もう行き詰まったので、逃亡したい私〜異世界でこの中途半端な趣味を活かしてお金を稼ぎたいと思います〜

刹那玻璃

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ツンデレ桜智の歓迎

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 お昼寝から目が覚めたフィーアは、横で眠る姉を見て、そして周りを見回す。
 前に住んでいたギルドの寮の部屋とは比べ物にならない広い部屋。
 前は狭く、そしてくすんでいて、暗い部屋だった。
 でも、この部屋は……。

「おっきい……きれい」

 呟くものの、続いて思ったのは、

「いいこする。んっと……おかたづけ、わがままいわない、しょちて……おてつらい!」

自分の指を折って、繰り返す。



「……ん?」

 ラハシアは、目を覚ます。
 横で小さい指を折って数えている妹の真剣な声に、頑張ろうと改めて思った。

「おはよう、フィーア」
「おはよう、フィーアよりおねぼうね! ねえね!」
「そうね」

 起き上がったラハシアは、妹を見る。
 幼児は新陳代謝が高い。
 寝ている間に汗をかいているので着替えをしないと冷えて風邪をひきかねない。
 寝汗をかいているだろう妹のために、新しい服を確認することにする。

「フィーア。汗かいてるでしょう? 着替えしよう?」
「おきがえ?」
「うん、この扉の向こうにお洋服と靴が置いてるから、自由にお着替えしてねって琴葉さん……琴葉お姉さんが言ってたの。好きなの選んで良いよだって」
「ふく!」

 クローゼットに向かったフィーアとラハシアは、かけられていたお洋服に驚く。
 可愛いワンピースやオーバーオール。
 琴葉……というより桜智がこの組み合わせにしたら良いと、上下を組み合わせておいてくれている。
 靴下と靴もすぐに見つかった。
 別のところにかけられているのは仕事関係にと言っていたので、シャツにオーバーオール、そして上に可愛い絵のついた薄手の上着を着せ、履いてきた靴を履かせる。
 ラハシアも、細いパンツと上は軽いワンピース、靴は着た時のものとは違い紐のついた軽い靴。
 上に前開きのシャツを羽織り、脱いだ服を畳んでバッグに入れた。
 そのバッグを肩にかけ、手を繋いで出ていく。



「あら、可愛いわね。ラハシアにフィーアちゃん」

 廊下を歩いていたソフィアが微笑む。

「ソフィアさま、どこかに行かれるのですか?」
「あぁ、洗濯物を持っていくのよ。お風呂とお手洗い場も一ヶ所にあるの。行ってみる?」
「は、はい!」

 ソフィアについていくがあまり遠くなく、すぐに到着するのだが……。

「こ、これは……」
「この奥がお風呂と手前が脱衣所、反対側が洗濯物を置く場所ね。真正面は手洗いをする所よ」
「す、すごい……こんな施設あったんですね……それに、えっ? 桶じゃない! これがお風呂ですか!」
「えぇ。また順番に入ると思うけれど、広いし気持ちいいのよ。石鹸もあるし、お湯も琴葉さんは魔力が潤沢にあるらしくて、好きなだけ使ってくださいですって」
「……ぜ、贅沢に慣れたら、元の生活に戻れなくなりそうです……」
「その気持ちが大事よ」

 ソフィアは微笑む。

「あれ? ねえね。おにんぎょ?」
「えっ?」

 妹に服を引っ張られ振り返ると、フィーアより少し低いものの、大きな黒髪の人形がゆっくり歩いてくる。
 瞳はブルーでゾクゾクするほど美しい顔立ちに似合うドレスを着ている。
 ラハシアの前に立つと口は動かないものの声が響いた。

【……ラハシア、フィーアよろしくね。アタシは桜智。琴葉の守護精霊のようなもので、この家とも繋がっているの。この家はアタシと琴葉の力とまぁ、ぶっちゃけ楽しく過ごしましょうって感じなの】

 少し乱暴な口調だが、嫌味がない。

【まぁ、あんたたちはせっかくここにきたけど、どうしよう、良い子にしてなきゃとか思ってんのかもしれないけど、こっちからすれば、物はいつかは壊れる。子供はデカくなるのと一緒! 毎日わがまま言い倒したり、毛玉……じゃない、ヴァーロみたいに琴葉に甘えてお菓子! 野菜嫌い! 甘いの! とかダラダラ言わなきゃいいわ。それに、あんたたちみたいなちっちゃい子に、ご飯代、お菓子代、部屋代とか請求するほど小さい女じゃないのよ! アタシは!】

 妙な意味で迫力のある言葉が響く。

【ついでにいうけど、あの毛玉はあんたたちの数十倍食うのよ! 食費として少々いただいてるけど、あいつに対しては貰っとかないと対価としてこきつかっても大損! アルスやソフィアちゃんは本当はそこまで食べないし、逆に色々と手伝ってくれるし、なんだけど、部屋代と知識料として貰ってるわ。これはギルドリーダーと契約だからね。でも、あんたたちはお子様二人だし、わかったもんでしょ。安心してここで過ごしなさいよ! わがままじゃないわ、その程度】

 腕を組み、胸を逸らしつつ、チラッとソフィアを見る。
 ソフィアはなぜか横を向き口を隠している。

【だから、前もって言っとくけど、アタシはこんなだから掃除とかできないのよね。代わりに手伝ってくれたら嬉しいわ。フィーアもお願いね! 時々ソフィアちゃんや琴葉の手伝いをしてね?】

「うん! がんばゆ!」

【偉いわぁ。約束の印に、これあげるわね】

 壁に手を触れると次の瞬間、桜智より僅かに小さい50cmサイズのぬいぐるみが三つ登場する。

【一応、琴葉制作のものではなく、アタシの私物だったの! こっちがウサギで、こっちがネコね。そして、こっちはオオカミかしら。ネコをフィーアに、オオカミはラハシアね。ソフィアはウサギよ。一応あの毛玉じゃありませんからね!】

「にゃんこ! かわいい!」

 フィーアは大きいぬいぐるみに目を輝かせる。

【一応、ウサギはアタシ……琴葉の知ってる世界だったら、月に住んでいると言われているの。昔の物語で、月のうさぎは病気を治したいと思い、薬草をすり潰す道具を月の世界で必死に使って薬草作りをしているのですって。ネコは、悪いものを追い払うって言う良い生き物と言われているのよ。愛情深いしね。オオカミは、琴葉の元すんでいた地域では神の化身と言われているの。ネコと同じく害獣を追い払うし、愛情深い生き物。家族で過ごすんですって】

「あ、ありがとうございます。大事にします」

【そうして頂戴。それにその大きさならフィーアの服も小さくなったら着せられるんじゃない?】

 桜智はそっけない言い方だが、すごく嬉しそうな声色でそういうと、照れ臭かったのか硬くこわばった手で髪をかき上げるように動かした。

【まぁ、部屋に置いてきても良いけど、アルスやバカ毛玉……じゃないヴァーロ、琴葉とチャチャが待ってるかもね。じゃぁ、ゆっくりきなさい】

 ツンデレ属性全開で桜智は歩き去ったのだった。
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