15 / 100
ちょっと一服するなら、青茶にしよう!
瑾さんの暴走を止められるのは、お義母さんだけです。
しおりを挟む
諸葛家の長男、子瑜は、孔明以外の兄弟でも知られた二重人格者である。
子瑜の下にはやかましく騒々しい、破壊兵器こと年子の妹達という危険人物。
子瑜は一度と言わず何度か、何かにかこつけてうるさい妹達を排除……近付かないように警告し、近づけば親の見ていない所で制裁……苛めては追っ払った。
妹達はぎゃんぎゃんと泣きわめき、両親は、
「もう少し兄弟なんだから……仲良くしなさい!」
と言われたが、こんな口うるさく鬱陶しいちび達に煩わされてなるものかと、必死に抵抗し破壊兵器から逃げ出した。
うるさいだけの兄弟なんているかっと思っていたが、7歳の時に母親が難産の末に出産した赤ん坊は、どういう訳かとてもとても大人しく、顔立ちはどこをどうみても、少々のっぺりとした印象の父親にではなく、彫りの深い母親に似たはっきりと整った男の子だった。
初めての弟に、子瑜は夢中になった。
狂暴な妹よりも可愛い上に余りむずがりもせず、子瑜が子守りという英才教育……つまり子守唄代わりの『春秋』や、『孫子』等の歴史書を読んでも、にこにこしているかじっと聞き入っているかである。
その為、色々と教え込もうとしたのだが、その度に両親に止められた。
「亮は赤ん坊だからっ! 首の座っていない赤ん坊だからっ! 止めなさい!」
「そうだよ、瑾っ! 『墨子』の戦術の話はようく解った! 解ったから、お願いだから首の座っていない亮を背負って、戦争ごっこは止めなさい!」
「戦争ごっこじゃなくて戦争実践です。『墨子』は……」
説明しようとする子瑜に、二人は必死に孔明を奪い返す。
「瑾。頼むから……亮はまだ生まれて日のない赤ん坊だから……冬に外に出すのだけは止めなさい」
妻に次男を預け見送った父、君貢は、溜め息をつく。
「お前が賢いのは解っているよ。その賢さ、お前の中に渦巻く疑問に父さんは、ある程度は答えてあげられる。けれど、それはある程度。全てではない。お父さんは学問は修めているが、それはある程度であって、お前程理解もしていないだろうしお前の疑問の全てに答えられない」
膝をつき、息子の頭を撫でる。
「そして、亮もお前程の賢さは持っていないかもしれない。持っているかもしれない。まだ、小さいから解らないんだよね」
「一緒じゃ……ない?」
子瑜は呟く。
「そう。でも、お前の弟だから賢い子に育つかもしれないね」
穏やかに微笑む。
「だから、もう少し大きくなるまでは外に出すのだけはやめようね? その代わり、『春秋』や『孫子』の勉強をする時に読んで聞かせてもいいから。ね? お父さんと約束しよう」
「……はい」
「偉いね。瑾は。じゃぁ遊んで……『墨子』の戦争実践しておいで」
「はい、父上。日が落ちる前には帰ります」
瑾は出ていく。
首も座り、背負うことができるようになってからは、理解しているのか不明だが片っ端から声に出して本を読み、文章の意味を叩き込んでいくことに費やす。
その途中、弟には子瑜の持っていない才能があることに気づいた。
「にーたん、にーたん」
くいくいっと、衣の裾を引っ張り晴れ渡った空を見る孔明。
「バッタが一杯飛んでくるよ。それに、ご飯がないないなの」
「えっ!」
「お星様がお話ししてくれるの。にーたんのお話と同じくらい、お話楽しいよ?」
邪気もなく嬉しそうに話す弟に、ショックを受ける。
孔明は星読みだ……まだ、星の見えないこの時にまで、読める……力のある能力者だ。
子瑜はなるべく表情を出さず、弟の前に膝をついてゆっくりと話し始める。
「亮?お星様とのお話、誰かにお話しした?」
「……ううん。とーたんとかーたん、いそがしいって、おてつだいのおねーたんやおいちゃんも。でもね、にーたんはわかるかなぁって、おもった」
首を振る弟に、子瑜はなるべく分かりやすいように淡々と話し始める。
興奮したりしては、孔明が怯えるかもしれない。
「お星様とのお話は、兄様と二人だけの内緒にしようよ、ね? 亮。兄様との内緒のお約束」
「内緒?」
二人だけの内緒に、特別な何かを感じたのか孔明は、目を輝かせて大きくうんっと頷く。
「にーたんとりょうの、ないしょのおやくそくっ、する」
「そうしようね? でも、バッタさんのお話は少し心配だから、父上に兄様からお話ししておくね? お星様の事は言わないからね?」
「うん! にーたん大好き!」
昔の可愛かった弟のことを思いだし、幸せそうに笑う義理の息子に、目の前に座る義母の承夫人は、溜め息をつく。
「子瑜さん。私の話を聞いてますか?」
「一応聞いてます。義母上」
何度も繰り返される淡々とした同じ返答にも、もう慣れた承夫人は扇を子瑜に突き付ける。
「子瑜さん。もう孔明さんは20になるのですよ。いい加減弟離れなさいませ! それに、紅瑩さんや晶瑩さんは嫁ぎ、跡取りをなし、均さんだとて婚約間近と書いてましたわね?」
「はぁ……そうらしいですね」
はっきりいって孔明以外の兄弟は眼中にない子瑜は、面倒そうに答える。
「では、子瑜さんももういい年なのですから、お嫁さんを迎えなさい!」
「え、えぇぇぇぇ?」
子瑜は目を見開き義母を見た。
「わ、私がですか?」
「当たり前です。貴方は諸葛家の家長でしょう! 均さんも婚約間近なのですよ。のらりくらりしていないで、早く身を固めなさい!」
発破をかける義母に対して抵抗するように、
「で、ですが、亮だってまだ……」
「孔明さんは、まだ身を固めていない子瑜さんに遠慮しているのです! 孔明さんには黄家のご令嬢との間に縁談が持ち上がりつつあるのですから、子瑜さん。先に身を固めなさい!」
ずいっと顔を寄せる義母に抵抗しようと逃げ道を探そうとする、往生際の悪い義理の息子に、
「あ、そうそう。先日見合い話を戴きましたのよ? 孫将軍閣下から」
孫将軍とは子瑜の主、孫仲謀のことである。
ちなみに、仲謀は孔明と一つ違い、仲謀の兄伯符と周公瑾、子瑜は同じく一つ違いである。
仲謀に兄のように懐かれ、こちらも小動物のように可愛がっている子瑜にとっては、
「どうしましょうね? 断っては、後々……」
「わ、解りました! 見合い話をお受けします」
その言葉ににっこりと、
「良かったですこと。では、準備をしなくてはね」
周囲には隠しているが、天才肌の子瑜の唯一苦手な義母に今日も負けてしまったことにガックリうなだれる、27才だった。
子瑜の下にはやかましく騒々しい、破壊兵器こと年子の妹達という危険人物。
子瑜は一度と言わず何度か、何かにかこつけてうるさい妹達を排除……近付かないように警告し、近づけば親の見ていない所で制裁……苛めては追っ払った。
妹達はぎゃんぎゃんと泣きわめき、両親は、
「もう少し兄弟なんだから……仲良くしなさい!」
と言われたが、こんな口うるさく鬱陶しいちび達に煩わされてなるものかと、必死に抵抗し破壊兵器から逃げ出した。
うるさいだけの兄弟なんているかっと思っていたが、7歳の時に母親が難産の末に出産した赤ん坊は、どういう訳かとてもとても大人しく、顔立ちはどこをどうみても、少々のっぺりとした印象の父親にではなく、彫りの深い母親に似たはっきりと整った男の子だった。
初めての弟に、子瑜は夢中になった。
狂暴な妹よりも可愛い上に余りむずがりもせず、子瑜が子守りという英才教育……つまり子守唄代わりの『春秋』や、『孫子』等の歴史書を読んでも、にこにこしているかじっと聞き入っているかである。
その為、色々と教え込もうとしたのだが、その度に両親に止められた。
「亮は赤ん坊だからっ! 首の座っていない赤ん坊だからっ! 止めなさい!」
「そうだよ、瑾っ! 『墨子』の戦術の話はようく解った! 解ったから、お願いだから首の座っていない亮を背負って、戦争ごっこは止めなさい!」
「戦争ごっこじゃなくて戦争実践です。『墨子』は……」
説明しようとする子瑜に、二人は必死に孔明を奪い返す。
「瑾。頼むから……亮はまだ生まれて日のない赤ん坊だから……冬に外に出すのだけは止めなさい」
妻に次男を預け見送った父、君貢は、溜め息をつく。
「お前が賢いのは解っているよ。その賢さ、お前の中に渦巻く疑問に父さんは、ある程度は答えてあげられる。けれど、それはある程度。全てではない。お父さんは学問は修めているが、それはある程度であって、お前程理解もしていないだろうしお前の疑問の全てに答えられない」
膝をつき、息子の頭を撫でる。
「そして、亮もお前程の賢さは持っていないかもしれない。持っているかもしれない。まだ、小さいから解らないんだよね」
「一緒じゃ……ない?」
子瑜は呟く。
「そう。でも、お前の弟だから賢い子に育つかもしれないね」
穏やかに微笑む。
「だから、もう少し大きくなるまでは外に出すのだけはやめようね? その代わり、『春秋』や『孫子』の勉強をする時に読んで聞かせてもいいから。ね? お父さんと約束しよう」
「……はい」
「偉いね。瑾は。じゃぁ遊んで……『墨子』の戦争実践しておいで」
「はい、父上。日が落ちる前には帰ります」
瑾は出ていく。
首も座り、背負うことができるようになってからは、理解しているのか不明だが片っ端から声に出して本を読み、文章の意味を叩き込んでいくことに費やす。
その途中、弟には子瑜の持っていない才能があることに気づいた。
「にーたん、にーたん」
くいくいっと、衣の裾を引っ張り晴れ渡った空を見る孔明。
「バッタが一杯飛んでくるよ。それに、ご飯がないないなの」
「えっ!」
「お星様がお話ししてくれるの。にーたんのお話と同じくらい、お話楽しいよ?」
邪気もなく嬉しそうに話す弟に、ショックを受ける。
孔明は星読みだ……まだ、星の見えないこの時にまで、読める……力のある能力者だ。
子瑜はなるべく表情を出さず、弟の前に膝をついてゆっくりと話し始める。
「亮?お星様とのお話、誰かにお話しした?」
「……ううん。とーたんとかーたん、いそがしいって、おてつだいのおねーたんやおいちゃんも。でもね、にーたんはわかるかなぁって、おもった」
首を振る弟に、子瑜はなるべく分かりやすいように淡々と話し始める。
興奮したりしては、孔明が怯えるかもしれない。
「お星様とのお話は、兄様と二人だけの内緒にしようよ、ね? 亮。兄様との内緒のお約束」
「内緒?」
二人だけの内緒に、特別な何かを感じたのか孔明は、目を輝かせて大きくうんっと頷く。
「にーたんとりょうの、ないしょのおやくそくっ、する」
「そうしようね? でも、バッタさんのお話は少し心配だから、父上に兄様からお話ししておくね? お星様の事は言わないからね?」
「うん! にーたん大好き!」
昔の可愛かった弟のことを思いだし、幸せそうに笑う義理の息子に、目の前に座る義母の承夫人は、溜め息をつく。
「子瑜さん。私の話を聞いてますか?」
「一応聞いてます。義母上」
何度も繰り返される淡々とした同じ返答にも、もう慣れた承夫人は扇を子瑜に突き付ける。
「子瑜さん。もう孔明さんは20になるのですよ。いい加減弟離れなさいませ! それに、紅瑩さんや晶瑩さんは嫁ぎ、跡取りをなし、均さんだとて婚約間近と書いてましたわね?」
「はぁ……そうらしいですね」
はっきりいって孔明以外の兄弟は眼中にない子瑜は、面倒そうに答える。
「では、子瑜さんももういい年なのですから、お嫁さんを迎えなさい!」
「え、えぇぇぇぇ?」
子瑜は目を見開き義母を見た。
「わ、私がですか?」
「当たり前です。貴方は諸葛家の家長でしょう! 均さんも婚約間近なのですよ。のらりくらりしていないで、早く身を固めなさい!」
発破をかける義母に対して抵抗するように、
「で、ですが、亮だってまだ……」
「孔明さんは、まだ身を固めていない子瑜さんに遠慮しているのです! 孔明さんには黄家のご令嬢との間に縁談が持ち上がりつつあるのですから、子瑜さん。先に身を固めなさい!」
ずいっと顔を寄せる義母に抵抗しようと逃げ道を探そうとする、往生際の悪い義理の息子に、
「あ、そうそう。先日見合い話を戴きましたのよ? 孫将軍閣下から」
孫将軍とは子瑜の主、孫仲謀のことである。
ちなみに、仲謀は孔明と一つ違い、仲謀の兄伯符と周公瑾、子瑜は同じく一つ違いである。
仲謀に兄のように懐かれ、こちらも小動物のように可愛がっている子瑜にとっては、
「どうしましょうね? 断っては、後々……」
「わ、解りました! 見合い話をお受けします」
その言葉ににっこりと、
「良かったですこと。では、準備をしなくてはね」
周囲には隠しているが、天才肌の子瑜の唯一苦手な義母に今日も負けてしまったことにガックリうなだれる、27才だった。
0
あなたにおすすめの小説
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる