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本編
閑話休題……メオくん、お手紙を書く
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メオのじいじは忙しい。
普段は騎士団の正装だが、時々可愛い格好をする。
「おーほほほ。とても素敵でしょう? 今年流行するレースとリボン、ドレスはマーメイド型が一番なのだけど……」
「じいじ……ローズちゃん、可愛い~!」
「まぁ! メオに言って貰えて、ローズちゃん嬉しいわ」
恐ろしいのは、ローズ様は物心ついた頃からのもので、もう、うん十年の芸歴(?)がある。
メオは一度、
「『じいじ』と『ローズちゃん』は別人? ちあうの?」
と聞いたが、首を傾げ、
「そうねぇ……基本的には一緒なのよ? でも、ドレスを着るとじいじはローズちゃんになるの。変かしら?」
と反対に聞かれ、首を振る。
メオにとって祖父も『ローズちゃん』も大好きであり、一緒なのである。
ある日、いつになく真剣な眼差しで帰ってきたじいじは、ばあばとと遊んでいたメオの元にやってくる。
「ファー、メオ。仕事でルーズリアに長期出張になった」
「長期?」
「あぁ。デビュタントで、パルスレット公爵が叛逆。ラルディーン公爵閣下のご令嬢を誘拐、そして子息のデュアンが瀕死の重傷」
「まぁ!」
ばあばは顔色を変える。
「であんちゃん?」
「デュアンお兄ちゃんだよ。今度二ヶ月、エディおじいちゃんのお家に遊びにくることになってたんだ。そして、もう1人のお姉ちゃんはちょっと怪我をしたけれど、無事だったって。お名前はリティちゃん」
「であんお兄ちゃんとリティちゃん。だいじょぶ、良かった」
「そうだなぁ? メオはお兄ちゃんやお姉ちゃんを心配できる、優しくてお利口だなぁ」
よしよしと頭を撫でる。
「じゃぁ、メオ。じいじが戻ってくるまで、ばあばと一緒にいてくれるかな? ラファパパも那智ママも来るけれど、メオは強いからばあばといられるかな?」
「あ、あい! じいじ。メオ、ばあばといっしょ!」
「賢いなぁ。メオ。やっぱりメオはじいじの一番だぞ」
抱きしめられメオは嬉しくなる。
しばらくして、じいじに会えなくなって、少し。
寂しくてぐずるようになったメオに、ラファが、
「メオ。じいじは忙しくて帰ってこられないけれど、代わりにばあばやパパにお手紙をくれた。今度、じいじのところに送るんだ。メオもお手紙書こうか?」
「メオも? うんっ!」
大きめの紙を渡され、クレヨンをプレゼントされていたメオは、一所懸命にじいじとお花の絵を描き、
『じいじ、だいしゅき』
と書いた。
その文字はあまり綺麗ではなかったものの、ちゃんとラファに教えて貰い、それをじいじの元に送る荷物の中にその手紙を入れて貰った。
荷物を受け取り、部屋の中で仕分けをしていると、白い封筒があった。
長男のラファの文字で、送り主がメオであることを書かれている。
ペーパーナイフで丁寧に開けると、中を広げ、息を飲む。
プレゼントしたクレヨンで一所懸命描いた絵は、お花と人が描いてある。
そして……。
「『じいじ、大好き』……」
涙が溢れそうになる。
下にラファの文字で、
『メオは良い子にしてるけれど、時々父さん会いたいとぐずる時があります。仕事が終わって帰ってきたら、甘えると思うよ。』
と書かれている。
自慢の息子と可愛い孫からの贈り物に、ウェイトは大切に封筒に納め、しまいこんだのだった。
「おじいさま……」
15歳になったメオは、祖父の部屋に入り、呆れた声で呟く。
「……何で額縁……」
「あぁ。メオに貰った、初めての手紙だからに決まっている」
「って、おじいさま。これは?」
「メオが、初めて遊んだおもちゃ」
「……じゃぁこれは?」
「メオの服を着せた、メオのお人形」
お人形はかなり精巧で、小さい頃のメオにそっくりである。
「何で……僕のものばかり……」
無表情と言うか、感情の起伏に乏しい少年が困惑したように呟く。
「メオが可愛いからに決まっているだろう! じいじはメオの為なら!」
「いい加減にしてよ! もう!」
「騎士の館をぶっ壊して、メオ用に改装しようとしないでよ! ウェイト兄様!」
カズール伯爵シエラシールとその娘婿フィアは幼馴染の暴走に、メオの将来を心配するのだった。
ちなみにメオは、シエラシールのひ孫の凛音の婚約者である。
シエラシールもひ孫が可愛い為、あれこれしたいが、一応、世界遺産級の歴史的価値のある自分の領地の建物が破壊寸前に、堪らず怒鳴り込んだのだった。
「修繕って言っただろ」
「あれは修繕とは言わない! じじ馬鹿もいい加減にしろ!」
「修繕は、僕たちでするから!」
言い合いをする祖父たちに、メオは小さくため息をつき、
「父さんがいつでも帰って来いって言うけど、おじいさま、ほっとくとぶっ飛んだことするし……困ったなぁ」
と、一応祖父の跡取りである父ラファの元に、いつ正式に養子に入れるかと考えたのだった。
普段は騎士団の正装だが、時々可愛い格好をする。
「おーほほほ。とても素敵でしょう? 今年流行するレースとリボン、ドレスはマーメイド型が一番なのだけど……」
「じいじ……ローズちゃん、可愛い~!」
「まぁ! メオに言って貰えて、ローズちゃん嬉しいわ」
恐ろしいのは、ローズ様は物心ついた頃からのもので、もう、うん十年の芸歴(?)がある。
メオは一度、
「『じいじ』と『ローズちゃん』は別人? ちあうの?」
と聞いたが、首を傾げ、
「そうねぇ……基本的には一緒なのよ? でも、ドレスを着るとじいじはローズちゃんになるの。変かしら?」
と反対に聞かれ、首を振る。
メオにとって祖父も『ローズちゃん』も大好きであり、一緒なのである。
ある日、いつになく真剣な眼差しで帰ってきたじいじは、ばあばとと遊んでいたメオの元にやってくる。
「ファー、メオ。仕事でルーズリアに長期出張になった」
「長期?」
「あぁ。デビュタントで、パルスレット公爵が叛逆。ラルディーン公爵閣下のご令嬢を誘拐、そして子息のデュアンが瀕死の重傷」
「まぁ!」
ばあばは顔色を変える。
「であんちゃん?」
「デュアンお兄ちゃんだよ。今度二ヶ月、エディおじいちゃんのお家に遊びにくることになってたんだ。そして、もう1人のお姉ちゃんはちょっと怪我をしたけれど、無事だったって。お名前はリティちゃん」
「であんお兄ちゃんとリティちゃん。だいじょぶ、良かった」
「そうだなぁ? メオはお兄ちゃんやお姉ちゃんを心配できる、優しくてお利口だなぁ」
よしよしと頭を撫でる。
「じゃぁ、メオ。じいじが戻ってくるまで、ばあばと一緒にいてくれるかな? ラファパパも那智ママも来るけれど、メオは強いからばあばといられるかな?」
「あ、あい! じいじ。メオ、ばあばといっしょ!」
「賢いなぁ。メオ。やっぱりメオはじいじの一番だぞ」
抱きしめられメオは嬉しくなる。
しばらくして、じいじに会えなくなって、少し。
寂しくてぐずるようになったメオに、ラファが、
「メオ。じいじは忙しくて帰ってこられないけれど、代わりにばあばやパパにお手紙をくれた。今度、じいじのところに送るんだ。メオもお手紙書こうか?」
「メオも? うんっ!」
大きめの紙を渡され、クレヨンをプレゼントされていたメオは、一所懸命にじいじとお花の絵を描き、
『じいじ、だいしゅき』
と書いた。
その文字はあまり綺麗ではなかったものの、ちゃんとラファに教えて貰い、それをじいじの元に送る荷物の中にその手紙を入れて貰った。
荷物を受け取り、部屋の中で仕分けをしていると、白い封筒があった。
長男のラファの文字で、送り主がメオであることを書かれている。
ペーパーナイフで丁寧に開けると、中を広げ、息を飲む。
プレゼントしたクレヨンで一所懸命描いた絵は、お花と人が描いてある。
そして……。
「『じいじ、大好き』……」
涙が溢れそうになる。
下にラファの文字で、
『メオは良い子にしてるけれど、時々父さん会いたいとぐずる時があります。仕事が終わって帰ってきたら、甘えると思うよ。』
と書かれている。
自慢の息子と可愛い孫からの贈り物に、ウェイトは大切に封筒に納め、しまいこんだのだった。
「おじいさま……」
15歳になったメオは、祖父の部屋に入り、呆れた声で呟く。
「……何で額縁……」
「あぁ。メオに貰った、初めての手紙だからに決まっている」
「って、おじいさま。これは?」
「メオが、初めて遊んだおもちゃ」
「……じゃぁこれは?」
「メオの服を着せた、メオのお人形」
お人形はかなり精巧で、小さい頃のメオにそっくりである。
「何で……僕のものばかり……」
無表情と言うか、感情の起伏に乏しい少年が困惑したように呟く。
「メオが可愛いからに決まっているだろう! じいじはメオの為なら!」
「いい加減にしてよ! もう!」
「騎士の館をぶっ壊して、メオ用に改装しようとしないでよ! ウェイト兄様!」
カズール伯爵シエラシールとその娘婿フィアは幼馴染の暴走に、メオの将来を心配するのだった。
ちなみにメオは、シエラシールのひ孫の凛音の婚約者である。
シエラシールもひ孫が可愛い為、あれこれしたいが、一応、世界遺産級の歴史的価値のある自分の領地の建物が破壊寸前に、堪らず怒鳴り込んだのだった。
「修繕って言っただろ」
「あれは修繕とは言わない! じじ馬鹿もいい加減にしろ!」
「修繕は、僕たちでするから!」
言い合いをする祖父たちに、メオは小さくため息をつき、
「父さんがいつでも帰って来いって言うけど、おじいさま、ほっとくとぶっ飛んだことするし……困ったなぁ」
と、一応祖父の跡取りである父ラファの元に、いつ正式に養子に入れるかと考えたのだった。
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