もう行き詰まったので、逃亡したい私〜異世界でこの中途半端な趣味を活かしてお金を稼ぎたいと思います〜

刹那玻璃

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歓迎会の準備

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 ラハシアは知らないもののギルドでも高額貯金を持っていて、その上自覚なしに能力持ちなので、すでにブリランテ所属になっており、ここで保護されている……それはラハシアとフィーア、琴葉は知らない。



 琴葉がバッグからミンサーという機械を取り出すと、二人は不思議そうにみる。

「肉をある程度に切り分けて置いて、上から入れつつ横のこの部分を回すと、反対側から……こんなふうに出てきます。これは細かくミンチ状になってます。人参や玉ねぎと言った野菜は、こっちのフードチョッパーという器械に入れて、この紐を引っ張ることで砕かれます。この二つ以外に、フルーツを飲み物として飲みやすくできるミキサーもありますね。ソーセージメーカーも今度使おうと思います。今日はこのひき肉と、刻んだ玉ねぎと人参で作ります。あ、お肉を多めにしているのは、コロッケとスパゲッティに使うのです」

 軽く説明しつつ動かす。

「あ、あのお手伝いします」
「あ、ありがとう。ラハシアさん。じゃぁ、このエプロンをして手伝ってくれる?」
「えっとどう着たらいいでしょう?」
「あ、手伝うわ」

 何度かつけたことがあるソフィアが一度広げ確認すると、着せかける。

「ありがとうございます。ソフィアさま」
「いいえ。このエプロンは本当にいいものよ。簡単につけるだけで服の前の汚れをつけなくできるし。私は、袖のあるものが欲しいって相談したら、フィーアちゃんのによく似た袖のあるのをもう一枚作ってもらったわ」
「そうなのですね」
「油はねにもいいのよ」

 言いながら手伝うのだが、基本キッチンに慣れていないラハシアは、頼まれたミンサーとフードチョッパーを使った後は、中で洗い物や、外でカトラリーやテーブルクロス、ランチョンマットを準備したり、高い位置の荷物を取ったりしていた。
 ちなみに、ラハシアは長身で、長い髪は金よりの栗色、瞳は薄い青だったりする。
 妹のフィーアは、栗色で瞳は茶と緑が混ざっている。

「そういえば、ラハシアさんは幾つですか?」
「あ、21歳です。妹は3歳ですね」
「そうだったのですね。いいですね。フィーアちゃん可愛い盛りです」
「はい。本当は15歳の時に親元を離れてギルドで働くようになったんです。なので仕事歴は6年と言いたいのですが、半年前まで2年ほど育休を取ってました」
「育休?」
「はい。でも、三年前に両親が死んでしまって……赤ん坊だったフィーアを許可を得て寮に連れて帰ったのですが、やっぱり私に慣れなかったせいかよく泣いていましたし、私も寝ずに仕事に出て……という感じだったので、リーダーが自分の子供じゃなくても家族の養育は大変な仕事だって……落ち着くまで給料は減るけれど出すから妹の面倒を見ることに専念しなさいって言ってくださったのです。でも……」

 ラハシアは俯く。

「ギルドは就職先としてはとってもいいところなんです。給料は平均よりあるし、休暇はしっかりしているし、残業もほとんどない。寮もあって近くに入浴施設があるし、ギルドのタグを持っていくと食堂では安くて美味しいものがしっかり食べられます」
「そうなのですね。いいところに就職出来ましたね」
「辞めたくないのと、でもそのまま在籍するのも申し訳なくて……そう思っていたら、ラインさまがここから東のマガタ領の小さいギルドで、書類整理と掃除でいいなら一人空きがある。奥に小さい部屋もある。そこはほぼ開店休業状態だから、朝決まった時間に開けて、掃除して、定期的に届く資料整理と日誌を頼む。交代は2年後。その資料整理の合間に何してようが文句はないって」

 有難いお話だったと呟く。

「なので、時間があれば勉強していました。ギルドに貢献できたらって……だから、今回ラインさまにも申し訳ないなぁと」
「そうかしら?」

 ハンバーグを焼きながらソフィアは声をかける。
 その横で、茹でた芋を潰して、先に炒めていた肉と人参、玉ねぎを混ぜていく琴葉。
 こちらはコロッケである。

「だって、貴方貢献度ってかなり高いのよ。ギルドの情報はそう口にしない方なのだけど、ラハシアちゃんは貢献度A~Eランクの中でBの上位よ? ギルドに籍を置いている人間で、上位っていうのは基本年齢などで経験がある人物が多いのよ? でも、ラハシアちゃんは毎年貴重なものを採集しているし、育休も兼ねて行ったマガタ領のギルドにいた時に、貴重なハーブを発見したし、その上毒魚を数匹捕まえて生きたままギルドに届けたのよね? あの毒、マガタ領の仮領主のクライスト家の子供が川で遊んでいた時に刺された毒に苦しんでいて、毒から血清を作らなきゃいけないって大慌てだったのよ。ちょうどアルスが診察してた時で、泣いて喜んでたわ……あの魚、結構ヤバかったのよ。雌雄で毒の種類が違ってたの」
「いえ! いえ! 実は……言ってはいけないと言われていたのですが……黒い髪の女性が時々会いに来られるのです……。内緒よって……その方は小さな黒いヴァーロさまやチャチャちゃんのようなドラゴンの子供を連れていて、時々、これはいらないものだからって獣のツノとか、牙とか、魔石をくれるのです……」
「いらない?」

 琴葉はキョトンとすると、ラハシアも首を傾げ、思い出すように少し空を見上げる。

「えっとその人は『これは美しくないの。この辺りにはしょっちゅう遊びに来るけど、私を見て逃げるものなのよ普通は。でも、頭の悪い一部の獣って、自分の実力もわからず突撃するのよね。それを蹴るか尻尾で殴るか潰すかするのだけど、私たちはこの子たちが冷えないよう、傷つかないように毛皮とか羽根は欲しいけれど、後って必要ないの。だから貴方にあげるわ』って……どんなふうにかはわかりませんが、一瞬で解体していただいたり……」
「まぁ……子守竜さまね。あの方はお気に入りの子を、自分の子供のように可愛がるって聞いたわ。ラハシアちゃんをお気に入りに決めたのだと思うわ」

 ソフィアはハンバーグをひっくり返す。
 ちょうどいい焼き加減だったらしい。

「そ、そうなのですか? じゃぁ、時々薄い白い髪と不思議な色の変わる瞳の子供も来るのですが……その子が毎年羽根をくれます。最初の年は一枚でしたが、翌年から2枚になりました」
「それはホワイトドラゴンかもしれないわ。羽根は持っていないけれど、あの一族は迷いの原に住んでいて、その上を飛ぶ大鳥が自然に落とした羽根を持っていたのかも」
「す、素敵です! いつもいただいてばかりなのでおふたりとラインさまに今度お会いしたら、何かプレゼントできればと思っています」
「それもいいと思うわ。あぁそうだ。琴葉さん、今度何か作るのを教えてあげて?」
「そうですね! あ、今度こちらにきていただくのも素敵だと思いますよ? あ、ラハシアさん、ソフィアさん、見てください。これがコロッケの中身です。先のハンバーグのような形にして、麦粉、卵液に潜らせ、パン粉をまぶして油で揚げます。ラハシアさん、手伝ってくださいね! 油の方は私がします」

 順番に出来上がっていく歓迎会の料理である。
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