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はじめてのHey!君!
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痛みに悶えていると美少女メイドちゃんがあの神様と張り合えそうなくらいのイケメンを連れて戻ってきた。
「ジーク! 目が覚めたか!」
そうか私はジークというのか。ところでこの人が旦那様で良いのだろうか。
「あの、どちら様でしょうか? あと、ジークとは僕のことですか?」
一応一人称を僕にしてみた。なんかこの体になってから私というのにしっくりこなくなったのだ。“僕”にもまだ違和感があるのだがじきに慣れるだろう。
「そんな……命は助かったのに、記憶が……」
イケメン旦那様が膝から崩れた。
僕の名前はジークハルト・エリオス。15歳で、婚約者はいないが希望通り金持ち伯爵家の一員だ。男だけど。
どうやら旦那様とは館の主人のことで、彼はジークの、僕の父親だという。
母親のことを聞いたら母親は二年前に他界していると言われ、気まずい空気が流れた。
「……この様子では入学式には出席できなそうだな。いっそのこと来年からにしようか?」
乙女ゲームの舞台となる学園のことだろうか。これはどうにかして今年中に入学しなければならない。
「その、入学式はいつでしょう?」
「二週間後だ」
この人はおそらく全治数ヶ月の怪我をしている上に記憶喪失の息子を無理やり学園に放り込むことなんてできない人間だ。
そうだとすれば今年中の入学は厳しい。どうにかして二週間で怪我を治してこの世界の知識をつけないと。
「できれば学園には今年中に入りたいです」
「……厳しいが、善処しよう。優秀な治癒術師が残って入れば良かったのに。こんな時に限って……」
治癒術師とはファンタジーではおなじみの回復魔法を専門とする人のことで、現在は魔王が復活したとかで優秀な治癒術師は魔王討伐軍に徴兵され、遠征に出ているらしい。
「希望が叶えられなかったらすまない。また、何か欲しいものでもあったら言いなさい」
そう言い残して父は部屋を出ようとしたので本棚から冒険譚をとって欲しいと言った。
ジークはあまり勤勉ではなかったようで本の類は少なく、差し出されたのはたった二冊の本だった。
神様が言っていた通り、一冊は僕には攻略本だとわかる見た目をしていた。
「ありがとうございます」
「ああ。あまり無理はするなよ」
父が部屋を出た後、美少女メイドちゃんがベッドの隣に置かれたサイドテーブルにお茶を出してくれた。
美少女メイドちゃんの名前はシエラ。名前まで可愛いなんて人生勝ち組だ。
シエラは何かあったらベルを鳴らして呼ぶようにと言うと部屋を出た。
部屋に他に誰もいないのを確認すると、さっそく攻略本を開いた。
最初のページは乙女ゲームのあらすじだった。
下町の花屋で働いていた主人公リリィはある日、馬車に轢かれそうになった少年を助けようとして魔法を使う。
リリィの魔法によって少年は助かり、ことなきを得たが、リリィの魔法が馬車に乗っていた貴族の目に止まってしまう。
リリィの素性は貴族によって調べあげられ、リリィはモニカ男爵の私生児だったことが判明する。
モニカ男爵に引き取られたリリィは王立魔法学園に入学するすることになる。
王立魔法学園に通うのは貴族や裕福な商人の子息ばかりで庶民出身で天真爛漫な性格のリリィは瞬く間に注目の的となり、攻略対象たちはリリィに惹かれていく。
なかなかうまくあらすじ書けたでしょ?神様より。
って、神様が書いたんかーい!
あらすじというかヒロインちゃんの学園に入った経緯だ。あまり役に立たない。
ページをめくると、次のページは目次だった。
世界観、登場人物、攻略対象の個別攻略方法、神様のコメント。
神様のコメントって何。巻末だし後回しにしていいよね。
一応順番通りに読み進めようと思い、世界観のページを開いた。
「Hey! 君!」
はずだったのだが何故か僕は転生広場に立っていた。
「ジーク! 目が覚めたか!」
そうか私はジークというのか。ところでこの人が旦那様で良いのだろうか。
「あの、どちら様でしょうか? あと、ジークとは僕のことですか?」
一応一人称を僕にしてみた。なんかこの体になってから私というのにしっくりこなくなったのだ。“僕”にもまだ違和感があるのだがじきに慣れるだろう。
「そんな……命は助かったのに、記憶が……」
イケメン旦那様が膝から崩れた。
僕の名前はジークハルト・エリオス。15歳で、婚約者はいないが希望通り金持ち伯爵家の一員だ。男だけど。
どうやら旦那様とは館の主人のことで、彼はジークの、僕の父親だという。
母親のことを聞いたら母親は二年前に他界していると言われ、気まずい空気が流れた。
「……この様子では入学式には出席できなそうだな。いっそのこと来年からにしようか?」
乙女ゲームの舞台となる学園のことだろうか。これはどうにかして今年中に入学しなければならない。
「その、入学式はいつでしょう?」
「二週間後だ」
この人はおそらく全治数ヶ月の怪我をしている上に記憶喪失の息子を無理やり学園に放り込むことなんてできない人間だ。
そうだとすれば今年中の入学は厳しい。どうにかして二週間で怪我を治してこの世界の知識をつけないと。
「できれば学園には今年中に入りたいです」
「……厳しいが、善処しよう。優秀な治癒術師が残って入れば良かったのに。こんな時に限って……」
治癒術師とはファンタジーではおなじみの回復魔法を専門とする人のことで、現在は魔王が復活したとかで優秀な治癒術師は魔王討伐軍に徴兵され、遠征に出ているらしい。
「希望が叶えられなかったらすまない。また、何か欲しいものでもあったら言いなさい」
そう言い残して父は部屋を出ようとしたので本棚から冒険譚をとって欲しいと言った。
ジークはあまり勤勉ではなかったようで本の類は少なく、差し出されたのはたった二冊の本だった。
神様が言っていた通り、一冊は僕には攻略本だとわかる見た目をしていた。
「ありがとうございます」
「ああ。あまり無理はするなよ」
父が部屋を出た後、美少女メイドちゃんがベッドの隣に置かれたサイドテーブルにお茶を出してくれた。
美少女メイドちゃんの名前はシエラ。名前まで可愛いなんて人生勝ち組だ。
シエラは何かあったらベルを鳴らして呼ぶようにと言うと部屋を出た。
部屋に他に誰もいないのを確認すると、さっそく攻略本を開いた。
最初のページは乙女ゲームのあらすじだった。
下町の花屋で働いていた主人公リリィはある日、馬車に轢かれそうになった少年を助けようとして魔法を使う。
リリィの魔法によって少年は助かり、ことなきを得たが、リリィの魔法が馬車に乗っていた貴族の目に止まってしまう。
リリィの素性は貴族によって調べあげられ、リリィはモニカ男爵の私生児だったことが判明する。
モニカ男爵に引き取られたリリィは王立魔法学園に入学するすることになる。
王立魔法学園に通うのは貴族や裕福な商人の子息ばかりで庶民出身で天真爛漫な性格のリリィは瞬く間に注目の的となり、攻略対象たちはリリィに惹かれていく。
なかなかうまくあらすじ書けたでしょ?神様より。
って、神様が書いたんかーい!
あらすじというかヒロインちゃんの学園に入った経緯だ。あまり役に立たない。
ページをめくると、次のページは目次だった。
世界観、登場人物、攻略対象の個別攻略方法、神様のコメント。
神様のコメントって何。巻末だし後回しにしていいよね。
一応順番通りに読み進めようと思い、世界観のページを開いた。
「Hey! 君!」
はずだったのだが何故か僕は転生広場に立っていた。
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