【一旦完結】回想モブ転生~ヒロインの過去回想に登場するモブに転生した~

ファスナー

文字の大きさ
7 / 56
過去回想のモブ編

第07話 運命の日

しおりを挟む

コンコンッ

早朝、村長宅をノックする音が聞こえた。
村長が玄関を開けると、中肉中背の行商人の恰好をした男が立っていた。

ニコニコと人の好さそうな笑顔を浮かべるその男は村長に挨拶をする。

「村長、ただいま戻りました。
 司祭様から手紙を預かっています。こちらをどうぞ。」
そう言って男は懐から取り出した3通の手紙を村長に手渡した。

「リュウか。良く無事に戻って来てくれた。
 道中は特に問題はなかったか?」
その男、リュウから手紙を受け取りながら村長は問いかけた。

「そうですね。以前よりも魔獣が頻発している気がします。
 司祭様も去年来た時よりも遭遇頻度が高いと嘆いていました。」
リュウは顎鬚を触りながら、記憶を探るように語った。

「そうか。やはりお前もそう感じたか。
 周囲が騒がしくなってきているようでな。
 どうやら魔獣の活動が活発化ているようだと報告を受けている。」

村長から驚きの報告にリュウは狼狽した。
そのリュウは元々このイーレ村の村人だった。
だが、頭が良く武力にも優れていた彼は街にでていった。
街で商人のイロハを教わり、今では街や村を渡り歩く行商人をしており、時折この村にも帰ってきている。
村の外に出て、イーレ村のありがたさを身に染みて知っているリュウは魔獣の活発化と聞いてこの村がいつか襲われるのではないかと不安になった。

「大丈夫なのですか?」
「まぁ問題無かろう。三年前から備えてきたからな。」
「三年前?」
何のことか分かっていないリュウは村長に尋ねた。

「あれ、知らないか?
 三年前に神託を受けた子どもがいると以前話したと思うが。」
「えっ。あれは本当の事なのですか?」

リュウは以前に神託の話を聞いてはいた。
だが、敬虔な信徒でないリュウは話半分に聞き流しており、あまり信じてはいなかった。

「さあ、どうだろな。
 三年前の時点では神託の話は子どもが大人の気を引きたくてついた嘘なのだろうと思ってた。何せ神託を受けたのは7歳の孤児だったからな。
 だが、ここ最近の魔獣の活発化を見ると神託の出来事は本当になるんじゃないかと思い始めたよ。」
村長の言葉にリュウは驚いていた。

「神託の噂は本当だったのですか。
 こっちでは田舎の村人があまりの娯楽の無さにごっこ遊びを始めたなんて笑いのネタにされていましたよ。」

「まぁ、普通であれば一笑に付されても仕方ない話だ。
 ただ、その神託を受けた子どもというのが優秀過ぎてな。
 神託を受けた後に、村中の子ども達を巻き込んで魔力トレーニングなるものを始めてしまった。
 それが遊び程度なら笑ってられたんだが成果を出してしまってな。」

リュウは怪訝な表情を浮かべた。

「魔法を習ってもいない7歳の子どもですよね?魔力というのは魔法を何度も繰り返し使うことで増えるものですよね?増えると言っても微量でしょ?」

「リュウの言いたいことは分かる。
 が、どうやらしれだけじゃなかったらしい。私もトレーニングを体験して魔力が飛躍的に伸びたよ。
 そんなすごい成果を出した麒麟児の言葉を冗談だと切り捨てることも出来なくなって最近は気が気じゃないわ。
 っと、いかん。つい愚痴になってしまったな。
 報告が他に無ければ下がって構わんぞ。」
リュウはまだ納得がいかなそうな顔をしながらも村長から差し出された銀貨3枚を受け取ると、村長宅から出て行った。

三年前、エドワードが神託だと偽ってダリウスに伝えたイーレ村襲撃の話。
ダリウスはその話を父親に伝えた。
だが、ダリウスたちは当時7歳、空想やごっこ遊びに熱心な年頃だ。
その話を聞いた村長や他の大人たちは話半分に子供のかわいい妄想話だと聞いていた。

だが、神託を受けたというエドワードは色々とやらかしてくれた。
ダリウスや村の子ども達を巻き込んで魔力強化などと謳いトレーニングを始めた。
すると、半年もしないうちに子ども達は飛躍的に魔力が増えた。

ダリウスに言われて子ども達を簡易鑑定球で測定したら、鑑定の儀を済ませた10歳の子ども達の魔力量が10倍以上に伸びていたのだ。

そこからは早かった。魔力強化のトレーニングの話はすぐに大人たちに広まった。
そして、エドワード達に教わりながらトレーニングをこなしていくと今までいくらやっても伸びなかった魔力が一気に2~3倍に増えたという報告が続々と出てきた。

村長も息子であるダリウスから魔力強化のトレーニングを受け、魔力量が飛躍的に向上したことを実感した。

また、ダリウスはその神託をきっかけに変わった。
以前は遊んでばかりで剣の稽古なんかはサボることが多かった。
しかし、その頃から積極的に稽古に参加した。
また、稽古が無い時には孤児院に通って、エドワードと魔導書を読んだり研究したりと忙しくするようになった。

ただの気まぐれだろうと思っていたら、1月経っても2月経っても一向に辞める気配が無い。むしろ、ダリウスに鬼気迫る気配を感じだほどだ。

その頃から、村長は神託の話は本当に起こりうる未来なのではないかと思うようになる。
そして、エドワードとダリウスは形ある成果をだした。
魔力強化のノウハウの確立である。今まで、魔力は魔法を使うことと実践経験によって増幅すると思われていた。だが、それとは違うアプローチで魔力増加に成功というのだ。

その話を聞いた時、村長は驚愕した。
そして、実際に自身で試してみると、すぐに効果が現れる。今まで10発しか撃てなかった<ファイアアロー>が15発撃てるようになっていた。

村長は魔力強化のトレーニングを日々の訓練に組み込んだ。
最初こそ反発する村人も現れたが、文字通り実力で示したことで以降は大人しくなった。

「魔術を学んだり研究を続けているそうだが、この村で学ぶにもそろそろ限界だったろう。なんにしても間に合いそうでよかった。」
村長は独り言ちて、先ほど受け取った手紙を見る。手紙には魔法学院の推薦状がはいっていた。

       ***

魔獣が頻発するようになって1週間後、いよいよその時が迫ってきていた。
そう、魔人の襲撃である。

「なぁ、エド。やっぱ神託は正しかったんだな。」
僕とダリウスがいるのは村の見張り台。

10歳になると魔獣が村を襲ってこないよう見張りの仕事が割り振られる。
今日は僕とダリウスが見張りの当番になっていた。

「ああ、そうだね。だけど、神託通りになんかさせないよ。
 僕がこの村を守るからね。」

僕は敢えて思っていることを口にした。
前世でも今世でも臆病な僕はそうやって自らを追い込むことで奮い立たせている。

「気負うなって。俺もいる。
 それにこの3年、この為に頑張ってきただろうが。」

ダリウスはそう言ってニッと笑う。
ああ、そうだ。僕達はこの3年頑張ってきた。
1人じゃ到底無理だった。
ダリウスの助けがあったからこそ、力をつけることができた。

「やってきたか。」
ダリウスの言葉にハッとなる。
村の入口から約3km先に移動してくる者達が居た。

僕達と同じに人間のような見た目をしている男が3人。
彼らはいずれも1本の角が生えている。
間違いない。彼らが魔人だ。
そして、彼らの背後にゴブリンやオーク等100を超える魔獣を従えていた。

カンカンカンカン
警鐘を鳴らし、敵が来たことを村中に知らせる。

「何があった。」
直ぐに村の男達がやってくる。

「敵です。魔人と思われる人影3、背後にはゴブリンやオークなどの魔獣もいます。
 村長に連絡して広場に村中に集めてください。」

「了解した。お前らは見張りを交代して広場にこい。証言してもらう。」

「はい。わかりました。」
「わかった。」
僕とダリウスは首肯した。

と、その時、魔人たちと村との距離が残り500mになったところでとまった。
いや、一人の魔人だけがさらに村に近寄ってきた。

「聞け、人間よ。我ら魔族はこれからお前たちの村を襲う。
 だが我も悪魔ではない。1時間だけ時間をやろう。
 臆病者は逃げよ。追わずに見逃してやろう。
 逆に愚か者は我らに挑んでくるがいい。絶望をくれてやる。」

口上を述べたのは魔人アナハイムで間違いないだろう。
ゲームの時でもそうだったが、魔人アナハイムは常に強者との戦いを望むバトルジャンキーだ。

「やっぱりだ。これはヤバいんじゃねーか。」
見張りを交代して広場に向かっている途中でダリウスが何かに気付いた様子で呟いた。

「どういうこと?」
僕は思わずダリウスに尋ねていた。

「お前から聞いてた魔人アナハイムってやつは強者大好きなバトルジャンキーなんだよな?」

「うん、さっきの口上もアナハイムの性格が出てる感じだったよね。」

「だよな。俺もそう思った。
 そう考えるとおかしな点がある。お前が受けた神託の内容だ。
 敵の言うことを真に受ける気はないが、それでも皆殺しにあうとは思えんぜ。
 ?」
ダリウスの言葉に僕はハッとなった。
今まで何の疑問も思わずただ魔人の襲撃だと思っていたが、ゲーム中では結果しか聞かされていない。

先ほどの口上が正しいと仮定して、イーレ村は老若男女あわせて200人ほどの村だ。
1時間の猶予の間に逃げ出せば、何人かは生き残るはず。
それなのにゲームではレインを残して全員が死亡していると説明されている。

イーレ村襲撃の理由についてもあまり語られていない。
唯一、イーレ村襲撃の事が語られるのはレインのノーマルルート。
作中では『氷のレイン』と魔人アナハイムが対峙し決闘する場面で、復讐に燃えるレインが魔人アナハイムに昔語りをしてアナハイム本人の口から語られた言葉のみだ。

「なぜ私だけ生かしたの?」

「我は常に強者との闘争を欲している。
 当時のことは覚えてはいないが、我は村を襲撃した時に我という存在を宣伝したかったのだろうよ。
 今にして思えば良い判断だった。貴様という強者が現れたからなぁ。」

「覚えていないですって。ふざけないでよ。
 なんで私なのよ。なぜ。なぜ。なぜ。」

「悪いな、小娘。我はもう覚えていない。
 おそらく偶然だったのだ。我の恐ろしさを他の人間に知らせるためのメッセンジャーとしてお前は偶々選ばれてしまっただけのこと。」

その語り口はひどく曖昧だった。
作中ではイーレ村襲撃から数年が経過しており、バトルジャンキーである魔人アナハイムにとって、過去の一件などどうでも良かったのだろう。

ゲームをしていた時はたいして気にもとめていなかった。
ヒロインの設定のためのエピソードという側面がある以上、襲撃の根拠が多少曖昧なままでもスルーしていた。

だが、ゲームが現実になった今、ダリウスの疑問はその通りだ。
むしろ

魔人アナハイムはバトルジャンキーだが同時に弱者に対しては興味を抱かない。
わざわざ殺害するなどという手間のかかることはしない。
では、彼らが従えている魔獣が殺したのかと言われればそれも疑問が残る。

なぜなら、先ほどの口上では逃げるための時間的猶予を与えているからだ。
逃げる者は見逃すと言っている以上、しらみつぶし村人全員を殺して回るなんて手間のかかることはしないだろう。
魔人アナハイム以外の2人の魔人のことは情報を持っていないが、スキル<鑑定>で2人を視たが、どうやら嗜虐主義ではないようだ。

現時点で分かっていることは魔人の襲撃はある、と言うことだけだ。

ではなぜ、イーレ村がレイン以外に生き残りがいないのか。
推測の域を出ないが、魔人ではない何者かの手によって殺されたのだろう。
すべての罪は魔人が被ってくれるのだから。

まずいまずいまずいまずい。
サーっと血の気が引いていく音が聞こえた。
完全に想定外だ。
きっと、ゲームでは語られなかった僕の知らない真実がそこにはあるのだろう。

僕はそれに対応できるのだろうか?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】

いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。 陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々 だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い 何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

世界最強の七賢者がお世話係の俺にだけはデレデレすぎる件

Y.
ファンタジー
国の頂点に君臨し、神にも等しい力を持つ『七賢者』。 火・水・風・土・光・闇・氷の属性を極めた彼女たちは、畏怖の対象として国民から崇められていた。 ――だが、その「聖域」の扉を一枚隔てた先では、とんでもない光景が広がっていた。 「アルトぉ、この服脱がせてー。熱いから魔法で燃やしちゃった」 「……アルトが隣にいないと、私、一生布団から出ないから」 「いいじゃない、減るもんじゃないし。さあ、私と混ざり合いましょう?」 彼女たちの正体は、私生活が壊滅的にポンコツで、特定の一人に依存しきったデレデレな美少女たちだった! 魔法の才能ゼロの雑用係・アルトは、世界で唯一「彼女たちの暴走魔力に耐えられる」という理由で、24時間体制の身の回りのお世話をすることに。 着替え、食事の介助、添い寝(!?)まで……。 世界最強の7人に取り合われ、振り回され、いじり倒される。 胃袋と心根をガッチリ掴んだお世話係と、愛が重すぎる最強ヒロインたちによる、至福の異世界ハーレムラブコメ、開幕!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...