悪役転生を望んだが男にしろとは言っていない!

鉛野謐木

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プロローグ

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朝、登校する途中でたまたま蓋が開いていたマンホールの中に落ちたかと思ったら一面真っ白な世界に立っていた。
正面にはいかにもな服装の光り輝くイケメン。
あ、これはあのパターンだ。
日頃から暇さえあればインターネットで小説を読んでいた私は一瞬で状況を把握してしまった。


「君が」


「はい! 間違いありません! ところでチートはつきますか?」


「いやまだ何も言ってないからね?! でも話が早くて助かるよ! ところで君は工藤華さんで間違いよね?」


光り輝くイケメンは私の身元確認を始めた。
工藤華、普通科高校に通う17歳。以上。


「いや、確認事項少なすぎません? もっとほら、何かありません? 家族構成とか趣味とか好きな食べ物とか」


「お見合いじゃないからね?! 転生組合で形式上名前と職業だけを確認することになってるの! ごほん。では改めまして僕は第三位世界の転生管理人。君たち風に言うと地球の生き物の命を管理する神様ってところかな。僕のことは神様とでも呼んでよ!」


神様は、見た目は色素の薄い金髪に碧眼で長身のイケメンだというのにヘラヘラした話し方や身振り手振りが激しいせいで図体が大きい子供のようにしか見えない、残念イケメンという言葉がよく似合うお方だった。


「とりあえず説明させてもらうね。まずはなぜ君がこの空間に呼ばれたのかだね。君は奇しくもマンホールに落ちて亡くなったわけだけど、それって本当に奇しくもっていうか僕たち神様も予想してなかったんだよね。だって君、老衰で亡くなる予定だったからさ。多分数千年に一度あるかないかの時空の歪み的なやつだと思うんだ。本当に申し訳ない」


神様はぺこりと頭を下げた。それから顔を勢いよく上げると説明を続けた。全然申し訳ないとか思ってなさそう。ノリが軽い。


「それでだ。君には地球以外の世界に転生して二度目の人生を謳歌してもらうことになったから、この転生広場に来てもらったんだ! ということで君の最初の質問に答えるよ! 僕たちからのお詫びっていうことで転生先とチート能力が選べる権利がプレゼントされまーす! おめでとう!」


「転生先まで選べるんですか?! じゃあ魔法がある近世西洋ファンタジーの学園ものの乙女ゲームのもともとの性格やら見た目やらが原因で本当はヒロインをいじめてたわけじゃないけど誤解で婚約破棄されて領地を立て直したり商会を設立して婚約者を見返す系の金持ち伯爵家の悪役転生でお願いします!」


「ピンポイントすぎない?! というか金持ちの伯爵家って何! 金あるなら領地に回せよ! あ、悪役の生家だからか~……じゃないわ!」


私が一息で転生先の希望を言うと神様がツッコミを入れてきた。
実際に会話の中で手を振ってツッコミを入れる人なんているんだ。何? 神様たちの間では日常茶飯事? 知らんがな。


「普通は僕らが用意した転生先リストから選んでもらうんだけど……まあ、善処するよ。で、君はどんなチート能力が欲しいの?  大体の子は俺TUEEEだっけ?  そんな感じの魔法全属性適正とかとりあえず力が強くなるやつとかで喜ぶんだけど。そうそう、あちら側の言語とかそういうのはデフォルトで理解できるようになってるからね」


もともと転生後の世界の言葉が理解できるのはありがたい。
そうなればチート能力はもしもの時のための保険になるものがいい。もしも国外追放なんてことになれば自分の身は自分で守らなければならなくなるし、異世界の病気や怪我も怖い。私が望んだ近世西洋ファンタジーなんて現代と比べると医療品が粗悪に違いない。
転生して志半ばで病死なんてまっぴらごめんだ。


「ではめちゃくちゃ強い魔法というかズドーンドカーンな最上級魔法をぽんぽん出せるやつで! あ、あと病気とか怪我が怖いので想像した薬品を作れるみたいな能力とか錬金術的な能力も欲しいです!」


「アバウトだね?! そして三つも要求するなんて厚かましいね?! まあ、一つとは言ってないし、今までの子が一つしか選べないと思ってただけなんだけどさ。いいよ、チート能力はその三つってことで」


やったぜ。これで私の異世界悪役転生は豊かな生活を送ることができるだろう。


「それじゃ、転生させるよ~! 困ったことがあれば転生者保険が1年間適用されるからHey! 神! って言ってくれれば僕と連絡が取れるからね」


私は光に包まれ、だんだんと意識が遠のいていった。
ああ、本当に転生するのか。これからの生活が楽しみだな。
この時の私はまだそんなことしか考えていなかった。


「Hey! 神!」


「ねぇ早くない?! まだ転生して5分しか経ってないんだけど!」


そう、それは五分前に遡る。
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