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第一章……ゲームの章
29……neun und zwanzig(ノインウントツヴァンツィヒ)
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「う、ん……?」
アストリットが目を覚ますと、焚き火を見ていたのはイタルで、ディーデリヒは寝息をたてていた。
「あ、起きた?アスティ。おはよう」
「あ、おはようございます。イタルさん。えっと、すみません。か、代わります。休んで下さい」
「ううん。基本的に僕たちは睡眠時間が短いんだ。それにディとさっき代わったばかりだよ。もう少し休んだら? 疲れているんじゃないの?」
「いえ、それ程は……えっと、タクマさんたちは?」
2人がいないのに気がつき、声をかける。
「出て行って貰ったんだ。パーティの解消と馬を全部引き取って。金をくれって言うもんだからディが払ってたけど、凄いね。そこから馬の蹄の調節代と、病気の馬の治療費を引いた値段払ってた」
「でも、雨が降ってますが……」
「大丈夫でしょう。ここから丸1日歩いたら、ベルリンだから」
イタルは焚き火に薪をくべる。
「雨が続くと湿気が多いし、寒くなるよね……」
「そうですね」
「ねぇ。アスティは何でそんなに動けるの?」
見上げると心配そうな眼差しをしている。
「君は、この帝国でも有名な高位のお姫様……それなのにどうして……」
「旅をしたくて……」
「旅?」
キョトンとするエルフの青年。
「えぇ、旅です。世界を知りたかったんです」
「世界を……? 君は本当にアストリットなの?」
「えぇ。一応……」
苦笑するアストリットに、イタルは微笑む。
「まぁいいよ。僕は僕、アスティはアスティ……それ以上は聞いても仕方ないし、意味はないからね。あ、そうだ。さっき、溜まっていた水を入れておいたよ。空いていた樽と皮袋に入れておいたから」
「ありがとうございます。あ、馬たちの手入れの時と、アナスタージウスたちの体を拭いてあげようと思って……」
「あ、ディが、馬は後で自分がみるって」
「じゃぁ、先に朝御飯の準備します。昼は旅の準備をするので……」
「じゃぁ、僕は納屋のあたりにあった薪を入れておくよ。雨が止んでも数日は道がぬかるんで出られないからね」
「お願いします」
イタルは立ち上がり、出て行った。
アストリットは身支度を整え、お湯を絞った布で顔と手足、髪を軽く拭う。
体はどうしても今ここでは無理なので我慢する。
そして、昨日の残りのスープと、残っていた食料を確認する。
「よし……朝はスープと昨日別に浸けておいたお肉を焼こう。パンは発酵熟成が難しいのよね……。インドのナンのようにかまどに貼り付けて焼く……かまどはススで汚れているから無理よね。やっぱり薄く油を敷いて焼くしかないのかしら……鍋を二種類持って来ておいてよかった」
先に馬や動物たちのスープを作り、冷めるまで待つ。
その間に小麦を練り、発酵菌はないのでしばらく休ませて、その間にピクルスと肉を焼き、最後に肉の油で平べったく伸ばしたナンを焼く。
そして、先にスープなどを与えた後、
「ディさま、起きてください。ご飯ですよ」
「う、ん……」
そっと声をかけると、目を開ける。
「あぁ、おはよう。アスティ」
「おはようございます。ごはんですよ。それに後で、体を拭いてくださいね」
「ありがとう。イタルもおはよう」
「大丈夫? ディ」
「あぁ、昼、時間があったら休んでも良いし、今のところ問題はない。不眠不休で三日間はザラにあったから」
けろっと答えるディーデリヒに、2人は顔を見合わせる。
「どんな過酷な現場にいたのさ……」
「騎士になる為に行ってた時かな。俺はそんなに術も強くないし、体力勝負だったから動き回ってた。アスティの兄のカシミールは戦略と魔法展開、テオドールは補給系とサポートだったから」
「そんなに厳しかったのですか……」
「フレデリックも一緒に行っていた。あれが使えるなら俺も休憩は取れたけれど、仮病を使ってベッドでガタガタ震えていて使えなかったし、丁度弟子入りしていた砦の騎士が数人の部下と離れていて、それを知った敵が襲って来たんだ。指示するものがいないと動けない。だから動いた」
淡々と答え、そして微笑む。
「まぁ、そんなことよりもご飯を食べないか? せっかくの料理が冷めてしまう」
「そうですね」
「それより、この匂いは……」
「これもサンドイッチ……センドイッチです」
「センドイッチ?」
ディーデリヒは首をかしげると、イタルが、
「パンの間に野菜や肉を挟んで一緒に食べるものだよ。でも、アスティのはピタパンサンドだね」
「ナンっぽくしたのですが、一緒に食べたほうがいいかもと思って。一枚に焼いた薄いパン……ブロートの上と下を剥がして、そこにハーブとお肉を入れたんです。そうすれば、持ち歩きにも使えるかもと。すぐに焼けるので」
「へぇ……」
置かれていたサンドイッチを手にして口にすると、
「……美味い! この味付けは?」
「前に出会った旅人さんに、交換してもらった卵に油、ワインのお酢、塩を混ぜたものです。早めに使わないといけないのですが、どうですか?」
「うん、初めて食べた。美味しい」
ウンウンと頷き黙々と食べる。
「イタルさんは?」
「うん、酸味が低くて美味しい。マヨネーゼ」
「マヨネーゼと言うのか?」
「えっとそう。アスティは昨日も思ったけど料理上手だね」
「ちょっとだけ。勉強したんです」
照れる。
「やっぱり料理って大事だと思うんです。折角旅をしてるのに、野宿で危険な場所なら兎も角、こう行った所では、ある程度お腹に持つ美味しいものをって。良かったです」
「本当にこんなに美味しいものが食べられて、嬉しいよ。前のグループだと、塩辛い干し肉と固いカビかけたパン、酸っぱくなった安物のワインだったからね」
イタルは噛みしめるように食べている。
タクマたちのグループは、料理や買い物に手を抜いていたらしい。
「それに、燻製とか凄いよ。こんなことも分からなかったなんて……」
「外で料理を作る方法を、教えてもらっていたんです」
「本当? 僕も勉強しておけばよかった」
「でも、アスティの料理になるまでには結構かかるぞ」
「良いよ。その時には君たちについて行って、お城に雇って貰うから」
ディーデリヒの言葉にイタルは笑う。
「本当か? 冒険者でありエルフの君が、人間の城にいたら窮屈じゃないのか?」
「確か、アスティやディの領地は、この辺りと同じで森や草原もあるんだろう? 僕はそれなら大丈夫だよ。それに、僕は緑のエルフだから、草木の成長を促す力もあるよ」
「凄いなそれは……アスティの父上にお願いしようか……」
ディーデリヒは真剣に考えている。
その姿に、アストリットとイタルは笑うのだった。
アストリットが目を覚ますと、焚き火を見ていたのはイタルで、ディーデリヒは寝息をたてていた。
「あ、起きた?アスティ。おはよう」
「あ、おはようございます。イタルさん。えっと、すみません。か、代わります。休んで下さい」
「ううん。基本的に僕たちは睡眠時間が短いんだ。それにディとさっき代わったばかりだよ。もう少し休んだら? 疲れているんじゃないの?」
「いえ、それ程は……えっと、タクマさんたちは?」
2人がいないのに気がつき、声をかける。
「出て行って貰ったんだ。パーティの解消と馬を全部引き取って。金をくれって言うもんだからディが払ってたけど、凄いね。そこから馬の蹄の調節代と、病気の馬の治療費を引いた値段払ってた」
「でも、雨が降ってますが……」
「大丈夫でしょう。ここから丸1日歩いたら、ベルリンだから」
イタルは焚き火に薪をくべる。
「雨が続くと湿気が多いし、寒くなるよね……」
「そうですね」
「ねぇ。アスティは何でそんなに動けるの?」
見上げると心配そうな眼差しをしている。
「君は、この帝国でも有名な高位のお姫様……それなのにどうして……」
「旅をしたくて……」
「旅?」
キョトンとするエルフの青年。
「えぇ、旅です。世界を知りたかったんです」
「世界を……? 君は本当にアストリットなの?」
「えぇ。一応……」
苦笑するアストリットに、イタルは微笑む。
「まぁいいよ。僕は僕、アスティはアスティ……それ以上は聞いても仕方ないし、意味はないからね。あ、そうだ。さっき、溜まっていた水を入れておいたよ。空いていた樽と皮袋に入れておいたから」
「ありがとうございます。あ、馬たちの手入れの時と、アナスタージウスたちの体を拭いてあげようと思って……」
「あ、ディが、馬は後で自分がみるって」
「じゃぁ、先に朝御飯の準備します。昼は旅の準備をするので……」
「じゃぁ、僕は納屋のあたりにあった薪を入れておくよ。雨が止んでも数日は道がぬかるんで出られないからね」
「お願いします」
イタルは立ち上がり、出て行った。
アストリットは身支度を整え、お湯を絞った布で顔と手足、髪を軽く拭う。
体はどうしても今ここでは無理なので我慢する。
そして、昨日の残りのスープと、残っていた食料を確認する。
「よし……朝はスープと昨日別に浸けておいたお肉を焼こう。パンは発酵熟成が難しいのよね……。インドのナンのようにかまどに貼り付けて焼く……かまどはススで汚れているから無理よね。やっぱり薄く油を敷いて焼くしかないのかしら……鍋を二種類持って来ておいてよかった」
先に馬や動物たちのスープを作り、冷めるまで待つ。
その間に小麦を練り、発酵菌はないのでしばらく休ませて、その間にピクルスと肉を焼き、最後に肉の油で平べったく伸ばしたナンを焼く。
そして、先にスープなどを与えた後、
「ディさま、起きてください。ご飯ですよ」
「う、ん……」
そっと声をかけると、目を開ける。
「あぁ、おはよう。アスティ」
「おはようございます。ごはんですよ。それに後で、体を拭いてくださいね」
「ありがとう。イタルもおはよう」
「大丈夫? ディ」
「あぁ、昼、時間があったら休んでも良いし、今のところ問題はない。不眠不休で三日間はザラにあったから」
けろっと答えるディーデリヒに、2人は顔を見合わせる。
「どんな過酷な現場にいたのさ……」
「騎士になる為に行ってた時かな。俺はそんなに術も強くないし、体力勝負だったから動き回ってた。アスティの兄のカシミールは戦略と魔法展開、テオドールは補給系とサポートだったから」
「そんなに厳しかったのですか……」
「フレデリックも一緒に行っていた。あれが使えるなら俺も休憩は取れたけれど、仮病を使ってベッドでガタガタ震えていて使えなかったし、丁度弟子入りしていた砦の騎士が数人の部下と離れていて、それを知った敵が襲って来たんだ。指示するものがいないと動けない。だから動いた」
淡々と答え、そして微笑む。
「まぁ、そんなことよりもご飯を食べないか? せっかくの料理が冷めてしまう」
「そうですね」
「それより、この匂いは……」
「これもサンドイッチ……センドイッチです」
「センドイッチ?」
ディーデリヒは首をかしげると、イタルが、
「パンの間に野菜や肉を挟んで一緒に食べるものだよ。でも、アスティのはピタパンサンドだね」
「ナンっぽくしたのですが、一緒に食べたほうがいいかもと思って。一枚に焼いた薄いパン……ブロートの上と下を剥がして、そこにハーブとお肉を入れたんです。そうすれば、持ち歩きにも使えるかもと。すぐに焼けるので」
「へぇ……」
置かれていたサンドイッチを手にして口にすると、
「……美味い! この味付けは?」
「前に出会った旅人さんに、交換してもらった卵に油、ワインのお酢、塩を混ぜたものです。早めに使わないといけないのですが、どうですか?」
「うん、初めて食べた。美味しい」
ウンウンと頷き黙々と食べる。
「イタルさんは?」
「うん、酸味が低くて美味しい。マヨネーゼ」
「マヨネーゼと言うのか?」
「えっとそう。アスティは昨日も思ったけど料理上手だね」
「ちょっとだけ。勉強したんです」
照れる。
「やっぱり料理って大事だと思うんです。折角旅をしてるのに、野宿で危険な場所なら兎も角、こう行った所では、ある程度お腹に持つ美味しいものをって。良かったです」
「本当にこんなに美味しいものが食べられて、嬉しいよ。前のグループだと、塩辛い干し肉と固いカビかけたパン、酸っぱくなった安物のワインだったからね」
イタルは噛みしめるように食べている。
タクマたちのグループは、料理や買い物に手を抜いていたらしい。
「それに、燻製とか凄いよ。こんなことも分からなかったなんて……」
「外で料理を作る方法を、教えてもらっていたんです」
「本当? 僕も勉強しておけばよかった」
「でも、アスティの料理になるまでには結構かかるぞ」
「良いよ。その時には君たちについて行って、お城に雇って貰うから」
ディーデリヒの言葉にイタルは笑う。
「本当か? 冒険者でありエルフの君が、人間の城にいたら窮屈じゃないのか?」
「確か、アスティやディの領地は、この辺りと同じで森や草原もあるんだろう? 僕はそれなら大丈夫だよ。それに、僕は緑のエルフだから、草木の成長を促す力もあるよ」
「凄いなそれは……アスティの父上にお願いしようか……」
ディーデリヒは真剣に考えている。
その姿に、アストリットとイタルは笑うのだった。
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面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
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