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悪役令嬢学園編
悪役令嬢はAクラス
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クラス発表を前にして私は脚を震わせていた。
昨日試験の後に立ったまま3時間もの説教を受けたのだから無理もない。
説教の内容は人形に魔術を放つ時、あまり加減せずに火の球を放ったせいで人形の破片があちこちに飛び、危うく怪我人が出るところだったというものだった。
第二演習場が吸収できるのはあくまで魔力のみで、魔力が宿ったものの魔力を吸い取って動きを止めることはできるが、ものを魔術で破壊した時に飛び散る破片には魔力が宿らないため、そのまま飛んでいってしまうという。
どんな魔術を使っても事故防止の壁がなんとかしてくれると思い、周りへの配慮はかけていたので私は反省して黙って立ったまま説教を受けた。
クラス分けは始業の20分前に玄関前に張り出されるため、あと5分は耐えなければならない。
はやく教室に行って座りたい。
私が震えながらその時を待っていると後ろから同じように震えた声が話しかけてきた。
「緊張で震えてるの? まま、まあ? 僕は余裕だだだけど?」
「そちらこそ体を震わせるほど緊張しているようですが? あと私は昨日の長時間の説教で運動不足の脚が悲鳴をあげているだけですのでご心配なく」
アルムはなぜか私の真横に立ち私の肩に手を置いた。
「あの~、人を支えにしないでいただけます?」
「うるさい! 丁度いい高さだったの!」
どうやら無意識のうちにやっていたことのようで、私に指摘されるや否やバッと手を離し、まるで汚いものにでも触ったかのように手を払った。
私もアルムに倣ってアルムに触られたところを払うとアルムがこちらを睨んできた。なんなんだよこいつ。
「君ねぇ……」
「あ、始まりましたよ」
私は文句を言いかけたアルムを制し運ばれてきた横幅が3メートルほどの板を見た。
しかし、板には何も書かれてはいなかった。
板を運んできた制服を着た先輩であろう2人組は板を魔術で高く浮かせた。
「それではクラス分けを発表します! クラス分けテストはまた来年もあるので今回思ったようにできなかった人は来年また頑張ろう!」
来年もあるのかよ。
先輩らしき2人組は何やら、詠唱しだした。詠唱が終わると板が光り、文字が浮かびだした。
「名前は成績順に並んでるからね。自分の名前の横の数字がそのまま出席番号になるよ」
順位がそのまま出席番号になるとか嫌すぎる。馬鹿がバレるじゃないか。
気を取り直して私は左上の方から自分の名前を探した。
Sクラス
1 カイエン=ブロード=キーントリス
2 エルヴェラール=フィオン=インヴィディア
3 ヴォルグ=リタ=イズフェス
4 ジェーン=ヴィヴィー=フンドリア
5 アルム=ルイス=マクレーン
まさかの2番手に私の名前があった。アルムはSクラスではあるが私よりも番号が後なので勝負は私が勝ちということで良いのだろうか。
「私の勝ちですね!」
「さ、3回勝負だから!」
アルムは尻尾を巻いて逃げていった。
私はヒロインの名前を探してAクラスのところを見た。乙女ゲームの設定と同じならフローラはAクラスにいるはずだからね。
Aクラス
1 エルヴェラール=フィオン=インヴィディア
2 ヴォルグ=リタ=イズフェス
3 ジェーン=ヴィヴィー=フンドリア
4 アルム=ルイス=マクレーン
5 ウィルム=ドーラ=マクレーン
・
・
・
・
15 レオン=カイル=ローゼンシュヴァリエ
・
・
・
・
25 フローラ=ブラン
Bクラス
・
・
・
まさかのヒロインが一番最後。乙女ゲームだと庶民のくせに成績が上位だなんて不正を働いたに違いないわとエルヴェラールを筆頭にした令嬢方に罵られるシーンがあったのだが。
いや、そんなことよりAクラスの序盤だ。
なぜ私からSクラスの面子がごっそりAクラスにも入れられているんだ。
もしかして乙女ゲームでエルヴェラールがAクラスにいてフローラを馬鹿にしていたのはSクラス所属のAクラスの生徒だったからだろうか。
そうなるとSクラス1番の彼は何者なんだ。
カイエン=ブロード=キーントリス。聞いたことのない名前だ。
しかしキーントリスだけはよく知っている。
キーントリスは私の、エルザとしてのお得意様の苗字だ。
もしかすると私が関わったところは乙女ゲームの設定から修正がかかるが、関わっていないところは修正がかからず、ヒロインとの衝撃的な出会いのように乙女ゲームと同じ道をたどるということになっているのかもしれない。
そうだとすれば私たちがSクラスに選ばれながらにAクラスに所属させられたことに納得がいく。
そしてそれにならうならば、私たちとは違い、Sクラスにのみ所属するカイエンはおそらく隠しキャラクターということになるだろう。
確証はまだ無いが家に帰ったら顧客名簿から調べてみよう。
昨日試験の後に立ったまま3時間もの説教を受けたのだから無理もない。
説教の内容は人形に魔術を放つ時、あまり加減せずに火の球を放ったせいで人形の破片があちこちに飛び、危うく怪我人が出るところだったというものだった。
第二演習場が吸収できるのはあくまで魔力のみで、魔力が宿ったものの魔力を吸い取って動きを止めることはできるが、ものを魔術で破壊した時に飛び散る破片には魔力が宿らないため、そのまま飛んでいってしまうという。
どんな魔術を使っても事故防止の壁がなんとかしてくれると思い、周りへの配慮はかけていたので私は反省して黙って立ったまま説教を受けた。
クラス分けは始業の20分前に玄関前に張り出されるため、あと5分は耐えなければならない。
はやく教室に行って座りたい。
私が震えながらその時を待っていると後ろから同じように震えた声が話しかけてきた。
「緊張で震えてるの? まま、まあ? 僕は余裕だだだけど?」
「そちらこそ体を震わせるほど緊張しているようですが? あと私は昨日の長時間の説教で運動不足の脚が悲鳴をあげているだけですのでご心配なく」
アルムはなぜか私の真横に立ち私の肩に手を置いた。
「あの~、人を支えにしないでいただけます?」
「うるさい! 丁度いい高さだったの!」
どうやら無意識のうちにやっていたことのようで、私に指摘されるや否やバッと手を離し、まるで汚いものにでも触ったかのように手を払った。
私もアルムに倣ってアルムに触られたところを払うとアルムがこちらを睨んできた。なんなんだよこいつ。
「君ねぇ……」
「あ、始まりましたよ」
私は文句を言いかけたアルムを制し運ばれてきた横幅が3メートルほどの板を見た。
しかし、板には何も書かれてはいなかった。
板を運んできた制服を着た先輩であろう2人組は板を魔術で高く浮かせた。
「それではクラス分けを発表します! クラス分けテストはまた来年もあるので今回思ったようにできなかった人は来年また頑張ろう!」
来年もあるのかよ。
先輩らしき2人組は何やら、詠唱しだした。詠唱が終わると板が光り、文字が浮かびだした。
「名前は成績順に並んでるからね。自分の名前の横の数字がそのまま出席番号になるよ」
順位がそのまま出席番号になるとか嫌すぎる。馬鹿がバレるじゃないか。
気を取り直して私は左上の方から自分の名前を探した。
Sクラス
1 カイエン=ブロード=キーントリス
2 エルヴェラール=フィオン=インヴィディア
3 ヴォルグ=リタ=イズフェス
4 ジェーン=ヴィヴィー=フンドリア
5 アルム=ルイス=マクレーン
まさかの2番手に私の名前があった。アルムはSクラスではあるが私よりも番号が後なので勝負は私が勝ちということで良いのだろうか。
「私の勝ちですね!」
「さ、3回勝負だから!」
アルムは尻尾を巻いて逃げていった。
私はヒロインの名前を探してAクラスのところを見た。乙女ゲームの設定と同じならフローラはAクラスにいるはずだからね。
Aクラス
1 エルヴェラール=フィオン=インヴィディア
2 ヴォルグ=リタ=イズフェス
3 ジェーン=ヴィヴィー=フンドリア
4 アルム=ルイス=マクレーン
5 ウィルム=ドーラ=マクレーン
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15 レオン=カイル=ローゼンシュヴァリエ
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25 フローラ=ブラン
Bクラス
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まさかのヒロインが一番最後。乙女ゲームだと庶民のくせに成績が上位だなんて不正を働いたに違いないわとエルヴェラールを筆頭にした令嬢方に罵られるシーンがあったのだが。
いや、そんなことよりAクラスの序盤だ。
なぜ私からSクラスの面子がごっそりAクラスにも入れられているんだ。
もしかして乙女ゲームでエルヴェラールがAクラスにいてフローラを馬鹿にしていたのはSクラス所属のAクラスの生徒だったからだろうか。
そうなるとSクラス1番の彼は何者なんだ。
カイエン=ブロード=キーントリス。聞いたことのない名前だ。
しかしキーントリスだけはよく知っている。
キーントリスは私の、エルザとしてのお得意様の苗字だ。
もしかすると私が関わったところは乙女ゲームの設定から修正がかかるが、関わっていないところは修正がかからず、ヒロインとの衝撃的な出会いのように乙女ゲームと同じ道をたどるということになっているのかもしれない。
そうだとすれば私たちがSクラスに選ばれながらにAクラスに所属させられたことに納得がいく。
そしてそれにならうならば、私たちとは違い、Sクラスにのみ所属するカイエンはおそらく隠しキャラクターということになるだろう。
確証はまだ無いが家に帰ったら顧客名簿から調べてみよう。
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