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第二部 第四章 終わる世界
97・ Q
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「とりあえず川を渡らないとね」
ラフィーの氷の極大魔法で川を凍らせてもらおうとしましたが、凍るのは数秒で、後から押し寄せる濁流にすぐに氷は砕かれてしまいました。
「羽根ペンの魔法ならどうかな」
ノートと羽根ペンを使って私が氷の極大魔法を展開すると、川は先ほどのラフィーの魔法よりも広い範囲で、見事に凍りつきました。
それでもいつ崩れるか分からないので、その上にラフィーの土魔法で橋を掛けます。
「さぁ、今のうちに渡るわよ」
百メートルの距離は意外と長く、渡りきるまでが少しスリリングでした。
デビもしっかりと、私にしがみついています。
川を渡った先は森が続いていて、その先の高い位置に、魔王城はそびえていました。
かなり高低差があるので森というよりも、山と言った方が適切でしょうか。
「鎧を脱ぐ暇がないわね……」
何が起きるか分からないので、黄金の鎧は常に着用しています。
デビを守るために結界も展開しているのですが、これの制限時間は約一時間です。
効果が切れたらまた再展開すればいいのですが、私の羽根ペンによる魔法は天使たちの無詠唱の魔法と違ってノートに書き込むという作業がある分、展開するまでに少し時間が掛かってしまうので、何かあった時には咄嗟に発動する事は出来ません。
「ここからは慎重に進みましょう」
川を渡る前、魔王城が見えた時点でデビにはもう戻っても構わないと伝えたのですが、どうしても付いて行きたいと曲げないのでそれを許してしまいました。
何かあれば私が守らなければならないのですが、私はまた間違った選択をしているのではないかと、不安になります。
こういう時にカーマイルが居てくれたら、口は悪いですけれど的確な判断を下してくれたのでは、と思ってしまいます。
「あっ、忘れてた」
突然思い出しました。私のスマホにはレーダーがあったのです。
スマホを取り出して、『健作くん』を起動しました。
「エリーシアを検索っと……」
『エリーシア』と画面に打ち込むと、画面は真っ黒になり、小さな白い点が浮き上がりました。
これは恐らく魔王城の地点だと思います。
次に『エリーシア&魔王城&ジーク』と打ち込みます。
「やっぱり……」
三つの点は、見事に一つの場所で重なっていました。
ジークだけは前回同様、赤い点として表示されています。
更に、『サーラ&フォウ&カーマイル』を加えると――
「もう決定的ね」
すべての対象が同じ場所を示しています。
そしてこれでサーラたちの生存が確認されて、同時に囚われている可能性が高くなりました。
「魔王城に潜伏しているって線は無いかなぁ……やっぱり捕まっちゃってるのかなぁ」
隠れているというのなら、一度くらいは転移して私に報告くらいして来そうなものです。
その自由が無いという事は、囚われていると思って間違いは無いかも知れません。
「あのサーラたちが捕虜になってしまうくらいだもの、……やっぱり私が行っても無理って話よね……どうしよう」
とりあえず、魔王城の中の様子が知りたい所です。
果たして上手く潜入する事が出来るのでしょうか。
姿を消す魔法が無いのが残念です。
◇ ◇ ◇
どれくらい歩いたでしょうか。
陽が傾いてきたのと、周りの木々のせいで辺りは薄暗く、動物や魔物の気配も全くありません。
「やけに静かね」
まるで生きているものが、一つも居ないかのような静けさです。
「はぁ、はぁ」
私は黄金の鎧を着ているせいか上り坂も苦になりませんが、隣で並んで歩くデビは少しきつそうです。
「休憩しましょうか」
「アタシなら、大丈夫だよ」
そうは言ってもデビの息は荒く、そうとう疲れが見えます。
これまでは翼で空を飛んでいたはずの魔族なのです、片翼になってしまい飛ぶことが出来なくなって、慣れていない徒歩では普通の人間以上に疲れも蓄積していると思います。
「おんぶ、する?」
「それじゃまるでお荷物じゃないか。アタシは平気だってば」
なかなか強情なようです。
「ちょうど半分くらいだし、休憩しましょう」
どうせならお店に転移してゆっくり休んでから出直したいとも思いましたが、それをすると戻って来た時にまた川を渡った場所か、最悪岩場まで戻されそうな気がしたのでこの場で休憩する事にしました。
「ニナとラフィーも離れないようにね。警戒を怠らないように」
「あい」
「なの」
私たちは一本の大木を選んで、その根元に座り込みます。
「魔王城に辿り着いたとして、どうやって潜入しよう」
もしかしたら既に、私たちの接近を察知されているかも知れません。
「ジークに見つかる前になんとか魔王城に忍び込まないと……」
私はもう一度、スマホで魔王城の位置を確認しました。
「これって、拡大出来るのかな……」
白く光る点に、人差し指と親指を当てて広げる動作――ピンチアウトしました。
「あっ、大きくなった!」
拡大された点は、城の見取り図のような図面に切り替わりました。
これならサーラたちの居場所が掴めて、助けやすくなります。
先程と同じように名前を打ち込んで、城の何処に囚われているのかを調べました。
「分かったわ。魔王城の中央……玉座の間よ」
拡大した図面はご丁寧にも、各部屋の名称さえも表示してくれていました。
サーラたちが居る場所には『玉座の間』と、はっきりと明記されていたのです。
「あれ? この部屋には白い点が四つ。……サーラとカーマイルとフォウと……エリーシアかしら」
ジークは赤い点で表示されるはずです。
「ジークが居ないわ」
「呼んだか?」
「!?」
まさか! 今の声は!?
振り返るとトラベラーズハットの男が忽然と現れていて、私たちに短めの杖を向けていました。
「来るのが遅いから、迎えに来てやったぞ」
「ジーク!」
次の瞬間、パシン! と空間が切り裂かれ――
「玉座の間!?」
――魔王城へと、転移させられていました。
ラフィーの氷の極大魔法で川を凍らせてもらおうとしましたが、凍るのは数秒で、後から押し寄せる濁流にすぐに氷は砕かれてしまいました。
「羽根ペンの魔法ならどうかな」
ノートと羽根ペンを使って私が氷の極大魔法を展開すると、川は先ほどのラフィーの魔法よりも広い範囲で、見事に凍りつきました。
それでもいつ崩れるか分からないので、その上にラフィーの土魔法で橋を掛けます。
「さぁ、今のうちに渡るわよ」
百メートルの距離は意外と長く、渡りきるまでが少しスリリングでした。
デビもしっかりと、私にしがみついています。
川を渡った先は森が続いていて、その先の高い位置に、魔王城はそびえていました。
かなり高低差があるので森というよりも、山と言った方が適切でしょうか。
「鎧を脱ぐ暇がないわね……」
何が起きるか分からないので、黄金の鎧は常に着用しています。
デビを守るために結界も展開しているのですが、これの制限時間は約一時間です。
効果が切れたらまた再展開すればいいのですが、私の羽根ペンによる魔法は天使たちの無詠唱の魔法と違ってノートに書き込むという作業がある分、展開するまでに少し時間が掛かってしまうので、何かあった時には咄嗟に発動する事は出来ません。
「ここからは慎重に進みましょう」
川を渡る前、魔王城が見えた時点でデビにはもう戻っても構わないと伝えたのですが、どうしても付いて行きたいと曲げないのでそれを許してしまいました。
何かあれば私が守らなければならないのですが、私はまた間違った選択をしているのではないかと、不安になります。
こういう時にカーマイルが居てくれたら、口は悪いですけれど的確な判断を下してくれたのでは、と思ってしまいます。
「あっ、忘れてた」
突然思い出しました。私のスマホにはレーダーがあったのです。
スマホを取り出して、『健作くん』を起動しました。
「エリーシアを検索っと……」
『エリーシア』と画面に打ち込むと、画面は真っ黒になり、小さな白い点が浮き上がりました。
これは恐らく魔王城の地点だと思います。
次に『エリーシア&魔王城&ジーク』と打ち込みます。
「やっぱり……」
三つの点は、見事に一つの場所で重なっていました。
ジークだけは前回同様、赤い点として表示されています。
更に、『サーラ&フォウ&カーマイル』を加えると――
「もう決定的ね」
すべての対象が同じ場所を示しています。
そしてこれでサーラたちの生存が確認されて、同時に囚われている可能性が高くなりました。
「魔王城に潜伏しているって線は無いかなぁ……やっぱり捕まっちゃってるのかなぁ」
隠れているというのなら、一度くらいは転移して私に報告くらいして来そうなものです。
その自由が無いという事は、囚われていると思って間違いは無いかも知れません。
「あのサーラたちが捕虜になってしまうくらいだもの、……やっぱり私が行っても無理って話よね……どうしよう」
とりあえず、魔王城の中の様子が知りたい所です。
果たして上手く潜入する事が出来るのでしょうか。
姿を消す魔法が無いのが残念です。
◇ ◇ ◇
どれくらい歩いたでしょうか。
陽が傾いてきたのと、周りの木々のせいで辺りは薄暗く、動物や魔物の気配も全くありません。
「やけに静かね」
まるで生きているものが、一つも居ないかのような静けさです。
「はぁ、はぁ」
私は黄金の鎧を着ているせいか上り坂も苦になりませんが、隣で並んで歩くデビは少しきつそうです。
「休憩しましょうか」
「アタシなら、大丈夫だよ」
そうは言ってもデビの息は荒く、そうとう疲れが見えます。
これまでは翼で空を飛んでいたはずの魔族なのです、片翼になってしまい飛ぶことが出来なくなって、慣れていない徒歩では普通の人間以上に疲れも蓄積していると思います。
「おんぶ、する?」
「それじゃまるでお荷物じゃないか。アタシは平気だってば」
なかなか強情なようです。
「ちょうど半分くらいだし、休憩しましょう」
どうせならお店に転移してゆっくり休んでから出直したいとも思いましたが、それをすると戻って来た時にまた川を渡った場所か、最悪岩場まで戻されそうな気がしたのでこの場で休憩する事にしました。
「ニナとラフィーも離れないようにね。警戒を怠らないように」
「あい」
「なの」
私たちは一本の大木を選んで、その根元に座り込みます。
「魔王城に辿り着いたとして、どうやって潜入しよう」
もしかしたら既に、私たちの接近を察知されているかも知れません。
「ジークに見つかる前になんとか魔王城に忍び込まないと……」
私はもう一度、スマホで魔王城の位置を確認しました。
「これって、拡大出来るのかな……」
白く光る点に、人差し指と親指を当てて広げる動作――ピンチアウトしました。
「あっ、大きくなった!」
拡大された点は、城の見取り図のような図面に切り替わりました。
これならサーラたちの居場所が掴めて、助けやすくなります。
先程と同じように名前を打ち込んで、城の何処に囚われているのかを調べました。
「分かったわ。魔王城の中央……玉座の間よ」
拡大した図面はご丁寧にも、各部屋の名称さえも表示してくれていました。
サーラたちが居る場所には『玉座の間』と、はっきりと明記されていたのです。
「あれ? この部屋には白い点が四つ。……サーラとカーマイルとフォウと……エリーシアかしら」
ジークは赤い点で表示されるはずです。
「ジークが居ないわ」
「呼んだか?」
「!?」
まさか! 今の声は!?
振り返るとトラベラーズハットの男が忽然と現れていて、私たちに短めの杖を向けていました。
「来るのが遅いから、迎えに来てやったぞ」
「ジーク!」
次の瞬間、パシン! と空間が切り裂かれ――
「玉座の間!?」
――魔王城へと、転移させられていました。
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