63 / 102
お引っ越し前
しおりを挟む
「フィーア。ただいま。明後日、このお家を出てお引っ越しになるんだ。一緒に行こうね」
小さい妹に近づき声をかける。
3歳だが、余り丈夫でないのと、なるべく両隣の人に迷惑をかけないように、静かにねと言い聞かせてきてしまったのもあって大人しい。
本当なら両親のそばで笑ったり遊んだりしていただろうに……申し訳ない気持ちである。
「おひっこし? どこかにいくの?」
「あ、ねえねの仕事でね? 住み込みのお仕事を、ギルドから紹介してもらったからね。フィーアも一緒に行こうね」
「フィーアもいいの?」
「うん。ご飯もちゃんと食べられるし、おやつも食べられるんだって。お部屋も二人一緒のお部屋もらえるよ」
粗末な木に布を巻きつけただけのものをぎゅっと抱きしめる妹の頭を撫で、ギルドリーダーのミュリエルからもらったお菓子を差し出す。
小さな紙袋の中には、クッキー入りの袋と、小瓶が一つ。
小瓶には二人には知らないお菓子……星のような形のカラフルな……。
「これはなぁに?」
「えっと……ちょっと待ってね? 袋の中にメモがあって……焼き菓子の方はクッキーっていうのだって。そしてこの瓶の中の綺麗なお菓子はコンフェイトって言って、砂糖……飴みたいだね。この色は食べても問題ない……えっとお野菜とかお花の色を飴に練り込んでいるので身体には問題ないですよって書いてるね。クッキーも、美味しいですよって書いてる」
まずクッキーを一枚妹に手渡す。
幼子の手には大きなクッキーだが嬉しそうに手にすると、口を開けて一口パクリと食べる。
「……おいち~! あま~いの!」
「へぇそうなの?」
「うん! ねえねもたべて!」
自分のを半分分けようとする妹の手を止め、紙袋の中のクッキーをもう一枚取り出す。
「もういちまい! いっしょね!」
「うん……美味しい! えっ? パサパサしてない! しっとりしてて、本当に甘くて美味しい!」
「おいちぃ!」
もぐもぐ食べて喜ぶ妹に、ラハシアは微笑む。
両親は事故に巻き込まれ、生まれてそんなに経っていないフィーアと二人でどうしようと呆然としていたところをギルドリーダーに拾われたラハシアは、小柄なのと一度聞くと内容を忘れないのとそれ以外の視覚聴覚の特殊能力もあって、ギルドで雑用と受付を任された。
途中、何度かリーダーの仕事についていくこともあったが荒事に向いておらず、そしてフィーアも幼いこともあり長期出張は断らざるを得なかった。
そして、このままでは収入もさほど上がらず、フィーアも大きくなるのにと不安に思っていたところだった。
収入は簡単に計算すると今現在とほとんど変わらないものの、今は食事は自腹でお風呂も近所の風呂屋に通っていたし、洗濯もお願いしていたのに比べ、部屋は無料で食事付きという好条件。
どんなに働くことになろうが、頑張ってみせるとも! と思っていたのだが……リーダーのメモの中には、
『一応、君のバッグの中にサイズが合いそうな君の服を入れておくそうです。前にアルスに聞いていたらしく、君の妹の服も入ってるはずなので確認してください。妹の服はちょっと大きくても大丈夫だよだって』
と書かれていた。
そういえば確認してなかったなぁとバッグを確認すると、トートバッグだけが入っているものだと思っていたが、別に薄い布に包まれた二つのものが入っていて、それを引っ張り出すと、小さい方をまず開けてみる。
すると、ふわふわの柔らかな布でできたポンチョと、子供用のワンピースにその下に履くスボンと布製の靴が出てきた。
一緒ににゃんこのリュックサックもある。
「ねえね。これなぁに?」
「えっと、明後日行く職場の人が、フィーアに新しい服とバッグだよだって。このワンピースとズボンと靴にポンチョ。バッグは背中に背負ってねだって」
「フィーアの? おようふく?」
「うん。ねえねにも色違いのお洋服下さったみたい。ありがたいね」
「よかったねぇ」
リュックに目を丸くしつつ、ニコニコと新しい服を抱きしめる妹の横で、サイズ違いの服と妹を涙ぐみつつ見つめていたラハシアだった。
小さい妹に近づき声をかける。
3歳だが、余り丈夫でないのと、なるべく両隣の人に迷惑をかけないように、静かにねと言い聞かせてきてしまったのもあって大人しい。
本当なら両親のそばで笑ったり遊んだりしていただろうに……申し訳ない気持ちである。
「おひっこし? どこかにいくの?」
「あ、ねえねの仕事でね? 住み込みのお仕事を、ギルドから紹介してもらったからね。フィーアも一緒に行こうね」
「フィーアもいいの?」
「うん。ご飯もちゃんと食べられるし、おやつも食べられるんだって。お部屋も二人一緒のお部屋もらえるよ」
粗末な木に布を巻きつけただけのものをぎゅっと抱きしめる妹の頭を撫で、ギルドリーダーのミュリエルからもらったお菓子を差し出す。
小さな紙袋の中には、クッキー入りの袋と、小瓶が一つ。
小瓶には二人には知らないお菓子……星のような形のカラフルな……。
「これはなぁに?」
「えっと……ちょっと待ってね? 袋の中にメモがあって……焼き菓子の方はクッキーっていうのだって。そしてこの瓶の中の綺麗なお菓子はコンフェイトって言って、砂糖……飴みたいだね。この色は食べても問題ない……えっとお野菜とかお花の色を飴に練り込んでいるので身体には問題ないですよって書いてるね。クッキーも、美味しいですよって書いてる」
まずクッキーを一枚妹に手渡す。
幼子の手には大きなクッキーだが嬉しそうに手にすると、口を開けて一口パクリと食べる。
「……おいち~! あま~いの!」
「へぇそうなの?」
「うん! ねえねもたべて!」
自分のを半分分けようとする妹の手を止め、紙袋の中のクッキーをもう一枚取り出す。
「もういちまい! いっしょね!」
「うん……美味しい! えっ? パサパサしてない! しっとりしてて、本当に甘くて美味しい!」
「おいちぃ!」
もぐもぐ食べて喜ぶ妹に、ラハシアは微笑む。
両親は事故に巻き込まれ、生まれてそんなに経っていないフィーアと二人でどうしようと呆然としていたところをギルドリーダーに拾われたラハシアは、小柄なのと一度聞くと内容を忘れないのとそれ以外の視覚聴覚の特殊能力もあって、ギルドで雑用と受付を任された。
途中、何度かリーダーの仕事についていくこともあったが荒事に向いておらず、そしてフィーアも幼いこともあり長期出張は断らざるを得なかった。
そして、このままでは収入もさほど上がらず、フィーアも大きくなるのにと不安に思っていたところだった。
収入は簡単に計算すると今現在とほとんど変わらないものの、今は食事は自腹でお風呂も近所の風呂屋に通っていたし、洗濯もお願いしていたのに比べ、部屋は無料で食事付きという好条件。
どんなに働くことになろうが、頑張ってみせるとも! と思っていたのだが……リーダーのメモの中には、
『一応、君のバッグの中にサイズが合いそうな君の服を入れておくそうです。前にアルスに聞いていたらしく、君の妹の服も入ってるはずなので確認してください。妹の服はちょっと大きくても大丈夫だよだって』
と書かれていた。
そういえば確認してなかったなぁとバッグを確認すると、トートバッグだけが入っているものだと思っていたが、別に薄い布に包まれた二つのものが入っていて、それを引っ張り出すと、小さい方をまず開けてみる。
すると、ふわふわの柔らかな布でできたポンチョと、子供用のワンピースにその下に履くスボンと布製の靴が出てきた。
一緒ににゃんこのリュックサックもある。
「ねえね。これなぁに?」
「えっと、明後日行く職場の人が、フィーアに新しい服とバッグだよだって。このワンピースとズボンと靴にポンチョ。バッグは背中に背負ってねだって」
「フィーアの? おようふく?」
「うん。ねえねにも色違いのお洋服下さったみたい。ありがたいね」
「よかったねぇ」
リュックに目を丸くしつつ、ニコニコと新しい服を抱きしめる妹の横で、サイズ違いの服と妹を涙ぐみつつ見つめていたラハシアだった。
0
あなたにおすすめの小説
私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。
それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。
婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。
その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。
これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
【完結】婚約者なんて眼中にありません
らんか
恋愛
あー、気が抜ける。
婚約者とのお茶会なのにときめかない……
私は若いお子様には興味ないんだってば。
やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?
大人の哀愁が滲み出ているわぁ。
それに強くて守ってもらえそう。
男はやっぱり包容力よね!
私も守ってもらいたいわぁ!
これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語……
短めのお話です。
サクッと、読み終えてしまえます。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
実家を没落させられ恋人も奪われたので呪っていたのですが、記憶喪失になって呪わなくなった途端、相手が自滅していきました
麻宮デコ@SS短編
恋愛
「どうぞ、あの人たちに罰を与えてください。この身はどうなっても構いません」
ラルド侯爵家のドリィに自分の婚約者フィンセントを奪われ、実家すらも没落においやられてしまった伯爵家令嬢のシャナ。
毎日のように呪っていたところ、ラルド家の馬車が起こした事故に巻き込まれて記憶を失ってしまった。
しかし恨んでいる事実を忘れてしまったため、抵抗なく相手の懐に入りこむことができてしまい、そして別に恨みを晴らそうと思っているわけでもないのに、なぜか呪っていた相手たちは勝手に自滅していってしまうことになっていった。
全6話
私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!
近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。
「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」
声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。
※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です!
※「カクヨム」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる