Geschichte・Spiel(ゲシヒテ・シュピール)~歴史ゲーム

刹那玻璃

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第一章……ゲームの章

高凪光流(たかなぎみつる)

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 ログアウトするとゲームを切り、ため息をついた。

「どないしましたん?」

 その声に我に返り、微笑む。

「あ、あかねちゃん。ごめんごめん。ゲームに熱中してた」
「何かとても心配しとりますなぁ? だんはんは」

 母親に瓜二つの金髪に薄いブルーアイ、顔立ちは両親のいいとこ取りの美貌の持ち主の光流みつるの愛妻の茜は、京都の老舗菓子舗の現当主の長女。
 母親方の従姉妹が、那岐なぎの兄嫁である。

 茜はすっとした冷たい印象に見える顔立ちの、着物の似合うお嬢様だが、実際はお転婆で、おきゃんな性格は父方の祖母に似ている。
 おっとりしたと言うかドジっ子の母親とは違い、しっかりした性格である。

 光流と茜の出会いは、光流が新人時代、尊敬する雅臣まさおみと、両親と甥が住むと言う京都に着いて行った時に、連れて行って貰った店で店番をしていた茜に一目惚れして、猛アタック。
 大学に行って経営学を学ぶと言っていた茜だが、暇を見てはやってくる光流に時々京都を案内するようになり、告白された。
 一応、茜は16才、光流は21才だった。
 正式に付き合うようになって、余り日をおかず噂が広がり、祖母の後押しもあり即結婚することになった。
 本当はちゃんと公表し、結婚式などをしたかった光流だが、大騒ぎになると逆に茜は止め、

「かめへんのや。あてはだんはんとおるんが幸せや」

と言う一言で、入籍のみとなった。

 悔しいのは光流である。
 新人の頃はお金がないからと言う理由で済むけれど、今はある程度収入も安定しているし、実際実家も一般家庭だが、最初住んでいた家は雅臣のマンションで、最近引っ越しもした。
 そろそろ、結婚式を挙げたり、結婚していることを公表したいと考えていた。

「えと、この前、臣さんところにいたでしょう? その理由が、臣さんのファンの女の子が行方不明になってるんだ」
「えっ? 行方不明でっか?」
「そう。歳は15歳。高校生だよ。家出をするような子じゃなく、家庭環境も悪くない。臣さんの大ファンで、僕たちが吹き込んだこのゲームを購入した直後に、行方不明になったんだって。名前はまどかちゃんって言うんだ。臣さんは表向きは普通に振る舞ってるつもりなんだけど、小さい頃から瞬ちゃんがファンレターを書いてくれていて、会ったことはないんだけど、サイン入りのCDとか特別に僕たちに配られたグッズなんかもプレゼントしたりしてね? すっごく可愛がっていて、心配してたんだ」
「まぁ、そないでしたか……」
「あぁ、大丈夫だよ。心配しないで。あのね、僕がゲームしてたのは、那岐に言われたんだ。『みっちゃんがやってる役が、茜といる時みたいにデレてる』とかいうから締めてやったんだけどね。気になって普通のじゃなく、特別パスワードを入力した場合、僕が声を吹き込んだカシミールになれるんだ。で、カシミールの妹のアストリット……この子ね?」

 ゲームの箱の中にあったキャラクターの関係図を見せる。
 すると、

「可愛いおすなぁ」
「えっ? そう? うーん、良い子だったよ。でも茜ちゃんの方が可愛い」

光流は真顔で言う。

「それに、うーん……僕も余り言えないけど、高校生の時の茜ちゃんに一目惚れしたんだけど、すっごく可愛いし、お姫様みたいだと思ったんだよね。それに、着物を綺麗に着こなしてて、うわぁって」
「と言うか、だんはん。あての家は妖精の血を引いた家どすえ? お母はんや蛍姉はんは、ほんまに妖精の血を引いたおひいさんや」
「うーん……蛍さんは可愛い人だけど、僕は茜ちゃんの方が好きだから。でも多分、臣さんは瞬ちゃんの事、好きそうだなぁって」
「? 臣兄はんは、瞬ちゃんにおうたんでっか?」
「ううん。それが瞬ちゃん、バグか何か分からないけど、今ゲームの中にいるんだよ。しかも、このアストリットになってるんだ」

 キャラ設定の少女は、光流が演じるカシミールとそっくりな顔立ちで、小柄で華奢。
 丸い瞳は淡いブルー、髪もプラチナブロンド、童顔で可愛らしい。

「ちょこまか動き回って、落ち着きがないと言うか、頑張り屋さん。それに、ゲームの世界に一人で入ってしまったのに……関係ない世界なのに、一所懸命にゲームの中の両親や兄、周囲の人の為に何かをしようって考えてる。いつ戻れるか分からない世界で一人生きてるんだよ。ジャガイモとかサツマイモのこととか、温泉が湧いたからその地域に何か出来ないかとか……15歳なのに、すごいの。僕なんていい大人なのになぁと思って」
「だんはんはまだまだどす。あてのおじいはんや山のおじいはんに比べたら、あてもだんはんも小鳥の雛や。その瞬ちゃんは、まだあてよりこんまいのに、先をじっと見られる。大人ですなぁ」
「そうそう。それにね? 笑えるの。瞬ちゃんがアストリットでしょう? なのに、臣さんが声をしてるディーデリヒが、ものすごく嫉妬してるんだよ。瞬ちゃんが大好きな『丹生雅臣(にゅうまさおみ)』に」
「まぁ……」
「瞬ちゃんは臣さんのこと大ファンで大好き。ディーデリヒはアストリットの中の瞬ちゃんが可愛くて好き。瞬ちゃんはまだ15なのに押しまくって……あの声で押すのもね……」

 クスクス……

「そうしたら、最初、那岐が瞬ちゃんを見つけたの。で、僕や臣さん入ってみたんだ。大丈夫かなぁって。それに、茜ちゃん知ってるでしょ? 臣さんって結構世話好きでしょ? ゲームの中で瞬ちゃんをめちゃくちゃ可愛がってたよ。それに、イタル君って子がいてね? 一平さんの息子だって」
「あぁ、聞いとりますわ。とても賢い男の子だと。シェリルはんの家庭教師として来てたそうですえ?」
「うん、話聞いたら、かなりの天才児。何カ国語か話せるらしいよ」
「ヴィヴィねえはんも言うとりました。一平叔父はんは英語が未だに理解できないのに、イタルはんは普段はずっと英語とフランス語、ドイツ語にイタリア語も堪能やて言うとりました」
「イタル君がゲームでしているのは、実は隠しキャラなんだよ。妖精の王子でドラゴンと旅をしているんだ。出会うんだから運がいいよね」

 光流は微笑む。

「と言うか、臣さん大丈夫かなぁ? 明日、イベントなんだよね……那岐の初舞台。集中できるかなぁ」
「だんはんは大丈夫でっか?」
「大丈夫だよ。あ、茜ちゃん。明日観にきてね! チケット用意してるよ! 一平さんたちも来るんだ」
「構いませんのでっか? だんはん、忙しいでしょ?」
「絶対来て~! と言うか、車で送ります! 僕の仕事知ってほしいし……ね?」

 光流は可愛い最愛の妻を抱きしめたのだった。
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