4 / 5
【4】木の根よりも深くまで……。
しおりを挟む
私は今、自殺の名所と言われている有名な樹海の入り口に居た。
親が残した借金の額が途方もなく、私には到底払うことは出来なかった。そのせいで生活も苦しくなり、毎日辛いことの連続だった。
「やっと、これで楽になれる……。」
でも、これでそんな生活ともお別れできる。私は覚悟を決めて樹海の中へ足を踏み入れた。
しばらく歩き、大きな木の根に腰かけて、カバンからノートとボールペンを取り出す。
小さい頃から本を読むのが好きだった私は、いつからか自分で本を書きはじめ、何かがある度にこうしてペンを取るようになったのだ。
「自殺を止めてくれた人と運命を感じて……、そのまま………。」
きっと、こんな内容がスラスラと出てくるのは私自身がこうなりたいと思っているからなのだろうか。2時間ほどで話を書き終えてしまった。
「はぁ…。こんなことあるはずが……。」
ため息をつきながら、私はぼんやりと空を見上げた。
ガサッ!
突然、私の後方から足音がした。
「そ、そこに誰かいるの……?」
木の影からのぞき込んでみると、そこにはメガネをかけた若い男性が立っていた。
「あ、あなたも……?」
「は、はい…。」
男性は私の横まで来ると、同じ木の根に腰かけた。
「まさか俺の他に自殺しようとしてる人がいるなんて思ってませんでした。」
「私もです。これも何かの運命なんですかね?」
そう言うと、男性はクスクスっと笑った。
「俺、立花伸也(たちばな しんや)っていいます。」
「三浦彩希(みうら さき)です。」
私達はお互いに自己紹介をした後、ここに来た理由を話し合った。
「そうだったんですか…。事故で家族を…。」
伸也さんは事故で両親と妹を亡くし、一人になってしまった挙句、お父さんが残した会社の次期社長としてのプレッシャーに負け、父の知り合いに会社を委ねてここに来たのだとか。
「私も両親を亡くして、親が残した借金がすべて私に……。でも、あんな大金…、普通に仕事をして、払えるわけ………。」
溢れだす涙を拭っていると、伸也さんは私をギュッと抱きしめてくれた。
「あっ…。ごめん。つい……。」
慌てて離れようとする伸也さんを、今度は私が引き止めた。
「すみません。もうしばらく、こうしていていいですか?」
伸也さんの胸に顔を埋め、目を閉じてその温もりを感じる。遊んでばかりの親からは、こんな温もりを感じたことがなかった。
「伸也さんは思い残すことってないんですか?」
突然の私の問いかけに、伸也さんは一瞬答えづらそうな表情を浮かべた。
「聞いても引かない?」
「大丈夫ですよ。安心してください。」
私がそう言って笑ってみせると、伸也さんは少し恥ずかしそうに小声で呟いた。
「童貞なんだ……。」
はっきりと聞き取れたわけではないが、聞き間違えではない。その証拠に言ったそばから伸也さんの顔がみるみる真っ赤になっていく。
「死ぬ前に卒業しておきたかったと…?」
「俺、彼女が出来ても家の事情であんまり遊べなかったりで、すぐにフラれてたんだ。だから、まだそういう経験したことなくて…。ごめんね?こんな話で。君は何か未練はあるの?」
今度は伸也さんが聞いてくる。
「私は、もっと人のためになるようなことをしたかった。私、親に構ってもらえなくて荒(すさ)んでたから、あまり人のためになること出来なくて…。」
「そっか……。でも、生きてきた中で何かしら人のためになってることもあると思うよ?」
話を真面目に聞いてくれる伸也さんに、私は心を惹かれた。
「似た者同士、これからしばらく仲良くできそうですね。」
「そうですね。」
こうして、この世に別れを言うまでのしばらくの間、伸也さんと行動を共にした。
しばらくすると次第に天気が怪しくなり始め、ついに土砂降りの雨になった。
「森林浴ってわけにはいかないみたいですね……。」
「そうですね。」
岩壁がえぐれている場所でしばらく雨宿りをすることにした私達。
濡れた上着を脱ぎ、私は上半身Tシャツだけになった。
「そういえば、その鞄には何が入ってるんですか?」
伸也さんが指差したのは、ビチョビチョになった私の鞄だった。
そこで私達は、お互いの鞄の中身を公開し合う流れになった。
「俺の鞄には財布とロープが入っているだけだよ。」
そう言って伸也さんが取り出したのは、しっかりとしたきれいなロープと使い込まれた財布だった。
普段であれば持ち歩く必要のないロープだが、ここが樹海だということと、ここに来た目的を考えると自然に見えてくる。
「鞄からロープが出てくるのは、なんか変な感じがしますね。」
私も鞄を開け、中に入れていたロープを取り出した。
「だね。……ん?これは?」
伸也さんは鞄の中のノートを手に取った。
「あっ!それは……。」
そのノートはさっき私が物語を書いたノートだった。
「見てもいい?」
「う、うん……。」
こっ恥ずかしいのを我慢して私は頷いた。
それから十数分、私達の間には一度も会話がない。伸也さんはひたすら黙々と私の書いた小説を読んでいる。
「………。」
ふと、視線を伸也さんへ向けると、その瞳からは涙が流れ、ポタポタと地面へ落ちていた。
「どうしたんですか!?」
半ば官能小説の様な内容の本に感動するところなどないと思っていた私は、彼の涙の理由が分からなかった。
「このカップル……。俺からするとすっごく羨ましくて…。」
伸也さんが開いていたページは、丁度物語が終わるラストシーンだった。体の関係を持ったヒロインが主人公の男の子に告白をし、樹海をなんとか抜け出して新しい生活を始めるところ…。
本を読み終わった伸也さんの顔を覗き込み、私は訪ねた。
「私達も…、してみます?」
「え………!?」
突然の申し出に、伸也さんは目を丸くした。
「この本みたいに、私達もここで……。なんて、いくらなんでもこんな所でなんて嫌ですよね。すみません。忘れてください。」
苦笑いをして伸也さんから少し離れようとすると、後ろから力強く抱きしめられた。
「いいんですか…?」
少し嬉しそうな、でも申し訳なさそうな声で伸也さんが聞いてくる。
「したことないんですよね…?」
コクリと頷く伸也さんに私はやさしく口づけをした。
「キスも…初めてですか?」
「う、うん。」
戸惑った表情を浮かべる伸也さんに、私は思わず笑ってしまった。
「ごめんなさい。困らせちゃった?」
「大丈夫。それより、続きが……。」
笑う私に今度は伸也さんからのキス。
ぎこちなく、少し荒っぽいキスだけど、今はそれが心地よかった。
「私も経験が多いわけじゃないので、下手かもしれないですが、がんばりますのでよろしくお願いします。」
「こっちこそ、何かあったら何でも言って。」
そして私達は、岩陰に崩れ落ちるように倒れ込んだ。
伸也さんに押し倒されるように横になった私は、慣れない手つきで体中を弄られた。
「女の人って…、こんなに柔らかいんだ……。」
目をキラキラを輝かせながら、私の上半身を満遍なく触っていく。雨で濡れているから肌の滑りも良く、多少ぎこちない手つきでも気持ちがいい。
「伸也さんの好きにしていいですよ?何されても私は大丈夫なので。悔いの残らないようにやりたいこと、全部やっちゃってください。」
私の言葉にピクッと反応した伸也さんは、しばらく私の顔を見ながらどこか遠慮しているようにじっとしていた。しかし、私がニッコリと微笑むと、何かが吹っ切れたように再び動き出し、私の胸にしゃぶりついてきた。
「んっ……。」
久しぶりの感覚に、思わず甘い声が漏れてしまう。
「胸……、好きなんですか?」
「す、すきっ……。」
チュパチュパと音を立てながら小刻みに乳首を吸い上げられる。その度に、全身に電流が流れたように体が反応した。
「ここも、もうこんなになってますよ?」
「こ、これは…、雨で………。」
すでにグッショリと濡れてしまっている私のアソコを軽くなでながら、伸也さんは微笑んだ。
「雨ってこんなにトロッとしてましたっけ?」
目の前に持ってこられた伸也さんの指の間には、私の愛液が糸を引いて絡まっていた。
「舐めて?」
私は愛液まみれの彼の指を口に咥え、舌でチロチロと舐め回した。すると、伸也さんは私の口の中で指を動かし、私の上顎を撫で始めた。
「んっ……んー!」
なんとも言えないくすぐったさに私は顔を背けて逃げようとする。しかし、伸也さんは私の顔を固定して、更に上顎を撫で回した。
「んっ!はぁ……んはっ………!」
しばらく口の中を撫で回した伸也さんは、私の口から指を抜くと、唾液まみれのその指を、私の膣に挿入した。
「ふあぁっ!?」
ニュプンッ!といきなり奥まで入り込んできた彼の指は、偶然にも私の弱い部分に触れた。その瞬間、私は甲高い喘ぎ声を上げて、軽くイッてしまった。
「ここですか?」
「あんっ!だめ…イッちゃったの…!だから、そこだけは……あっ…!」
私の中から出てきた指が、今度はクリトリスを刺激し始める。最初は皮の上から。しかし、だんだんクリトリスが大きくなってくると、被っている皮を剥いて直で刺激し始める。
「腰、浮いてますよ?」
嬉しそうに私を見ながら、伸也さんは更に私のクリトリスを弄った。
「確かこうしたら……。」
こねるようにクリを弄っていた伸也さんが、今度は皮を剥いたままのクリをポンポンと軽く叩き始めた。
「やっ…!それ………、ダメっ…出ちゃう!」
痛みは感じさせず、ただ断片的に快楽を与えてくるその行動は、私に尿意にも似た感覚を与えた。
「誰も見てませんからどうぞ。」
「どうぞじゃ………いやぁっ…!」
腰が跳ねる度にプシュプシュと潮を吹き出す。私は完全に脱力し、ただただボーッと伸也さんの顔を見つめていた。
「すごい量…。」
ビショビショになった自分の手を見て微笑んでいる伸也さんのズボンにそっと手を伸ばし、彼のおちんちんを取り出した。
「お返しです。」
既にギンギンになっている彼のおちんちんを口いっぱいに咥えこみ、窒息しない程度に喉の奥まで突っ込んだ。
「くっ……。」
気持ちいいのか喉の奥でピクッ!ピクッ!と跳ねるおちんちんに、私は少しえづきそうになりながらも、吸ったり舐めたりと、刺激を与えていく。
「彩希さん……!俺…!」
「イッてくらひゃい…。このまま、口の中に…らひていいのれ……。」
咥えたまま喋るのも気持ちよかったのだろうか、亀頭をパンパンに膨らませ、口の中で跳ねまくる。
「イッ、イクっ……。」
口の中で大きく跳ねたおちんちんが、濃いくて熱い精子を大量に吐き出した。
「んぐっ……。」
一口では受けとめきれない程の量に、私は慌てて精子を飲み込んだ。
「の、飲んだんですか…?」
「量が多かったので、私の口じゃ一口で受け止めきれませんでした。」
申し訳なさそうな顔をする伸也さんに私は寄り添うように抱きつくと、そっとキスをし、そのまま舌を絡め合った。
「あっ、すみません。苦くなかったですか?」
「は、はい。大丈夫ですよ……?」
さっき精子を口に含んだばっかりだという事をすっかりと忘れてキスをしてしまい、慌てて伸也さんから離れた。しかし、彼は全く何のことか分かっておらずキョトンとしていた。
「だ、だったら大丈夫です。」
再び顔を近づけキスをする。
「そろそろしましょうか。」
仰向けに寝転んでいる私が、伸也さんのイチモツに手を伸ばし、自分で膣口に先端をあてがった。
「いいですよ?そのまま腰を前に突き出してください。」
私の膣をメリメリとこじ開けるように、伸也さんのものが入ってくる。
「あぁっ…!」
置くまで入りきると同時に、中の肉棒がビクンッ!と跳ね、お腹の奥に何やら温かいものがじんわりと広がった。
「ご、ごめん。つい、中に……。」
「大丈夫ですよ。この命も今日までなんですから、何回でも中に出してください。」
中をキュッと締めて刺激してあげると、少し柔らかくなっていたおちんちんが再び固くなる。
「もう一回いけそうですね。じゃあ…。」
今度は伸也さん仰向けになってもらい、上にまたがった私は、そのまま一番置くまで一気に挿入した。
「あはぁっ……!」
ゴリュっと体が抉られるような感覚に身震いをしながらも、私は腰を上下に動かし始めた。さっき出された精子が膣内でかき混ぜられ、ブチュ…!ブチュ…!っと粘り気のある独特でいやらしい水音がピストンをする度に聞こえてくる。
「あぅ…お、奥に、ズン…ズンってぇ……、すごく…気持ちいいっ…。」
気持ちよさそうにとろけた伸也さんの顔を見下ろしながらするセックスは、今までに味わったことのない気持ちよさだった。
「………っ。」
気がつけば、私は大粒の涙を流しながら必死に腰を振っていた。これまで生きてきた中で、今この時間が一番満たされている、そう思うと自然と涙が溢れてくるのだ。
「さ、彩希さん?」
泣きながらセックスする私に、伸也さんは驚いたように上半身を起こした。
「だ、大丈夫です。ちょっと、嬉しくて…。」
「そう……、ですか。」
戸惑いながらも感じているようで、亀頭が再び膨らんでくる。
「彩希さん……。すみません、もう………。」
「わ、私も、そろそろ……あんっ……!」
全体重をかけ、彼のおちんちんを一番深いところまで咥えこむ。その瞬間、絶頂を迎えた彼のおちんちんから再び大量の精子が放たれる。
「あぐぅ……!」
子宮口を押し上げる様に深く突き刺さったイチモツからの射精にうめき声の様な声をあげながら、私は体をガクガク震えさせながらイッた。
「はぁ…はぁ………。」
彼の上に覆いかぶさるように倒れ込み、完全に脱力する。
「最高の初体験でした。」
「そ、それは…、よかったれす……。」
感じたことのない快感に、ろれつが回らなくなっている私の頭をそっと撫でながら、伸也さんはそのまましばらくジッとしてくれていた。
それから十数分が経っただろうか、ようやく動けるようになった私は、体を起こして自分の中から彼のイチモツを抜いた。
ブピュ……。
余程大量に出していたのか、彼のイチモツが抜けた途端、私の中から勢いよく彼の精子が溢れ出す。
「エ、エロい……。」
彼の視線が私の股に集中する。その視線に気がついた私は、咄嗟に足を閉じておまんこを隠した。
「あ、ごめん…。」
我に返ったのか、伸也さんも顔を赤らめて視線を逸した。
「い、いえ…、今更恥ずかしがるのもおかしいですよね…。」
苦笑いで取り繕う私に、伸也さんはいきなり抱きついてきた。
「ど、どうしたんですか…?」
「彩希さんは……今日、死ぬんですよね……?」
伸也さんの問に、私の心臓が大きく飛び跳ねた。
「は、はい…。」
返事をしながら自分の鞄に視線を向けると、白いロープの先端が目に入った。
「………。」
体が震える……。ここに来たときは死ぬことに何も感じていなかったのに……。
「怖くないですか…?死ぬの…。」
私の体が震えていることは、伸也さんにも確実に伝わっている。伸也さんは震える私の体を更にぎゅっと抱きしめた。
「こ、怖い……。死ぬの…イヤ……。」
「帰ろう……、一緒に。一人じゃ無理でも、二人で居たらなんとかなるよ…。」
その温かい声に、私は自分のこの愚かな行動を悔い、同時に伸也さんに合わせてくれた神様に礼を言った。
「わ、私と…、一緒に居てくれるですか…?」
「君がいいなら…俺はそうしたい。」
視線を真っ直ぐ合わせた私達は、乱れた服のまま甘く長いキスを交した。
しばらくして、何やら近くで人の声がするのに気がついた私達は、荷物を持って壁の窪みから出た。
「君たち!大丈夫か!?」
声の正体はレスキュー隊だったようで、私達はレスキュー隊に連れられ、真っ直ぐ樹海の入り口まで帰って来ることができた。
「嬢ちゃんも兄ちゃんも大丈夫かいな?」
救助された私達の前にいたのは、私をここまで乗せてきてくれたタクシーの運転手さんだった。
「嬢ちゃん乗せてきた時は、えらい暗い子やなとは思ってたんやけど、その後兄ちゃん乗っけて来た後、全然戻って来んから生きた心地せんかったわ。」
私達の背中をバシバシ叩きながら涙ながらに喜んでくれる運転手のおじさんに、私達は頭を下げた。
「すみません。ご心配をおかけしました。」
「ほんまやで!もう自殺とかそんなしょうもない事考えるんやないで?」
「大丈夫です。今は守りたいものも出来たので、死ぬわけにはいかないです。」
私の手をギュッと握って自信たっぷりにそう言う伸也さん。その手を見たおじさんは、これでもかという程の笑顔を見せた。
「そうか!ほな大丈夫やな!ワシも二人のこと応援しとるさかいに、頑張るんやで?」
「はい。ありがとうございます。」
「ほな帰ろうや。家どこや?今日は特別に乗せて行ったる。」
こうして私はおじさんのタクシーで無事、自分の家に帰ってくることが出来た。テーブルの上に置いていた誰に向けてのものかも分からない遺書を破り捨て、必要最低限の物だけ持って再び家を出る。
「これからよろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしく。」
これからは、伸也さんとの新しい生活が始まるのだ。
エピローグ
一ヶ月後。
毎朝6時に起きる私は、1階のキッチンで朝食を作る。
トーストはすぐに焼けるよう準備して、スープや他の冷めてはいけないおかずは保温状態で置いておく。そして、全ての準備を終えた私は、寝室へと向かった。
「あなた…、ご飯できましたよ……?」
寝ている伸也さんの耳元で囁く。
「ん………。」
「早く起きないと…、悪いことしちゃいますよ?」
そう言って首筋をチロッっと舐めると、くすぐったそうに見を捩った。
「あ、そうだ。今日はビックニュースがあるんです。」
私の言葉に視線をこっちに向けた伸也さんの目の前に、私はあるものを差し出した。
「デキちゃいました。」
陽性反応を示した検査薬を見た伸也さんは今までにないスピードで目を覚したのだった。
親が残した借金の額が途方もなく、私には到底払うことは出来なかった。そのせいで生活も苦しくなり、毎日辛いことの連続だった。
「やっと、これで楽になれる……。」
でも、これでそんな生活ともお別れできる。私は覚悟を決めて樹海の中へ足を踏み入れた。
しばらく歩き、大きな木の根に腰かけて、カバンからノートとボールペンを取り出す。
小さい頃から本を読むのが好きだった私は、いつからか自分で本を書きはじめ、何かがある度にこうしてペンを取るようになったのだ。
「自殺を止めてくれた人と運命を感じて……、そのまま………。」
きっと、こんな内容がスラスラと出てくるのは私自身がこうなりたいと思っているからなのだろうか。2時間ほどで話を書き終えてしまった。
「はぁ…。こんなことあるはずが……。」
ため息をつきながら、私はぼんやりと空を見上げた。
ガサッ!
突然、私の後方から足音がした。
「そ、そこに誰かいるの……?」
木の影からのぞき込んでみると、そこにはメガネをかけた若い男性が立っていた。
「あ、あなたも……?」
「は、はい…。」
男性は私の横まで来ると、同じ木の根に腰かけた。
「まさか俺の他に自殺しようとしてる人がいるなんて思ってませんでした。」
「私もです。これも何かの運命なんですかね?」
そう言うと、男性はクスクスっと笑った。
「俺、立花伸也(たちばな しんや)っていいます。」
「三浦彩希(みうら さき)です。」
私達はお互いに自己紹介をした後、ここに来た理由を話し合った。
「そうだったんですか…。事故で家族を…。」
伸也さんは事故で両親と妹を亡くし、一人になってしまった挙句、お父さんが残した会社の次期社長としてのプレッシャーに負け、父の知り合いに会社を委ねてここに来たのだとか。
「私も両親を亡くして、親が残した借金がすべて私に……。でも、あんな大金…、普通に仕事をして、払えるわけ………。」
溢れだす涙を拭っていると、伸也さんは私をギュッと抱きしめてくれた。
「あっ…。ごめん。つい……。」
慌てて離れようとする伸也さんを、今度は私が引き止めた。
「すみません。もうしばらく、こうしていていいですか?」
伸也さんの胸に顔を埋め、目を閉じてその温もりを感じる。遊んでばかりの親からは、こんな温もりを感じたことがなかった。
「伸也さんは思い残すことってないんですか?」
突然の私の問いかけに、伸也さんは一瞬答えづらそうな表情を浮かべた。
「聞いても引かない?」
「大丈夫ですよ。安心してください。」
私がそう言って笑ってみせると、伸也さんは少し恥ずかしそうに小声で呟いた。
「童貞なんだ……。」
はっきりと聞き取れたわけではないが、聞き間違えではない。その証拠に言ったそばから伸也さんの顔がみるみる真っ赤になっていく。
「死ぬ前に卒業しておきたかったと…?」
「俺、彼女が出来ても家の事情であんまり遊べなかったりで、すぐにフラれてたんだ。だから、まだそういう経験したことなくて…。ごめんね?こんな話で。君は何か未練はあるの?」
今度は伸也さんが聞いてくる。
「私は、もっと人のためになるようなことをしたかった。私、親に構ってもらえなくて荒(すさ)んでたから、あまり人のためになること出来なくて…。」
「そっか……。でも、生きてきた中で何かしら人のためになってることもあると思うよ?」
話を真面目に聞いてくれる伸也さんに、私は心を惹かれた。
「似た者同士、これからしばらく仲良くできそうですね。」
「そうですね。」
こうして、この世に別れを言うまでのしばらくの間、伸也さんと行動を共にした。
しばらくすると次第に天気が怪しくなり始め、ついに土砂降りの雨になった。
「森林浴ってわけにはいかないみたいですね……。」
「そうですね。」
岩壁がえぐれている場所でしばらく雨宿りをすることにした私達。
濡れた上着を脱ぎ、私は上半身Tシャツだけになった。
「そういえば、その鞄には何が入ってるんですか?」
伸也さんが指差したのは、ビチョビチョになった私の鞄だった。
そこで私達は、お互いの鞄の中身を公開し合う流れになった。
「俺の鞄には財布とロープが入っているだけだよ。」
そう言って伸也さんが取り出したのは、しっかりとしたきれいなロープと使い込まれた財布だった。
普段であれば持ち歩く必要のないロープだが、ここが樹海だということと、ここに来た目的を考えると自然に見えてくる。
「鞄からロープが出てくるのは、なんか変な感じがしますね。」
私も鞄を開け、中に入れていたロープを取り出した。
「だね。……ん?これは?」
伸也さんは鞄の中のノートを手に取った。
「あっ!それは……。」
そのノートはさっき私が物語を書いたノートだった。
「見てもいい?」
「う、うん……。」
こっ恥ずかしいのを我慢して私は頷いた。
それから十数分、私達の間には一度も会話がない。伸也さんはひたすら黙々と私の書いた小説を読んでいる。
「………。」
ふと、視線を伸也さんへ向けると、その瞳からは涙が流れ、ポタポタと地面へ落ちていた。
「どうしたんですか!?」
半ば官能小説の様な内容の本に感動するところなどないと思っていた私は、彼の涙の理由が分からなかった。
「このカップル……。俺からするとすっごく羨ましくて…。」
伸也さんが開いていたページは、丁度物語が終わるラストシーンだった。体の関係を持ったヒロインが主人公の男の子に告白をし、樹海をなんとか抜け出して新しい生活を始めるところ…。
本を読み終わった伸也さんの顔を覗き込み、私は訪ねた。
「私達も…、してみます?」
「え………!?」
突然の申し出に、伸也さんは目を丸くした。
「この本みたいに、私達もここで……。なんて、いくらなんでもこんな所でなんて嫌ですよね。すみません。忘れてください。」
苦笑いをして伸也さんから少し離れようとすると、後ろから力強く抱きしめられた。
「いいんですか…?」
少し嬉しそうな、でも申し訳なさそうな声で伸也さんが聞いてくる。
「したことないんですよね…?」
コクリと頷く伸也さんに私はやさしく口づけをした。
「キスも…初めてですか?」
「う、うん。」
戸惑った表情を浮かべる伸也さんに、私は思わず笑ってしまった。
「ごめんなさい。困らせちゃった?」
「大丈夫。それより、続きが……。」
笑う私に今度は伸也さんからのキス。
ぎこちなく、少し荒っぽいキスだけど、今はそれが心地よかった。
「私も経験が多いわけじゃないので、下手かもしれないですが、がんばりますのでよろしくお願いします。」
「こっちこそ、何かあったら何でも言って。」
そして私達は、岩陰に崩れ落ちるように倒れ込んだ。
伸也さんに押し倒されるように横になった私は、慣れない手つきで体中を弄られた。
「女の人って…、こんなに柔らかいんだ……。」
目をキラキラを輝かせながら、私の上半身を満遍なく触っていく。雨で濡れているから肌の滑りも良く、多少ぎこちない手つきでも気持ちがいい。
「伸也さんの好きにしていいですよ?何されても私は大丈夫なので。悔いの残らないようにやりたいこと、全部やっちゃってください。」
私の言葉にピクッと反応した伸也さんは、しばらく私の顔を見ながらどこか遠慮しているようにじっとしていた。しかし、私がニッコリと微笑むと、何かが吹っ切れたように再び動き出し、私の胸にしゃぶりついてきた。
「んっ……。」
久しぶりの感覚に、思わず甘い声が漏れてしまう。
「胸……、好きなんですか?」
「す、すきっ……。」
チュパチュパと音を立てながら小刻みに乳首を吸い上げられる。その度に、全身に電流が流れたように体が反応した。
「ここも、もうこんなになってますよ?」
「こ、これは…、雨で………。」
すでにグッショリと濡れてしまっている私のアソコを軽くなでながら、伸也さんは微笑んだ。
「雨ってこんなにトロッとしてましたっけ?」
目の前に持ってこられた伸也さんの指の間には、私の愛液が糸を引いて絡まっていた。
「舐めて?」
私は愛液まみれの彼の指を口に咥え、舌でチロチロと舐め回した。すると、伸也さんは私の口の中で指を動かし、私の上顎を撫で始めた。
「んっ……んー!」
なんとも言えないくすぐったさに私は顔を背けて逃げようとする。しかし、伸也さんは私の顔を固定して、更に上顎を撫で回した。
「んっ!はぁ……んはっ………!」
しばらく口の中を撫で回した伸也さんは、私の口から指を抜くと、唾液まみれのその指を、私の膣に挿入した。
「ふあぁっ!?」
ニュプンッ!といきなり奥まで入り込んできた彼の指は、偶然にも私の弱い部分に触れた。その瞬間、私は甲高い喘ぎ声を上げて、軽くイッてしまった。
「ここですか?」
「あんっ!だめ…イッちゃったの…!だから、そこだけは……あっ…!」
私の中から出てきた指が、今度はクリトリスを刺激し始める。最初は皮の上から。しかし、だんだんクリトリスが大きくなってくると、被っている皮を剥いて直で刺激し始める。
「腰、浮いてますよ?」
嬉しそうに私を見ながら、伸也さんは更に私のクリトリスを弄った。
「確かこうしたら……。」
こねるようにクリを弄っていた伸也さんが、今度は皮を剥いたままのクリをポンポンと軽く叩き始めた。
「やっ…!それ………、ダメっ…出ちゃう!」
痛みは感じさせず、ただ断片的に快楽を与えてくるその行動は、私に尿意にも似た感覚を与えた。
「誰も見てませんからどうぞ。」
「どうぞじゃ………いやぁっ…!」
腰が跳ねる度にプシュプシュと潮を吹き出す。私は完全に脱力し、ただただボーッと伸也さんの顔を見つめていた。
「すごい量…。」
ビショビショになった自分の手を見て微笑んでいる伸也さんのズボンにそっと手を伸ばし、彼のおちんちんを取り出した。
「お返しです。」
既にギンギンになっている彼のおちんちんを口いっぱいに咥えこみ、窒息しない程度に喉の奥まで突っ込んだ。
「くっ……。」
気持ちいいのか喉の奥でピクッ!ピクッ!と跳ねるおちんちんに、私は少しえづきそうになりながらも、吸ったり舐めたりと、刺激を与えていく。
「彩希さん……!俺…!」
「イッてくらひゃい…。このまま、口の中に…らひていいのれ……。」
咥えたまま喋るのも気持ちよかったのだろうか、亀頭をパンパンに膨らませ、口の中で跳ねまくる。
「イッ、イクっ……。」
口の中で大きく跳ねたおちんちんが、濃いくて熱い精子を大量に吐き出した。
「んぐっ……。」
一口では受けとめきれない程の量に、私は慌てて精子を飲み込んだ。
「の、飲んだんですか…?」
「量が多かったので、私の口じゃ一口で受け止めきれませんでした。」
申し訳なさそうな顔をする伸也さんに私は寄り添うように抱きつくと、そっとキスをし、そのまま舌を絡め合った。
「あっ、すみません。苦くなかったですか?」
「は、はい。大丈夫ですよ……?」
さっき精子を口に含んだばっかりだという事をすっかりと忘れてキスをしてしまい、慌てて伸也さんから離れた。しかし、彼は全く何のことか分かっておらずキョトンとしていた。
「だ、だったら大丈夫です。」
再び顔を近づけキスをする。
「そろそろしましょうか。」
仰向けに寝転んでいる私が、伸也さんのイチモツに手を伸ばし、自分で膣口に先端をあてがった。
「いいですよ?そのまま腰を前に突き出してください。」
私の膣をメリメリとこじ開けるように、伸也さんのものが入ってくる。
「あぁっ…!」
置くまで入りきると同時に、中の肉棒がビクンッ!と跳ね、お腹の奥に何やら温かいものがじんわりと広がった。
「ご、ごめん。つい、中に……。」
「大丈夫ですよ。この命も今日までなんですから、何回でも中に出してください。」
中をキュッと締めて刺激してあげると、少し柔らかくなっていたおちんちんが再び固くなる。
「もう一回いけそうですね。じゃあ…。」
今度は伸也さん仰向けになってもらい、上にまたがった私は、そのまま一番置くまで一気に挿入した。
「あはぁっ……!」
ゴリュっと体が抉られるような感覚に身震いをしながらも、私は腰を上下に動かし始めた。さっき出された精子が膣内でかき混ぜられ、ブチュ…!ブチュ…!っと粘り気のある独特でいやらしい水音がピストンをする度に聞こえてくる。
「あぅ…お、奥に、ズン…ズンってぇ……、すごく…気持ちいいっ…。」
気持ちよさそうにとろけた伸也さんの顔を見下ろしながらするセックスは、今までに味わったことのない気持ちよさだった。
「………っ。」
気がつけば、私は大粒の涙を流しながら必死に腰を振っていた。これまで生きてきた中で、今この時間が一番満たされている、そう思うと自然と涙が溢れてくるのだ。
「さ、彩希さん?」
泣きながらセックスする私に、伸也さんは驚いたように上半身を起こした。
「だ、大丈夫です。ちょっと、嬉しくて…。」
「そう……、ですか。」
戸惑いながらも感じているようで、亀頭が再び膨らんでくる。
「彩希さん……。すみません、もう………。」
「わ、私も、そろそろ……あんっ……!」
全体重をかけ、彼のおちんちんを一番深いところまで咥えこむ。その瞬間、絶頂を迎えた彼のおちんちんから再び大量の精子が放たれる。
「あぐぅ……!」
子宮口を押し上げる様に深く突き刺さったイチモツからの射精にうめき声の様な声をあげながら、私は体をガクガク震えさせながらイッた。
「はぁ…はぁ………。」
彼の上に覆いかぶさるように倒れ込み、完全に脱力する。
「最高の初体験でした。」
「そ、それは…、よかったれす……。」
感じたことのない快感に、ろれつが回らなくなっている私の頭をそっと撫でながら、伸也さんはそのまましばらくジッとしてくれていた。
それから十数分が経っただろうか、ようやく動けるようになった私は、体を起こして自分の中から彼のイチモツを抜いた。
ブピュ……。
余程大量に出していたのか、彼のイチモツが抜けた途端、私の中から勢いよく彼の精子が溢れ出す。
「エ、エロい……。」
彼の視線が私の股に集中する。その視線に気がついた私は、咄嗟に足を閉じておまんこを隠した。
「あ、ごめん…。」
我に返ったのか、伸也さんも顔を赤らめて視線を逸した。
「い、いえ…、今更恥ずかしがるのもおかしいですよね…。」
苦笑いで取り繕う私に、伸也さんはいきなり抱きついてきた。
「ど、どうしたんですか…?」
「彩希さんは……今日、死ぬんですよね……?」
伸也さんの問に、私の心臓が大きく飛び跳ねた。
「は、はい…。」
返事をしながら自分の鞄に視線を向けると、白いロープの先端が目に入った。
「………。」
体が震える……。ここに来たときは死ぬことに何も感じていなかったのに……。
「怖くないですか…?死ぬの…。」
私の体が震えていることは、伸也さんにも確実に伝わっている。伸也さんは震える私の体を更にぎゅっと抱きしめた。
「こ、怖い……。死ぬの…イヤ……。」
「帰ろう……、一緒に。一人じゃ無理でも、二人で居たらなんとかなるよ…。」
その温かい声に、私は自分のこの愚かな行動を悔い、同時に伸也さんに合わせてくれた神様に礼を言った。
「わ、私と…、一緒に居てくれるですか…?」
「君がいいなら…俺はそうしたい。」
視線を真っ直ぐ合わせた私達は、乱れた服のまま甘く長いキスを交した。
しばらくして、何やら近くで人の声がするのに気がついた私達は、荷物を持って壁の窪みから出た。
「君たち!大丈夫か!?」
声の正体はレスキュー隊だったようで、私達はレスキュー隊に連れられ、真っ直ぐ樹海の入り口まで帰って来ることができた。
「嬢ちゃんも兄ちゃんも大丈夫かいな?」
救助された私達の前にいたのは、私をここまで乗せてきてくれたタクシーの運転手さんだった。
「嬢ちゃん乗せてきた時は、えらい暗い子やなとは思ってたんやけど、その後兄ちゃん乗っけて来た後、全然戻って来んから生きた心地せんかったわ。」
私達の背中をバシバシ叩きながら涙ながらに喜んでくれる運転手のおじさんに、私達は頭を下げた。
「すみません。ご心配をおかけしました。」
「ほんまやで!もう自殺とかそんなしょうもない事考えるんやないで?」
「大丈夫です。今は守りたいものも出来たので、死ぬわけにはいかないです。」
私の手をギュッと握って自信たっぷりにそう言う伸也さん。その手を見たおじさんは、これでもかという程の笑顔を見せた。
「そうか!ほな大丈夫やな!ワシも二人のこと応援しとるさかいに、頑張るんやで?」
「はい。ありがとうございます。」
「ほな帰ろうや。家どこや?今日は特別に乗せて行ったる。」
こうして私はおじさんのタクシーで無事、自分の家に帰ってくることが出来た。テーブルの上に置いていた誰に向けてのものかも分からない遺書を破り捨て、必要最低限の物だけ持って再び家を出る。
「これからよろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしく。」
これからは、伸也さんとの新しい生活が始まるのだ。
エピローグ
一ヶ月後。
毎朝6時に起きる私は、1階のキッチンで朝食を作る。
トーストはすぐに焼けるよう準備して、スープや他の冷めてはいけないおかずは保温状態で置いておく。そして、全ての準備を終えた私は、寝室へと向かった。
「あなた…、ご飯できましたよ……?」
寝ている伸也さんの耳元で囁く。
「ん………。」
「早く起きないと…、悪いことしちゃいますよ?」
そう言って首筋をチロッっと舐めると、くすぐったそうに見を捩った。
「あ、そうだ。今日はビックニュースがあるんです。」
私の言葉に視線をこっちに向けた伸也さんの目の前に、私はあるものを差し出した。
「デキちゃいました。」
陽性反応を示した検査薬を見た伸也さんは今までにないスピードで目を覚したのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
36
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる