姉妹の愚痴〜心身障害者への理解を〜

刹那玻璃

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第2章〜承

役所に相談したがね。

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 一応、昨年相談に行ったこともあり、役所に手続きのために連絡した。
 すると妹が新しい実家に引っ越し家を引き払ったため、どうしてと言われたので説明した。

「あれ?刹那さんは実家に戻らないんですか?」

と言われたので、状況と突然言われても困ること、病院に行くのが大変であること、それ以上に妹と6畳を共用するのが一番嫌だと伝えた。
 それに、

「極端な話、戻れって言われても家族信用できないんです。今の状況を作ったのは母や死んだ祖母に叔母たちですが他の家族は、母に金を貸すのが悪いと私責められましたし、自分で、地方裁判所や法テラス、それに市役所巡りもしましたし、引っ越した時は冷蔵庫、レンジなし、洗濯機は壊れてる、エアコンなし、こたつも壊れてて……そんな生活夏まで続けたんです。友人に洗濯機と冷蔵庫譲って貰って。なのに妹は私があれこれ手伝って準備してたのに、半年で嫌だって。私が帰ってもいがみ合いです」
「でも家族に戻ってこいと言われるなんて嬉しいでしょう?」
「家の中にある古本を半分捨てろと言われました。50円で買った資料の本なのに。実家に置いていたものは全部ゴミって捨てたのに、また捨てろって……冗談じゃないです。それでなくても、今忙しい上に調子悪いんです……もう、親とやり取りしたくないので、すみませんが、連絡しないでくださいって伝えてください」
「えっ!」

 ギョッとした声をする。
 ため息をつき、耳鳴りと頭痛のする頭を押さえ、

「すみません。一応通っている病院の先生方に相談したら、先生たち全員反対されたんです。今体調が最悪で、ストレスもMAXなので、いつ倒れるか解らないって」
「あぁ、そう言えば先生に聞いたね……」
「家族にストレスを感じるんです。向こうも自分の思い通りにならない娘や姉に苛立って怒鳴るし、それを聞くのも辛いのと、戻ってこいと言いつつ鍵も渡してくれないし、妹の部屋に一緒に住めってどんな苦行ですか……」
「えっと、お父さんに聞いてみようか?」
「いえ結構です」

と言ったのに電話が切れ、しばらくしてかかってきた。

「お父さんが戻って欲しいって。そんなに言うなら部屋を用意すれば戻ってくるのかだって」

 その一言に、ブチっと切れかかった。
 どうせ、戻っても文句しか言われないし、空いている部屋は兄たちが泊りにきた時の空き部屋にすると言ったのだ。

「ですから、新しい住所はわかりませんが、地域は聞いてます。文化会館から北に行き、坂を登ってある住宅街ですよね?私は最低週二回病院に行くんです。自転車はめまいも悪化したので乗らなくなりましたし、車の免許も持っていないのでバスで今住んでいるあたりまで乗ってきて、電車に乗り換えてって、交通費バカになりませんし、バスと電車は、病気のせいで乗るのが怖いんです。で、帰って親の愚痴とか文句とか聞きたくないんです。それに、妹が帰ると言った時に反対した私にうるさい!姉ちゃんには私が寂しいのなんか解らん!電話するなと言いました。でも、本来妹や家族に怒るなら私の方なんです。本気で腹が立ってるんです。なのになんで怒鳴りつけておいて、今更手のひら返して戻ってこいだの……」

 中学校でやめた、爪を噛む。

 小学校の時まで爪を噛んでいた。
 爪の形が悪くなると怒られ、教科書を食べた。
 それも怒られたので髪を抜いた。

 最近この癖がどんな意味があったのかと調べた。
 すると、10~20代の思春期以降の男女、特に圧倒的に多いのは女性の『抜毛症(ばつもうしょう)』と言うストレス性の病気で、抜いた髪の毛を口に入れると胃腸障害も起こるのだと言う。
 実は何度も『異食症』だと告白していたが、私はこの病気も持っていて、もうその頃には、机の周囲に落ちていたら何か言われると無意識に口に入れていた。
 しかも『異食症』よりも『抜毛症』の方が精神的にかなり追い詰められている状態で、精神科か心療内科にかかっておくべきなのだという。
 ちなみに、当時の私はストレスですでに円形脱毛症だったので、髪を抜くことでますます広がってカッパと呼ばれた。
 兄には無意識に抜いていると、スリッパや雑誌で殴られた。
 母は、育毛剤を買ってきたが、男性用だったので、余計に頭皮がかぶれ、その独特の匂いにいじめも酷くなったことも付け加えておく。

『抜毛症』は治らなかったが、ある程度良くなったのは高校に入ってから。
 生え変わった髪が茶髪で酷い天然パーマになったのに気がついた時だった。
 黒くストレートの、でも家族の中で柔らかい髪の毛が、色が抜けクルクルとウェーブがかかる。
 しかも耳の下まで伸ばすと、脱色もしていないのに毛先が金色になる。

 でも、ストレスを感じると無意識に髪を抜く。

「もう嫌なんです。病院の先生方にもう一回相談に行きますから、今の家に住みたいんです」
「えーと、刹那さんの症状は定期的に先生方に伺っているよ。ストレスが酷くて頭痛が悪化、胃腸も弱ってる、ついでに低体温症で、関節が痛む。お父さんが言うには、1人にさせといたら自殺でもするんじゃないかって」
「してくれたほうが親は喜ぶんじゃないですか。きちがいは家にはおらんって、言いましたし」
「……そんなこと言われたの?」
「妹には、私が病気になったのは姉ちゃんのせいだと」

 沈黙が流れる。

「分かった。でもね、戻ってこいって言ってくれる家族がいるのは本当にありがたいんだよ?」
「そんな有り難み、ここ数ヶ月で全部なくなりました。すみません。逆流性食道炎が再発して、胃液がせり上がっているので……休みたいんです……。お願いですから、もう一度働けと言われたら、今の状態がダメだと言うのなら……」

 涙がボロボロ流れる。
 自分は演技はできない。

「働くのは無理!今、君が受けている行政のものは権利だから。フリマで売ったり、ちょっとお手伝いをしてお金をもらう……つまり仕事をしたら報告だけでいいです!」
「はい……すびばせん」

 アレルギー性鼻炎も持っているため、すぐに鼻水が出る。

「本当は、自立したいんです。でも、今別の件でももめていて……そのことを相談したくても家族は聞いてくれないんです……病気も波があって……」
「大丈夫、大丈夫。もし何かあったら連絡下さい。休みなさいね」
「はい……ありがとうございます……っ」

 しばらくしくしく泣いていたら、ハッとした。
 2時から、病院……しかも電車に乗って行かなくてはいけない!

 泣いてむくんだ顔をメガネとマスクで隠し、コソコソと出る。
 晴れ間が見えている。

「傘いいかなぁ……風はあるけど晴れてるし」

 と歩いて行き電車に乗って降りたら、大雨だった。

「ぎゃぁぁ……!運が悪い」

 走りながら、病院に行き、帰りに雨は降るもののその地域の八幡神社と大好きなお寺にお参りにいったのだった。



 もう、平穏な日々でストレスがなくなりますように……。
 掃除と洗濯を楽にできるように、寝込む日が減りますように……。
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