上 下
1 / 130
第1章〜起

自分を追い詰めていく

しおりを挟む
 今年もあともう少し。
 妹が、自分は年賀状は書かないといい、そしてぼやいた。

「心療内科に行って、先生は『この病気かもしれんね。薬を処方するから』って言われたけど、病気がいつ治るかは先生なんも言ってくれんかった」
「そりゃそうだよ。うつなんて正確に宣言できないし、うつっぽい症状とか、その中でも幾つか近い状態は説明するけど、絶対宣言しないよ。それにうつは、完全に治るって言えない病気だもん」
「最近家に一人いると憂鬱になるし、外に出たくないし、もう嫌だ~って思う」
「それが悪化すると自傷や、自殺未遂に走るから注意しなさい。体験者は語る」

 焦る妹に告げる。

「無理に外に出ようとか思うと私みたいにパニック障害になるよ。無理はしないでのんびりと。いつかは治るさでいいと思う」
「でも、自分って何の為に生きてるんだろうって思うよ。仕事してない。怠けてるんだって、自分に腹がたつもん」
「人生を生きる為。死ぬのはいつでも死ねる。生きるのは一回のみ」
「姉ちゃんが哲学的」
「失礼な。うちは勉強したいんよ。ひなも上杉謙信さんのこととか新撰組の勉強でもおしや」



 心の病に苦しむ人は数多くが私を含め仕事復帰を求めています。
 でも、心をいやすものは何でしょう?
 この世の中は、心を病んでいる人、苦しむ人に平然と、

「怠け者」
「俺らの税金を使って!」

と面と向かって言う人もいます。

 心は体よりももっと傷が深いのです。
 もっと優しい世界でありますように……。
しおりを挟む

処理中です...