【一旦完結】回想モブ転生~ヒロインの過去回想に登場するモブに転生した~

ファスナー

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過去回想に映りこむモブ編

第26話 想定外の遭遇

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side:エドワード

事前教育は貴族と接するために必要な知識、それに最低限の礼儀や作法等を身に着けることを目的としている。

僕達は司祭の奥さん―ケーシィさん―に師事して座学から学んでいった。
そして現在、今まで学んだことを実践するため、実際に貴族のもとで行儀見習いをしている。
ただ、その派遣先がパドレス辺境伯だいうことには驚かされた。
ニジゲンの世界でのカノン帝国の貴族階級は、公爵 > 侯爵 > 辺境伯 > 伯爵 >子爵 > 男爵となっている。

かなり偉い人のところに行儀見習いに行く。
その事実を理解しているのは僕だけので、ダリウスやレイン、ヘカテは気楽そうにしていた。

前世の影響からか、偉い人の前ではなぜか恐縮してしまう僕からすれば彼らの強心臓っぷりが羨ましいと思った。

だが、いざ行儀見習いを経験して肩透かしを食らった。
偉い立場の人間はそれだけ雇われる人間が多いわけであり、辺境伯やその家族と直接接する機会は限りなく少なかったからだ。
だから僕達が接っするのは辺境伯のもとで使えている執事やメイド、執務官たちだった。

僕達は順調に業務をこなしていった。
このままいけば事前教育も無事終了。来春から晴れて魔法学院に入学出来る手筈になっている。

そして、今日はヤンデルシアのパドレス辺境伯城で次男のミュート様の誕生パーティー。
僕達は給仕係。支給された給仕服を着て、パーティ会場の来賓の方に食事やドリンクを提供したり、接客サポートを行ったりする役割だ。
仕事は順調でその日も何事も無く終わるはずだった。

だが、そうそう都合良くはいかないらしい。

上着の内ポケットに入れていた通信魔道具【スマホン】―司祭様が教会間で水晶球を使って電話のような通信をしていたのをヒントに改良した。手のひらサイズの2枚の金属板に水晶球に描かれていた魔法術式を流用、一部改変して書き込み、魔石を嵌め込めるように加工した。前世の記憶にあるスマートフォンをイメージして作製した。―が振動、見るとダリウスからのコールだった。

嫌な予感がした。
「今、屋上のテラスにいる。不審人物がいたので思わず倒して寝かせてる。」
「はぁ?」

ダリウスの言葉に思いっきり不機嫌な声が出てしまった。
ケーシィさんから事前教育で負の感情は表に出してはいけないと言われていたのに。

ケーシィさんは言っていた。
「貴族は平民と違って堅苦しい礼儀に暗黙の規則など複雑なことが多いわ。
 特に貴族社会は、それぞれの思惑が絡んでくる伏魔殿だからね。
 足の引っ張り合いなんて日常茶飯事。
 昨日の友が今日の敵なんてこともあるらしいわ。
 だから負の感情は特に表に出してはいけないわよ。誰がどこで見ているかわからないからね。」

その時の言葉を思い出し、僕は慌てて周囲を見るが、誰も居ないことにホッとした。僕は大急ぎで屋上のテラスにかけていった。

 ***

エドワードが屋上のテラスに行くとそこにはダリウスと黒い外套を着た男がいた。男はまだ目覚めていないのか倒れたままだ。

「さて、どういうことか事情を説明してもらいたいところですが、まずはダリウス。
 なんで屋上のテラスにいるんです?」

エドワードの質問にまさかテラスで休憩していたなんて言えないダリウスは、あははっと笑って誤魔化すしかなかった。
だが、ダリウスとの付き合いが長いエドワードはダリウスが仕事を抜け出して休憩していたことを見抜いている。
そして、見抜かれていることをダリウスも察しているため下手な事は言えない。

エドワードは話を切り替えた。

「で、そこに寝転がってるのが、例の不審者ですか?」
エドワードの視線の先には気を失っている男がいた。

「お、おう、そうだ。
 さっきまで貴族のお嬢様とメイドの女子2人組がここに居たんだ。
 そこにコイツが現れて何をするのかと観察してたら、どうもお嬢様とメイドを狙ってるような不審な動きをしたんで反射的にコインを投げて意識を刈った。
 ただ、どうもコイツアマチュアなのか一瞬殺気が漏れてメイドの方に感づかれたっぽい。」


「なるほど、暗殺者だとしたら二流以下だね。
 それはともかく、これ絶対面倒になるよね。
 失敗したとはいえ、社交界の場に不審者でしょ。
 素直に考えるなら特定のお貴族様を狙っての犯行だろうなぁ。
 ダリウスが言ってた女子2人組もターゲットの可能性が高いし。
 だけど、辺境伯の警備の落ち度を指摘するためにわざとそう言う二流以下を雇ったと言う可能性もあるわけで。
 ただ、貴族がらみで裏があるんだろうなぁ。」
うんざり顔のエドワード。

「そこで、エドワード先生の出番ですよ。
 この後どうすればいいかアイディア下さい。」
ペコリと90度のおじぎを見せたダリウスの意図を察してエドワードは面倒くさそうだという表情をした。

「とりあえずこの人から事情を聞かないわけにはいかないね。」

 ***

そして昏倒させられていた男が目を覚ます。

「おい、あんたらこれはどう言うことだ?」
男の手足はロープで縛られて動けない状態になっていた。

「お、ようやく起きたか。
 さて寝起きのところ悪いけど、色々とお話聞かせてもらうよ。
 あんたは暗殺者ってことでいいのか?」

男は無言のままエドワードとダリウスを観察していたがやがて口を開いた。

「何のことをいっているのか良く分からないな。
 私はちょっと休憩しようとテラスに寄っただけだ。」

「黒い外套を被ったまま?
 流石にその言い分は通らないな。
 不審者ですって言ってるようなもんだぞ。」
ダリウスはそういって挑発する。

「私がどんな格好をしようと自由だろう。
 私の名はユーレイ=ゴスト。
 ユーレイ男爵家の当主であり、このパーティの招待客だぞ。
 早くこの紐をとけ。今なら無かったことにしてやる。」
男は吠えるがエドワードもダリウスも動かない。

「おい、聞いてるのか?
 こんなことしてどうなるか分かっているんだろうな?」
男はダリウスを睨みながら脅す。

「どうなるんだ?クビにでもするか?
 俺達は元々期間限定で雇われてるからな。
 クビになったところで痛くもかゆくも無い。」

「はん。やはり子供の発想だな。
 この失態は辺境伯の顔に泥を塗る行為だぞ。
 お前らのクビ程度で終わるわけが無い。
 最悪、お前達は死罪だ。」

男は嗤うがダリウスはその脅しを意に介さない。

「それは困った。
 なら、証拠は隠滅しておかないとな。」
それどころか男を煽る勢いだ。

「はぁっ?頭おかしいのか、お前。
 おい、お前。アイツを止めろ。
 いいのか?大事になるぞ。」

ダリウスでは話にならないと男はエドワードにほこを向けた。
エドワードは肩を竦め、苦笑しながら答えた。

「あー、彼は止めても無駄なんで僕も諦めてるんですよ。
 それより、僕も質問しますね。今回のターゲットは誰ですか?」

「だから、何を言って―。」「あ、もう分かったんで大丈夫です。」
男がセリフをエドワードは遮った。
はっ?何が分かったのか?
男はエドワードの言葉の意味が分からず戸惑っていた。

「それで、なんだって?」
ダリウスの質問に答える形でエドワードは男に向かって話し始めた。

「ええと、ユーレイ=ゴストさん。ユーレイ男爵家のご当主様ですか。
 確かに招待客のようですし、実在する男爵家ですね。
 ですが、あなたはご本人様ではありませんね。
 闇ギルド所属のシドーさん。」
男は無表情のままエドワードを睨みつける。

「これも闇ギルドからの指名依頼のようですね。
 パーティーへの潜入は依頼主から手配してもらったわけですか。
 依頼内容はマルライト男爵家のマルライト=セルビー嬢を負傷させること。
 殺人の依頼ではないようですね。」

「な、なんで?」
シドーはたまらず声をあげた。
自分の素性から依頼内容までバレていたからだ。

「なんでかは知らなくていい。
 それよりも、ここまでバレてんだ。
 ぶっちゃけこっちも厄介ごとは避けたいんだ。
 協力してくれるなら見逃してもいいと思ってるんだが?」

「本当か?見逃してくれるなら―」
キィィンッ

シドーが答えてる途中で金属同士のぶつかる音が響いた。
ダリウスの投げたコインと白い羽が落ちていた。

「あら、今のバレちゃいましたか。
 これ以上予定が狂うのは困るんですよねー。」
エドワード達の後ろから女の声がした。

振り返るとそこには白い服を着た金髪の美女が立っていた。
特徴的なのが彼女の背中についている白い翼。

ダリウスはすぐさま後ろに引いて乱入者から距離を取った。
しかし、エドワードはその場に立ったまま動かない。

「そんなバカな。僕は知らない。
 ニジゲンの世界にはなかったはずだ。おかしい。
 いや待て。既に本来のシナリオからは外れている。
 ならその影響でイレギュラーが発生した?
 そもそもシナリオ外の部分は言及されてないから可能性はあるのか。
 でも、普通なら製作側は絶対本編で使うはずだろ。なぜ―。」
エドワードがブツブツと呟いているが声が小さくダリウスには届かなかった。

「おい、どうしたエド。
 あの女は何者だ?」

「僕は彼女のことは知らない。
 存在しないはずなんだ。
 だけど、<鑑定>の結果が正しいなら目の前にいる彼女は―――」

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