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ほうかちゃんのチャレンジ
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金曜日となり、今週の学校生活も終わろうとしていた。六限目が終わり、帰ろうとろうかを歩いていたときに、後ろから肩をつつかれた。ふり返るとそこには、土井さん――近ごろはほうかちゃん、京ちゃんと呼び合っている――がいた。
「京ちゃん、これ読んで」
ほうかちゃんが渡してきたのは手紙だった。京が受けとるとほうかちゃんは「それじゃあね」と言って、帰ってしまった。京は手紙の中身が気になったが、家でゆっくり読むことにして、ジーンズのポケットに入れた。
家に帰ってきた京は、自分の部屋でほうかちゃんがくれた手紙を読むことにした。ベッドに腰かける。
『京ちゃんへ
先週は楽しかったね。もしよかったら明日も『モリス』でおしゃべりしない? もし用事があったりしてだめだったら、下のチャットIDか、電話番号に連絡してくれるとうれしいです』
手紙の下のほうには有名なチャットアプリのIDと電話番号が書かれている。京はお母さんに、明日家族で出かけないか確認すると特にない、と言われた。
またほうかちゃんと話せると思うと、京は土曜日の午後が楽しみになった。
次の日の土曜日。『モリス』にむかう。まだほうかちゃんはきていなかった。京は先週と同じ席に座り、カモフラージュ用のビーズを出して、ほうかちゃんを待つ。
ほうかちゃんは、あのハリネズミを渡せたのだろうか。ほうかちゃんがきたら聞いてみよう。
しばらくすると、階段から足音がした。ほうかちゃんだ。
「あ、京ちゃん。遅くなってごめんね」
「ううん、だいじょうぶ」
ほうかちゃんはいつもの席に座ると、手提げかばんから裁ほう箱を出した。
「あのハリネズミ、お母さんにもう渡したの?」
「うん。きのうがお母さんの誕生日だったから。喜んでくれたよ。目がかわいいって言ってくれたんだ。ありがとう、京ちゃんがビーズくれたおかげ」
「そんなことないよ。あのハリネズミ、すごくかわいかったもん。今度はなにつくるの?」
京がそう尋ねると、ほうかちゃんは切りとったフェルトを見せてくれた。さまざまな形の黄色、白、赤のフェルトがある。
「これなに?」
京がそう尋ねると、ほうかちゃんは裁ほう箱の中から、四つ折りにした紙を出して「こんなの」と言いながら見せてくれた。そこにはショートケーキが描かれていた。
「かわいいっ。でもこんなにフェルトがいるの?」
「今回はね、立体的につくってみようと思ってて。いろんなものつくれるようになって、大人になったら、自分のお店もちたいんだ」
ほうかちゃんはきらきらした笑顔で語った。京はおしゃれなお店に、ほうかちゃんが作ったフェルトのぬいぐるみやマスコットが並んだ様子を想像する。
「すごくすてきだと思う」
「えへへ、ありがとう。だからがんばりたくって」
ほうかちゃんは針に糸をとおして、フェルト同士をぬいはじめた。
「まずはね、ケーキつくってみようかなーって。ほら、いろんな種類があって、おいしそうだしかわいいでしょ? それで大きいのがつくれるようになってから、小さいのをつくってチャームにしようかなあって」
京は手提げかばんに、小さなケーキがゆれているのを想像した。
「絶対かわいい」
「そう言ってもらえると、自信になるよ。ありがとう」
京はもう一度ショートケーキの紙を見せてもらう。いろんな方向やフェルトの形が描かれていて、よく見ると何回も消しゴムを使ったあとがある。ほうかちゃんは、たくさん考えたのだ。
京は消しあとをなぞった。でこぼこしているが、それだけほうかちゃんががんばったのだと思うと、彼女のことを素直にすごいと感じた。ほうかちゃんを見ると、にこにこしながら手を動かしている。
京自身も、前はあんな風に笑いながらビーズしていたのだろうか。
ビーズを一つぶ手にとって、いろんな方向からながめる。そのきらめきはなんとなく以前よりきれいに思えた。
「京ちゃん、これ読んで」
ほうかちゃんが渡してきたのは手紙だった。京が受けとるとほうかちゃんは「それじゃあね」と言って、帰ってしまった。京は手紙の中身が気になったが、家でゆっくり読むことにして、ジーンズのポケットに入れた。
家に帰ってきた京は、自分の部屋でほうかちゃんがくれた手紙を読むことにした。ベッドに腰かける。
『京ちゃんへ
先週は楽しかったね。もしよかったら明日も『モリス』でおしゃべりしない? もし用事があったりしてだめだったら、下のチャットIDか、電話番号に連絡してくれるとうれしいです』
手紙の下のほうには有名なチャットアプリのIDと電話番号が書かれている。京はお母さんに、明日家族で出かけないか確認すると特にない、と言われた。
またほうかちゃんと話せると思うと、京は土曜日の午後が楽しみになった。
次の日の土曜日。『モリス』にむかう。まだほうかちゃんはきていなかった。京は先週と同じ席に座り、カモフラージュ用のビーズを出して、ほうかちゃんを待つ。
ほうかちゃんは、あのハリネズミを渡せたのだろうか。ほうかちゃんがきたら聞いてみよう。
しばらくすると、階段から足音がした。ほうかちゃんだ。
「あ、京ちゃん。遅くなってごめんね」
「ううん、だいじょうぶ」
ほうかちゃんはいつもの席に座ると、手提げかばんから裁ほう箱を出した。
「あのハリネズミ、お母さんにもう渡したの?」
「うん。きのうがお母さんの誕生日だったから。喜んでくれたよ。目がかわいいって言ってくれたんだ。ありがとう、京ちゃんがビーズくれたおかげ」
「そんなことないよ。あのハリネズミ、すごくかわいかったもん。今度はなにつくるの?」
京がそう尋ねると、ほうかちゃんは切りとったフェルトを見せてくれた。さまざまな形の黄色、白、赤のフェルトがある。
「これなに?」
京がそう尋ねると、ほうかちゃんは裁ほう箱の中から、四つ折りにした紙を出して「こんなの」と言いながら見せてくれた。そこにはショートケーキが描かれていた。
「かわいいっ。でもこんなにフェルトがいるの?」
「今回はね、立体的につくってみようと思ってて。いろんなものつくれるようになって、大人になったら、自分のお店もちたいんだ」
ほうかちゃんはきらきらした笑顔で語った。京はおしゃれなお店に、ほうかちゃんが作ったフェルトのぬいぐるみやマスコットが並んだ様子を想像する。
「すごくすてきだと思う」
「えへへ、ありがとう。だからがんばりたくって」
ほうかちゃんは針に糸をとおして、フェルト同士をぬいはじめた。
「まずはね、ケーキつくってみようかなーって。ほら、いろんな種類があって、おいしそうだしかわいいでしょ? それで大きいのがつくれるようになってから、小さいのをつくってチャームにしようかなあって」
京は手提げかばんに、小さなケーキがゆれているのを想像した。
「絶対かわいい」
「そう言ってもらえると、自信になるよ。ありがとう」
京はもう一度ショートケーキの紙を見せてもらう。いろんな方向やフェルトの形が描かれていて、よく見ると何回も消しゴムを使ったあとがある。ほうかちゃんは、たくさん考えたのだ。
京は消しあとをなぞった。でこぼこしているが、それだけほうかちゃんががんばったのだと思うと、彼女のことを素直にすごいと感じた。ほうかちゃんを見ると、にこにこしながら手を動かしている。
京自身も、前はあんな風に笑いながらビーズしていたのだろうか。
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