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はじめての会話
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ソメイヨシノの花が舞う頃、高校の入学式があった。
中学時代、男子生徒にからかわれたり、教科書に落書き、上履きは捨てられ、雑巾を洗ったバケツの水を浴びせられ、人間不信に陥ったが、何とか大嫌いな男子のいない女子高に進学した。
他の新入生は暗い表情をしていた。
国公立を落ちてしまい、滑り止めの高校に選んでいたこの学校に入学してしまったと言う後悔、後ろめたさ、そして敗北者とでも思っていたのだろうか?
その中で、ただただ戸惑っていた。
「……あぁ、何で進学クラスに合格しちゃったんだろう……」
中学の担任には、
「あと一点取れていたら、一年間奨学金を受け取れたのに……」
と残念そうに言われたものの、自分としては、それよりも音楽科や趣味の延長の家政科でも良かったのだが、音楽科は必須にピアノ演奏があり諦めたのである。
で、一応希望は家政科だったのだが、蓋を開くと進学クラスに入っていた。
「あぁ、進学クラス……また、嫌がらせとかあるのかなぁ……? 人間不信悪化しそう……」
溜め息をつく。
すると、
「ねぇ。持田五月さん」
と声がした。
振り返ると野暮ったい眼鏡に長い前髪で顔を隠した五月とは真逆に、自分に自信をもつ美少女と言うよりも中性的な少女が立っていた。
「えっと……」
中学時代の苛めで、人の顔を見ることをやめた。
目が合うと、グサグサと心に突き刺すような悪口しか返ってこない。
なるべく目より下、鼻の辺りを見ることを心がけている。
その為、パッと見てしまい視線をそらした。
「ねぇ? 五月さん。貴方の部活動決まっていないでしょう? どうするの?」
「……部活動……あ、学級委員長、でしたっけ?」
「若林莉愛よ」
「はぁ……若林委員長……」
綺麗な名前である。
「えと、部活動は一応決めてはいるんですが……」
小声で呟くが、実際は決めていない。
部活動は内申書に書くことができる為、進学や就職にプラスになる。
しかし、中学時代を考えると、人が多く、運動音痴を自覚している為、運動部はご遠慮したい……ついでに、なるべくなら入りたくない。
五月の心を読んだのか、莉愛は提案する。
「他の人は幽霊部員でいいと、簡単に入部届けを出してるわよ? そうすればいいのに」
「……あ、いえ、それもそれで、後で問題になっても大変だと思いますし……」
ボソボソと答える。
そう言う風に言われて部活動に入らされ、委員会等に選ばれたら、嫌がらせを受けたのは忘れようにも忘れられない。
「貴方って、頭がいいのかお人好しなのね。普通、進学クラスなんだし、先生が提示してたでしょ? この部活だったらって。入れば良かったのに」
「あぁ……そうですねぇ。でも、そうすると、また集まって上級生のお手伝いとか、何かしら動かされると思うので……ご遠慮したいなぁと」
「そうやって俯いてボソボソいっていたら、苛められるんじゃないかしら?」
ズバッと言った莉愛に、顔をあげた五月はへらっと笑った。
「……中学時代に苛められてたので、逃げる方法解りますから大丈夫ですよ。心配してくれてありがとう。若林委員長。考えときます」
「部活動を考えるにも、勧めていないでしょう? 私がお勧めよって言いたいのは文芸部。私の姉や私も入ったの。部室はあるけれど先生は来られても基本的に文章を書くこと、部室以外でも書けるから。部員を探しているのも事実だけど、貴方に合うんじゃないかしら?」
「……はぁ……」
五月は考える。
悪くはない……かもしれない。
「えーと、考えておきます。ありがとう。若林委員長」
ペコン頭を下げ、リュックを背負い教室を出ていく五月を見送り、
「つかみ所のない子だわ。でも、前髪を切って古くさい眼鏡を変えるか、コンタクトにすればいいのにね」
と呟いたのだった。
中学時代、男子生徒にからかわれたり、教科書に落書き、上履きは捨てられ、雑巾を洗ったバケツの水を浴びせられ、人間不信に陥ったが、何とか大嫌いな男子のいない女子高に進学した。
他の新入生は暗い表情をしていた。
国公立を落ちてしまい、滑り止めの高校に選んでいたこの学校に入学してしまったと言う後悔、後ろめたさ、そして敗北者とでも思っていたのだろうか?
その中で、ただただ戸惑っていた。
「……あぁ、何で進学クラスに合格しちゃったんだろう……」
中学の担任には、
「あと一点取れていたら、一年間奨学金を受け取れたのに……」
と残念そうに言われたものの、自分としては、それよりも音楽科や趣味の延長の家政科でも良かったのだが、音楽科は必須にピアノ演奏があり諦めたのである。
で、一応希望は家政科だったのだが、蓋を開くと進学クラスに入っていた。
「あぁ、進学クラス……また、嫌がらせとかあるのかなぁ……? 人間不信悪化しそう……」
溜め息をつく。
すると、
「ねぇ。持田五月さん」
と声がした。
振り返ると野暮ったい眼鏡に長い前髪で顔を隠した五月とは真逆に、自分に自信をもつ美少女と言うよりも中性的な少女が立っていた。
「えっと……」
中学時代の苛めで、人の顔を見ることをやめた。
目が合うと、グサグサと心に突き刺すような悪口しか返ってこない。
なるべく目より下、鼻の辺りを見ることを心がけている。
その為、パッと見てしまい視線をそらした。
「ねぇ? 五月さん。貴方の部活動決まっていないでしょう? どうするの?」
「……部活動……あ、学級委員長、でしたっけ?」
「若林莉愛よ」
「はぁ……若林委員長……」
綺麗な名前である。
「えと、部活動は一応決めてはいるんですが……」
小声で呟くが、実際は決めていない。
部活動は内申書に書くことができる為、進学や就職にプラスになる。
しかし、中学時代を考えると、人が多く、運動音痴を自覚している為、運動部はご遠慮したい……ついでに、なるべくなら入りたくない。
五月の心を読んだのか、莉愛は提案する。
「他の人は幽霊部員でいいと、簡単に入部届けを出してるわよ? そうすればいいのに」
「……あ、いえ、それもそれで、後で問題になっても大変だと思いますし……」
ボソボソと答える。
そう言う風に言われて部活動に入らされ、委員会等に選ばれたら、嫌がらせを受けたのは忘れようにも忘れられない。
「貴方って、頭がいいのかお人好しなのね。普通、進学クラスなんだし、先生が提示してたでしょ? この部活だったらって。入れば良かったのに」
「あぁ……そうですねぇ。でも、そうすると、また集まって上級生のお手伝いとか、何かしら動かされると思うので……ご遠慮したいなぁと」
「そうやって俯いてボソボソいっていたら、苛められるんじゃないかしら?」
ズバッと言った莉愛に、顔をあげた五月はへらっと笑った。
「……中学時代に苛められてたので、逃げる方法解りますから大丈夫ですよ。心配してくれてありがとう。若林委員長。考えときます」
「部活動を考えるにも、勧めていないでしょう? 私がお勧めよって言いたいのは文芸部。私の姉や私も入ったの。部室はあるけれど先生は来られても基本的に文章を書くこと、部室以外でも書けるから。部員を探しているのも事実だけど、貴方に合うんじゃないかしら?」
「……はぁ……」
五月は考える。
悪くはない……かもしれない。
「えーと、考えておきます。ありがとう。若林委員長」
ペコン頭を下げ、リュックを背負い教室を出ていく五月を見送り、
「つかみ所のない子だわ。でも、前髪を切って古くさい眼鏡を変えるか、コンタクトにすればいいのにね」
と呟いたのだった。
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