悪役転生を望んだが男にしろとは言っていない!

鉛野謐木

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はじめてのHey!神!

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私が目を覚ますと知らない天井が目に入った。いや、違う。これはアレだ。


「天蓋だ!」


私は乙女の憧れ、天蓋付きのベッドに眠っていたのだ。これはしっかり金持ち伯爵家に転生できた予感。ありがとう神様、私、貴方の信者になる。
さっそく自分の姿を見るためにガバッと勢いよく起き上がると全身に激痛が走った。


「いっっっっったい!」


あまりの痛みに思わず叫んでしまった。私は叫んで勢いよく倒れこんだ反動で走った痛みで悶え苦しんだ。
私の叫びを聞いてか部屋の扉が開いて、メイド服の美少女が入ってきた。


「坊ちゃん?! お目覚めになられたのですね! 今旦那様をお呼びして参ります!」


え? 坊ちゃん? 確かに私の声は中性的な声だったけど、坊ちゃん?


「あの、待って。鏡とかってありますか?」


「手鏡でよろしければ」


「ありがとうございます」


私は手鏡を受け取り、自分の姿を写すと鏡には白がベースで所々黒のメッシュが入った髪に紫色の瞳の中性的な美人さんが写っていた。


「坊っちゃんがお礼をおっしゃるなんて……! まだお加減がよろしくないのね……うわーん旦那様~!」


美少女メイドが泣きながら部屋を飛び出して行った。この体の主は性格が悪い人間だったのかもしれない。
そんなことより、私を坊っちゃんと呼ぶとはどういうことだ。こんなに美少じ……待って胸が断崖絶壁すぎる。
あと、何とは言わないが、ある。


「Hey! 神!」


そして今に至る。


「あ、本当に戻ってこれた……じゃなくて!」


Hey! 神! と唱えると私は少し前までいた転生広場に戻ることができた。
転生広場ではありがたいことに立っていることができ、痛みも感じなかった。


「ねぇ早くない?! まだ転生して5分しか経ってないんだけど!」


「いやいやいやいや! あのですね神様! 私、悪役転生を希望しましたが死にかけの男にしてくれなんて言ってませんからね?!」


私は鬼気迫る表情で神様に詰め寄った。


「いや、あのね。その……善処はしたんだよ? でも乙女ゲームの世界で死にかけてる悪役がその子しかいなくてだね……」


曰く、普通の転生なら記憶はそのままに赤ちゃんスタートなのだが、私のように誰かに転生したいという場合は条件に合う死の淵に立っている人間を探して転生者の魂を入れるのだという。
たまたま私が転生するタイミングで死の淵に立っている魔法がある西洋ファンタジーの学園ものの乙女ゲームの金持ち伯爵家の悪役はこの体しかなかったらしい。


「そ、それに君! 悪役とは言ってたけど悪役令嬢とは言ってなかったからね! 希望に沿ってる形になってるからね!」


くっ! 盲点だった。私の中では乙女ゲームの悪役イコール女の公式があったからきっと神様も同じように思っていると思ったのに。


「盲点をついてくるなんて神様錯視! あ、そういえば乙女ゲームの悪役が男なんて聞いたことがないんですけど私は一体どの乙女ゲームに転生したんですか?」


「どのって……そもそも君、乙女ゲームなんてやったことないFPS大好き人間だったでしょ」


神よ、なぜそれを知っている。


「多分ネット小説で乙女ゲーム転生読んでた影響で悪役転生なんて言い出したんだよね。大丈夫、一応攻略本はプレゼントした・・から」


「え?プレゼントした・・?」


「うん。部屋の本棚に入れておいたよ。君が読むと乙女ゲームの攻略本に見えるけど他の人にはただの冒険譚にしか見えないから安心してね。本の装丁も君にしか攻略本だってわからないようにしてあるからね」


この神、できる。


「なんかその、何から何まですみません……」


「いやいや、良いってことよ! それじゃ、異世界生活頑張ってね~! 」


神様は爽やかな笑顔を私に向けると、私は光に包まれ、転生後の世界に戻ってきた。
さっそく本棚を探そうと起き上がるがまたもや激痛が走り、悶える羽目になった。
うん。後で誰かにとってもらおう。さっき美少女メイドちゃんが旦那様を呼んでくるって言ってたしね。
待って旦那様って、私の夫ってことじゃないよね……?
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