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8. 反抗的な新人官吏
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新人官吏が研修期間を終え、少しずつ業務に慣れ始めてくる、初夏の上旬。
「クロイツェル補佐官殿」
資料室で書類の整理をしていたユーミリアは、財務省の文官に声を掛けられた。
今年仕官した新人官吏。ブラッドリー伯爵家の次男坊、イーサンだ。
「命じられていた、帳簿の写しがご用意できました」
そう言って彼は、紐で綴じられた紙束を部屋の隅に備え付けられた作業卓へと置く。
次の会議で用いる資料にとある貴族の帳簿の写しが必要となったので、財務省から手が空いている文官を一人借り、去年の帳簿を別の紙に書き写してくれと頼んだのだ。
そっくりそのまま数字を書き写すだけなので、誰にでもできる仕事。だが、大変地味で時間の掛かる作業である。
ご苦労さまです、と新人官吏を労ったユーミリアは、写しに視線を落として、ぱちりと目を瞬かせた。
綴られた文字は綺麗な筆致で、もの凄く読みやすい。
ユーミリアは用紙を一枚一枚、大まかに確認した。その筆跡は、すべて同じ人物のものだと判断できた。
「……こちらの写しは、あなたが書き写してくれたものですか?」
「もちろんです」
イーサンは誇らしげに胸を張った。
(……ふぅん)
ユーミリアは、廃棄用にまとめた書類の中から用紙を一枚、抜き取った。それから卓に備え付けてある羽ペンとインクを手元に引き寄せ。
はい、と。
焼却予定の書類を一枚、イーサンの目の前に置いた。
「この単語を、こちらの紙に書き取っていただけますか?」
書類の空いているスペースを指差し、『穀物』という文字を書くように命じる。
なんてことはない指示のはずなのに、イーサンは動かなかった。
「どうされました? 簡単な作業でしょう?」
「自分は忙しいのですが……」
ユーミリアはにっこりと微笑んだ。
新人官吏より、遥かに仕事量が多い自負がある。
「お互い、忙しい身の上ですから手早く済ませましょう?」
渋々、イーサンがペンを手に取った。卓に向かい、文字を綴る。
どう見ても、筆跡が異なった。
ユーミリアは鋭く尋ねる。
「これが最後の機会です。この帳簿の写しはあなたがご自分の手で複写したものですか?」
「……」
この期に及んで黙秘を貫く彼に、ユーミリアは嘆息混じりに告げる。
「言いにくいのでしたら、当てて差し上げます。この筆跡は同期のシュタット・ハーバーのもの。違いますか?」
イーサンと同じく財務省の新人であるシュタットが作成した報告書を、読んだことがある。その際に、字が綺麗な文官さんだなぁと思ったことは、記憶に新しかった。
「彼はあなたの部下ですか?」
官吏が働く王宮の最高責任者は、宰相であるルディウス。その補佐官であるユーミリアは時と場合によっては宰相に次ぐ権限を有している。
直属ではないものの、彼にとってユーミリアは上司に当たる。その上司から命じられた仕事を同僚に任せるだなんて、褒められた行為じゃない。
「いいえ。ですが、ハーバーは物覚えが悪く、上司からの信用がないために任される業務が少ないんです。暇を持て余している彼になら作業を肩代わりしてもらっても支障はないと、判断してのことです。俺は他にも業務を抱えていましたし」
そんな建前を鵜呑みにする人間に、宰相補佐官が務まるとでも思っているのだろうか。侮られたものである。
「暇な時間だけで片付けられる作業量ではなかったはず。彼はきっと、業務外の時間を費やして片付けたのでしょう。ただの同期の頼みに、善意だけでそこまでの労力を割いてくれたと? そのような話は信じられません。彼にどうやって頼んだのか、今ここで実演できますか?」
シュタットは平民出。対してイーサンは伯爵家の生まれ。身分差を利用して、強要したのではないだろうか。
「俺とハーバーは王立学院の同級生です。その時から上下関係ができあがっていたので、快く引き受けてくれたんですよ」
つまり、学生時代にいじめていた同僚をここでもこき使っている、と。
悪びれたところのない態度に、ユーミリアは声音をますます冷たいものにする。
「彼に任せたことをすぐに報告しなかったのはなぜです? 暇を持て余していた同僚が代わりに用意してくれた、と。私が気づかなかったら、危うくあなたを丁寧な仕事をしてくれる真面目な官吏だと評価するところでした。正当な評価ではありませんよね? 自身でもよくないことをしていると自覚があったから、伏せたのでしょう? 己の非を認められませんか?」
「……かわいげな」
この場で彼を引っ叩かなかったことを、後でめいっぱいルディウスに褒めてもらおうと思う。
「上司に向かって、随分な態度ですね」
「上司って、お飾りでしょう?」
イーサンはとうとう馬脚を現した。
「宰相に着任以来、行き過ぎた完璧主義がゆえに、閣下に補佐官が定着しなかったのは有名です。さしもの閣下も、婚約者のあなたを軽率に解任することはしない。身内だから切り捨てられ難いという理由で補佐官を担っているだけの人が、大きな顔をしないでくださいよ」
ルディウスが完璧主義者なのは事実。彼が過去に自身の補佐官を幾人も解任していたというのもまた、事実である。
だが、彼は他人にまで完璧を求めることがいかに不毛であるかも、きちんと理解している。そして、適材適所に仕事を割り振ることは、ルディウスなら造作もない。
そんな彼が補佐官を取っ替え引っ替えしていた経緯は割愛するとして、だ。
「顔と身体に恵まれてよかったですね。大した家の出でなくても男を骨抜きにできるのですから」
イーサンは小馬鹿にするように鼻で笑った。
(あらあら)
女の官吏は舐められやすく、差別的な扱いを受けるのはよくある話。その上でこの若さと可憐な容貌なのだから、軽んじられるのはお約束である。通常は。
仕官してから今日に至るまで、ユーミリアはただの一度も王宮で軽んじられたことがなかった。
文官登用試験に歴代最高得点で合格し。新人研修をすっ飛ばして、宰相補佐官に任命されたのがユーミリアである。
異例も異例、常識外れの人事だが、不満を口にするものは一人としていなかった。
というのも、当時の王宮内でルディウスというのはそれはもう、鬼のように厳しく冷徹な上司で通っていたからである。
まぁそれは、王宮内部の腐敗がひどく、官吏の仕事意識が非常に低かったため、空気を引き締める必要に駆られてのポーズに過ぎないのだけれど。
ルディウスの厳しさを目の当たりにしてきた官吏たちにとって、宰相補佐官は王宮きっての貧乏くじ。最も配属されたくない部署に女性官吏が任命されたところで、同情されこそすれ、妬みや謗りを受けることなどなく。
そして、少し経てばユーミリアという存在の利便性に気づく。
冷徹非情と名高い宰相相手の橋渡し役となってくれて、察しもいい。ユーミリアは官吏たちにとって有難い緩衝材なのだ。
だが、仕官して日の浅い新人にその認識があるはずもない。
彼の目には、婚約者という恵まれた身分によって分不相応な役職についている女に映っているらしい。
言いたい放題なイーサンを、ユーミリアは冷ややかに睨み据えた。
「ここは閣下が管轄する王宮です。学生時代の上下関係を持ち出し、同僚をいびる低俗な官吏がいるとなれば、閣下の監督不行届が疑われます。あの方の名誉を損なう行為を、補佐官として看過するわけにはいきません」
純粋に、他者を虐げる行為は許せない。
そして、そんな程度の低い官吏がルディウスの部下を名乗るだなんて、ユーミリアは絶対に許さない。
「いびるだなんて、大袈裟ですよ。俺は今年の登用試験に首席合格して官吏となったんです。あんな雑務を任されるような人材じゃありません。相応しい人間に割り振っただけですよ」
「己が有能だから、雑務は相応しくない、と?」
「そういうことです」
なるほど。では、相応の扱いをしてあげようではないか。
ユーミリアは薄く笑んだ。
「仰る通り、私が補佐官に任命されているのは閣下の婚約者だからです。そこについては、否定できません」
ユーミリアがこの若さで補佐官に任命されたきっかけは、彼の婚約者であるがゆえに、だ。そこは、否定しきれない。
だが。
「ですが、私は閣下の期待を裏切ったことは一度もありません。ルディウス・レオンハルトの補佐官を任されている所以です」
ユーミリアが補佐官を解任されていないのは、見合った能力があるからである。分不相応な役職に就かせるような、そんな特別扱いをルディウスは是とする人ではない。
「同僚を顎で使い、仕事を選びたいのなら相応の能力があることを示してください。あなたが有能な人材だと証明できたら、一連の生意気な態度には目を瞑って差し上げます」
「そんなもの、どうやって証明しろと? 登用試験の結果でも見せましょうか?」
生意気な新人に、懇切丁寧に説いてやる。
「あなたの上司には私から話を通しますから、案件を一つ、お任せします。毎年財務省が手こずって宰相案件になる、恒例行事のようなものです。追って詳細を伝えますから、財務省で待機していなさい」
「宰相案件……」
眉を顰めた彼は、宰相案件と聞いて怖気付いたらしい。
「宰相案件といっても、昨年は私が担当しました。女の身でも解決できる問題ですよ。退屈な仕事はしたくないのでしょう? その度胸を買って、出世の機会をあげます。解決できれば上からの覚えもめでたくなり、同期に一気に差をつけられますよ。下の者に仕事を振るのは正当な権利ですから、私が小言を口にする必要もなくなります」
ユーミリアでも解決できたと聞いて、途端に余裕が生まれたらしい。
イーサンは乗り気な様子で、乾いた唇を舐めた。
「どんな案件なんです?」
ちょっと考え。
「毎年、懲りもせずに領地の収入を誤魔化す困った子爵様をこってりと搾る、紛う方なき、財務省のお仕事です」
優美な微笑みを湛えて、ユーミリアはそう答えた。
「クロイツェル補佐官殿」
資料室で書類の整理をしていたユーミリアは、財務省の文官に声を掛けられた。
今年仕官した新人官吏。ブラッドリー伯爵家の次男坊、イーサンだ。
「命じられていた、帳簿の写しがご用意できました」
そう言って彼は、紐で綴じられた紙束を部屋の隅に備え付けられた作業卓へと置く。
次の会議で用いる資料にとある貴族の帳簿の写しが必要となったので、財務省から手が空いている文官を一人借り、去年の帳簿を別の紙に書き写してくれと頼んだのだ。
そっくりそのまま数字を書き写すだけなので、誰にでもできる仕事。だが、大変地味で時間の掛かる作業である。
ご苦労さまです、と新人官吏を労ったユーミリアは、写しに視線を落として、ぱちりと目を瞬かせた。
綴られた文字は綺麗な筆致で、もの凄く読みやすい。
ユーミリアは用紙を一枚一枚、大まかに確認した。その筆跡は、すべて同じ人物のものだと判断できた。
「……こちらの写しは、あなたが書き写してくれたものですか?」
「もちろんです」
イーサンは誇らしげに胸を張った。
(……ふぅん)
ユーミリアは、廃棄用にまとめた書類の中から用紙を一枚、抜き取った。それから卓に備え付けてある羽ペンとインクを手元に引き寄せ。
はい、と。
焼却予定の書類を一枚、イーサンの目の前に置いた。
「この単語を、こちらの紙に書き取っていただけますか?」
書類の空いているスペースを指差し、『穀物』という文字を書くように命じる。
なんてことはない指示のはずなのに、イーサンは動かなかった。
「どうされました? 簡単な作業でしょう?」
「自分は忙しいのですが……」
ユーミリアはにっこりと微笑んだ。
新人官吏より、遥かに仕事量が多い自負がある。
「お互い、忙しい身の上ですから手早く済ませましょう?」
渋々、イーサンがペンを手に取った。卓に向かい、文字を綴る。
どう見ても、筆跡が異なった。
ユーミリアは鋭く尋ねる。
「これが最後の機会です。この帳簿の写しはあなたがご自分の手で複写したものですか?」
「……」
この期に及んで黙秘を貫く彼に、ユーミリアは嘆息混じりに告げる。
「言いにくいのでしたら、当てて差し上げます。この筆跡は同期のシュタット・ハーバーのもの。違いますか?」
イーサンと同じく財務省の新人であるシュタットが作成した報告書を、読んだことがある。その際に、字が綺麗な文官さんだなぁと思ったことは、記憶に新しかった。
「彼はあなたの部下ですか?」
官吏が働く王宮の最高責任者は、宰相であるルディウス。その補佐官であるユーミリアは時と場合によっては宰相に次ぐ権限を有している。
直属ではないものの、彼にとってユーミリアは上司に当たる。その上司から命じられた仕事を同僚に任せるだなんて、褒められた行為じゃない。
「いいえ。ですが、ハーバーは物覚えが悪く、上司からの信用がないために任される業務が少ないんです。暇を持て余している彼になら作業を肩代わりしてもらっても支障はないと、判断してのことです。俺は他にも業務を抱えていましたし」
そんな建前を鵜呑みにする人間に、宰相補佐官が務まるとでも思っているのだろうか。侮られたものである。
「暇な時間だけで片付けられる作業量ではなかったはず。彼はきっと、業務外の時間を費やして片付けたのでしょう。ただの同期の頼みに、善意だけでそこまでの労力を割いてくれたと? そのような話は信じられません。彼にどうやって頼んだのか、今ここで実演できますか?」
シュタットは平民出。対してイーサンは伯爵家の生まれ。身分差を利用して、強要したのではないだろうか。
「俺とハーバーは王立学院の同級生です。その時から上下関係ができあがっていたので、快く引き受けてくれたんですよ」
つまり、学生時代にいじめていた同僚をここでもこき使っている、と。
悪びれたところのない態度に、ユーミリアは声音をますます冷たいものにする。
「彼に任せたことをすぐに報告しなかったのはなぜです? 暇を持て余していた同僚が代わりに用意してくれた、と。私が気づかなかったら、危うくあなたを丁寧な仕事をしてくれる真面目な官吏だと評価するところでした。正当な評価ではありませんよね? 自身でもよくないことをしていると自覚があったから、伏せたのでしょう? 己の非を認められませんか?」
「……かわいげな」
この場で彼を引っ叩かなかったことを、後でめいっぱいルディウスに褒めてもらおうと思う。
「上司に向かって、随分な態度ですね」
「上司って、お飾りでしょう?」
イーサンはとうとう馬脚を現した。
「宰相に着任以来、行き過ぎた完璧主義がゆえに、閣下に補佐官が定着しなかったのは有名です。さしもの閣下も、婚約者のあなたを軽率に解任することはしない。身内だから切り捨てられ難いという理由で補佐官を担っているだけの人が、大きな顔をしないでくださいよ」
ルディウスが完璧主義者なのは事実。彼が過去に自身の補佐官を幾人も解任していたというのもまた、事実である。
だが、彼は他人にまで完璧を求めることがいかに不毛であるかも、きちんと理解している。そして、適材適所に仕事を割り振ることは、ルディウスなら造作もない。
そんな彼が補佐官を取っ替え引っ替えしていた経緯は割愛するとして、だ。
「顔と身体に恵まれてよかったですね。大した家の出でなくても男を骨抜きにできるのですから」
イーサンは小馬鹿にするように鼻で笑った。
(あらあら)
女の官吏は舐められやすく、差別的な扱いを受けるのはよくある話。その上でこの若さと可憐な容貌なのだから、軽んじられるのはお約束である。通常は。
仕官してから今日に至るまで、ユーミリアはただの一度も王宮で軽んじられたことがなかった。
文官登用試験に歴代最高得点で合格し。新人研修をすっ飛ばして、宰相補佐官に任命されたのがユーミリアである。
異例も異例、常識外れの人事だが、不満を口にするものは一人としていなかった。
というのも、当時の王宮内でルディウスというのはそれはもう、鬼のように厳しく冷徹な上司で通っていたからである。
まぁそれは、王宮内部の腐敗がひどく、官吏の仕事意識が非常に低かったため、空気を引き締める必要に駆られてのポーズに過ぎないのだけれど。
ルディウスの厳しさを目の当たりにしてきた官吏たちにとって、宰相補佐官は王宮きっての貧乏くじ。最も配属されたくない部署に女性官吏が任命されたところで、同情されこそすれ、妬みや謗りを受けることなどなく。
そして、少し経てばユーミリアという存在の利便性に気づく。
冷徹非情と名高い宰相相手の橋渡し役となってくれて、察しもいい。ユーミリアは官吏たちにとって有難い緩衝材なのだ。
だが、仕官して日の浅い新人にその認識があるはずもない。
彼の目には、婚約者という恵まれた身分によって分不相応な役職についている女に映っているらしい。
言いたい放題なイーサンを、ユーミリアは冷ややかに睨み据えた。
「ここは閣下が管轄する王宮です。学生時代の上下関係を持ち出し、同僚をいびる低俗な官吏がいるとなれば、閣下の監督不行届が疑われます。あの方の名誉を損なう行為を、補佐官として看過するわけにはいきません」
純粋に、他者を虐げる行為は許せない。
そして、そんな程度の低い官吏がルディウスの部下を名乗るだなんて、ユーミリアは絶対に許さない。
「いびるだなんて、大袈裟ですよ。俺は今年の登用試験に首席合格して官吏となったんです。あんな雑務を任されるような人材じゃありません。相応しい人間に割り振っただけですよ」
「己が有能だから、雑務は相応しくない、と?」
「そういうことです」
なるほど。では、相応の扱いをしてあげようではないか。
ユーミリアは薄く笑んだ。
「仰る通り、私が補佐官に任命されているのは閣下の婚約者だからです。そこについては、否定できません」
ユーミリアがこの若さで補佐官に任命されたきっかけは、彼の婚約者であるがゆえに、だ。そこは、否定しきれない。
だが。
「ですが、私は閣下の期待を裏切ったことは一度もありません。ルディウス・レオンハルトの補佐官を任されている所以です」
ユーミリアが補佐官を解任されていないのは、見合った能力があるからである。分不相応な役職に就かせるような、そんな特別扱いをルディウスは是とする人ではない。
「同僚を顎で使い、仕事を選びたいのなら相応の能力があることを示してください。あなたが有能な人材だと証明できたら、一連の生意気な態度には目を瞑って差し上げます」
「そんなもの、どうやって証明しろと? 登用試験の結果でも見せましょうか?」
生意気な新人に、懇切丁寧に説いてやる。
「あなたの上司には私から話を通しますから、案件を一つ、お任せします。毎年財務省が手こずって宰相案件になる、恒例行事のようなものです。追って詳細を伝えますから、財務省で待機していなさい」
「宰相案件……」
眉を顰めた彼は、宰相案件と聞いて怖気付いたらしい。
「宰相案件といっても、昨年は私が担当しました。女の身でも解決できる問題ですよ。退屈な仕事はしたくないのでしょう? その度胸を買って、出世の機会をあげます。解決できれば上からの覚えもめでたくなり、同期に一気に差をつけられますよ。下の者に仕事を振るのは正当な権利ですから、私が小言を口にする必要もなくなります」
ユーミリアでも解決できたと聞いて、途端に余裕が生まれたらしい。
イーサンは乗り気な様子で、乾いた唇を舐めた。
「どんな案件なんです?」
ちょっと考え。
「毎年、懲りもせずに領地の収入を誤魔化す困った子爵様をこってりと搾る、紛う方なき、財務省のお仕事です」
優美な微笑みを湛えて、ユーミリアはそう答えた。
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