悪の組織に人体改造された俺、目覚めると組織が壊滅していたので、ヒーローを目指してみようと思います。

銀猫

文字の大きさ
12 / 28

4話

しおりを挟む
 ソラ宅の大掃除から三日後。つまりタコパ当日。俺は相変わらず家でゴロゴロしていた。

「あ~……」

 別に今日まで怠惰に過ごしていたわけじゃない。
 できるアルバイトはないかと毎日探してはいるものの、こんな素性の怪しい奴を雇ってくれる所は中々ない。改めて、仕事を紹介してくれていた下垣は凄かったんだなと思わされる。

「どうすっかなぁ、これから……」

 暇な時間ができれば、自然とこれからについて考えてしまう。
 これからとは仕事の事でもあるが、人生においてやりたい事。
 
「……」

 ヒーローになりたい。
 あの日、確かに俺はヒーローになりたいと思った。今もこの思いは変わらない。
 けれど、改めて思うのだ。ヒーローっていうのはなんなのかと。

 ヒーローという職業についてお金を稼ぎたいのか、はたまた誰かを助ける行為をしたいのか。
 俺の中のヒーロー像は、まだ固まり切っていない。
 ただ、今もなお目を瞑ると、あの日の背中を思い出す。

「……っと、ダメだダメだ」

 このまま考えていてもドツボにはまるだけで何にもならない。
 とにかく今はやるべき事をやって体を動かそう。
 時計を見ると、午後二時を回ったところ。約束の時間まで後四時間ある。

「そうだ、買い出し行かないと」

 たこ焼き器も材料も揃えてあると、昨日ソラから連絡が来た。既に準備は万端だが、更に楽しむ為にはもう少しだけ追加したい。
 ソラの提案で、たこ焼きに入れてみたい具材を各々で持ち寄ろうと言う事になり、俺も何か持っていく流れになった。

 今も特に思いついていないが、まあスーパーに寄って色々見れば何か思いつくだろう。
 ついでに自炊用の食材も買っておきたい。

「んー!!良い天気だ」

 マンションを出ると、気持ちのいい晴天が俺を迎えてくれる。
 春特有の暖かい日差しに、桜の香りを乗せた穏やかな風。外を歩くのにもってこいの天気だ。
 いつもならバスにでも乗って移動するのだが、今日はなんとなくこの天気を味わいたいと思い、スーパーまで歩く事にした。

「平和だ」

 遠くから聞こえる子供達の笑い声。偶にすれ違う人達もみな穏やかに見える。これが天気の力か。
 全てが静かなのではなく、所々聞こえる人の営みがまた気持ちいい。
 こういう穏やかで平穏な日常の連続こそが、平和と呼ばれるのだろう。

 穏やかな時間を感じながら、ゆっくりと片道一時間ほどかけて、お目当てのスーパーに辿り着く。

「さて、何買おうか」

 とりあえず、お目当ての特価品を買い物カゴに放り投げてから、もう一つの目的であるたこ焼きの具を考える。

 タコは買ってあると言っていたし、チーズやソーセージはこの前の掃除で冷蔵庫を確認した時に入っていたのを見た。
 態々不味いものを作る気はないが、安牌な物は大体埋まっている。

「不味い、何も思いつかない」

 タコパと言うものを体験した事がないから、何を買っていけば良いのか思いつかない。
 スーパーの中をうんうんと悩みながら何周も歩く。

「……いっそスイーツもありか」

 ふと、お菓子コーナーのお徳用チョコレートが目に止まった。
 たこ焼きの生地には合わないだろうが、ホットケーキミックスを使えばそれなりの物が出来るだろう。

 チョコレートとホットケーキミックス。他にもクッキーやら冷凍ベリーやらをカゴに入れてレジに向かう。
 何を入れれば美味しいかわからないが、これだけ種類を揃えておけば何かしら美味しい物が出来る筈。
 レジに商品を持っていきお金を払う。持参したマイバックに買った商品を詰め込み、スーパーを出る。

「よしよし、ミッションコンプリート」

 最初の予定と違ったが、案外良い買い物ができたんじゃないだろうか。
 良い買い物が出来たと気分を良くしながら、帰りも歩く事にした。

 暖かい日差しに当てられながらの散歩は、やはり気持ちいい。
 もう少しだけこの暖かな日差しを堪能したいから、こっそり異能を使ってマイバックの中を冷やしておく。
 これで食材が痛んだり溶けたりする心配はない。

 用事は済んだ。後は帰るだけで、約束の時間まで十分にある。帰ってもどうせやる事がないし、帰り道は少し遠回りする事にした。

 穏やかで暖かな、平和という名の日常。何もない事が、この時代では何よりの贅沢。
 だからだろう。この混迷の時代において、平和など長続きしないのは当然のことであった。

 ウウーー!!!!

 町中に設置された警報器から、甲高いサイレンがこれでもかと鳴り響く。
 この辺りだけじゃない。もっと広く、もっと遠くの街でも、同じようにサイレンや警報が鳴り響いていた。

「なんだ!?」

 俺の問いに答えるように、町中のスピーカーから警告が流れ始めた。

『現在首都全域にて大規模な異能テロが発生しました!!住民の皆様はお近くのヒーローの指示に従い、指定の区域まで避難してください。繰り返します。現在首都全域にて大規模な異能テロが発生しました!!』

 明らかな異常事態の発生。
 詳細を知るため駆け出そうとした所、この異常の原因があちらから現れてくれた。

 俺の前に突如現れた二メートルほどの黒い円。
 円から現れたのは、三体の人型。ただし、人のような肉はついておらず、骨格から外装まで金属製。おまけに右腕には銃が取り付けられているときた。

『生命体発見、これよりーー』
「因子解放、鋼鉄怪人アイアーン!!」

 人型のロボット達が言い終わるよりも先に、俺は異能で鋼鉄と化した右の拳を容赦なくロボットの頭部に叩き込んだ。

『脅威レベル更新。捕獲は不能と断定、排除します』

 頭部を失うとロボットは動きを止め、地面に倒れる。
 嬉しい事に壊す事は簡単で、悲しい事に、どうやらもう俺には手加減してこないらしい。
 残り二体が、右の銃口を俺に向ける。

『排除します排除します排除しまー』
「因子解放、凍結怪人ツンドラ」

 息が白い。
 吐き出した息に含まれる水分が凍結し、キラキラと光を反射する。
 さっきまであれほど暖かな春を満喫していたのに、ここだけは真冬を超える寒さをしていた。

「一体一体はそこまで強くないな」
 
 銃口をこちらに向けたまま、分厚い氷に閉ざされた二体のロボットを。
 表面をコンコンと叩いてみるも、中のロボット達は反応を示さない。
 
「なんだってんだコイツらは」

 敵、だろう。
 だが、ただの敵ではない。さっきの放送を聞く限り、今首都ではコイツらが沢山出ていると見える。
 今までの個人が起こしていた異能犯罪とは違う。力ある組織が起こしてた異能テロ。

「いったい誰が……」

 結社ダークマターは既に壊滅している。残党も、復興できるだけの力はないと下垣が言っていた。
 残されるのは、ただ一つ。新たな組織の誕生。

「確か、怪人ゲノム作ってる奴らがいた筈、そこか?」

 今世間にばら撒かれているらしい怪人ゲノム。
 下垣の話では、どこか新しい組織が作っているらしい。このロボット達も、おそらく新しい組織が作った物なのだろう。

「面倒だな……!!」

 一応、氷ごとロボットを砕いておく。
 頭部を破壊したのも含め、合計三体のロボットを粉々に砕き、俺は持っている荷物を置いて来た道を引き返す。

 このままでは、せっかくのタコパが台無しだ。
 少しでも早くこの騒動を解決しなければ、きっとココロは無理をしてでも駆けつけるだろう。もしかしたら、また大怪我を負うかもしれない。でも、彼女は戦う筈だ。
 だって彼女は、ヒーローだから。

「因子、解放……!」

 俺は民間人だ。逃げるのが正解で、ココロに後を任せるのが正しい選択。
 だけど、今逃げれば、俺は二度とヒーローを目指せない。なにより、今日を楽しみにしていた彼女たちの笑顔を奪おうとする敵を、放ってはおけない。

 俺が歩みたい道は、目指すヒーローは、彼女達の笑顔を守る為に立ち上がる筈だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト
ファンタジー
ある日、平凡な男子高校生である宇尾根 治は全知全能になった。 何の前触れもなく突然にその力を手に入れた主人公が、表向きには平凡な高校生として過ごしつつ、裏では色んな世界を自由気ままに旅したりして遊ぶ話。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました

KABU.
ファンタジー
「記録係なんてお荷物はいらない」 勇者パーティを支えてきた青年・ライトは、ダンジョンの最深部に置き去りにされる。 彼のスキル《記録》は、一度通った道を覚えるだけの地味スキル。 戦闘では役立たず、勇者たちからは“足手まとい”扱いだった。 だが死の淵で、スキルは進化する。 《超記録》――受けた魔法や技を記録し、自分も使える力。 そして努力の果てに得たスキル《成長》《進化》が、 《記録》を究極の力《アカシックレコード》へと昇華させる。 仲間を守り、街を救い、ドラゴンと共に飛翔する。 努力の記録が奇跡を生み、やがて―― 勇者も、魔王も凌駕する“最強”へ。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界配信中。幼馴染みに捨てられた俺に、神々(視聴者)がコメントしてくるんだが。

葉月
ファンタジー
コルネ村で、幼なじみであり恋人でもあったユリアナと、ささやかな幸福を分かち合って生きていたロイド。 だがある日、ユリアナは女神の愛子として目覚め、国王の命により王都へと連れ去られる。 突然、日常を奪われ、運命に引き裂かれたロイドは、抗う術も持たぬまま、否応なく大きな流れへと呑み込まれていく。 これは、奪われたものを取り戻すため、そして理不尽な運命に抗おうとする、一人の少年の物語である。

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

処理中です...