宮廷画家は悪役令嬢

悪役令嬢学園編

悪役令嬢は剣術部？

ガイダンスは教室で渡された紙の内容をおさらいするようなものと入寮手続きについての話だった。
部活動紹介は各部の代表が体育館の舞台で各々の部活の紹介をするだけの部や部活に使う道具や制服を装備して部活に全く関係のない劇や踊りをしている部があった。
部活動は剣術部、馬術部、格闘部、陸上部、古代魔術研究部、美術部、調理部、そしてヒロインが所属する予定の手芸部がある。そのほかに白薔薇の会という月に一度くらいの頻度で放課後に大規模なお茶会を開く同好会のようなものや会長を愛でる会というファンクラブのような部活動ほどの本格的な活動はしていないがそこそこ活発に活動している集団もあった。
ちなみに会長を愛でる会の会長とは紛れもなく私の兄のことなので会長を愛でる会への入会はもちろんお断りだ。


「みなさんはこれからどうなさいますか？　私は剣術部と古代魔術研究部を見学しに行こうかと思っているのですが」


私は部活に入るとするならば美術部に入部するのだが体験入部だけであれば剣術部と古代魔術部に入りたい。
理由は、剣術部は乙女ゲームでヴォルグ様が入っていた部活であるため、もしかすると体験入部によってスチルか何かしらの恩恵を得ることができるのではないかという下心と、古代魔術研究部は単純に興味が湧いたからだ。


「剣術部は俺も入る予定だからエルがよければ一緒にいかないか」


「ぜひ行きましょう」


ウィルムアルムは馬術部、ヒロインフローラは手芸部の見学に行きたいとのことだったため、私たちは解散し、私はまず、ヴォルグ様と共に剣術部を見学しに行くことにした。

剣術部は第一演習場で活動しており、体験入部では人型の人形を木剣で打つ体験をさせてくれるようだった。


「え！　女子だ！　女子がいるぞ！　うおおおおおお！」


剣術部の先輩らしき生徒が私を見て雄叫びをあげた。
すると演習場内の視線が一気に私とヴォルグ様に集まり、剣術部の方々が走って集まってきた。


「剣術部にようこそ！　そしてありがとう！　君は剣術部の花だ！」


先ほど雄叫びをあげた先輩がわざとらしい陳腐な劇のように私をたたえた。
周りをよく見ると演習場にいたのは全員男子で女子が見当たらなかった。
前世の部活動ではどの部活であっても大体は部員かマネージャーとして女子がいた。
しかしこの剣術部には女子が一人もいない。
剣術部員は皆程よく引き締まった体で凛々しい顔つきをしているため、前世の野球部男子やサッカー部男子のように女子マネージャー枠の争奪戦が起こりそうなのだがそうではないらしい。


「いや、あの、とりあえず見学だけ……」


「見学だけでも嬉しいです！　ありがとうございます！」


「あの、ヴォルグ、これって」


「剣術部はモテない部活ならしくてだな」


ヴォルグ様と私は小声で話し、剣術部の悲しい現実を知ってしまった。
剣術部はどうやら剣ばかりに熱をあげるせいで女子をないがしろにするという噂が一人歩きし、剣術部男子とは絶対に付き合うなという、前世の３B男子のような扱いを受けているらしかった。
実際は彼らはただ剣術が好きで熱血ではあるものの、とても紳士で優しい人が多いらしい。
だからと言ってもこれはやりすぎだと思う。


「よければ飲み物と椅子をどうぞ」


いつの間にか日傘と椅子とテーブルが用意され、テーブルにはオレンジの輪切りがコップの縁に飾られたジュースが置かれていた。