悪の組織に人体改造された俺、目覚めると組織が壊滅していたので、ヒーローを目指してみようと思います。

銀猫

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5話

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「借りるぞ下垣……!!」
『ARMZ』

 下垣の遺品、結社ダークマターが作り戦闘員に配布した黒いデバイスを使い、全身真っ黒のバトルスーツを展開。
 フルフェイスの装甲に、体を守るプロテクター。機械的な補助機能で身体能力をブーストしてくれる。
 これでいくら力を使っても、最悪怪人に変身したとしても、身バレする心配はない。

「お母さん!!」
「やめて!!この子だけも!!」

 人の多そうな場所に向かって走っていると、逃げ遅れたのか、小さな女の子を庇うように抱きしめる女性が三体のロボット達に追い詰められていた。

「誰か助けて……!!」

 誰かの助けを、俺は聞き逃さない。
 勢いのままに、女性を囲っているロボットのうち一体を殴りつける。
 勢いを乗せた拳は、バトルスーツによって強化され異能を使わずともロボットを吹き飛ばす。

「こいつは良い……!!」

 続けて二発目。近くにいたロボットにもう片方の拳を叩き込む。
 二体目を破壊した所で、背後から俺に銃口を向けるロボット。

「はっ!!」
 
 放たれる弾丸は、大きく跳躍した俺を捉えられない。どこか遠くに飛んでいく弾丸を尻目に、空中で回転を加えながら、銃口を空中に向けようとするロボットの頭部を蹴りで破壊する。
 これで全部。

「大丈夫か」
「は、はい。貴方は……」
「俺のことはいい。あんた、逃げる場所はあるのか?」
「ここから少し先に、緊急避難用のシェルターが……、ヒーローもそこに……」
「なら、さっさとここから離れろ」

 どうやら、彼女達を送り届ける事は不可能らしい。

『脅威発見。目標を排除します』

 ガシャンガシャン、と五月蝿い足音が響き渡る。
 俺の前には、新たに現れた7体のロボット。

「早く行け!!」
「は、はい!!」

 彼女達を守りながら戦うのは不可能。ロボット達の流れ弾もあるが、俺の攻撃に巻き込んでしまう。
 子供を抱えて走って逃げる女性を背に、俺はロボット達の前に立ち塞がる。

『排除します』
「やってみろよスクラップ……!!」

 七体のロボットが放つ一斉射撃。
 無数の弾丸が、雨の様に降り注ぐ。

「因子解放、鋼鉄怪人アイアーン!!」
 
 纏っているバトルスーツ事鋼鉄化し、弾丸を真正面から受け止める。
 下手に避けたり、受け流したりすれば後ろの女性に当たる可能性がある。故に、防御力を強化して無理やりゴリ押す。

「オラァ!!!!」

 鋼鉄化しても、衝撃まで無効化しているわけじゃない。銃弾を一発受ける度に鈍い痛みが体に蓄積する。
 体の痛みを噛み締めて、流されそうになる体を無理やり前に進め、目の前に立つロボットに鋼の拳をぶち込む。
 一発、二発、三発。仲間がガラクタになって沈もうとも、生き残りはただ銃弾を放つばかり。
 出来の悪い人形には仲間意識なんてものはないらしい。

「たく、いってえなぁ!!」

 最後の一体を砕き、溜まった痛みを吐き出すように叫ぶ。

「所詮はガラクタか」

 一体一体の性能は高くない。俺でなくとも、ヒーローであれば対処できるだろう。
 だが、この数だけは厄介だ。

「ちとマズいかもな」

 ヒーローには守る物が多い。
 いくら木偶人形でも、背中に市民を抱えれば苦戦する。一度足を止めれば、数だけは誇れるコイツらの餌食になりかねない。

 ドン!!
 これからどう動こうかと迷っていると、遠くから爆発音が聞こえた。
 更に連続してドン!!ドン!!ドン!!
 激しい戦闘音がここまで聞こえてくる。

「っ!!行くか……!!」

 近くのシェルターも気になるが、女性曰くヒーローがいるらしいので、この辺りのことは名も知らないヒーローに任せる。
 今は一刻も早く、あそこに向かわなくては。

 追い風を背に、颯の如く街を駆け抜ける。今はただ目的の場所に急ぐのみ。
 
「邪魔だあ!!!!」

 目的地に近づけば近づくほど、目に見えてロボットが増えてきた。
 逐一ロボットを殴り飛ばしながら走った先には、休日には歩行者天国になるほど人が溢れる繁華街。
 いつもは平日でも人が溢れている筈が、今日に限っては人の気配がまるでしない。代わりに、機械仕掛けの人型がガチャガチャと騒音を立てている。

「バーニングゥ!!ファストォ!!!!」

 爆発音。続いて、熱い空気が街を駆ける。
 機械溢れるこの街に、唯一姿を見せる人間がいた。
 赤い装甲を身に纏った男が、両手に炎を纏わせながらロボット達相手に大立ち回りをしている。

「バーニング、ショット!!」

 両手の炎を一つに圧縮し、放つ。
 十体以上のロボットを巻き込みながら爆発するも、周りのロボット達が尽きる様子はない。

「ハァハァ、流石に無茶だったか……!!」

 男は戦う姿勢を崩さないが、明らかに息が上がっている。長い事戦い続けた疲労から、集中力が切れかけているのだ。
 現に、背後から片腕がブレードになっている近接戦闘用ロボットの接近に男は気づけていない。

「因子解放、火炎怪人ヘルフレイム!!」

 右手に業火を集中し、拳を突くように炎を放つ。
 灼熱の炎に焼かれたロボットは、体を高温で溶かされ、爆発の衝撃で粉々に砕け散る。

「その姿、お前まさか!?」
「良いから集中しろ!!来るぞ!!」

 俺の姿に驚く男を叱咤し、お互いが背中を守り合う様に立つと、迫るロボット達を迎撃する。
 
「これはお前の仕業か?ダークマターの残党」
「だとしたら、ここであんたと共闘ないっての!!」
「それもそうか……!!」

 一人から二人。増えた数は一だが、狙ってくる敵の数は半減した。
 息を整える時間を確保し、余裕を取り戻した男はロボット達を薙ぎ倒しながら話しかけてくる。

「ちっ!!いくら何でも数が多すぎる!!」

 どれだけロボット達を薙ぎ払っても、次から次に湧いてくる。確実に数を減らしている筈なのに、終わりが一向に見えない。

「なあ知ってるか、こいつら結構単純なんだぜ」
「急になんだ」
「俺達みたいな脅威を見つけると、全滅させない限り周りの仲間を呼び続けるんだ」
「お前、まさか」

 ロボット達は最低限の機能だけを持つ粗悪な量産品。脅威を見つけると周囲の仲間を呼び寄せる信号を放つ。速攻で破壊すれば信号が途切れ、場所を見失い元の任務に帰っていく。
 だが、逆に言えば信号を放つ機体を放置すれば、周囲のロボット達を呼び寄せ続けるという事。
 
 この場には大量のロボット。間違いない、この男は自分を餌にして誘き寄せているのだ。
 
「ここら辺の敵は全部ここに集中する筈だ。逃げたいなら逃げろ」
「あんたはどうすんだ」
「俺が逃げたら、ここにいる敵が市民達を狙う。逃げるわけにはいかない」
「無茶だ。あんたもう限界だろ」
 
 俺が来たことで多少余裕を持っただろうが、これまでの疲労で限界は近い筈。いや、既に限界かもしれない。

「だからなんだ」

 俺の予想は正しい。
 男の息は上がり、手足は疲労で震えている。
 だとしても、

「ここで逃げるようなら、俺は最初からヒーローになんてなってねえ……!!」

 震える手足に力を込め、意地と誓いで大地に立つ姿は、まさしくヒーローだった。

「しょうがない、付き合ってやる」
「とっくに応援は呼んでんだ。お前がいなくても何とかなる」
「嘘つけ。俺がいないと応援が来るまでにお陀仏だろ」

 俺がいれば軽口を叩く余裕くらいは生まれる。
 何より、この男を見捨てる気にはなれなかった。

「付き合いがいいな。お前本当にダークマターの残党か?」
「さて、どうだろうな……!!」

 増え続ける敵を見据える。
 突如、二人は同時に駆け出す。合図はなかった。お互いに今だ!と言えるタイミングで駆け出したのが偶々同じだっただけ。
 後ろは見ない。今日初めて会っただけの名前も知らない赤の他人。信用も信頼もないけれど、これまでの共闘で理解した。
 この男/こいつになら背中を任せても良い。

「死ぬなよヴィラン!!お前には後で聞きたい話があるんだからな!!」
「くたばるなよヒーロー!!ここまで助けたんだ、死んだら目覚めが悪くなる!!」

 二つの炎が、戦場で燃え盛る。
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