20 / 74
第2章
19
しおりを挟む
目が覚めたのはもうお昼近くの時間だった。
眠ったのは明け方なので仕方ないことではあるけれど、それでも真理亜はうしろめたい気分になった。
起き上がろうとしても佐々木の腕が真理亜の腰に巻きついていて動けない。
佐々木を起さないように時間をかけて腕を動かし、もう少しというところで佐々木がもぞもぞと動いた。
身を捩って佐々木の顔を見ると、くるんとカールした長い睫毛がぴくぴくと動いている。
佐々木のあどけない表情を見て、真理亜はくすっと笑ってしまった。
佐々木の目がゆっくりと半分ほど開いてまた閉じた。
「ん~~~」と眠そうな声を出しても目を開けない佐々木を見て、
そういえば昨日電話をもらったときも眠そうな声だったなと真理亜は思い出した。
朝起きが苦手なのかもしれない。そう思うと可愛く思えてきた。
「何、くすくす笑ってるんだ?」
佐々木は目を開けずに真理亜の腰を持って反転させ、真理亜の胸に顔を埋めた。
ただ両乳房の間に顔を押し当て、「1分だけ・・・・」と言って背中に回した手でぎゅっと抱きしめた。
真理亜は佐々木の柔らかい髪に指を入れ、漉くようにしながら「おはよう」と言った。
「おはよう」と佐々木はくぐもった声で答えてから身を起こし、「コーヒー欲しいな」と呟いた。
二人交代で洗面所を使い、夜の間に何度かシャワーを浴びてはいたがもう一度シャワーを使ってから露天風呂に浸かった。
真理亜が湯船で手足を伸ばしている間に、佐々木はフロントに電話をかけて食事の準備を頼んでいる。
それが済むと佐々木も露天風呂に身を沈めた。
「1時間ほどで準備できるか?」
「そんなにかからないわよ」
「せっかく来たのに、ここの庭も見せてないな」
「広いの?」
「あぁ、結構広いぞ。だから昼食は庭のほうでとろうか?」
「そんなことできるの?」
「あぁ、今頼んでおいたよ」
「わぁ、楽しみだなぁ」
真理亜が先に出ると言うと湯のなかで佐々木が真理亜の手をとって湯から指先を出し、
自分の口に近づけた。
指先に柔らかい唇が触れ、小さな音を立てて離れた。
真理亜の顔がみるみるうちに赤らんでいく。
それを佐々木は満足そうに見て、「1時間だ!ほら、先に出ろ」と言って促した。
部屋に戻った真理亜は室内のバスルームで身支度をした。
洗った髪は半分ほど乾かしておいて簡単な化粧にとりかかる。
服を着てから、寝室を少し片付ける。
シーツを見られる程度に整え、ティッシュはトイレに流し、
使用済みのゴムはベッドサイドのゴミ箱に入っているものを、
トイレの衛生バッグに全部入れて容器に捨てた。
真理亜ができることの背一杯のことだ。
あとでお掃除する人に見られると思うと恥ずかしかったが、仕方がない。
手を洗って、髪を完全に乾かすと準備はできた。
あとは昨日の買い物袋をまとめるだけである。
佐々木の淹れたコーヒーを飲みながら、二人で荷物を一階のダイニングテーブルにまとめて置いた。
ハンドバックだけを持って部屋を出ると、佐々木が真理亜の手を取り、
真理亜の歩調に合わせて見事な日本庭園を横切っていく。
母屋のすぐ裏手に蔵が見えた。
蔵の入り口で女将が待っていた。
眠ったのは明け方なので仕方ないことではあるけれど、それでも真理亜はうしろめたい気分になった。
起き上がろうとしても佐々木の腕が真理亜の腰に巻きついていて動けない。
佐々木を起さないように時間をかけて腕を動かし、もう少しというところで佐々木がもぞもぞと動いた。
身を捩って佐々木の顔を見ると、くるんとカールした長い睫毛がぴくぴくと動いている。
佐々木のあどけない表情を見て、真理亜はくすっと笑ってしまった。
佐々木の目がゆっくりと半分ほど開いてまた閉じた。
「ん~~~」と眠そうな声を出しても目を開けない佐々木を見て、
そういえば昨日電話をもらったときも眠そうな声だったなと真理亜は思い出した。
朝起きが苦手なのかもしれない。そう思うと可愛く思えてきた。
「何、くすくす笑ってるんだ?」
佐々木は目を開けずに真理亜の腰を持って反転させ、真理亜の胸に顔を埋めた。
ただ両乳房の間に顔を押し当て、「1分だけ・・・・」と言って背中に回した手でぎゅっと抱きしめた。
真理亜は佐々木の柔らかい髪に指を入れ、漉くようにしながら「おはよう」と言った。
「おはよう」と佐々木はくぐもった声で答えてから身を起こし、「コーヒー欲しいな」と呟いた。
二人交代で洗面所を使い、夜の間に何度かシャワーを浴びてはいたがもう一度シャワーを使ってから露天風呂に浸かった。
真理亜が湯船で手足を伸ばしている間に、佐々木はフロントに電話をかけて食事の準備を頼んでいる。
それが済むと佐々木も露天風呂に身を沈めた。
「1時間ほどで準備できるか?」
「そんなにかからないわよ」
「せっかく来たのに、ここの庭も見せてないな」
「広いの?」
「あぁ、結構広いぞ。だから昼食は庭のほうでとろうか?」
「そんなことできるの?」
「あぁ、今頼んでおいたよ」
「わぁ、楽しみだなぁ」
真理亜が先に出ると言うと湯のなかで佐々木が真理亜の手をとって湯から指先を出し、
自分の口に近づけた。
指先に柔らかい唇が触れ、小さな音を立てて離れた。
真理亜の顔がみるみるうちに赤らんでいく。
それを佐々木は満足そうに見て、「1時間だ!ほら、先に出ろ」と言って促した。
部屋に戻った真理亜は室内のバスルームで身支度をした。
洗った髪は半分ほど乾かしておいて簡単な化粧にとりかかる。
服を着てから、寝室を少し片付ける。
シーツを見られる程度に整え、ティッシュはトイレに流し、
使用済みのゴムはベッドサイドのゴミ箱に入っているものを、
トイレの衛生バッグに全部入れて容器に捨てた。
真理亜ができることの背一杯のことだ。
あとでお掃除する人に見られると思うと恥ずかしかったが、仕方がない。
手を洗って、髪を完全に乾かすと準備はできた。
あとは昨日の買い物袋をまとめるだけである。
佐々木の淹れたコーヒーを飲みながら、二人で荷物を一階のダイニングテーブルにまとめて置いた。
ハンドバックだけを持って部屋を出ると、佐々木が真理亜の手を取り、
真理亜の歩調に合わせて見事な日本庭園を横切っていく。
母屋のすぐ裏手に蔵が見えた。
蔵の入り口で女将が待っていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる