1 / 7
プロローグ
しおりを挟む
朝、登校する途中でたまたま蓋が開いていたマンホールの中に落ちたかと思ったら一面真っ白な世界に立っていた。
正面にはいかにもな服装の光り輝くイケメン。
あ、これはあのパターンだ。
日頃から暇さえあればインターネットで小説を読んでいた私は一瞬で状況を把握してしまった。
「君が」
「はい! 間違いありません! ところでチートはつきますか?」
「いやまだ何も言ってないからね?! でも話が早くて助かるよ! ところで君は工藤華さんで間違いよね?」
光り輝くイケメンは私の身元確認を始めた。
工藤華、普通科高校に通う17歳。以上。
「いや、確認事項少なすぎません? もっとほら、何かありません? 家族構成とか趣味とか好きな食べ物とか」
「お見合いじゃないからね?! 転生組合で形式上名前と職業だけを確認することになってるの! ごほん。では改めまして僕は第三位世界の転生管理人。君たち風に言うと地球の生き物の命を管理する神様ってところかな。僕のことは神様とでも呼んでよ!」
神様は、見た目は色素の薄い金髪に碧眼で長身のイケメンだというのにヘラヘラした話し方や身振り手振りが激しいせいで図体が大きい子供のようにしか見えない、残念イケメンという言葉がよく似合うお方だった。
「とりあえず説明させてもらうね。まずはなぜ君がこの空間に呼ばれたのかだね。君は奇しくもマンホールに落ちて亡くなったわけだけど、それって本当に奇しくもっていうか僕たち神様も予想してなかったんだよね。だって君、老衰で亡くなる予定だったからさ。多分数千年に一度あるかないかの時空の歪み的なやつだと思うんだ。本当に申し訳ない」
神様はぺこりと頭を下げた。それから顔を勢いよく上げると説明を続けた。全然申し訳ないとか思ってなさそう。ノリが軽い。
「それでだ。君には地球以外の世界に転生して二度目の人生を謳歌してもらうことになったから、この転生広場に来てもらったんだ! ということで君の最初の質問に答えるよ! 僕たちからのお詫びっていうことで転生先とチート能力が選べる権利がプレゼントされまーす! おめでとう!」
「転生先まで選べるんですか?! じゃあ魔法がある近世西洋ファンタジーの学園ものの乙女ゲームのもともとの性格やら見た目やらが原因で本当はヒロインをいじめてたわけじゃないけど誤解で婚約破棄されて領地を立て直したり商会を設立して婚約者を見返す系の金持ち伯爵家の悪役転生でお願いします!」
「ピンポイントすぎない?! というか金持ちの伯爵家って何! 金あるなら領地に回せよ! あ、悪役の生家だからか~……じゃないわ!」
私が一息で転生先の希望を言うと神様がツッコミを入れてきた。
実際に会話の中で手を振ってツッコミを入れる人なんているんだ。何? 神様たちの間では日常茶飯事? 知らんがな。
「普通は僕らが用意した転生先リストから選んでもらうんだけど……まあ、善処するよ。で、君はどんなチート能力が欲しいの? 大体の子は俺TUEEEだっけ? そんな感じの魔法全属性適正とかとりあえず力が強くなるやつとかで喜ぶんだけど。そうそう、あちら側の言語とかそういうのはデフォルトで理解できるようになってるからね」
もともと転生後の世界の言葉が理解できるのはありがたい。
そうなればチート能力はもしもの時のための保険になるものがいい。もしも国外追放なんてことになれば自分の身は自分で守らなければならなくなるし、異世界の病気や怪我も怖い。私が望んだ近世西洋ファンタジーなんて現代と比べると医療品が粗悪に違いない。
転生して志半ばで病死なんてまっぴらごめんだ。
「ではめちゃくちゃ強い魔法というかズドーンドカーンな最上級魔法をぽんぽん出せるやつで! あ、あと病気とか怪我が怖いので想像した薬品を作れるみたいな能力とか錬金術的な能力も欲しいです!」
「アバウトだね?! そして三つも要求するなんて厚かましいね?! まあ、一つとは言ってないし、今までの子が一つしか選べないと思ってただけなんだけどさ。いいよ、チート能力はその三つってことで」
やったぜ。これで私の異世界悪役転生は豊かな生活を送ることができるだろう。
「それじゃ、転生させるよ~! 困ったことがあれば転生者保険が1年間適用されるからHey! 神! って言ってくれれば僕と連絡が取れるからね」
私は光に包まれ、だんだんと意識が遠のいていった。
ああ、本当に転生するのか。これからの生活が楽しみだな。
この時の私はまだそんなことしか考えていなかった。
「Hey! 神!」
「ねぇ早くない?! まだ転生して5分しか経ってないんだけど!」
そう、それは五分前に遡る。
正面にはいかにもな服装の光り輝くイケメン。
あ、これはあのパターンだ。
日頃から暇さえあればインターネットで小説を読んでいた私は一瞬で状況を把握してしまった。
「君が」
「はい! 間違いありません! ところでチートはつきますか?」
「いやまだ何も言ってないからね?! でも話が早くて助かるよ! ところで君は工藤華さんで間違いよね?」
光り輝くイケメンは私の身元確認を始めた。
工藤華、普通科高校に通う17歳。以上。
「いや、確認事項少なすぎません? もっとほら、何かありません? 家族構成とか趣味とか好きな食べ物とか」
「お見合いじゃないからね?! 転生組合で形式上名前と職業だけを確認することになってるの! ごほん。では改めまして僕は第三位世界の転生管理人。君たち風に言うと地球の生き物の命を管理する神様ってところかな。僕のことは神様とでも呼んでよ!」
神様は、見た目は色素の薄い金髪に碧眼で長身のイケメンだというのにヘラヘラした話し方や身振り手振りが激しいせいで図体が大きい子供のようにしか見えない、残念イケメンという言葉がよく似合うお方だった。
「とりあえず説明させてもらうね。まずはなぜ君がこの空間に呼ばれたのかだね。君は奇しくもマンホールに落ちて亡くなったわけだけど、それって本当に奇しくもっていうか僕たち神様も予想してなかったんだよね。だって君、老衰で亡くなる予定だったからさ。多分数千年に一度あるかないかの時空の歪み的なやつだと思うんだ。本当に申し訳ない」
神様はぺこりと頭を下げた。それから顔を勢いよく上げると説明を続けた。全然申し訳ないとか思ってなさそう。ノリが軽い。
「それでだ。君には地球以外の世界に転生して二度目の人生を謳歌してもらうことになったから、この転生広場に来てもらったんだ! ということで君の最初の質問に答えるよ! 僕たちからのお詫びっていうことで転生先とチート能力が選べる権利がプレゼントされまーす! おめでとう!」
「転生先まで選べるんですか?! じゃあ魔法がある近世西洋ファンタジーの学園ものの乙女ゲームのもともとの性格やら見た目やらが原因で本当はヒロインをいじめてたわけじゃないけど誤解で婚約破棄されて領地を立て直したり商会を設立して婚約者を見返す系の金持ち伯爵家の悪役転生でお願いします!」
「ピンポイントすぎない?! というか金持ちの伯爵家って何! 金あるなら領地に回せよ! あ、悪役の生家だからか~……じゃないわ!」
私が一息で転生先の希望を言うと神様がツッコミを入れてきた。
実際に会話の中で手を振ってツッコミを入れる人なんているんだ。何? 神様たちの間では日常茶飯事? 知らんがな。
「普通は僕らが用意した転生先リストから選んでもらうんだけど……まあ、善処するよ。で、君はどんなチート能力が欲しいの? 大体の子は俺TUEEEだっけ? そんな感じの魔法全属性適正とかとりあえず力が強くなるやつとかで喜ぶんだけど。そうそう、あちら側の言語とかそういうのはデフォルトで理解できるようになってるからね」
もともと転生後の世界の言葉が理解できるのはありがたい。
そうなればチート能力はもしもの時のための保険になるものがいい。もしも国外追放なんてことになれば自分の身は自分で守らなければならなくなるし、異世界の病気や怪我も怖い。私が望んだ近世西洋ファンタジーなんて現代と比べると医療品が粗悪に違いない。
転生して志半ばで病死なんてまっぴらごめんだ。
「ではめちゃくちゃ強い魔法というかズドーンドカーンな最上級魔法をぽんぽん出せるやつで! あ、あと病気とか怪我が怖いので想像した薬品を作れるみたいな能力とか錬金術的な能力も欲しいです!」
「アバウトだね?! そして三つも要求するなんて厚かましいね?! まあ、一つとは言ってないし、今までの子が一つしか選べないと思ってただけなんだけどさ。いいよ、チート能力はその三つってことで」
やったぜ。これで私の異世界悪役転生は豊かな生活を送ることができるだろう。
「それじゃ、転生させるよ~! 困ったことがあれば転生者保険が1年間適用されるからHey! 神! って言ってくれれば僕と連絡が取れるからね」
私は光に包まれ、だんだんと意識が遠のいていった。
ああ、本当に転生するのか。これからの生活が楽しみだな。
この時の私はまだそんなことしか考えていなかった。
「Hey! 神!」
「ねぇ早くない?! まだ転生して5分しか経ってないんだけど!」
そう、それは五分前に遡る。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件
エース皇命
ファンタジー
前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。
しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。
悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。
ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる