに操る神スキル【絶対育成】だった。 そんな彼の元に、ある日、王都から追放されてきた「悪役令嬢」セラフィーナがやってくる。 「私があなたの知識となり、盾となりましょう。その代わり、この村を豊かにする力を貸してください」 前世の知識とチートスキルを持つ少年と、気高く理知的な元公爵令嬢。 二人が手を取り合った時、飢えた辺境の村は、やがて世界が羨む豊かで平和な楽園へと姿を変えていく。 辺境から始まる、農業革命ファンタジー&国家創成譚が、ここに開幕する。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

処理中です...