なんでこんなとこに?

刹那玻璃

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緑の精霊王と紅の狼

むかしむかしの、あたし目線のものがたり

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 この国での、約20年前の実際のお話だ。
 ちょっとのんびり屋のエレナにわかりやすくするために、昔の童話ふうに話してたから、ちょっと大袈裟な私情も挟むけど。



 昔、ある貧しい国……この国……に国王夫婦がいて、王女、王子がいた。
 姉王女はいくつも国境を接する隣国のうち、この国と同じくらい貧しいけれど穏やかで深い雪の降る国に嫁いだ。
 その国には第一王子と第二王子がいた。
 二人は歳の離れた兄弟で、王女は一回り年上の第一王子の婚約者として嫁いだ。
 第一王子が結婚するのが遅かったのは、彼が意地悪だったりしたわけじゃない。
 彼はとても優しく、国民思いで、国の人々が少しでも幸せで仲良く豊かになることを考えていた。
 げんに、彼が10代半ばでこの大陸で起こった戦乱では、第一王子だと言うのに国を守るのだと戦場に出向いて戦った。
 他の国の人と手を取り合って戦い抜いたから、後に《銀の騎士王》って呼ばれるようになった位。
 彼ともう一人、《金の騎士》と呼ばれた若い少年騎士がいたけれど、その話はあまり聞いてないわ。

 《銀の騎士王》は、その戦いの後国に戻らず荒廃した大陸を周り、復興の後押しをしていたらしいわ。
 それと共に母国のために何か考えなくてはと思っていたらしいの。
 国のお金を使うのはと、自分でお金を稼ぎながら外聞を広めながら、さまざまなことを覚えて、戻ってきて国のためにと惜しみなく知識を分け、自分の手にしたお金を公共に優先的に投資した。
 その彼は母親に溺愛されたワガママな弟王子が結婚したいと言い出した頃に、父王に結婚を勧められたの。
 その時、この国の王女はどうかと言われ、少し歳は離れていたけれど結ばれることになったの。
 彼に嫁いだ王女は、貧しく寒い国ではあったけれど夫と愛し合い、心豊かに幸せに過ごしているわ。
 確か、10歳になるかならない頃かしら?
 女の子が生まれたのだと聞いているわ。



 そして話は戻して、この国の王子の話。
 王子は雪の国の第二王子より少し上かしら……でも彼と同じで甘ったれね。
 小さい頃に決められた婚約者は宰相の娘だった。
 あなたのその珍しい銀の髪と水色の瞳は、確か海の向こうの神の国の血を引いているって聞くわ。
 金の髪はこの国に多いのだけれど、銀は滅多にいないのよ。
 宰相の娘はとても賢かった。
 国を憂いる父、祖父を知っていたから。
 貧しい国を富ませるために、王女が嫁いだ雪の国に援助支援をねだる国王一族を恥ずかしいと思っていたの。



「えっ? そんなこと初めて聞いたわ?」
「リー……発掘職人のあの人が言ってたの。『全く、あいつらバカだよね~? 雪の国より土地が豊かなんだし、環境に合った食べ物を探すなりすれば良くない? 僕よりも国に詳しい人いるし、宰相閣下だってものすごくそう言う気持ち強い人なんだから、ルーズリアとかに協力願えばいいんだよ。ルーズリアなら、そう言うの無償で助けてくれる人間いるんだし』って言ってたわ。あ、人間は暇人だって言ってたわ」
「もし……私が助けてくださいって言えてたら……」
「今だってきっと助けてくれるわよ。だから、一旦ここを勇気ある撤退をしましょ? もしかしたらすぐに見つかるわ」



 こほんっ……話を戻すわね?
 宰相の娘は、王子との結婚は好きになれなかった。
 聡明な姉王女に妹のように可愛がってもらっていたから、王女についていきたかったの。
 でも、国を立て直したい国王にお願いされて、王子の婚約者にさせられたわ。
 愚かでお金を使いまくる……国を傾ける王妃とその息子に国王は心配してたのね。
 王女も嫁いで、息子を結婚させようとした時、急に亡くなったの。
 宰相は頭を抱えたわ。
 少々頼りないけれど、娘に資金を求めるのをやめ、人的支援、共同で国境のあたりの開発をして国を立て直したいと言い始めた国王にホッとしていたから。
 跡を継いだのは暗愚な国王……。


「ねぇ? 暗愚って何?」
「馬鹿で愚かってことよ。自分で何も出来ず、遊興に耽り、わずかな財産も使い尽くす愚王ね。その財産を無駄な物に使わず、隣国との投資に回せばまだマシだったのにね」
「……そうね。宝石より、ドレスより、国境にあるって言う鉱山発掘とか、その近くに温泉ていうものが出たって言うわ。そう言うところにお金を当てればよかったのに……」
「宝石のカッティングとか宝飾には流行があるわ。でも、持っていればお金に換えても価格崩れはほぼしないわ。でもドレスはダメ。流行は数年も持たない。それに、手入れも面倒。特に専門のメイドや執事補と言った人がいる城ならともかく、こんな貧しい国の城なら、贅沢なドレスより着回しできる、裾にレースをつけたり、刺繍を足したりで十分だったのよ」


 こほんっ……もう一度、話を戻すわね。
 新しい王は、遊びたかった。
 真面目な婚約者はつまらなかったのでしょうね。
 噂で聞いたけど、よくこの王城を抜け出して遊びに行ってたらしいわよ。この下町に。
 まぁ、こんな寂れた街にいい女はいないわ。
 えっ? いい女っていうのは……こほんっ、賢くて王を支えてこの国をよくしようと思う王妃にピッタリの人よ。
 王妃っていうのは、リーに聞いたけど、この国の王妃のようにお気に入りの臣下からお金や宝石やドレスを貰って、法案を変えさせたりするんじゃないのよ。
 定期的に他国に出向いて国境の開発の推進のために交渉したり、足りない食糧を輸入するためにこの国の中を信頼する部下に頼むか、もしくは自分が時間をぬって回ってみて、交渉材料になるものを探すの。


「たとえばどんなもの?」
「えっ? い、硫黄かしら?」
「イオウって何?」
「火山があるでしょう? その火山にたくさんあるって聞いたわ。染料にも使えるし、薬にも使える。でも、火薬として使えるから注意しなきゃいけないって聞いたわ。この国の硫黄はとても質がいいってリーは教えてくれたわ。でも、ひどい男がその権利を独占してるのですって」
「商人かしら?」
「うーん……あたしは知らないけど、リーと仲が悪いところが、ソルファ商会っていうんだって何度か聞いたわね」
「ふーん……」


 一応、硫黄は、農薬にもなるわ。
 農薬っていうのは、畑に撒く薬。
 まぁ、そういうのは錬金術師や薬師がいるから、取ってきて頼むといいそうよ。
 発火性……間違うと危険だから、専門的な人を国で認めて許可を与えるといいんですって。
 これは全部リーが教えてくれたの。


 で、この国の馬鹿王は、下町で一人の女にあったの。
 商家の娘って言ってたわね。
 質素倹約をしなければならない王城に比べて、華やかな衣装をしてたんでしょうね。
 今はないけど、お祭りがあったらしいわよ。
 そこで、《真実の愛》に落ちたんですって。
 馬鹿みたいよね。
 そこで恋に落ちた相手と結婚したいって言い出した王に、周囲は反対した。
 特に隣国の王妃になった姉は国交を断つとまで言ったそうね。
 でも、本気にしなかった王は、自分の《真実の愛》に準じるとまで言って、妃にした。
 婚約者を悪者にしてまで。
 これは怒った宰相は、娘を連れて隣国に逃げようとしたけれど、反逆罪を適応して殺した上に財産を全て奪った。
 元令嬢は塔に押し込められた。
 多分一年くらいは豪遊したんでしょ?
 それに、数年は浮き足立ってたんでしょ?
 《真実の愛》……《悪役令嬢》から、取り戻したなんて、どこかの舞台とかの劇そのもの。
 でもね? そういうのはすぐにメッキが剥がれるの。
 王は愛を捧ぐ相手は間違ってはならない。
 愛情を独占したいなんて軽いものを持ってはいけない。
 国に捧げるべきもの、国に住む国民に平等に捧げるべきなのよ。
 それがわからなかった王は、二人の《愛の結晶》を見て絶望したのね?
 だって、自分に全く似てなかったんだもの。
 内緒で調べたら、愛してると口にしていた王妃が、護衛の男と関係を持っていた。
 腹が立った王は、王妃を殺すよりも、ある一人の人を目につけた。
 閉じ込められてた元婚約者。
 鍵は自分しか持っていない……だから。
 そして、その人が子供を身籠り、生まれたのが第二王女……。
 自分の娘ってわかるわよね?
 だって、元婚約者は元々祖父が同じ従兄妹同士。
 祖母にあたる女性が銀色の髪だったのだから。

「私は……この髪嫌い。この目は好きだけど」
「あら、この色は海の向こうの神の国の色なのに」
「嫌いよ! お母様は、クリス様たちと同じ金だったわ。豊穣の色だもの……寒々しい色だもの」
「一応聞いたら、金は豊穣の色だけど、その代わり魔や欲を寄せる色なのですって、逆に銀は魔を祓うとも言われて神聖な色ですって」
「……そうなの?」
「えぇ。良くカトラリーは銀製って言うでしょう? それは財産になるのと、毒を見抜くっていうからよ。あなたの髪は神聖な色ってこと」
 あたしは一旦針を置いて、大好きな髪を撫でる。
 あたしの方が羨ましいわ。
 まぁ、あたしは、リーがあたしを見つけてくれたら、気づいてくれたらうれしいけど……もう無理だと思うわ、なんて、エレナには言わない。


 続きは後にしましょう?
 もう少しであなたの外出着は出来上がるわ。
 できれば、少し、刺繍をしましょう。
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