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13. 二人の休日④
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確認したいことが山ほどあって、ユーミリアは何から尋ねるべきか困ってしまった。悩んだ末に、最初に聞く内容を決めた。
「いつから隠し場所に当たりをつけていたの?」
「確信したのは、遊歩道に向かう前」
ほぼ序盤だ。
「そんなに早くから? もしかして、アネモラの特性を知っていた?」
花瓶に飾られたアネモラの花弁の色が午前中と異なるのは、使用人にお願いしてすり替えてもらったわけでは決してない。一輪挿し自体は、そのまま同じ個体である。ではなぜ花弁が薄桃色から薄紫色になっていたのかというと。
ルディウスが指の腹で花びらを弄びながら、歌うように言う。
「アネモラの花びらは酢酸マグネシウムと化学反応を起こす性質を持っている。ユミィが俺の前で花瓶に注いだのはただの水ではなく、無色透明な酢酸マグネシウムの水溶液。茎が水を吸い上げて時間の経過と共に花びらが変色したってわけだ」
完全に変色するまでには、だいたい三から四時間ほど掛かる。
また、花びらの色によって変色後の色は異なる。薄紫色に変色するのは、薄桃色のものだけである。
「知名度の低い花だから、流石のディーも知らないと踏んでいたのだけど……」
「知らなかったよ。だから調べた」
調べた、と繰り返したユーミリアはあっと気づいた。
「書庫に行きたがったのはそれでなのね?」
「ああ。他に調べ物があったのも本当だけど」
ユーミリアは小首を傾げる。
「どうしてアネモラを調べようと思い立ったの?」
「ユミィが想定していたであろう通りに、花瓶に水を入れた君の行動が俺の中で引っ掛かっていたから」
厨房を出る間際に、ユーミリアは花瓶に水を注いだ。その行動を不自然と捉えられるのは、想定内。
「器具も材料も準備は万全で、水差しにはきちんと水まで用意された状態だった。ここまで入念に準備されていたにもかかわらず花瓶に水が入っていないというのは、妙な話だ。意図して作られた状況に思える」
ルディウスの指摘通り。ユーミリアは彼の目の前で水差しの中身を花瓶に注ぐと、事前に決めていた。
「そうは言っても、人間誰しもうっかりはあるから。準備を手伝った使用人が水を用意したものの、花瓶に注ぐのを忘れて気づいたユミィが気を利かせたという可能性も、なくはない。だからまぁ、一旦は違和感は置いておいたんだけど」
「だけど?」
「本に挟んであったカードを読んだ時に、おかしいなって思った」
メッセージカードを読んで、糸口という表現はどうなんだ、とルディウスは思いっきり渋面になっていた。
「俺に謎解きを持ちかけておきながら、答えに辿り着くためのヒントを謳って用意されたはずのヒントが、推理材料としてまったく機能していない。ヒントもなしに答えに辿り着けというのは公平性に欠けて、君らしくない」
ユーミリアは自他共に認めるひねくれ者だけれども。この手のことでは公平性を重んじていたりする。
「最初は最後のメッセージカードに辿り着けばヒントが得られるのかなと推測したんだけど。それだと『三つ揃えて解を得よ』って言い回しがしっくりこない。『カードを辿って解を得よ』とか、他にいくらでも書きようがあったはずなのに」
ルディウスがふっと瞳を細めた。
「『糸口』という表現はどうなんだって抗議したら、ユミィは正しい表現だって譲らなかっただろ? それで、見方を変えてみた」
彼からの指摘を尤もだと思いつつ、あの時ユーミリアは正しいと言い張った。レシピ本の隠し場所を暗示する謎解きの文言を別角度から紐解けば、正しい表現とも解釈できるからだ。
些細な言動からルディウスに看破されないよう、本音はほどほどに、それっぽい言葉で誤魔化しはしたものの。
「逆説的な推理になるが、隠し場所に繋がるヒントが別の形で提示されていると仮定すれば、カードの文言がヒントとしては不適切なことに説明がつく。この仮説なら、君の性格とも整合性が取れる」
ルディウスは指先で軽く花瓶を弾いた。
「それらしきものが何かあったかなって思い返したら、花瓶の件が気になったんだ。君のことだから、俺が違和感を拾うのは予測できたはずなのに、なぜ不自然な行動を取ったのか」
涼やかな声で綴られる説明は、淀みのないもの。
「不自然さそのものを俺に印象づけさせたかったと考えれば、ヒントとも捉えることができる。だからアネモラについて調べた」
アネモラの性質を気取られたくないのであれば、事前に花瓶に水を入れておいて、後から使用人に中身を水溶液と入れ替えさせればよかっただけ。
にもかかわらず、彼の目の前で水を注いだのは、疑問に思ってもらうために他ならなかった。
「見本用のアネモラが答えというのは引っ掛けで、他の場所にも薄紫色のアネモラが用意されている可能性は考えなかった?」
「言っただろ? ユミィは公平《フェア》だって。厨房のアネモラを引っ掛けに使うなら、『薄紫色のアネモラの近くに手順ありけり』なんて文言にはしない。場所を仄めかす一節も加える。絶対にね」
ああ、とルディウスが付け足した。
「君が断言した通り、糸口という表現は適切だった。メッセージカードがヒントとして機能していないこと自体が、他に推理材料がないかを考え直す取っ掛かりになるわけだから。三つ揃えて解を得よって文言は、三枚のカードがヒントになっていないことの共通点を拾えという意味」
締め括るように、くすりと笑む。
「一応、最後のカードは薄っすらヒントにはなっていたけど。『灯台下暗し』って。抽象的過ぎて、答えを知っていないとヒントとして機能しないが」
「厨房という答えに確証を持たせるために、念の為に入れておいたの」
肩を竦めたユーミリアは、ふう、と息を吐いた。
「全然気づいている素振りがなかったから、カードの文言がふざけていることに呆れて、推理を放棄しているのかと思っていたわ」
まさか、ルディウスが答えに辿り着いていたとは。
「ふざけている自覚はあったんだ」
「私だったら見つけた瞬間に破り捨てているわ。何よあれ」
「作成者はユミィでは……?」
仕事終わりに作ったので、疲労でちょっとテンションがおかしくなっていたのだと思う。
「最初はね、メッセージカードにレシピの隠し場所のヒントを散りばめようとしたの。でもそれだとディーのことだから少しのヒントで答えに辿り着きそうだと思って、やめたのよね」
「それで、ひねりのある謎解きになっていたのか」
「結局早々にバレているから、あまり意味はなかったけど」
ユーミリアの性格から逆説的に仮説を組み立てることによって、早々に答えに辿り着かれたのは、予想外。
これ見よがしに花瓶に水を注ぐ行為を見て、直感で怪しい、件のアネモラなのではと至る者はいるかもしれない。
だが、ここまで論理立てて思考を進め、早々に答えに至れる者など、そうはいない。
これが、負けず嫌いなユーミリアが絶対に敵わないと全面降伏する、ルディウスの頭脳である。
的確に違和感を拾い、性格や心理状況から行動を予測し、相手の思考を読み切ってしまう。
ユーミリアは秀才ではあるとは思うけれど。目の前の幼馴染は、間違いなく天才だ。
「ねぇ」
最後に、ユーミリアは一番気になっていたことを尋ねるべく、ルディウスの顔を覗き込んだ。
「そこまで早い段階でレシピの在処を確信していたのに、最後まで付き合ってくれたのは、どうして?」
庭園のベンチでカードを見つけた時点で、これほど完璧にユーミリアの思考を読んでいたのなら。その後の散策に付き合う必要など、彼にはなかったはず。
理知的に輝いていた銀灰色の双眸が、柔らかく細まった。
「その方が、君が喜ぶ気がしたから。違った?」
ユーミリアはぱちりと目を瞬かせ、そっぽを向く。
「……違わない」
「なら、よかったよ」
彼の答えを聞いて、内心で苦笑する。
(……これは、見抜かれているわね)
今日のユーミリアの目的が、本当はなんだったのか。
ユーミリアはルディウスに八つ当たりがしたかったわけでも、謎を解いてほしかったわけでも、彼お手製のクッキーが食べてみたかったわけでもないのだ。
「ところで俺、ここから先の作業には心底自信がないんだけど」
先ほどまでの自信に満ちた表情から打って変わって、ルディウスは弱ったように眉尻を下げている。
叱られた子犬みたいな情けない顔に、ユーミリアはくすくすと笑ってしまう。
「……でしょうね。一緒に作りましょ?」
椅子に掛けてあった二人分のエプロンを手に取って、ユーミリアはそう提案するのだった。
「いつから隠し場所に当たりをつけていたの?」
「確信したのは、遊歩道に向かう前」
ほぼ序盤だ。
「そんなに早くから? もしかして、アネモラの特性を知っていた?」
花瓶に飾られたアネモラの花弁の色が午前中と異なるのは、使用人にお願いしてすり替えてもらったわけでは決してない。一輪挿し自体は、そのまま同じ個体である。ではなぜ花弁が薄桃色から薄紫色になっていたのかというと。
ルディウスが指の腹で花びらを弄びながら、歌うように言う。
「アネモラの花びらは酢酸マグネシウムと化学反応を起こす性質を持っている。ユミィが俺の前で花瓶に注いだのはただの水ではなく、無色透明な酢酸マグネシウムの水溶液。茎が水を吸い上げて時間の経過と共に花びらが変色したってわけだ」
完全に変色するまでには、だいたい三から四時間ほど掛かる。
また、花びらの色によって変色後の色は異なる。薄紫色に変色するのは、薄桃色のものだけである。
「知名度の低い花だから、流石のディーも知らないと踏んでいたのだけど……」
「知らなかったよ。だから調べた」
調べた、と繰り返したユーミリアはあっと気づいた。
「書庫に行きたがったのはそれでなのね?」
「ああ。他に調べ物があったのも本当だけど」
ユーミリアは小首を傾げる。
「どうしてアネモラを調べようと思い立ったの?」
「ユミィが想定していたであろう通りに、花瓶に水を入れた君の行動が俺の中で引っ掛かっていたから」
厨房を出る間際に、ユーミリアは花瓶に水を注いだ。その行動を不自然と捉えられるのは、想定内。
「器具も材料も準備は万全で、水差しにはきちんと水まで用意された状態だった。ここまで入念に準備されていたにもかかわらず花瓶に水が入っていないというのは、妙な話だ。意図して作られた状況に思える」
ルディウスの指摘通り。ユーミリアは彼の目の前で水差しの中身を花瓶に注ぐと、事前に決めていた。
「そうは言っても、人間誰しもうっかりはあるから。準備を手伝った使用人が水を用意したものの、花瓶に注ぐのを忘れて気づいたユミィが気を利かせたという可能性も、なくはない。だからまぁ、一旦は違和感は置いておいたんだけど」
「だけど?」
「本に挟んであったカードを読んだ時に、おかしいなって思った」
メッセージカードを読んで、糸口という表現はどうなんだ、とルディウスは思いっきり渋面になっていた。
「俺に謎解きを持ちかけておきながら、答えに辿り着くためのヒントを謳って用意されたはずのヒントが、推理材料としてまったく機能していない。ヒントもなしに答えに辿り着けというのは公平性に欠けて、君らしくない」
ユーミリアは自他共に認めるひねくれ者だけれども。この手のことでは公平性を重んじていたりする。
「最初は最後のメッセージカードに辿り着けばヒントが得られるのかなと推測したんだけど。それだと『三つ揃えて解を得よ』って言い回しがしっくりこない。『カードを辿って解を得よ』とか、他にいくらでも書きようがあったはずなのに」
ルディウスがふっと瞳を細めた。
「『糸口』という表現はどうなんだって抗議したら、ユミィは正しい表現だって譲らなかっただろ? それで、見方を変えてみた」
彼からの指摘を尤もだと思いつつ、あの時ユーミリアは正しいと言い張った。レシピ本の隠し場所を暗示する謎解きの文言を別角度から紐解けば、正しい表現とも解釈できるからだ。
些細な言動からルディウスに看破されないよう、本音はほどほどに、それっぽい言葉で誤魔化しはしたものの。
「逆説的な推理になるが、隠し場所に繋がるヒントが別の形で提示されていると仮定すれば、カードの文言がヒントとしては不適切なことに説明がつく。この仮説なら、君の性格とも整合性が取れる」
ルディウスは指先で軽く花瓶を弾いた。
「それらしきものが何かあったかなって思い返したら、花瓶の件が気になったんだ。君のことだから、俺が違和感を拾うのは予測できたはずなのに、なぜ不自然な行動を取ったのか」
涼やかな声で綴られる説明は、淀みのないもの。
「不自然さそのものを俺に印象づけさせたかったと考えれば、ヒントとも捉えることができる。だからアネモラについて調べた」
アネモラの性質を気取られたくないのであれば、事前に花瓶に水を入れておいて、後から使用人に中身を水溶液と入れ替えさせればよかっただけ。
にもかかわらず、彼の目の前で水を注いだのは、疑問に思ってもらうために他ならなかった。
「見本用のアネモラが答えというのは引っ掛けで、他の場所にも薄紫色のアネモラが用意されている可能性は考えなかった?」
「言っただろ? ユミィは公平《フェア》だって。厨房のアネモラを引っ掛けに使うなら、『薄紫色のアネモラの近くに手順ありけり』なんて文言にはしない。場所を仄めかす一節も加える。絶対にね」
ああ、とルディウスが付け足した。
「君が断言した通り、糸口という表現は適切だった。メッセージカードがヒントとして機能していないこと自体が、他に推理材料がないかを考え直す取っ掛かりになるわけだから。三つ揃えて解を得よって文言は、三枚のカードがヒントになっていないことの共通点を拾えという意味」
締め括るように、くすりと笑む。
「一応、最後のカードは薄っすらヒントにはなっていたけど。『灯台下暗し』って。抽象的過ぎて、答えを知っていないとヒントとして機能しないが」
「厨房という答えに確証を持たせるために、念の為に入れておいたの」
肩を竦めたユーミリアは、ふう、と息を吐いた。
「全然気づいている素振りがなかったから、カードの文言がふざけていることに呆れて、推理を放棄しているのかと思っていたわ」
まさか、ルディウスが答えに辿り着いていたとは。
「ふざけている自覚はあったんだ」
「私だったら見つけた瞬間に破り捨てているわ。何よあれ」
「作成者はユミィでは……?」
仕事終わりに作ったので、疲労でちょっとテンションがおかしくなっていたのだと思う。
「最初はね、メッセージカードにレシピの隠し場所のヒントを散りばめようとしたの。でもそれだとディーのことだから少しのヒントで答えに辿り着きそうだと思って、やめたのよね」
「それで、ひねりのある謎解きになっていたのか」
「結局早々にバレているから、あまり意味はなかったけど」
ユーミリアの性格から逆説的に仮説を組み立てることによって、早々に答えに辿り着かれたのは、予想外。
これ見よがしに花瓶に水を注ぐ行為を見て、直感で怪しい、件のアネモラなのではと至る者はいるかもしれない。
だが、ここまで論理立てて思考を進め、早々に答えに至れる者など、そうはいない。
これが、負けず嫌いなユーミリアが絶対に敵わないと全面降伏する、ルディウスの頭脳である。
的確に違和感を拾い、性格や心理状況から行動を予測し、相手の思考を読み切ってしまう。
ユーミリアは秀才ではあるとは思うけれど。目の前の幼馴染は、間違いなく天才だ。
「ねぇ」
最後に、ユーミリアは一番気になっていたことを尋ねるべく、ルディウスの顔を覗き込んだ。
「そこまで早い段階でレシピの在処を確信していたのに、最後まで付き合ってくれたのは、どうして?」
庭園のベンチでカードを見つけた時点で、これほど完璧にユーミリアの思考を読んでいたのなら。その後の散策に付き合う必要など、彼にはなかったはず。
理知的に輝いていた銀灰色の双眸が、柔らかく細まった。
「その方が、君が喜ぶ気がしたから。違った?」
ユーミリアはぱちりと目を瞬かせ、そっぽを向く。
「……違わない」
「なら、よかったよ」
彼の答えを聞いて、内心で苦笑する。
(……これは、見抜かれているわね)
今日のユーミリアの目的が、本当はなんだったのか。
ユーミリアはルディウスに八つ当たりがしたかったわけでも、謎を解いてほしかったわけでも、彼お手製のクッキーが食べてみたかったわけでもないのだ。
「ところで俺、ここから先の作業には心底自信がないんだけど」
先ほどまでの自信に満ちた表情から打って変わって、ルディウスは弱ったように眉尻を下げている。
叱られた子犬みたいな情けない顔に、ユーミリアはくすくすと笑ってしまう。
「……でしょうね。一緒に作りましょ?」
椅子に掛けてあった二人分のエプロンを手に取って、ユーミリアはそう提案するのだった。
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