なんでこんなとこに?

刹那玻璃

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緑の精霊王と紅の狼

隣国の王子との婚儀?……なんであなたに関係あるの?

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「嫌な繕いより、自分のための服よ。綺麗に作りましょ」

とエレナに言い聞かせ、二人でドレスを解いた。
 青いドレスの方はボタンも一つ残らず布を傷つけないように取って、裾のレースやリボンも回収してもらった。
 私の方は大体の目安で無駄に長いドレス部分の布を大胆に半分に裁断して、ギャザーを寄せる。
 そして、水色と青いドレスの上の部分を二回り小さくして縫い直すことを頼んだ。
 ボタンは布を使ってくるみボタンにして、並べておく。

「わぁ、可愛いのね」
「青いドレスに黒ボタンはダメだわ~可愛くしなきゃ」

 話しながら仕上げていく。
 外出着というか、それなりの服がいい。
 同じ布を二人で着るのだから、外出着と一枚上に重ね着できたらなおいい。
 さっき、エレナに聞いた話だと、余計にそう思う。



 布をいつになく慎重に解き、ほっとしながらハーブティーを淹れ、縁の欠けたカップを恐る恐る出してくる。
 縫い物はとても綺麗なのに、不器用でそそっかしいところもあって……可愛い大好きな親友。

「あのね。隣国……ルーズリアだっけ? 私、そこにいくの。でね? 一人、連れて行っていいっていうから、ティアと行きますって言っちゃったの。言うのが遅くなってごめんなさい……って、あつつっ!」
「エレナ! 机にカップを置いて喋りなさいな。火傷したら大変でしょ?」
「ごめんなさい。あ、あぁぁ! よ、よかった! ドレスにシミができなくて」
「大丈夫よ。そのドレスは解いてあたしの下着にするから。シミがあっても気にしないわ」
「で、でも……」

 泣きそうな顔になるエレナに、笑いかけ、先に作っていたシュシュを差し出す。

「はい。シュシュ作ったわよ。おそろい。髪を解いて楽にしましょ。5日後には出発するんでしょ? あたしはともかく、あなたに髪に変な癖が残ったらダメだもの」
「えっ! こんな短い間にシュシュ?」
「簡単でしょ? 髪解いて? ゆるく編んでおくわ」

 柔らかいエレナの髪を解いて編み直し、シュシュで結ぶ。

「うん、可愛い。あなた童顔だから、青いドレスの方が正式なところではいいけれど、普段はパステル系にしたらいいと思う。でも、このイエロー系はダサいわ……」
「ダサい……そ、そんなにはっきり言っていいの?」
「いいわよ。淡い色って膨張色なのよ。太って見えるの。あなただから淡い色は普通より痩せてるで済むけど、あれはねぇ……」
「ティア! そんな大声!」

ドアの方を振り返り、怯えるエレナにウインクする。

「大丈夫よ。この結界石、あたしの恩人がくれた最高ランクの石らしいの。この間、あなたが風邪を引いてた時、これをおいてたのよ。あなたがいたの誰も気づいてなかったわ」
「えっ……そうなの? すご~い!」
「あたし、宝物庫の結界石を見たことあるけど、色が違ってたわ。あれは定期的に魔力補給しないといけないものね。あたしのは半永久的に使えるって言ってたわ」
「ティアの恩人さんってすごい魔法使いなのね?」

 その言葉に、戸惑う。
 うーん、あの人、どんな人だったかしら?

「えっ? あたしの恩人は……発掘してる人……よ?」
「発掘職人?」
「うん……というか、学者さんみたいなおじさんやお兄さんたちが動き回る中で、一人で穴の奥に生活してる……感じね。お昼ご飯の時間に、料理のおばさんが、『ティア、あんた、あのリーにご飯持って行っといで!』って、あたしがすばしっこいから、サンドイッチと水筒と、手拭きとかを持って行ってたの。晩御飯はスープがあるから、『迎えに行っといで』って送り出されて、迎えに行ってたわ」

 エレナは眉をひそめ、怯えたというかどんなところにいたの? って言う顔をしてるけど、

「でも、ここよりマシよ? だって、おばさんに料理やこの繕いの仕方も教わったし、3食たっぷりの食事、あかりの石も、結界石も恩人がくれた。五日に一回は近くの村に行って、買い食いに時々、絵本を買ってくれたの。鉛筆と紙もくれて、文字と計算も教えてくれた。ここでほぼタダ働きより、フカフカの布団もくれて、すごいいい環境よ?」
「いいなぁ……私もその方が良かったかも……」
「でしょ? お金はまだあげられないよって言われたけど、お手伝いくらいしかできなかったあたしに、いい環境だったわ。だから……」

あたしは思う。

「エレナがここを出てなんとかなったら、恩人のリーを探しに行きたい」
「えっ……でも、売られたんでしょ?」
「違うわ、あたしを売ったのは、そこの発掘団の下っ端の人。リーやおばさんたちはとっても優しかった。リーもおばさんも、あたしとは別の知らないおじさんに連れて行かれたの。もしかしたら別の人身売買組織に売られたのかもしれない。探しにいくの」
「わ、私も一緒に行っていい? もしまたひどいところなら……」
「えぇ。エレナは、アンジェラさまとストフさまに会いに行きたいのよね?」
「えっ、え、えぇぇぇ!」

 ますます真っ赤っかになった顔でオロオロするエレナに、いたずらを見つけたような顔になる。

「大丈夫よ。誰にも言わないから~」
「ひどい! 言ってるじゃない!」
「ごめん、ごめん。もう言わない」
「本当?」
「えぇ」

 ほの温かな薄汚れているものの、二人の数少ない財産の一つであるカップを手に包み、最後の一口を飲み干した。
 そして、そっと四つ足の長さの違うテーブルに置くと、針を握った。

「待っててね。今日中には、あなたの外出着出来上がるわ」
「わ、私もがんばるね!」
「じゃぁ、このあたしのスカート部分の裾を繕って? 焦らなくていいから」
「うん!」

 針はかなり貴重だけれど、繕い物の時にくすねておいたもの。
 折れるし、消耗品だと言うのに、年に一回くれるだけ。
 まち針も5本ずつしかくれない。
 曲がっているものを隠して持っている。
 足りない時はくたびれている糸を使って、しつけをして縫うけれど時間がかかるので、感覚だ。

「ティアは器用だよね。まち針私に全部貸してくれるのに、私よりも器用だもの」
「昔の記憶は全然ないけど、多分死んだ母さんがこう言うの得意だったのかもね」
「いいなぁ……私は、私は泣いてるお母さんしか覚えてない。『陛下と婚約は先代陛下に無理に押し切られただけなのに……』『わたくしは《真実の愛》に敗れたから、身を引いただけなのに……』って」

 エレナは目を伏せる。

 あたしは妄想を膨らませる、妙に夢みがちなメイドたちの勝手極まりない噂話を聞いて知ってるけど、ほんとくだらないと思った。
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