君のことを本当に……?

刹那玻璃

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《祭り》

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 土曜日に始まる祭りの準備をしていたり、風遊ふゆのお店のお手伝いをしている3人は、金曜日の晩にそれぞれお小遣いを渡される。

 しかし、肉体労働や売り物を作っている祐次ゆうじ葵衣あおいと違い、ご飯を作ったり洗濯物を干したり、学校から帰ってきた子供たちと遊んだりする以外は、ほぼプレゼント作りに没頭していた観月みづきは困惑する。

「あ、あの。私、祐次くんや葵衣ちゃんみたいに色々してないし……」
「あ、それ、少しだけ交換しているの。お祭りのチケット代に当てたから」
「チケット代?」
「そう。他の地域の人が普通にお金を出すけれど、地域の人は交代でテントを見たりするし、ほぼボランティア。だから安く購入できるチケットだしたら、そこで食べたり飲んだり出来るでしょう? お祭りの運営資金にもなるから」
「俺は焼き肉にうどんに、ちらし寿司、炊き込みご飯のおにぎり! あ、わたあめ、観月食べるか? だったらはい!」

 手の怪我が大分良くなった祐次は、貰ったお小遣いを全部、運営事務局長の醍醐だいごに渡す。

「祐次、何人前食べるんや?」
「ん? 多分父さんと母さんは無理やけど、ほら、観月の両親やサキ兄ちゃんたちの分!」
「余ったらどうするんや」
「観月とゲームとか、ジュース買ったり出来るし……夕方までは中で色々するんだし、良いでしょ? 二日間やるんで?」
「まぁ、多分余らんやろうけど、豪勢やなぁ」

 チケットと交換する醍醐に、祐次は真顔で、

「何で? ここでどんくさいし、兄ちゃんたちの邪魔になるばっかりなのに、お小遣い貰って嬉しいけど、町に持って帰るより、ここで皆で楽しく使った方が良いでしょ? それに、今年の収入が来年の祭りに掛かってる! ってひなにいちゃんも昼にいいよったやろ? 俺のお小遣いじゃそんなに足しにならないと思うけど」
「あ、私も! 風遊叔母さん。あの、テディベアのお金……祐次くんの祐月ゆうげつは貰ってしまいましたけど、今作っている分のお金を……でも、多分、これじゃ足りないですよね……」

握っているお小遣いを差し出す。

「足りない分は、また今度……お父さんとお母さんの為に作りたいので」
「十分やわ。お釣り渡そか?」
「いえ! 明日、土曜日ですよね……お父さんとお母さん、何処に泊まるんでしょう?」
「あれ? あ、そっか、毎年嵯峨さん、サキ兄ちゃんとシィ兄ちゃんと一平兄ちゃんとウェイン兄ちゃんと、下でどんちゃん騒ぎだよ。それに、嵐山らんざん伯父さんとか祐也ゆうや兄ちゃんたちの父さんの朔夜さくや伯父さんも飲むから。で、ここではしゃべって過ごす感じかな?」

 祐次は説明する。

「明日、じゃぁ、お父さんたち来るんですね! 嬉しいです! あ、お父さんたちの分のチケット……」
「だから俺が買ってるって。観月……大丈夫か? 月曜日から熱心に作ってて……って、うわぁ、凄いな! これ!」

 こたつの上には、飾られた40センチのテディベアたち。
 約5日の間に仕上がっている。
 一人はスーツにパンツ、胸元に造花の花、眼鏡をしっかりかけている。
 もう1体は、優しげな生成りの綿のドレス。
 ブーケとベールを飾り、幸せな夫婦。
 そしてもう一体、一回り小さく、それでいてちょっと童顔に見える。
 新婦ベアと良く似たドレスで、造花を編んだ花冠を乗せている。

 最初ある程度教えたものの、短時間で仕上げる実力といい、ほぼ自分一人で作り上げた力量といい、観月はテディベア作家の卵にも匹敵する腕の持ち主らしい。

「……凄いわ。初心者でここまで出来るなら、上等よ……嵯峨さんが羨ましいわ~」
「ウェディングベアに、ファミリーベア。素敵ね」

 ほたると風遊は感心する。

「でも、お父さんのベアのちょっとお耳が……」
「変じゃないよ? それになぁ? うちは伝えとらんけど、テディベアの顔には一応こがいになっとって……」

 風遊は大きな丸に小さい丸を二つを作る。
 そして、

「ここが鼻で、鼻の高さに近い位置に目を下げると女の子のベアになるの。で、鼻に寄せて、瞳も大きくすると子供、赤ちゃんベア、幼く見えるのね。で、目を小さくしたり、少し高い位置にすると、男の子のベア。こうしてみると、観月ちゃんのベアは子供ベア、柚月ゆづきさんの花嫁ベアは女の子、嵯峨さんのベアは男の子ベア。上手にできてるわ」
「よ、喜んでくれるかな……」
「これ、わが、すぅにもろうたら、ビックリするわ」
「ひっどーい! うちやって、頑張ろうとしたんよ?」

 日向ひなたただすは、言い合いはしているが、とても素敵な夫婦である。



 晩になると、テディベアができあがったので、風遊のお店に出品する小物などを作ったり梱包の手伝いをする。
 ちなみに一日目のみ、標野しめのが店で作ってくる京菓子も販売される。

「あてらの分はシィ兄はんは、別に作ってくれはるんや。買わんでかまんで?」

 醍醐は笑った。



 当日の朝、午前中なら人も少ないだろうと、祐次と観月は祭りの準備に残り、車を二台回す為、醍醐と風遊は出ていった。
 観月と葵衣は蛍と祐也夫婦に連れられ、割り当てられたブースに、祐也が運んできたテントやテーブルをてきぱきと組み立てる手伝いをし、販売するものを乗ってきた車から荷物を運び、並べていく。
 子供たちは、別のブース担当の日向たちや、蛍の妹たちと会場で遊んでいる。
 会場にいるのはこの地域にすむ人々なので、家族も同然らしく、会話をして楽しんでいる。

 テディベアを並べた後、テーブルに置いていく小物に観月は、

「わぁ……可愛い。これは……ブローチ? 羊毛フェルトで、葉っぱに……蛍?」
「あれ? 知らなかったの? ここはホタルが沢山いるの。この時期が一番綺麗だから、お祭りするのよ。源氏蛍だけじゃなく、平家蛍も飛ぶから」
「えと、お母さんと昔、見に行った時は、二、三匹でした……」
「違うよ~! 本当に乱舞するの! 今の時間はそんなに人はいないけど、時間がたつと増えるから、祐也お兄ちゃんが午前中にお手伝いしてって言ってたでしょ?」
「あ、そうなんだ! 蛍は夜だもんね! でも、乱舞するの見てみたいなぁ……」

呟く。
 すると横で、祐也が、

「知っとるかな? この10年位前から、ここで一緒に蛍を見たら、結婚するって言うジンクスがあるんだよ」
「えぇぇ~! そうなんですか?」
「今、ここにいないけど、醍醐さんと風遊母さんは、このお祭りで出会って結婚したし、俺の兄貴や妹のくれないもそうだよ」
「え? 祐也さんは?」
「結婚式は、ほたる祭りの日に人前式だったよ」

2人は顔を見合わせ微笑む。

「わぁぁ……! じゃぁ、お父さんとお母さんと一緒に見たいなぁ……」
「あれ? お兄ちゃんは?」
「あっ!」

 観月は頬を赤くして、照れたように、

「も、もし祐次くんが良ければ……蛍を見たいです……」
「お兄ちゃんは見る気満々でしょ? ねぇ? 祐也お兄ちゃん」
「アハハ。嬉しそうだったな」

ミニチュアの家具に、ミニチュアのベアも並べていく。
 ミニチュアハウスも実は二つ程出品されている。

「わぁ! 素敵です。これは……」
「内緒だけどひなさんの趣味。外枠とか家具とかは全部作って、蛍が、クッションとか色々と入れて、ね」
「可愛い。素敵です。ベッドに、ピアノに家具が。可愛い……」
「どっちが素敵かな?」

 日向が、近づいてきて問いかける。

「えっ……ピンクのも可愛いですけど、白にブルーが優しいです。壁がペンキで綺麗に塗られているんですね?」
「あぁ、こっちは異国風の別荘風。こっちは可愛らしいお屋敷風のドールハウスなんだよ」
「そうなんですね。本当に素敵です」
「じゃぁ……」

 日向は祐也に紙と油性ペンを借りると、大きく、

『売約済み』

と、書いて、二つに貼り付ける。

「え? えぇぇ? 二つとも?」
「ブルーの方は観月ちゃん、もう一つは葵衣にあげるわ」
「い、いいんですか?」
「かまへんわ。又作るわ。材料はようけある」

 微笑んだ日向は荷物を運ぶ手伝いに、去っていったのだった。

「うわぁ……すごい……嬉しいです」

 見事なドールハウスは、観月には本当に夢のようなものであった。
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