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『クラフトショップ モリス』2
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「あ、ここ使う?」
「ううん。……使うってどういうこと?」
京が女の子に尋ねると教えてくれた。
「ここ、会員の人ならだれでも使えるスペースなんだ。会員カード持ってる?」
京は首を横にふった。すると女の子はさらに教えてくれた。
「会員カード自体はタダでつくれるよ。でもタダの会員カードだと、ここを使うたびに一回五百円払わないといけなんだ。だから何回もここ使うんなら、お金払うほうの会員証がお得だよ」
「そうなんだ。でも、今日お金持ってきてない」
「え、なにか買いにきたんじゃないの?」
「ううん、最近この辺に引っ越してきたから、探検してたの。そしたらここがあって……お母さんがパッチワークするから、どんなお店が見て教えてあげようと思って」
京の言葉を聞いた女の子は「へえ」と、興味を持ったようだった。
「パッチワークってすごく時間かかるよね? 布の模様も組み合わせるのセンスいるし。すごいねっ」
まるで自分がほめられたかのようで、京はとてもうれしかった。
「そうだ、とりあえず会員にだけなっとけば? そしたらいつでもこのスペース使えるし、途中からでもお金かかる会員になれるからさ」
女の子は針を針山にさして、立ち上がった。
「行こう」
女の子が先に階段を下りた。しかし京はこの店の会員になる気も、なにかをつくるつもりもなかった。断ろうと口を開きかけたのと同時に、女の子が「こっちこっち。早く」と言った。断るタイミングをなくした京は、仕方なく女の子について行った。女の子はレジにいる店員さんに声をかけている。
「高木さーん。会員カードの申しこみしたいんですけどー」
高木さんと呼ばれた、お団子ヘアでふくよかな女性がふり返った。
「あら、ほうかちゃん。でもほうかちゃんの会員カードの更新、まだ先よ?」
「わたしじゃないの。この子」
京を見た高木さんは「ああ、そうなのね」と言って、レジの下から会員登録の紙を出した。京は仕方なくレジにむかう。
「これに名前と住所書くんだよ」
京は結局紙に名前と住所を書いた。
「小川……きょう?」
「けいって読むの」
「そうなんだ。わたしは土井ほうか。よろしくね」
「よろしく……」
土井さんに右手を差し出されたので、京は仕方なくあくしゅした。店員さんから濃い緑色と白の会員カードを渡される。
「これでオッケー。会員になっておくと、商品もちょっと安くなるんだよ」
女の子はにっこり笑った。京は会員カードを見つめる。もうこなければいい、それだけ。会員カードをジーンズのポケットにつっこむ。
「わたし、帰る」
「オッケー、わかった。それじゃあね」
土井さんは京に手をふった。京も手をふり返して、店を出た。京は別の道を歩いて、探検を続けた。
「ううん。……使うってどういうこと?」
京が女の子に尋ねると教えてくれた。
「ここ、会員の人ならだれでも使えるスペースなんだ。会員カード持ってる?」
京は首を横にふった。すると女の子はさらに教えてくれた。
「会員カード自体はタダでつくれるよ。でもタダの会員カードだと、ここを使うたびに一回五百円払わないといけなんだ。だから何回もここ使うんなら、お金払うほうの会員証がお得だよ」
「そうなんだ。でも、今日お金持ってきてない」
「え、なにか買いにきたんじゃないの?」
「ううん、最近この辺に引っ越してきたから、探検してたの。そしたらここがあって……お母さんがパッチワークするから、どんなお店が見て教えてあげようと思って」
京の言葉を聞いた女の子は「へえ」と、興味を持ったようだった。
「パッチワークってすごく時間かかるよね? 布の模様も組み合わせるのセンスいるし。すごいねっ」
まるで自分がほめられたかのようで、京はとてもうれしかった。
「そうだ、とりあえず会員にだけなっとけば? そしたらいつでもこのスペース使えるし、途中からでもお金かかる会員になれるからさ」
女の子は針を針山にさして、立ち上がった。
「行こう」
女の子が先に階段を下りた。しかし京はこの店の会員になる気も、なにかをつくるつもりもなかった。断ろうと口を開きかけたのと同時に、女の子が「こっちこっち。早く」と言った。断るタイミングをなくした京は、仕方なく女の子について行った。女の子はレジにいる店員さんに声をかけている。
「高木さーん。会員カードの申しこみしたいんですけどー」
高木さんと呼ばれた、お団子ヘアでふくよかな女性がふり返った。
「あら、ほうかちゃん。でもほうかちゃんの会員カードの更新、まだ先よ?」
「わたしじゃないの。この子」
京を見た高木さんは「ああ、そうなのね」と言って、レジの下から会員登録の紙を出した。京は仕方なくレジにむかう。
「これに名前と住所書くんだよ」
京は結局紙に名前と住所を書いた。
「小川……きょう?」
「けいって読むの」
「そうなんだ。わたしは土井ほうか。よろしくね」
「よろしく……」
土井さんに右手を差し出されたので、京は仕方なくあくしゅした。店員さんから濃い緑色と白の会員カードを渡される。
「これでオッケー。会員になっておくと、商品もちょっと安くなるんだよ」
女の子はにっこり笑った。京は会員カードを見つめる。もうこなければいい、それだけ。会員カードをジーンズのポケットにつっこむ。
「わたし、帰る」
「オッケー、わかった。それじゃあね」
土井さんは京に手をふった。京も手をふり返して、店を出た。京は別の道を歩いて、探検を続けた。
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