もう行き詰まったので、逃亡したい私〜異世界でこの中途半端な趣味を活かしてお金を稼ぎたいと思います〜

刹那玻璃

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お引っ越し前

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「フィーア。ただいま。明後日、このお家を出てお引っ越しになるんだ。一緒に行こうね」

 小さい妹に近づき声をかける。
 3歳だが、余り丈夫でないのと、なるべく両隣の人に迷惑をかけないように、静かにねと言い聞かせてきてしまったのもあって大人しい。
 本当なら両親のそばで笑ったり遊んだりしていただろうに……申し訳ない気持ちである。

「おひっこし? どこかにいくの?」
「あ、ねえねの仕事でね? 住み込みのお仕事を、ギルドから紹介してもらったからね。フィーアも一緒に行こうね」
「フィーアもいいの?」
「うん。ご飯もちゃんと食べられるし、おやつも食べられるんだって。お部屋も二人一緒のお部屋もらえるよ」

 粗末な木に布を巻きつけただけのものをぎゅっと抱きしめる妹の頭を撫で、ギルドリーダーのミュリエルからもらったお菓子を差し出す。
 小さな紙袋の中には、クッキー入りの袋と、小瓶が一つ。
 小瓶には二人には知らないお菓子……星のような形のカラフルな……。

「これはなぁに?」
「えっと……ちょっと待ってね? 袋の中にメモがあって……焼き菓子の方はクッキーっていうのだって。そしてこの瓶の中の綺麗なお菓子はコンフェイトって言って、砂糖……飴みたいだね。この色は食べても問題ない……えっとお野菜とかお花の色を飴に練り込んでいるので身体には問題ないですよって書いてるね。クッキーも、美味しいですよって書いてる」

 まずクッキーを一枚妹に手渡す。
 幼子の手には大きなクッキーだが嬉しそうに手にすると、口を開けて一口パクリと食べる。

「……おいち~! あま~いの!」
「へぇそうなの?」
「うん! ねえねもたべて!」

 自分のを半分分けようとする妹の手を止め、紙袋の中のクッキーをもう一枚取り出す。

「もういちまい! いっしょね!」
「うん……美味しい! えっ? パサパサしてない! しっとりしてて、本当に甘くて美味しい!」
「おいちぃ!」

 もぐもぐ食べて喜ぶ妹に、ラハシアは微笑む。
 両親は事故に巻き込まれ、生まれてそんなに経っていないフィーアと二人でどうしようと呆然としていたところをギルドリーダーに拾われたラハシアは、小柄なのと一度聞くと内容を忘れないのとそれ以外の視覚聴覚の特殊能力もあって、ギルドで雑用と受付を任された。
 途中、何度かリーダーの仕事についていくこともあったが荒事に向いておらず、そしてフィーアも幼いこともあり長期出張は断らざるを得なかった。
 そして、このままでは収入もさほど上がらず、フィーアも大きくなるのにと不安に思っていたところだった。
 収入は簡単に計算すると今現在とほとんど変わらないものの、今は食事は自腹でお風呂も近所の風呂屋に通っていたし、洗濯もお願いしていたのに比べ、部屋は無料で食事付きという好条件。
 どんなに働くことになろうが、頑張ってみせるとも! と思っていたのだが……リーダーのメモの中には、

『一応、君のバッグの中にサイズが合いそうな君の服を入れておくそうです。前にアルスに聞いていたらしく、君の妹の服も入ってるはずなので確認してください。妹の服はちょっと大きくても大丈夫だよだって』

と書かれていた。
 そういえば確認してなかったなぁとバッグを確認すると、トートバッグだけが入っているものだと思っていたが、別に薄い布に包まれた二つのものが入っていて、それを引っ張り出すと、小さい方をまず開けてみる。

 すると、ふわふわの柔らかな布でできたポンチョと、子供用のワンピースにその下に履くスボンと布製の靴が出てきた。
 一緒ににゃんこのリュックサックもある。

「ねえね。これなぁに?」
「えっと、明後日行く職場の人が、フィーアに新しい服とバッグだよだって。このワンピースとズボンと靴にポンチョ。バッグは背中に背負ってねだって」
「フィーアの? おようふく?」
「うん。ねえねにも色違いのお洋服下さったみたい。ありがたいね」
「よかったねぇ」

 リュックに目を丸くしつつ、ニコニコと新しい服を抱きしめる妹の横で、サイズ違いの服と妹を涙ぐみつつ見つめていたラハシアだった。
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