生まれ変わったら幸せになりたいと願った不運な女は、何故か猫の王子様のペットになっていた。

刹那玻璃

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第一章

アダルジーザの来訪とルーチェのご挨拶

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 姉王アダルジーザを家族の居間に案内したドミツィアーノ夫妻は、お菓子とお茶を準備していた。

「女王陛下。どうぞ。私が前もって確認いたしておりますので、ご安心くださいませ」
「何緊張しているの? 貴方たちが毒なんて入れないことなどわかっているわ? 心配していないわよ」

 首を傾げ告げる義理の姉に、お茶の準備をしたドミツィアーノの妻のアンナマリアは手を止め、苦しげに俯く。

「信じていただけて嬉しいですわ、お姉さま。ですが、安心だとお伝えするのは難しいのですわ……先日まで、アルカンジェロの食事に毒が盛られていましたの……私、ウリッセどのに伺うまで知りませんでしたの」
「なんですって? ドミィやアンが気が付かないの?」
「実は……」

 ドミツィアーノは説明する。

 ウリッセにも分からないほど巧妙に、そして調理施設でチェックしていても、食堂までの間に毒が仕込まれていた。

「どういうこと? 運ぶ者が?」
「いいえ……」

 ドミツィアーノは首を振る。

「姉上がご存知の通り、この屋敷の家令のじいが高齢です」
「そうね。もう次の代に譲るのも良い……そこまで言わないわ。仕事を分けてあげると楽になるのではないかしら?」
「そうなのです。実はじいから相談があり、数年前から少しずつ仕事を執事、執事見習いに振り分けていたのです。ですが……」

 眉間に深いしわが刻まれる。

「……何があったの?」
「……姉上は、毒の見分ける方法は、どのようにされますか?」
「何を言ってるの? 銀食器でしょう? 本当なら一般に妖精族は銀は苦手とかいうけれど、私たちはそんなに苦手ではないし、ナイフもフォークも問題ないもの」
「……ですが、そのカトラリーを預ける者は?」

 弟の問いかけに、アダルジーザはハッとする。

「……もしかして、信頼していた者が……」

 信じられないと言いたげに呟き、力なくドミツィアーノは頷く。

「次の家令にと……私もじいも願っていた者です。だからこそ保管するように託しましたが、保管もろくにできず、磨くことも、日々確認も怠っていたそうです」
「なんてこと……!」

 口を押さえ、何度も首を振る。

「銀食器は磨かなくてはいけないでしょう? それが大事な仕事の一つ……命を預けるものですもの。それなのに……」
「それが、私たちもどうして度々起こるのか、わからなかったのです。皆を信じておりましたから」
「では、なぜ、どのようにして毒が入ったのかわかったの?」
「執事の一人が管理を怠ったためです。誰が入れたのかは調査中です」

 アダルジーザは弟を見る。

「待ちなさい。誰が入れたのかわからないのにどうして、カトラリーが……」

 ドミツィアーノは部屋の隅にある小さい机に向かうと、木製のペーパーナイフを取り、姉に刃を見せる。

「姉上。テーブルにはこちらにお皿、そして左右に、このように順番にカトラリーを置きますよね?」
「そうね?」

 普段のように、置かれているナイフ、フォークを思い浮かべる。

「では、ナイフの裏に毒が塗られていたら?」
「えっ?」
「料理長やメイドたちには人目もあります、入れられません。ですが並べる前に塗られていたら……? 最初はほとんど感じないでしょう。でも、二口目に口を運んだ時に……」
「……なんてことなの!」
「突き詰めれば、最終的にどこに行き着くか姉上もお分かりでしょう……でも、わかっていてもここまで、嫌がらせに嫌味を言う程度で引き下がるしかできないのです……悔しいですが」

 歯噛みする弟に、アダルジーザは顔を覆い呻くしかない。
 ドミツィアーノは権力はあるが敵は少ない。
 逆に、女王であり、阿呆の王配(仮)を持つアダルジーザの方が敵は多い。
 その上、アダルジーザは王位を自分の産む予定のない子供ではなく、ドミツィアーノの長男、アルカンジェロに譲ると宣言している。
 女王をしいするより、青銀大公の息子を殺す方が楽と思う馬鹿は多いはずである。

「私のせいだわ……アルカンジェロが大きくなるまで、口にしてはいけなかったのに!」

 三人は重苦しく黙り込む……と、

 トントントン

ドアを叩く音がした。

「伯母上、お父様、お母様。アルカンジェロとエラルドとフルヴィア、ルーチェと共に参りました。お邪魔してもよろしいでしょうか?」
「入りなさいな」

 アダルジーザはすぐに切り替え、声をかけた。

「失礼します」

 はっきりとした声が響き、ウリッセが扉を開け、アルカンジェロは腕に小さい翼猫族(アーラガット)を抱き、その後ろを双子が手を繋いで入ってくる。

「改めまして、伯母上、お久しぶりでございます」
「あらあらあら……この子が、貴方のアルコバレーノちゃんね?」
「はい、ルーチェです」
「抱っこ大丈夫かしら?」
「はい。お利口なので大丈夫です」

 伯母のそばにソファを置き乗せる。

「ルーチェ? ご挨拶できる?」



 うなぁぁう!

(はじゅめましゅて、ルーチェにゃの!)



 すりっとアダルジーザに頬を寄せ挨拶する仔猫に、

「まぁ! お利口だわ! 可愛い子」
「そうなんです。伯母上。とっても賢いんです。エラルドとフルヴィアもちゃんとわかるんですよ?」
「そうなの? すごいわ」

喉を撫でるとゴロゴロと満足げな音が響く。

「それに、リボンもつけてくれているのね?」
「可愛いって言ってます。フルヴィアも一緒のが良いって」
「あらそれも素敵ね!」

 甥姪を実の子のように愛しているアダルジーザは、先程の話は一旦忘れ、まずは思う存分モフろうと心に決めたのだった。
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