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第一部 第四章 これが私の生きる道
54・ローランドの最期
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「スライムの右斜め後方に、魔族の反応がひとつ」
突然のフォウの発言に緊張が走ります。
「ひとつだけ?」
「ひとつですね。何故この魔族だけがスライムに吸収されていないのでしょう」
二十万の魔族を吸収しておきながら、たった一人を残す意味はあるのでしょうか。
あるとしたら――
「そいつが黒幕とか?」
「ありえます。元勇者のローランドをたぶらかし、魔族側に寝返らせ更に魔族軍を指揮させる立場へと導いた者かもしれません」
魔族と何の繋がりもなかったローランドがアンデッドの魔物になったからといって、突然二十万の軍勢を指揮するようになったのも謎でした。
間に立って魔族との懸け橋となった人物が居てもおかしくありません。
「でもローランドは私に恨みを晴らすためにここまで来たのよね? その魔族の狙いは?」
「ローランドは私怨かもしれませんが、それに乗じて何かをやり遂げようとする第三の人物の思惑も……無きにしも非ずです」
アランは気付いていないのでしょうか。
「あっ、寝てる……」
座り込む事もやめて、地面に横になるアランが見えました。
完全に飽きたようです。
「何が狙いなのかは分かりませんが、その魔族ごとやってしまいましょう」
フォウが両手を広げ、目を閉じました。
全身が眩い光に包まれ、少しずつ空中へと身を浮かせて、天使には必要のないはずの詠唱を唱え始めます。
「光の……極大魔法?」
いつぞやの洞窟で見た、対象を塵と化す光の魔法です。
その魔法に必要な詠唱は……五秒。
きっかり五秒後にフォウの目が開かれた時、スライムの巨大な影が真っ白な光に包まれました。
その姿が塵となって消える事を思い浮かべた瞬間――
「あぶない!」
サーラが杖を前方に向けていました。
大魔導師の杖の先端に嵌め込まれた魔石が、真っ赤に輝いています。
私たちを囲むようにドーム型に結界が展開され間一髪、光が扇状にぶつかり拡散して消えました。
「え? 何が起きたの?」
まるで状況を掴めない私の問いに、フォウが恥ずかしげに答えます。
「申し訳ありません……アランがスライムの足元に居たので跳ね返されてしまいました」
「魔王の絶対防御……?」
「スライムの後ろの魔族ごとやるつもりで範囲を広げたので、アランにも攻撃が及んでしまったようです」
危なっ……サーラの結界の展開が遅かったら、塵になっていたのは私たちの方でした。
「アランが何か叫んでますよ」
カーマイルが言うので見てみれば、アランが起き上がってこちらに向かって何かを叫んでいました。
「聞こえませんね」
「あっ、帰ってくるようです」
アランは巨大なスライムを背に、聖剣を担いでこちらに向かって走り出しました。
「スライムも追ってきてるじゃない」
「しかも速いですね……スライム」
アランが一生懸命に走っているその後ろを、巨大な山がついて来ています。
「これじゃ攻撃できないですね……あっ魔族の反応が消えました。……逃げましたね」
たった一人残っていた魔族には、逃げられてしまったようです。
いずれ私たちの前に現れる事もあるのでしょうか。
「コロス……コロス……ミナゴロシニ……シテヤル」
スライムの怨恨を孕んだ声も聞こえてきました。
思えば私が蘇生魔法を施したばかりに、アンデッドになってしまったローランドが自分の人生に失望し、暗黒面に落ちてしまったのです。
「サオリのせいじゃないからな、気にするんじゃないぞ」
いつの間にか隣に来ていたランドルフが、私の思考を読み取ったのか慰めてくれました。
「でも蘇生してゾンビにしちゃったのは私なのよランドルフ。彼が私を恨むのも分かるわ」
「それは国が決めた事だ。国が……国王が決めた事をサオリに頼んだからそうしたまでで、サオリのせいなんかじゃない」
そういう風に言ってもらっても、私には割り切れる事は出来ません。
「回復魔法で元に戻らないかな? スライムから……ローランドの姿に」
ランドルフは少し考えるように顔を伏せましたが、視線を私に戻すとはっきりと伝えてきました。
「その必要はないよサオリ。ローランドは俺のいとこではあったがもう……あれが立ち直る事はないだろう。このまま魔物として討伐される事を俺は望むよ……それは本人のためでもあると思う」
ランドルフの親戚で、元勇者のローランド。
その姿が魔物になったからといって、殺されてもいいのでしょうか。
私には……私には分かりません。
フォウが振り向いて私に覚悟を問います。
「悩んでいる暇はないですよ。アランが戻ると同時にスライムは至近距離にまで迫ります」
「ローランドをあんな姿にしてしまったのは私なの……だから私は何も言えない……」
カーマイルがいつもの調子で口を挟んできました。
「サオリは何も言わなくてもいいのです。そして何もしなくていいのです。私たちが勝手に終わらせますので」
カーマイルとラフィーがスライムに向けて左手を向けます。
サーラが結界を解いて、大魔導師の杖をスライムに向けます。
そしてフォウとニナも左手をスライムに向け――
「おいお前ら! さっき魔法を跳ね返されてたろ! 自滅したいのか!?」
アランが丘を駆けあがって来てその言葉を叫んだ瞬間、四人の天使の掌と大魔導師の杖の先端が光を帯びて――
五つの極大魔法が無詠唱で、巨大なスライムに放たれました。
天使たちの炎、風、光、闇の魔法、そして極め付けはサーラの次元魔法。
真っ黒な山が目の前にまで迫り、そして――
「コロス……コロス……オンナ!……コロシテヤ……ル!」
――私に向けた怨念とも言える言葉を最後に、スライムは……ローランドは消滅。
文字通り消えて無くなりました。
突然のフォウの発言に緊張が走ります。
「ひとつだけ?」
「ひとつですね。何故この魔族だけがスライムに吸収されていないのでしょう」
二十万の魔族を吸収しておきながら、たった一人を残す意味はあるのでしょうか。
あるとしたら――
「そいつが黒幕とか?」
「ありえます。元勇者のローランドをたぶらかし、魔族側に寝返らせ更に魔族軍を指揮させる立場へと導いた者かもしれません」
魔族と何の繋がりもなかったローランドがアンデッドの魔物になったからといって、突然二十万の軍勢を指揮するようになったのも謎でした。
間に立って魔族との懸け橋となった人物が居てもおかしくありません。
「でもローランドは私に恨みを晴らすためにここまで来たのよね? その魔族の狙いは?」
「ローランドは私怨かもしれませんが、それに乗じて何かをやり遂げようとする第三の人物の思惑も……無きにしも非ずです」
アランは気付いていないのでしょうか。
「あっ、寝てる……」
座り込む事もやめて、地面に横になるアランが見えました。
完全に飽きたようです。
「何が狙いなのかは分かりませんが、その魔族ごとやってしまいましょう」
フォウが両手を広げ、目を閉じました。
全身が眩い光に包まれ、少しずつ空中へと身を浮かせて、天使には必要のないはずの詠唱を唱え始めます。
「光の……極大魔法?」
いつぞやの洞窟で見た、対象を塵と化す光の魔法です。
その魔法に必要な詠唱は……五秒。
きっかり五秒後にフォウの目が開かれた時、スライムの巨大な影が真っ白な光に包まれました。
その姿が塵となって消える事を思い浮かべた瞬間――
「あぶない!」
サーラが杖を前方に向けていました。
大魔導師の杖の先端に嵌め込まれた魔石が、真っ赤に輝いています。
私たちを囲むようにドーム型に結界が展開され間一髪、光が扇状にぶつかり拡散して消えました。
「え? 何が起きたの?」
まるで状況を掴めない私の問いに、フォウが恥ずかしげに答えます。
「申し訳ありません……アランがスライムの足元に居たので跳ね返されてしまいました」
「魔王の絶対防御……?」
「スライムの後ろの魔族ごとやるつもりで範囲を広げたので、アランにも攻撃が及んでしまったようです」
危なっ……サーラの結界の展開が遅かったら、塵になっていたのは私たちの方でした。
「アランが何か叫んでますよ」
カーマイルが言うので見てみれば、アランが起き上がってこちらに向かって何かを叫んでいました。
「聞こえませんね」
「あっ、帰ってくるようです」
アランは巨大なスライムを背に、聖剣を担いでこちらに向かって走り出しました。
「スライムも追ってきてるじゃない」
「しかも速いですね……スライム」
アランが一生懸命に走っているその後ろを、巨大な山がついて来ています。
「これじゃ攻撃できないですね……あっ魔族の反応が消えました。……逃げましたね」
たった一人残っていた魔族には、逃げられてしまったようです。
いずれ私たちの前に現れる事もあるのでしょうか。
「コロス……コロス……ミナゴロシニ……シテヤル」
スライムの怨恨を孕んだ声も聞こえてきました。
思えば私が蘇生魔法を施したばかりに、アンデッドになってしまったローランドが自分の人生に失望し、暗黒面に落ちてしまったのです。
「サオリのせいじゃないからな、気にするんじゃないぞ」
いつの間にか隣に来ていたランドルフが、私の思考を読み取ったのか慰めてくれました。
「でも蘇生してゾンビにしちゃったのは私なのよランドルフ。彼が私を恨むのも分かるわ」
「それは国が決めた事だ。国が……国王が決めた事をサオリに頼んだからそうしたまでで、サオリのせいなんかじゃない」
そういう風に言ってもらっても、私には割り切れる事は出来ません。
「回復魔法で元に戻らないかな? スライムから……ローランドの姿に」
ランドルフは少し考えるように顔を伏せましたが、視線を私に戻すとはっきりと伝えてきました。
「その必要はないよサオリ。ローランドは俺のいとこではあったがもう……あれが立ち直る事はないだろう。このまま魔物として討伐される事を俺は望むよ……それは本人のためでもあると思う」
ランドルフの親戚で、元勇者のローランド。
その姿が魔物になったからといって、殺されてもいいのでしょうか。
私には……私には分かりません。
フォウが振り向いて私に覚悟を問います。
「悩んでいる暇はないですよ。アランが戻ると同時にスライムは至近距離にまで迫ります」
「ローランドをあんな姿にしてしまったのは私なの……だから私は何も言えない……」
カーマイルがいつもの調子で口を挟んできました。
「サオリは何も言わなくてもいいのです。そして何もしなくていいのです。私たちが勝手に終わらせますので」
カーマイルとラフィーがスライムに向けて左手を向けます。
サーラが結界を解いて、大魔導師の杖をスライムに向けます。
そしてフォウとニナも左手をスライムに向け――
「おいお前ら! さっき魔法を跳ね返されてたろ! 自滅したいのか!?」
アランが丘を駆けあがって来てその言葉を叫んだ瞬間、四人の天使の掌と大魔導師の杖の先端が光を帯びて――
五つの極大魔法が無詠唱で、巨大なスライムに放たれました。
天使たちの炎、風、光、闇の魔法、そして極め付けはサーラの次元魔法。
真っ黒な山が目の前にまで迫り、そして――
「コロス……コロス……オンナ!……コロシテヤ……ル!」
――私に向けた怨念とも言える言葉を最後に、スライムは……ローランドは消滅。
文字通り消えて無くなりました。
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