63 / 95
第二章……帰還後、生きる意味を探す
52……zwei und fünfzig(ツヴァイウントフュンフツィヒ)……睛ちゃんのくどくてウザい人
しおりを挟む
母の美稚子を途中で拾い、そして、瞳と睛は、病院の最寄りの駅で父の紀良と待ち合わせていた。
結城紀良……瞬達三姉妹の父親である。
紀良は、シングルマザーで育ててくれた母が、宝塚やグループサウンズから、フォークソンググループに燃え上がる世代で、生まれた息子に今で言うキラキラネームをつけた。
しかも本当は、綺羅と言う名前を出生届に書いて出そうとしたのを、名しか知らない父親がすり替えたらしい。
一応、父は結婚したかったらしいが、父本人の度々の浮気と、最後に地元の名士の娘との見合い話が持ち上がったと聞き、すぐに別れるわよね? と母が聞いても、すぐに返答がなかったので殴り飛ばし、蹴りを入れ骨を数本折って追い出したのだと言う。
そして即、生まれた紀良を連れ、海外を転々とした。
大学を卒業して紀良は日本で就職するから、帰るつもりだと伝えた時に、
「私は好きなように生きるわ~」
と、超マイペースな生活をしている。
しかし、息子が結婚した美稚子を可愛がり、そして、孫達を溺愛しており、先程瞬が見つかったと連絡を入れたら、
「……キラ。良かったわぁ。丁度私も、日本にいるのよ。まーちゃんに会いに行くわ」
と超ご機嫌だった。
犯人がその場にいないことを祈るばかりである。
「あ、ここだよ」
「じゃぁ、パパ、ママ。先に行って。駐車場、結構込み入ってるみたいだし、瞳ちゃん方向音痴だから、私が見てる」
睛の言葉に、二人は、
「睛。頼むよ?」
「瞳ちゃん。荷物お願いね!」
と、忙しげに車を降りた。
二人は受付に向かうと、
「申し訳ありません。私達は結城瞬の両親です。あの、先程連絡を頂きまして……」
話しかけていると、近くに立っていた長身でがっしりとした青年が近づいてくる。
しかし、右腕を三角巾で吊っている。
「すみません。結城瞬ちゃんのご家族でしょうか?」
ハキハキとしているが丁寧な話し方である。
「私は一条那岐と申します。上のお嬢さんに電話をかけたのが私です。瞬ちゃんはまだ治療中です。多分、ここに来られていると思いましたので……」
「あ、あの、私どもは結城瞬の父の紀良、妻で母の美稚子です。一条さん。わざわざありがとうございます。あの、その怪我は……」
「あ、えっと……」
苦笑する。
「私は昔から格闘技を習っていたので……瞬ちゃんが、犯人と共に部屋に閉じ込められたので、鍵のかかった扉を急いで開けようと……でも、結果的には怪我を負わせる形になってしまい、本当に申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げる。
二人は、目を見開き首を振る。
「な、何をおっしゃるんですか! 現場は、状況は分かりませんが、一条さんがその時、扉を破って下さらなかったら、瞬はどうなっていたか……」
「本当に、本当にありがとうございます」
3人が話していると、
「何してるの? ママ、パパ」
「まーちゃんは?」
那岐は完璧にそっくりすぎる一卵性双生児を見たことはあるが、瞬の姉達は全く似ていない双生児だった。
少々吊り目で少年ぽい顔立ちなのに、声は可愛いハイトーンボイス……声優界でも垂涎の如く欲しがる鈴の音のような声の持ち主……あぁ、この声は瞬の声だ。
そして、童顔で垂れ目で可愛らしい日本人形のような顔をした美少女……声は落ち着いたアルトボイス。
二人は、個性がしっかりしている。
その個性のいいとこ取りが、瞬のようだ。
那岐は軽く頭を下げ、
「先程は。一条那岐です。瞳さんと睛さんですね。こちらです」
「……え、エェェェ! い、一条那岐……一条那岐って、最近人気の出てる声優の……あのぉぉ?」
指を突きつける瞳に、睛がその指を握り、
「すみません、瞳ちゃんアホなんで。一条さん。お願いがあるんですけど、サイン下さい!」
「サイン?」
バッグをゴソゴソし、差し出したものを見て絶句する。
前に、光流が、
「お前のファンって、つき始めてるんだぞ」
と言っていた後、雅臣と3人で受けたインタビューのである。
「えっ? 臣さんとか……じゃなく俺?」
「だって、まーちゃんの部屋に、サイン色紙やあれこれあるのに、それ以上いるかなぁ?」
「あぁ、ポスターとか貼りまくりはしないけど、まーちゃん、すごいもんね」
「それに、余り高凪光流は、好きな声じゃない。『あんたの声ってクドくてうざっ! さらっと言えないの?』とか思う」
無表情に近い瞬を成長させた顔で、
「クドイのうざっ!」
などの毒舌を聞き、何となく光流が哀れになった。
言わないでおこう……、
「じゃぁ、サインは向こうで書くので、先に行きませんか?」
と、治療室に案内したのだった。
結城紀良……瞬達三姉妹の父親である。
紀良は、シングルマザーで育ててくれた母が、宝塚やグループサウンズから、フォークソンググループに燃え上がる世代で、生まれた息子に今で言うキラキラネームをつけた。
しかも本当は、綺羅と言う名前を出生届に書いて出そうとしたのを、名しか知らない父親がすり替えたらしい。
一応、父は結婚したかったらしいが、父本人の度々の浮気と、最後に地元の名士の娘との見合い話が持ち上がったと聞き、すぐに別れるわよね? と母が聞いても、すぐに返答がなかったので殴り飛ばし、蹴りを入れ骨を数本折って追い出したのだと言う。
そして即、生まれた紀良を連れ、海外を転々とした。
大学を卒業して紀良は日本で就職するから、帰るつもりだと伝えた時に、
「私は好きなように生きるわ~」
と、超マイペースな生活をしている。
しかし、息子が結婚した美稚子を可愛がり、そして、孫達を溺愛しており、先程瞬が見つかったと連絡を入れたら、
「……キラ。良かったわぁ。丁度私も、日本にいるのよ。まーちゃんに会いに行くわ」
と超ご機嫌だった。
犯人がその場にいないことを祈るばかりである。
「あ、ここだよ」
「じゃぁ、パパ、ママ。先に行って。駐車場、結構込み入ってるみたいだし、瞳ちゃん方向音痴だから、私が見てる」
睛の言葉に、二人は、
「睛。頼むよ?」
「瞳ちゃん。荷物お願いね!」
と、忙しげに車を降りた。
二人は受付に向かうと、
「申し訳ありません。私達は結城瞬の両親です。あの、先程連絡を頂きまして……」
話しかけていると、近くに立っていた長身でがっしりとした青年が近づいてくる。
しかし、右腕を三角巾で吊っている。
「すみません。結城瞬ちゃんのご家族でしょうか?」
ハキハキとしているが丁寧な話し方である。
「私は一条那岐と申します。上のお嬢さんに電話をかけたのが私です。瞬ちゃんはまだ治療中です。多分、ここに来られていると思いましたので……」
「あ、あの、私どもは結城瞬の父の紀良、妻で母の美稚子です。一条さん。わざわざありがとうございます。あの、その怪我は……」
「あ、えっと……」
苦笑する。
「私は昔から格闘技を習っていたので……瞬ちゃんが、犯人と共に部屋に閉じ込められたので、鍵のかかった扉を急いで開けようと……でも、結果的には怪我を負わせる形になってしまい、本当に申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げる。
二人は、目を見開き首を振る。
「な、何をおっしゃるんですか! 現場は、状況は分かりませんが、一条さんがその時、扉を破って下さらなかったら、瞬はどうなっていたか……」
「本当に、本当にありがとうございます」
3人が話していると、
「何してるの? ママ、パパ」
「まーちゃんは?」
那岐は完璧にそっくりすぎる一卵性双生児を見たことはあるが、瞬の姉達は全く似ていない双生児だった。
少々吊り目で少年ぽい顔立ちなのに、声は可愛いハイトーンボイス……声優界でも垂涎の如く欲しがる鈴の音のような声の持ち主……あぁ、この声は瞬の声だ。
そして、童顔で垂れ目で可愛らしい日本人形のような顔をした美少女……声は落ち着いたアルトボイス。
二人は、個性がしっかりしている。
その個性のいいとこ取りが、瞬のようだ。
那岐は軽く頭を下げ、
「先程は。一条那岐です。瞳さんと睛さんですね。こちらです」
「……え、エェェェ! い、一条那岐……一条那岐って、最近人気の出てる声優の……あのぉぉ?」
指を突きつける瞳に、睛がその指を握り、
「すみません、瞳ちゃんアホなんで。一条さん。お願いがあるんですけど、サイン下さい!」
「サイン?」
バッグをゴソゴソし、差し出したものを見て絶句する。
前に、光流が、
「お前のファンって、つき始めてるんだぞ」
と言っていた後、雅臣と3人で受けたインタビューのである。
「えっ? 臣さんとか……じゃなく俺?」
「だって、まーちゃんの部屋に、サイン色紙やあれこれあるのに、それ以上いるかなぁ?」
「あぁ、ポスターとか貼りまくりはしないけど、まーちゃん、すごいもんね」
「それに、余り高凪光流は、好きな声じゃない。『あんたの声ってクドくてうざっ! さらっと言えないの?』とか思う」
無表情に近い瞬を成長させた顔で、
「クドイのうざっ!」
などの毒舌を聞き、何となく光流が哀れになった。
言わないでおこう……、
「じゃぁ、サインは向こうで書くので、先に行きませんか?」
と、治療室に案内したのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――
金斬 児狐
ファンタジー
ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。
しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。
しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。
◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる