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番外編を集めてる^_^ ねこネコ(=^ェ^=)
番外編……彩映とボク
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ボク……えっと、普段はオレって言っているけど、本当はまだボクが言いやすいんだよね。
改めて、ボクは千夏。
《ちなつ》でも《ちか》でもない。
ボクには父さんと母さんと、弟の風深、そして、一番大事な彩映がいる。
父さんは黙ってるとかっこいいんだけど、母さんの前ではデレデレ甘々。
まぁ、父さんは小さい頃から母さんが好きで、他の人には目も向けなかったらしい。
しかも母さんをいかに愛でるか、いかに可愛く装うかを研究するためだけに騎士の勉強をしつつ、遠縁のレイル家のデザイナー姉妹に頼み込み、型紙の起こし方、縫製、初歩のデザインを学んだ。
そして、ボクの伯母さんになる、セイ伯父さんの奥さんには……。
「なんで、パパはボクにこう言うパジャマ着せたがるんだろう……」
絶望的な気持ちで、ベッドの上に並べた夜着を見下ろした。
一応ボクは、この年の男の子にしては高い方。
ほら、成長期になるまで、同年代の女の子の方が大きいって言うものね?
それに、彩映の兄だったアイツは、ボクより一つ上だけど上にも横にも大きかった。
アイツ……ちょっとワガママだったけど、悪い子じゃなかった。
頭良いと思ってた。
おじいちゃんになる彗おじさんに持ってる色似てたから、ちゃんとこれは良い、これはダメって教えてたらよかったと思うんだ……妹はあのオバサンに似てバカだけど。
うん、あのオバサン……ものすっごく嫌い。
パパは人を傷つけるとか、武器を持つ意味をこれからきちんと理解しなさいって言ってた。
小さい頃の、おもちゃの取り合いのケンカのようなものじゃない。
血は出るし痛い。
悪口も人の心を傷つける。
それを理解しないまま大きくなったらダメ。
特に彩映は一方的に手をあげられたり、言葉の刃をこれでもかってふるわれた。
愛情も与えられなかった。
抜け殻みたいになった。
記憶もなくなって……ボクを初めて会う、知らない人のように見た。
哀しい……苦しい……。
それに、もう絶対泣かせない。
ボクが一生そばにいるって決めた……んだけど……。
「これは……ないよね?」
情けなくなった。
白いモコモコふわふわの着ぐるみパジャマ。
ちなみに、同じ色のフードには丸いつのが2本。
……これってヒツジ?
これを着なさいって言うのかな……ボク、今度王宮にあるヴィクトール大学院附属の基礎研究科……初等科に入るんだけど……。
一応、この基礎研究科って進学クラスで、ボクは医術を学ぶつもりなんだけど……。
父さんだって昔はよく着せ替えさせられて……微妙だったって言ってたのに……。
しばらく考えたけど、昼の服で寝るのも嫌だなぁ……寝るだけだしいいか。
横になって寝ていると、ボクの部屋の扉が開いたみたい。
みたいというのは……しょっちゅう父さんが部屋に来るから。
子煩悩で母さんを愛してる父さんは、この国でも有名。
いつものこと……と思っていると、
すんっ、すんっ……と、鼻をすする声が聞こえてパッと目を開けた。
お気に入りのうさぎを腕に抱いた彩映が、ベッドのそばに歩いてきてる。
「ちなちゃん……ふえぇ……」
「どうしたの?」
ボクは慌てて起き上がる。
あぁ、ボクはものすっごく彩映の涙に弱いんだ。
耳が聞こえない……ボクの声が伝わらないのがとってももどかしい。
手を伸ばしてギュッと抱きしめる。
ボクと同じようなパジャマを着てるのに、全身冷え切ってて、震えてる。
慌ててベッドに寝かせてボクごと毛布と布団に包む。
「黒い……女の人……の夢……」
抱きしめた腕の中、怯え切った震える声。
あぁぁ……あのオバサンの夢……。
「大丈夫だよ。父さんと母さんがいる。そんなオバサン来るなってボクが追い払うから!」
聞こえてないのは分かってる。
でも、君には伝えないと……。
耳元で何度も繰り返す。
「大丈夫……? 本当?」
伝わった?
「うん、本当!」
大好きな彩映……可愛い彩映。
ボクが絶対、守る。
~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~
「おーい……起きなさい。千夏」
「……おはよう、父さん。おやすみなさい……」
「千夏、朝練は?」
「ボク、今日は嫌」
オレ……千夜が毎朝苦労していることがある。
オレには二人の息子と可愛い娘がいる。
そのうち長男が……
「起きなさいって。遅刻するよ」
「いい……ボク、彩映と寝る……」
「起きろって、それに彩映はぬいぐるみじゃない。ぎゅーぎゅー抱くんじゃありません!」
「やだぁ……彩映はボクの。パパにもあげない」
長男の寝起きが非常に悪い。
ついでに、寝ぼけてるのか、本心か……いや、これは本心だな。
しっかり目が覚めたら、自分のことは《オレ》だもんな……。
「今のうちに起きなさい。後でなんでちゃんと起こしてくれなかったのって言われても、父さん知らないからね?」
「うん……いい」
「本当にいいんだね?」
「……」
くぅくぅ……
寝息を立てている可愛い子供達に、まぁ、いいかと毛布を直したのだった。
その後、ヒツジのパジャマを着て熟睡中の二人の映像を見て身悶える千夏がいたのだった。
一応、オレや日向夏が撮ったものではないことだけ断っておく。
改めて、ボクは千夏。
《ちなつ》でも《ちか》でもない。
ボクには父さんと母さんと、弟の風深、そして、一番大事な彩映がいる。
父さんは黙ってるとかっこいいんだけど、母さんの前ではデレデレ甘々。
まぁ、父さんは小さい頃から母さんが好きで、他の人には目も向けなかったらしい。
しかも母さんをいかに愛でるか、いかに可愛く装うかを研究するためだけに騎士の勉強をしつつ、遠縁のレイル家のデザイナー姉妹に頼み込み、型紙の起こし方、縫製、初歩のデザインを学んだ。
そして、ボクの伯母さんになる、セイ伯父さんの奥さんには……。
「なんで、パパはボクにこう言うパジャマ着せたがるんだろう……」
絶望的な気持ちで、ベッドの上に並べた夜着を見下ろした。
一応ボクは、この年の男の子にしては高い方。
ほら、成長期になるまで、同年代の女の子の方が大きいって言うものね?
それに、彩映の兄だったアイツは、ボクより一つ上だけど上にも横にも大きかった。
アイツ……ちょっとワガママだったけど、悪い子じゃなかった。
頭良いと思ってた。
おじいちゃんになる彗おじさんに持ってる色似てたから、ちゃんとこれは良い、これはダメって教えてたらよかったと思うんだ……妹はあのオバサンに似てバカだけど。
うん、あのオバサン……ものすっごく嫌い。
パパは人を傷つけるとか、武器を持つ意味をこれからきちんと理解しなさいって言ってた。
小さい頃の、おもちゃの取り合いのケンカのようなものじゃない。
血は出るし痛い。
悪口も人の心を傷つける。
それを理解しないまま大きくなったらダメ。
特に彩映は一方的に手をあげられたり、言葉の刃をこれでもかってふるわれた。
愛情も与えられなかった。
抜け殻みたいになった。
記憶もなくなって……ボクを初めて会う、知らない人のように見た。
哀しい……苦しい……。
それに、もう絶対泣かせない。
ボクが一生そばにいるって決めた……んだけど……。
「これは……ないよね?」
情けなくなった。
白いモコモコふわふわの着ぐるみパジャマ。
ちなみに、同じ色のフードには丸いつのが2本。
……これってヒツジ?
これを着なさいって言うのかな……ボク、今度王宮にあるヴィクトール大学院附属の基礎研究科……初等科に入るんだけど……。
一応、この基礎研究科って進学クラスで、ボクは医術を学ぶつもりなんだけど……。
父さんだって昔はよく着せ替えさせられて……微妙だったって言ってたのに……。
しばらく考えたけど、昼の服で寝るのも嫌だなぁ……寝るだけだしいいか。
横になって寝ていると、ボクの部屋の扉が開いたみたい。
みたいというのは……しょっちゅう父さんが部屋に来るから。
子煩悩で母さんを愛してる父さんは、この国でも有名。
いつものこと……と思っていると、
すんっ、すんっ……と、鼻をすする声が聞こえてパッと目を開けた。
お気に入りのうさぎを腕に抱いた彩映が、ベッドのそばに歩いてきてる。
「ちなちゃん……ふえぇ……」
「どうしたの?」
ボクは慌てて起き上がる。
あぁ、ボクはものすっごく彩映の涙に弱いんだ。
耳が聞こえない……ボクの声が伝わらないのがとってももどかしい。
手を伸ばしてギュッと抱きしめる。
ボクと同じようなパジャマを着てるのに、全身冷え切ってて、震えてる。
慌ててベッドに寝かせてボクごと毛布と布団に包む。
「黒い……女の人……の夢……」
抱きしめた腕の中、怯え切った震える声。
あぁぁ……あのオバサンの夢……。
「大丈夫だよ。父さんと母さんがいる。そんなオバサン来るなってボクが追い払うから!」
聞こえてないのは分かってる。
でも、君には伝えないと……。
耳元で何度も繰り返す。
「大丈夫……? 本当?」
伝わった?
「うん、本当!」
大好きな彩映……可愛い彩映。
ボクが絶対、守る。
~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~
「おーい……起きなさい。千夏」
「……おはよう、父さん。おやすみなさい……」
「千夏、朝練は?」
「ボク、今日は嫌」
オレ……千夜が毎朝苦労していることがある。
オレには二人の息子と可愛い娘がいる。
そのうち長男が……
「起きなさいって。遅刻するよ」
「いい……ボク、彩映と寝る……」
「起きろって、それに彩映はぬいぐるみじゃない。ぎゅーぎゅー抱くんじゃありません!」
「やだぁ……彩映はボクの。パパにもあげない」
長男の寝起きが非常に悪い。
ついでに、寝ぼけてるのか、本心か……いや、これは本心だな。
しっかり目が覚めたら、自分のことは《オレ》だもんな……。
「今のうちに起きなさい。後でなんでちゃんと起こしてくれなかったのって言われても、父さん知らないからね?」
「うん……いい」
「本当にいいんだね?」
「……」
くぅくぅ……
寝息を立てている可愛い子供達に、まぁ、いいかと毛布を直したのだった。
その後、ヒツジのパジャマを着て熟睡中の二人の映像を見て身悶える千夏がいたのだった。
一応、オレや日向夏が撮ったものではないことだけ断っておく。
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