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第一章
day.20
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結局あの後、冬悟から離婚を切り出されることは、ついぞなかった。
そして、あの事件をきっかけに、俺は冬悟に心を開くようになり、アイツのことが…前よりずっと、気になるようになっていった。
あれから少し経った頃。
今日は休日だが、冬悟は今夜出席しなければならないパーティーがあるからといって、夕方にはスーツを着て出かけて行った。
家に残された俺は、動画を見たり、惰眠を貪りながらソファでごろごろしていたが、ふと、机の端に高級そうな黒い革製の名刺入れが置いてあることに気が付いた。
「あれ?これ、冬悟がいつも持ち歩いてるヤツじゃん。アイツが忘れ物とか、珍しいな。」
その名刺入れをそっと手に取って、思考を巡らせる。
いつも持ち歩いているものを忘れたら、俺だったら相当焦るし、すっげぇ困る。
それに、この間は、忘れた教科書を大学まで持ってきてもらったしな。
だから、今回は俺が持ってってやろう!
きっと、冬悟も困っているだろうし。
「そうと決まれば、早速行k…」
そこで、はたと気が付いた。
そういえば、俺、どこでパーティーしてんのか知らねぇわ。
連絡しても、冬悟は絶対出ねぇだろうし。
あ!
そういえばこの間、周さんから名刺貰ったっけ!
周さんに電話してみよっと。
「お電話ありがとうございます。諏訪ホールディングス株式会社の周でございます。」
「あっ、周さん?たき、…諏訪 純也です。この間は、ありがとうございました。」
大学では、今でも旧姓の瀧本を使っているため、諏訪と名乗ることが、めちゃくちゃ恥ずかしくて、そこだけ小声になってしまった。
「奥サマでしたカ!こちらこそ、先日は大変お世話になりましタ!ところで、本日はいかがされましたカ?」
いつもと全然違う、凄く落ち着いた大人な周さんの声色に、一瞬、電話番号を間違えたかもと思っていたが、俺だと認識した途端、いつものテンション高めの調子に戻った。
「えっと、冬悟のことなんだけど、今日パーティーがあるって、もう出かけたんだけど、忘れ物しちゃったみたいで。それを届けたいんだけど、もし周さん場所知ってたら教えてもらえないかな~って思って。」
「Oh…あの社長が、忘れ物ですカ。それは由々しき事態ですネ。わかりましタ!場所をお教えいたしますが、口頭でも大丈夫でしょうカ?メールアドレスか何か教えていただけましたら、お送りいたしますヨ!」
「じゃあ」
メモしても、多分漢字とかわかんねぇし、万が一、聞き間違えたら、永遠に辿り着かない。
ここは安全牌を取って、メールに送ってもらうことにした。
すぐにお送りしますネ!と電話を切った周さんは、1分と経たない内に、住所を送ってくれた。
すげぇ!
マジで仕事早っ!!
周さんへのお礼のメールと、一応冬悟にもメッセージを送信した後、その住所を地図アプリで検索する。
ちょっと遠いかも。
だけど。
「よしっ、行くか!」
この名刺入れを鞄に入れて、ガチャと玄関の扉を勢いよく開けた。
電車で目的の駅に辿り着くと、そこから約20分程歩いて、漸く目的の場所に辿り着いた。
そこには、広大な敷地一面に、色とりどりの美しい草花が咲き誇る庭が広がり、その奥には、重厚な石造りの洋館が威厳をたたえて静かに佇んでいる。
その光景は、まるで洋画に出てきそうな、広々としたガーデニングパーティー会場だった。
「すげぇ。こんなとこ、日本にあるんだ…。」
あまりにも現実離れした空間に、呆気にとられて見惚れてしまった。
いや、こんなことをしている場合ではないと軽く頭を振り、よく目を凝らして見てみると、その庭の奥の方で、どうやらパーティーが開催されているようだった。
あちこちにスーツやドレスで着飾った人達が、大勢いる。
その様子を眺めていると、風に乗っていい匂いが、ふわっとこちらまで届いてきた。
夜はまだ何も入れられていない胃袋が刺激され、お腹がぐうっと小さく鳴る。
このまま紛れ込んで、ちょっとでもタダ飯にありつけねぇかな。
なんて思ったりしてみたが、普段着で来てしまったため、場違い過ぎる服装に、断念せざるを得ない。
冬悟に着いたと連絡しても、まだ既読になっていない。
電話をしてみても、出ない。
どうすっかなと、入口の前でうろうろしていると、突然背後から声をかけられ、肩がビクッと跳ねた。
「そこの坊や、誰かにご用かな?」
そして、あの事件をきっかけに、俺は冬悟に心を開くようになり、アイツのことが…前よりずっと、気になるようになっていった。
あれから少し経った頃。
今日は休日だが、冬悟は今夜出席しなければならないパーティーがあるからといって、夕方にはスーツを着て出かけて行った。
家に残された俺は、動画を見たり、惰眠を貪りながらソファでごろごろしていたが、ふと、机の端に高級そうな黒い革製の名刺入れが置いてあることに気が付いた。
「あれ?これ、冬悟がいつも持ち歩いてるヤツじゃん。アイツが忘れ物とか、珍しいな。」
その名刺入れをそっと手に取って、思考を巡らせる。
いつも持ち歩いているものを忘れたら、俺だったら相当焦るし、すっげぇ困る。
それに、この間は、忘れた教科書を大学まで持ってきてもらったしな。
だから、今回は俺が持ってってやろう!
きっと、冬悟も困っているだろうし。
「そうと決まれば、早速行k…」
そこで、はたと気が付いた。
そういえば、俺、どこでパーティーしてんのか知らねぇわ。
連絡しても、冬悟は絶対出ねぇだろうし。
あ!
そういえばこの間、周さんから名刺貰ったっけ!
周さんに電話してみよっと。
「お電話ありがとうございます。諏訪ホールディングス株式会社の周でございます。」
「あっ、周さん?たき、…諏訪 純也です。この間は、ありがとうございました。」
大学では、今でも旧姓の瀧本を使っているため、諏訪と名乗ることが、めちゃくちゃ恥ずかしくて、そこだけ小声になってしまった。
「奥サマでしたカ!こちらこそ、先日は大変お世話になりましタ!ところで、本日はいかがされましたカ?」
いつもと全然違う、凄く落ち着いた大人な周さんの声色に、一瞬、電話番号を間違えたかもと思っていたが、俺だと認識した途端、いつものテンション高めの調子に戻った。
「えっと、冬悟のことなんだけど、今日パーティーがあるって、もう出かけたんだけど、忘れ物しちゃったみたいで。それを届けたいんだけど、もし周さん場所知ってたら教えてもらえないかな~って思って。」
「Oh…あの社長が、忘れ物ですカ。それは由々しき事態ですネ。わかりましタ!場所をお教えいたしますが、口頭でも大丈夫でしょうカ?メールアドレスか何か教えていただけましたら、お送りいたしますヨ!」
「じゃあ」
メモしても、多分漢字とかわかんねぇし、万が一、聞き間違えたら、永遠に辿り着かない。
ここは安全牌を取って、メールに送ってもらうことにした。
すぐにお送りしますネ!と電話を切った周さんは、1分と経たない内に、住所を送ってくれた。
すげぇ!
マジで仕事早っ!!
周さんへのお礼のメールと、一応冬悟にもメッセージを送信した後、その住所を地図アプリで検索する。
ちょっと遠いかも。
だけど。
「よしっ、行くか!」
この名刺入れを鞄に入れて、ガチャと玄関の扉を勢いよく開けた。
電車で目的の駅に辿り着くと、そこから約20分程歩いて、漸く目的の場所に辿り着いた。
そこには、広大な敷地一面に、色とりどりの美しい草花が咲き誇る庭が広がり、その奥には、重厚な石造りの洋館が威厳をたたえて静かに佇んでいる。
その光景は、まるで洋画に出てきそうな、広々としたガーデニングパーティー会場だった。
「すげぇ。こんなとこ、日本にあるんだ…。」
あまりにも現実離れした空間に、呆気にとられて見惚れてしまった。
いや、こんなことをしている場合ではないと軽く頭を振り、よく目を凝らして見てみると、その庭の奥の方で、どうやらパーティーが開催されているようだった。
あちこちにスーツやドレスで着飾った人達が、大勢いる。
その様子を眺めていると、風に乗っていい匂いが、ふわっとこちらまで届いてきた。
夜はまだ何も入れられていない胃袋が刺激され、お腹がぐうっと小さく鳴る。
このまま紛れ込んで、ちょっとでもタダ飯にありつけねぇかな。
なんて思ったりしてみたが、普段着で来てしまったため、場違い過ぎる服装に、断念せざるを得ない。
冬悟に着いたと連絡しても、まだ既読になっていない。
電話をしてみても、出ない。
どうすっかなと、入口の前でうろうろしていると、突然背後から声をかけられ、肩がビクッと跳ねた。
「そこの坊や、誰かにご用かな?」
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