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悪役令嬢学園編
悪役令嬢は不本意ながら受けて立つ
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「エル、悪いことは言わない。やめておいたほうがいい」
よくある進学校で美術系進路の生徒が煙たがられるのと同じやつだろうか。
ヴォルグ様がとても真剣な表情で私を見た。
「どうしてです?」
「いや、その……宮廷画家って超難関だし浪人画家も多いから倍率がものすごく高い」
宮廷画家になるには試験が三つあるらしい。
一次試験は花の絵、二次試験は毎年変わるが最近は人物画を描かせる傾向にあるという。三次試験は面接らしい。
受験資格はどこかしらの学園の卒業見込みのある者と既卒の者に与えられ、受験者は秋に出願し、冬に試験を受ける。
まるで大学受験のようだ。
「なかなか詳しいんですね。私、全然知りませんでした」
「親戚に宮廷画家志望の奴がいたんだが四浪目の夏に山にこもったきり音沙汰がなくてな」
「四浪……き、きっと森のクマさんと愉快な生活を送っていますよ!」
「胃袋でか?」
真顔でボケを入れられ、危うく私は吹き出してしまうところだった。
「ねぇ君たちくだらない漫才なんてしてないで勉強したらどうなの?」
「うっ、出る言葉もありません」
隣のテーブル席のウィルムがこちらの様子を見て鼻で笑った。
私は対抗して教本を開いた。
今に見ていろよウィルム。私が前世で培ってきた知識で吠え面かかせてやる。
問1
ゲオルグ君とロイド君は兄弟です。
2人は1500メートル離れた図書館で勉強することになりました。
兄のゲオルグ君は家を出て分速80メートルで図書館に向かいましたが、弟のロイド君は家を出る前に弁当を受け取ったため6分後に分速200メートルでゲオルグ君を追いかけました。
ロイド君はがゲオルグ君に追いつくのはロイド君が家を出てから何分後ですか。
この世界に来ても一緒に出発しない兄弟の問題が出てくるのか。
まさか最初の問題が算数で躓きやすい兄弟の問題だとは思わなかった。
この様子だと乙女ゲーム転生小説あるあるの、小学一年生レベルの問題しか出ずに主人公が楽して秀才扱いされるパターンは期待できなそうだ。
私はおそるおそる教本の後ろの方のページを開いた。
問94
次の数列の一般項☆初項から第□項までの和◆をそれぞれ求めよ。
「Sクラスは諦めさせていただきます!」
「諦めるの早くない⁈」
私は文系だ。それも数学がとても苦手な文系だ。
いくらanやSnが小学生の算数のように可愛らしく☆や◆に変えられていようが苦手なものは苦手だ。見たくもない。
この世界の勉学は私には向いていないようだ。
「うーんさすがに問94までは範囲外だと思うよ? 学園で習う内容だし。分からないなら教えてあげるよ。あ、その前に問1は分かる?」
いつの間にか私の隣に立っていて教本を覗き込んでいたのはヴォルグ様でもウィルムでもレオン殿下でもなく、アルムだった。
「一応。4分ですよね」
「うん。そうだね。今まで勉強してないなんて言っておきながら本当はちゃんと勉強してるんでしょ? インヴィディア嬢は謙虚だなぁ。まあ、僕には負けるだろうけどせいぜい頑張りなよ」
なんだコイツ。今まで存在感が薄すぎて気にもとめていなかったがウィルムに劣らず煽りスキルをしっかりと身につけているようだ。
乙女ゲームの優しい彼はどこへ消えたのやら。
「ええ、頑張りますね。もし負けてしまっても泣かないでくださいね」
と言ってしまったが最後、私はとんでもない戦いを挑まれてしまった。
「僕が負けるわけないでしょ?! いいよ、じゃあ勝負。Sクラスに入った方が勝ち。負けた方は勝った方の言うことをなんでも聞く。これでいいでしょ? 今から悔しがる時の台詞でも考えておくんだね」
アルムはとても余裕そうな表情で私を笑い、自分の席に戻った。
「あー、エル。アルムはああ言っているがまともに取り合わない方がいい。あいつはウィルムよりタチが悪いから」
「なんか、棄権するのも後が怖いので……ヴォルグ先生、ご指導をお願いします」
私はやっと運ばれてきたイチゴタルトを食べながら言ったが決して不真面目なわけではない。糖分補給って大事だよね。
よくある進学校で美術系進路の生徒が煙たがられるのと同じやつだろうか。
ヴォルグ様がとても真剣な表情で私を見た。
「どうしてです?」
「いや、その……宮廷画家って超難関だし浪人画家も多いから倍率がものすごく高い」
宮廷画家になるには試験が三つあるらしい。
一次試験は花の絵、二次試験は毎年変わるが最近は人物画を描かせる傾向にあるという。三次試験は面接らしい。
受験資格はどこかしらの学園の卒業見込みのある者と既卒の者に与えられ、受験者は秋に出願し、冬に試験を受ける。
まるで大学受験のようだ。
「なかなか詳しいんですね。私、全然知りませんでした」
「親戚に宮廷画家志望の奴がいたんだが四浪目の夏に山にこもったきり音沙汰がなくてな」
「四浪……き、きっと森のクマさんと愉快な生活を送っていますよ!」
「胃袋でか?」
真顔でボケを入れられ、危うく私は吹き出してしまうところだった。
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「うっ、出る言葉もありません」
隣のテーブル席のウィルムがこちらの様子を見て鼻で笑った。
私は対抗して教本を開いた。
今に見ていろよウィルム。私が前世で培ってきた知識で吠え面かかせてやる。
問1
ゲオルグ君とロイド君は兄弟です。
2人は1500メートル離れた図書館で勉強することになりました。
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ロイド君はがゲオルグ君に追いつくのはロイド君が家を出てから何分後ですか。
この世界に来ても一緒に出発しない兄弟の問題が出てくるのか。
まさか最初の問題が算数で躓きやすい兄弟の問題だとは思わなかった。
この様子だと乙女ゲーム転生小説あるあるの、小学一年生レベルの問題しか出ずに主人公が楽して秀才扱いされるパターンは期待できなそうだ。
私はおそるおそる教本の後ろの方のページを開いた。
問94
次の数列の一般項☆初項から第□項までの和◆をそれぞれ求めよ。
「Sクラスは諦めさせていただきます!」
「諦めるの早くない⁈」
私は文系だ。それも数学がとても苦手な文系だ。
いくらanやSnが小学生の算数のように可愛らしく☆や◆に変えられていようが苦手なものは苦手だ。見たくもない。
この世界の勉学は私には向いていないようだ。
「うーんさすがに問94までは範囲外だと思うよ? 学園で習う内容だし。分からないなら教えてあげるよ。あ、その前に問1は分かる?」
いつの間にか私の隣に立っていて教本を覗き込んでいたのはヴォルグ様でもウィルムでもレオン殿下でもなく、アルムだった。
「一応。4分ですよね」
「うん。そうだね。今まで勉強してないなんて言っておきながら本当はちゃんと勉強してるんでしょ? インヴィディア嬢は謙虚だなぁ。まあ、僕には負けるだろうけどせいぜい頑張りなよ」
なんだコイツ。今まで存在感が薄すぎて気にもとめていなかったがウィルムに劣らず煽りスキルをしっかりと身につけているようだ。
乙女ゲームの優しい彼はどこへ消えたのやら。
「ええ、頑張りますね。もし負けてしまっても泣かないでくださいね」
と言ってしまったが最後、私はとんでもない戦いを挑まれてしまった。
「僕が負けるわけないでしょ?! いいよ、じゃあ勝負。Sクラスに入った方が勝ち。負けた方は勝った方の言うことをなんでも聞く。これでいいでしょ? 今から悔しがる時の台詞でも考えておくんだね」
アルムはとても余裕そうな表情で私を笑い、自分の席に戻った。
「あー、エル。アルムはああ言っているがまともに取り合わない方がいい。あいつはウィルムよりタチが悪いから」
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