7 / 7
第一章
六.司祭が見たもの
しおりを挟む
目を瞑ってしまうほどの光が、徐々に収まっていく。
その光景に誰も言葉を発することができず、聖堂は静寂に包まれている。
しかしその静寂をヒューゴが破った。
「これは!青い光ということはやはり水魔法だな!しかし彼女は風魔法も使えるのだな」
「それにしてもこんなに強い光は見たことない!わかってはいたがルピナス嬢の魔力はとてもつなく強力なものに違いないっ!」
ヒューゴは叫びながらも紙に何か書き留めている。
シモンも助祭の青年も、驚きで声を出せずにいた。
本来ならば、自分に魔力がなければ、このように水晶が光るところを見ることはない。
自分の子供や孫が祝福を受ける時には立ち会うが、魔力は受け継がれるものらしく、魔力を持たない者から魔力を持つ者が生まれるのは、ごく稀なことである。
そのためシモンはこのように水晶が光るとは知らなかったが、ヒューゴの様子から「これは普通ではない」と知る。
「私も今までに三回ほど光るところを見ましたが、このように強い光を見たことはないです!」
助祭の青年も驚きの声を上げた。
司祭だけは落ち着いていて、何か思考しつつも、ルピナスに優しく声をかける。
「ルピナス殿、心の中でかまいません。そのままでアシュリナ様にお礼を申し上げなさい」
司祭はルピナスにそう促した。
ルピナスは頷くと目を瞑り、心の中で声をかける。
(アシュリナさま、私に力をお与えくださり、ありがとうございます)
「..ルピ.........は.........が..え....き.....」
(...えっ?)
ルピナスは周りをきょろきょろと見たが、そばには司祭しかいない。
「どうかしましたか、ルピナス殿」
「...いいえ、何でもありません」
司祭が何か言ったのかと思ったが、どうやら彼ではないようだ。
(気のせい...?)
「本日のことは神殿に報告いたします。そして神殿を通して王家へと伝わります。ルピナス殿の今後については国より指示がありますが、おそらく王立学園の魔法科で学ぶことになるでしょう」
「魔法科...そうですか。それでは入学まであと二年しかありませんね」
シモンは苦笑した。
「祝福された者はすでに王家から遣わされた魔法使いたちから教わっています。しかし話を聞くにルピナス殿はすでに魔法を使えるようですね」
「私も今日初めて、この子に魔法を使うところを見せてもらいました」
「それならば焦ることはないでしょう。最初は自分の中にある魔力を感じることから始めるのですが、それがなかなか難しい。それができて、ようやく魔法を使えるのですから」
「そうなのですね。私には魔力がないので、どういう感覚なのか想像できません」
「これだけ強い魔力をお持ちなら、両親どちらかが魔力を持っていてもおかしくはないのですが...母親は平民だったため祝福を受けていないでしょう。もしかしたら魔力を持っていたのかもしれません」
「では扉までお連れなさい」
話を終えた司祭がそう言うと、助祭の青年は三人を伴って歩き出す。
三人の後ろから着いていくルピナスに、司祭は歩きながら小さく声をかけた。
「ルピナス殿、あの眩い光の中で私には貴女の中にある別の光が見えました。魔力以外に、貴女の中にある何かを感じませんか?」
「そうなのですか?私には感じられません司祭様」
「...今後、もし何かお困りのことがあればここにいらっしゃい。相談にのりましょう」
「ありがとうございます、司祭様」
「神はいつも、どんな時も貴女を見守っていますよ」
急な訪問であるにも関わらず、受け入れてくれたことへの礼を言い、別れの挨拶をする。
「ではエイデン司祭、本日は感謝する。また何かあれば来るかもしれないが、その時はまた頼む」
「ええ、お待ちしております。お帰りはお気をつけて」
シモンもルピナスも、ヒューゴに続いて礼をした。
三人は馬車置き場まで歩き出す。
司祭はその背中が見えなくなっても、その場にしばらく留まっていた。
水晶はその昔、この国の守護神であるアシュリナから授かったと言い伝えられている。
天界にいる神が、地上の人間の声を聞くために授けたという。
司祭が祈りを捧げ、声を届ける。
水晶は神に声を届け、神からお告げを授かるための媒介だ。
しかし現在神の声が聞けるといわれる者は、大公領にある神殿の司教だけである。
(ルピナス殿、貴女の中にあるのはきっと、聖なる光。ただその光は表に出せないほどに弱っている)
確かなことではないため、このことは神殿には報告せず、エイデンは自分の胸に秘めることにした。
祝福は魔力のある無しを調べるためのものだけではない。
聖なる力を持つ者を見つけるためのものでもあるのだ。
水晶が光れば、神から魔力や聖なる力を授かっていることの証だ。
聖なる力は癒しに特化している力で、その力を持つ者は神殿に身を置き、この国の安寧と繁栄を祈る。
その生涯を国の為に尽くすことになるのだ。
聖なる力を持つ者は、祝福を受けた時に白銀の光を放つと言われている。
ルピナスは青色だったので、水魔法を得意としているのかもしれない。
魔力を持たないほとんどの者は知らないだろうが、本来、魔力を持つ者は様々な魔法を使えるのだ。
水晶はただ、その者が得意とする魔法属性を示しているだけである。
しかし水晶が示した通り、その属性しか使えない者が多いことも確かだ。
エイデンは、すでに魔法を使え、聖なる力を秘めているであろうルピナスが、困難な道を進むことになるであろうと予感した。
(この国をお守りくださるアシュリナ様、どうか彼女にとっての最善の道をお示しください。どうか彼女をお導きください)
エイデンは神に祈りを捧げた。
その光景に誰も言葉を発することができず、聖堂は静寂に包まれている。
しかしその静寂をヒューゴが破った。
「これは!青い光ということはやはり水魔法だな!しかし彼女は風魔法も使えるのだな」
「それにしてもこんなに強い光は見たことない!わかってはいたがルピナス嬢の魔力はとてもつなく強力なものに違いないっ!」
ヒューゴは叫びながらも紙に何か書き留めている。
シモンも助祭の青年も、驚きで声を出せずにいた。
本来ならば、自分に魔力がなければ、このように水晶が光るところを見ることはない。
自分の子供や孫が祝福を受ける時には立ち会うが、魔力は受け継がれるものらしく、魔力を持たない者から魔力を持つ者が生まれるのは、ごく稀なことである。
そのためシモンはこのように水晶が光るとは知らなかったが、ヒューゴの様子から「これは普通ではない」と知る。
「私も今までに三回ほど光るところを見ましたが、このように強い光を見たことはないです!」
助祭の青年も驚きの声を上げた。
司祭だけは落ち着いていて、何か思考しつつも、ルピナスに優しく声をかける。
「ルピナス殿、心の中でかまいません。そのままでアシュリナ様にお礼を申し上げなさい」
司祭はルピナスにそう促した。
ルピナスは頷くと目を瞑り、心の中で声をかける。
(アシュリナさま、私に力をお与えくださり、ありがとうございます)
「..ルピ.........は.........が..え....き.....」
(...えっ?)
ルピナスは周りをきょろきょろと見たが、そばには司祭しかいない。
「どうかしましたか、ルピナス殿」
「...いいえ、何でもありません」
司祭が何か言ったのかと思ったが、どうやら彼ではないようだ。
(気のせい...?)
「本日のことは神殿に報告いたします。そして神殿を通して王家へと伝わります。ルピナス殿の今後については国より指示がありますが、おそらく王立学園の魔法科で学ぶことになるでしょう」
「魔法科...そうですか。それでは入学まであと二年しかありませんね」
シモンは苦笑した。
「祝福された者はすでに王家から遣わされた魔法使いたちから教わっています。しかし話を聞くにルピナス殿はすでに魔法を使えるようですね」
「私も今日初めて、この子に魔法を使うところを見せてもらいました」
「それならば焦ることはないでしょう。最初は自分の中にある魔力を感じることから始めるのですが、それがなかなか難しい。それができて、ようやく魔法を使えるのですから」
「そうなのですね。私には魔力がないので、どういう感覚なのか想像できません」
「これだけ強い魔力をお持ちなら、両親どちらかが魔力を持っていてもおかしくはないのですが...母親は平民だったため祝福を受けていないでしょう。もしかしたら魔力を持っていたのかもしれません」
「では扉までお連れなさい」
話を終えた司祭がそう言うと、助祭の青年は三人を伴って歩き出す。
三人の後ろから着いていくルピナスに、司祭は歩きながら小さく声をかけた。
「ルピナス殿、あの眩い光の中で私には貴女の中にある別の光が見えました。魔力以外に、貴女の中にある何かを感じませんか?」
「そうなのですか?私には感じられません司祭様」
「...今後、もし何かお困りのことがあればここにいらっしゃい。相談にのりましょう」
「ありがとうございます、司祭様」
「神はいつも、どんな時も貴女を見守っていますよ」
急な訪問であるにも関わらず、受け入れてくれたことへの礼を言い、別れの挨拶をする。
「ではエイデン司祭、本日は感謝する。また何かあれば来るかもしれないが、その時はまた頼む」
「ええ、お待ちしております。お帰りはお気をつけて」
シモンもルピナスも、ヒューゴに続いて礼をした。
三人は馬車置き場まで歩き出す。
司祭はその背中が見えなくなっても、その場にしばらく留まっていた。
水晶はその昔、この国の守護神であるアシュリナから授かったと言い伝えられている。
天界にいる神が、地上の人間の声を聞くために授けたという。
司祭が祈りを捧げ、声を届ける。
水晶は神に声を届け、神からお告げを授かるための媒介だ。
しかし現在神の声が聞けるといわれる者は、大公領にある神殿の司教だけである。
(ルピナス殿、貴女の中にあるのはきっと、聖なる光。ただその光は表に出せないほどに弱っている)
確かなことではないため、このことは神殿には報告せず、エイデンは自分の胸に秘めることにした。
祝福は魔力のある無しを調べるためのものだけではない。
聖なる力を持つ者を見つけるためのものでもあるのだ。
水晶が光れば、神から魔力や聖なる力を授かっていることの証だ。
聖なる力は癒しに特化している力で、その力を持つ者は神殿に身を置き、この国の安寧と繁栄を祈る。
その生涯を国の為に尽くすことになるのだ。
聖なる力を持つ者は、祝福を受けた時に白銀の光を放つと言われている。
ルピナスは青色だったので、水魔法を得意としているのかもしれない。
魔力を持たないほとんどの者は知らないだろうが、本来、魔力を持つ者は様々な魔法を使えるのだ。
水晶はただ、その者が得意とする魔法属性を示しているだけである。
しかし水晶が示した通り、その属性しか使えない者が多いことも確かだ。
エイデンは、すでに魔法を使え、聖なる力を秘めているであろうルピナスが、困難な道を進むことになるであろうと予感した。
(この国をお守りくださるアシュリナ様、どうか彼女にとっての最善の道をお示しください。どうか彼女をお導きください)
エイデンは神に祈りを捧げた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
さよなら 大好きな人
小夏 礼
恋愛
女神の娘かもしれない紫の瞳を持つアーリアは、第2王子の婚約者だった。
政略結婚だが、それでもアーリアは第2王子のことが好きだった。
彼にふさわしい女性になるために努力するほど。
しかし、アーリアのそんな気持ちは、
ある日、第2王子によって踏み躙られることになる……
※本編は悲恋です。
※裏話や番外編を読むと本編のイメージが変わりますので、悲恋のままが良い方はご注意ください。
※本編2(+0.5)、裏話1、番外編2の計5(+0.5)話です。
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。
あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。
宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。
対極のような二人は姉妹。母親の違う。
お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。
そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。
天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。
生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。
両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。
だが……。運命とは残酷である。
ルビアの元に死神から知らせが届く。
十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。
美しい愛しているルビア。
失いたくない。殺されてなるものか。
それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。
生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。
これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
【完結】魅了魔法のその後で──その魅了魔法は誰のため? 婚約破棄した悪役令嬢ですが、王太子が逃がしてくれません
瀬里@SMARTOON8/31公開予定
恋愛
その魅了魔法は誰のため?
一年前、聖女に婚約者である王太子を奪われ、婚約破棄された悪役令嬢リシェル・ノクティア・エルグレイン。
それが私だ。
彼と聖女との婚約披露パーティの噂が流れてきた頃、私の元に王太子が訪れた。
彼がここに来た理由は──。
(全四話の短編です。数日以内に完結させます)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる