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19. いつかの夜会⑤
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ルディウスは数多の視線からクローゼを遮るように、すっと背中に庇った。
冷え冷えとした銀灰色の双眸が、ひたと一人の令嬢に向けられる。勝ち気そうな顔立ちをした、ユーミリアよりいくらか年上の令嬢だ。
「誤解があるようだ、ドリス嬢」
なぜかルディウスは令嬢全員にではなく、ドリスという名らしき黒髪の令嬢一人に語りかけた。
「このところ、不穏な報告を受けていてね。確かめたいことがあった」
億劫そうに首を巡らせて令嬢たちを順に見やったルディウスは、再びドリスへと視線を戻した。
「年頃の令嬢たちのあいだで密輸品が出回っているようだ、と。君たちが身につけているその髪飾りがまさに件の品なのではと危惧し、部下に調べさせた」
口調も声音も、ユーミリアには馴染みのないもの。一国の宰相に相応しい、冷徹さと威厳に満ちた佇まいだった。
ルディウスは朗々と続ける。
「いざ確かめてみれば、見当違いにも程があったわけだが。その後、少々不手際があったらしい。まさか髪飾りを元の場所に戻すでもなく、誤ってクローゼ嬢のバッグに忍ばせてしまうとは。使えない部下も居たものだ」
髪飾りは盗まれたのではなく、大人の事情によってテーブルから移動してしまった。
それがルディウスの主張。
「誤解は解けただろうか?」
ドリスに向けて、ルディウスが首を傾けてみせる。彼女はキッと眦をつり上げた。
「そのような作り話を、誰がーー」
「ドリス」
噛みつきかけたドリスをぴしゃりと制したのは、ロベリアだ。
「閣下に食ってかかるだなんて、不敬だわ」
おっとりと窘められたドリスは、ハッとしたように口を噤んだ。その顔色が、少しずつ青褪めていく。
他の令嬢たちも同様だ。ロベリアを除いた三人の令嬢は、青ざめた顔を落ち着きなく見合わせていた。
(……本当、切れるわよね。どこまでも。この反応は全員黒だわ)
ユーミリアはルディウスの機転に感服するしかない。
彼がドリスを名指しした意図がわかった。
四人の中で一番、激情型なのだろう。思えばクローゼを一番強い言葉で責め立てていたのも彼女だった。
最も口を滑らせてくれそうな人物と判断して、鎌をかけたというわけだ。
ルディウスが語った説明を、世間知らずな令嬢が即座に嘘と断じるのは難しい。作り話だとすぐに見抜けるのは、髪飾りが紛失した経緯を知る者だけ。
顔色から、彼女たちが全員グルなのは明らか。そして、四人の中で唯一悪びれることなく、肝の坐った態度を貫くロベリアが、この騒動を主導した人物と見てよさそうだった。
取り巻きがうっかり口を滑らせるのを恐れ、割って入った。先ほどの光景はそう映った。
ルディウスもユーミリアと同じ結論に至ったのだろう。嫌悪からか、ほんのわずかに瞳が細まった。
「クローゼ嬢。面倒に巻き込んだことを詫びよう。君たちも、納得しただろうか?」
彼の言を嘘と断じれば、その根拠を追求される。
ルディウスの頭脳を持ってすれば、世間知らずな令嬢から自白を引き出すことなど容易い。
下手に会話を広げれば墓穴を掘りかねず、この場で彼女たちが取るべき対応はーー。
「そうでしたのね。安心いたしました。わたくしは信じていたのよ? クローゼがそんなことをするはずないって」
引き下がるのが、賢明というもの。
ロベリアは白々しくも、ホッと胸を撫で下ろした。
(やたら演技が上手いわね、あのご令嬢)
ユーミリアは呆れてしまう。
追従するように、他の令嬢たちもそうだったのね、と声を上げ始める。矛を収めることに決めたようだ。
これで、クローゼへの疑いは晴れた。
だが、これだけでは本当の意味では彼女を助けたことにはならないかもしれない。帰宅後、クローゼが酷い目に遭ったら意味がないのだ。
クローゼへの嫌疑は晴れたが、ルディウスはその場に留まった。
「招待客にはアッシュベリー夫人の名もあったと記憶しているが。母君はどこに?」
「母は……」
「こちらに」
人垣を縫って、貴婦人がすっと進み出た。
「たかが髪飾り一つで娘が大袈裟に騒ぎ立てたようで……。このような大事にしてしまい、どうお詫び申し上げればよいやら」
「……いや、気にしていない。収穫があったからな」
ルディウスが意味ありげにクローゼに視線を送る。
「その娘だが。年上の令嬢ーーそれも複数人から執拗に責められても取り乱すことなく、気丈に振る舞う態度。気に入った」
唐突に持ち上げられて、クローゼは戸惑ったように瞳を揺らしている。そんな当人を置き去りに、ルディウスが続けた。
「俺の友人にぜひ紹介したい。いつになるかは知れないが」
(あなたに友人は居ないでしょうに)
ルディウスもルディウスで次から次へと嘘が飛び出すのだから、なんというか。
頼もしいことこの上ないのだが、この婚約者殿は天性の詐欺師なのではと、錯覚しそうになる。
「この先、アッシュベリーの末娘は俺の商品だ。無論、丁重に扱ってくれるだろう?」
どうやらルディウスも、伯爵家におけるクローゼの立場には勘付いているらしい。
ルディウスがいつか知人に紹介するかもしれないから、伯爵家の娘らしく健全な育て方をしろ、という意味だ。みずぼらしい娘を紹介したら、ルディウスが恥をかくことになる。
ルディウスを敵に回すか、取り入るか。どちらが伯爵家の明るい未来に繋がるのか、夫人は微笑みの下で算段をつけたのだろう。
夫人が恭しく膝を折る。
「もちろんでございます、宰相閣下。どこに出しても恥ずかしくない、立派な淑女に仕上げてみせますわ」
「行き過ぎた教育は控えてほしいものだが」
「心得ております。他意はありませんわ」
「お母様……っ」
堪りかねた様子で、ロベリアが抗議の声を上げた。冷静を保っていた彼女がつい口を挟みたくなるほどに、聞き捨てならない申し出だったのだろう。
善良な姉を装う仮面を、取り繕う余裕など失うほどに。
「クローゼの嫁ぎ先は、わざわざ閣下のお世話にならずともーー」
「ロベリア嬢」
ルディウスが鋭く遮った。その声があまりにも凍てついていたからだろうか。ロベリアはぎくりと身を竦ませた。
「ああ、それから。その友人たちも」
すっかり縮こまっている令嬢たちにも、釘を刺すように。
「社交場での立ち居振る舞いには細心の注意を払った方がいい。その年頃ならば、結婚に夢を見ていたいはず。恨みを買い、年寄りの後妻を押し付けられたくなどないだろう?」
冷ややかに見据えられ、令嬢たちはますます顔色を悪くする。だが、ロベリアだけは納得がいかない顔で食い下がった。
「ですが、閣下。妹は血筋がーー」
「随分と、物分かりが悪いようだ」
冷淡な声が、皆まで言わせなかった。
ルディウスはロベリアではなく、夫人を睨み据える。
「娘の教育はどうなっている? それとも、俺の前でくだらない余興を演じてみせた責めを負いたいと? それが、アッシュベリーの総意なのか?」
「世間知らずな娘の戯言でございます。どうか寛大なお心で聞き流してくださいませ、閣下」
厄介ごとはごめんだと言わんばかりに、夫人が深く首を垂れた。それから、ロベリアにも無理やり頭を下げさせる。
(……ちょっといい気味、かも)
クローゼの扱いを改めるよう迫ったルディウスに不服な態度を見せたということは、ロベリアもまた、夫人同様にクローゼを虐げていたのだろう。
クローゼが伯爵家の娘らしい生活を送り、いずれ良縁に恵まれれば、ロベリアはそれはもう、歯噛みするはず。溜飲も下がるというものだ。
ルディウスが本気で嫁ぎ先まで面倒を見るのかは知らないけれど。
どんなきっかけであれ、いい縁があるといいな、と思う。結婚して家を出てしまえば、面倒な家族とも縁を切れることだし。
もちろん、クローゼがその未来を望むのなら、だけれども。
「……煩わせてくれるな」
冷水を浴びせるように言い捨てて、ルディウスはその場から立ち去った。
「帰りましょう。ロベリア……それから、クローゼ」
見世物は、いつの間にかアッシュベリー母娘にすり替わっていた。居た堪れなくなったのだろう。
夫人はそそくさと逃げ去り、ロベリアも羞恥心からか、さっさと会場を出て行った。
クローゼは手を差し伸べてくれたルディウスと家族、どちらを追いかけるべきかおろおろとしていた。
「クローゼ様」
そんな彼女に、ユーミリアはそっと声を掛けた。
「宰相閣下は私の婚約者です。言伝があるならお伝えしておきましょうか?」
「ユーミリア様っ。あ……では、助け舟を出してくださってありがとうございましたと、お伝えください」
「承知しました」
微笑んで応えながら、あっと思いつく。
「そうだ。よければ、今度クローゼ様をお茶会にお誘いしても? 閣下との約束を伯爵夫人が守ってくださっているか、確認のためにも」
琥珀の瞳が瞠られーークローゼはほわりとはにかんだ。
「またお話しできる機会に恵まれるだなんて、とっても嬉しいです、ユーミリア様」
「ユミィと。近しい方からはだいたいそう呼ばれていす」
「ではではっ、あの、私のことはクローゼと……」
「クローゼ、早くいらっしゃい」
夫人に急き立てられ、クローゼは慌ててはい、と返事をする。
「それでは、ユミィ様。何から何まで、ありがとうございました」
「私はほとんど何もしていませんけど。またお会いしましょう」
はいっ、と無邪気な微笑みを残して、クローゼは広間を出て行った。
こうして。この日、ユーミリアのお友達が増えたのだった。
冷え冷えとした銀灰色の双眸が、ひたと一人の令嬢に向けられる。勝ち気そうな顔立ちをした、ユーミリアよりいくらか年上の令嬢だ。
「誤解があるようだ、ドリス嬢」
なぜかルディウスは令嬢全員にではなく、ドリスという名らしき黒髪の令嬢一人に語りかけた。
「このところ、不穏な報告を受けていてね。確かめたいことがあった」
億劫そうに首を巡らせて令嬢たちを順に見やったルディウスは、再びドリスへと視線を戻した。
「年頃の令嬢たちのあいだで密輸品が出回っているようだ、と。君たちが身につけているその髪飾りがまさに件の品なのではと危惧し、部下に調べさせた」
口調も声音も、ユーミリアには馴染みのないもの。一国の宰相に相応しい、冷徹さと威厳に満ちた佇まいだった。
ルディウスは朗々と続ける。
「いざ確かめてみれば、見当違いにも程があったわけだが。その後、少々不手際があったらしい。まさか髪飾りを元の場所に戻すでもなく、誤ってクローゼ嬢のバッグに忍ばせてしまうとは。使えない部下も居たものだ」
髪飾りは盗まれたのではなく、大人の事情によってテーブルから移動してしまった。
それがルディウスの主張。
「誤解は解けただろうか?」
ドリスに向けて、ルディウスが首を傾けてみせる。彼女はキッと眦をつり上げた。
「そのような作り話を、誰がーー」
「ドリス」
噛みつきかけたドリスをぴしゃりと制したのは、ロベリアだ。
「閣下に食ってかかるだなんて、不敬だわ」
おっとりと窘められたドリスは、ハッとしたように口を噤んだ。その顔色が、少しずつ青褪めていく。
他の令嬢たちも同様だ。ロベリアを除いた三人の令嬢は、青ざめた顔を落ち着きなく見合わせていた。
(……本当、切れるわよね。どこまでも。この反応は全員黒だわ)
ユーミリアはルディウスの機転に感服するしかない。
彼がドリスを名指しした意図がわかった。
四人の中で一番、激情型なのだろう。思えばクローゼを一番強い言葉で責め立てていたのも彼女だった。
最も口を滑らせてくれそうな人物と判断して、鎌をかけたというわけだ。
ルディウスが語った説明を、世間知らずな令嬢が即座に嘘と断じるのは難しい。作り話だとすぐに見抜けるのは、髪飾りが紛失した経緯を知る者だけ。
顔色から、彼女たちが全員グルなのは明らか。そして、四人の中で唯一悪びれることなく、肝の坐った態度を貫くロベリアが、この騒動を主導した人物と見てよさそうだった。
取り巻きがうっかり口を滑らせるのを恐れ、割って入った。先ほどの光景はそう映った。
ルディウスもユーミリアと同じ結論に至ったのだろう。嫌悪からか、ほんのわずかに瞳が細まった。
「クローゼ嬢。面倒に巻き込んだことを詫びよう。君たちも、納得しただろうか?」
彼の言を嘘と断じれば、その根拠を追求される。
ルディウスの頭脳を持ってすれば、世間知らずな令嬢から自白を引き出すことなど容易い。
下手に会話を広げれば墓穴を掘りかねず、この場で彼女たちが取るべき対応はーー。
「そうでしたのね。安心いたしました。わたくしは信じていたのよ? クローゼがそんなことをするはずないって」
引き下がるのが、賢明というもの。
ロベリアは白々しくも、ホッと胸を撫で下ろした。
(やたら演技が上手いわね、あのご令嬢)
ユーミリアは呆れてしまう。
追従するように、他の令嬢たちもそうだったのね、と声を上げ始める。矛を収めることに決めたようだ。
これで、クローゼへの疑いは晴れた。
だが、これだけでは本当の意味では彼女を助けたことにはならないかもしれない。帰宅後、クローゼが酷い目に遭ったら意味がないのだ。
クローゼへの嫌疑は晴れたが、ルディウスはその場に留まった。
「招待客にはアッシュベリー夫人の名もあったと記憶しているが。母君はどこに?」
「母は……」
「こちらに」
人垣を縫って、貴婦人がすっと進み出た。
「たかが髪飾り一つで娘が大袈裟に騒ぎ立てたようで……。このような大事にしてしまい、どうお詫び申し上げればよいやら」
「……いや、気にしていない。収穫があったからな」
ルディウスが意味ありげにクローゼに視線を送る。
「その娘だが。年上の令嬢ーーそれも複数人から執拗に責められても取り乱すことなく、気丈に振る舞う態度。気に入った」
唐突に持ち上げられて、クローゼは戸惑ったように瞳を揺らしている。そんな当人を置き去りに、ルディウスが続けた。
「俺の友人にぜひ紹介したい。いつになるかは知れないが」
(あなたに友人は居ないでしょうに)
ルディウスもルディウスで次から次へと嘘が飛び出すのだから、なんというか。
頼もしいことこの上ないのだが、この婚約者殿は天性の詐欺師なのではと、錯覚しそうになる。
「この先、アッシュベリーの末娘は俺の商品だ。無論、丁重に扱ってくれるだろう?」
どうやらルディウスも、伯爵家におけるクローゼの立場には勘付いているらしい。
ルディウスがいつか知人に紹介するかもしれないから、伯爵家の娘らしく健全な育て方をしろ、という意味だ。みずぼらしい娘を紹介したら、ルディウスが恥をかくことになる。
ルディウスを敵に回すか、取り入るか。どちらが伯爵家の明るい未来に繋がるのか、夫人は微笑みの下で算段をつけたのだろう。
夫人が恭しく膝を折る。
「もちろんでございます、宰相閣下。どこに出しても恥ずかしくない、立派な淑女に仕上げてみせますわ」
「行き過ぎた教育は控えてほしいものだが」
「心得ております。他意はありませんわ」
「お母様……っ」
堪りかねた様子で、ロベリアが抗議の声を上げた。冷静を保っていた彼女がつい口を挟みたくなるほどに、聞き捨てならない申し出だったのだろう。
善良な姉を装う仮面を、取り繕う余裕など失うほどに。
「クローゼの嫁ぎ先は、わざわざ閣下のお世話にならずともーー」
「ロベリア嬢」
ルディウスが鋭く遮った。その声があまりにも凍てついていたからだろうか。ロベリアはぎくりと身を竦ませた。
「ああ、それから。その友人たちも」
すっかり縮こまっている令嬢たちにも、釘を刺すように。
「社交場での立ち居振る舞いには細心の注意を払った方がいい。その年頃ならば、結婚に夢を見ていたいはず。恨みを買い、年寄りの後妻を押し付けられたくなどないだろう?」
冷ややかに見据えられ、令嬢たちはますます顔色を悪くする。だが、ロベリアだけは納得がいかない顔で食い下がった。
「ですが、閣下。妹は血筋がーー」
「随分と、物分かりが悪いようだ」
冷淡な声が、皆まで言わせなかった。
ルディウスはロベリアではなく、夫人を睨み据える。
「娘の教育はどうなっている? それとも、俺の前でくだらない余興を演じてみせた責めを負いたいと? それが、アッシュベリーの総意なのか?」
「世間知らずな娘の戯言でございます。どうか寛大なお心で聞き流してくださいませ、閣下」
厄介ごとはごめんだと言わんばかりに、夫人が深く首を垂れた。それから、ロベリアにも無理やり頭を下げさせる。
(……ちょっといい気味、かも)
クローゼの扱いを改めるよう迫ったルディウスに不服な態度を見せたということは、ロベリアもまた、夫人同様にクローゼを虐げていたのだろう。
クローゼが伯爵家の娘らしい生活を送り、いずれ良縁に恵まれれば、ロベリアはそれはもう、歯噛みするはず。溜飲も下がるというものだ。
ルディウスが本気で嫁ぎ先まで面倒を見るのかは知らないけれど。
どんなきっかけであれ、いい縁があるといいな、と思う。結婚して家を出てしまえば、面倒な家族とも縁を切れることだし。
もちろん、クローゼがその未来を望むのなら、だけれども。
「……煩わせてくれるな」
冷水を浴びせるように言い捨てて、ルディウスはその場から立ち去った。
「帰りましょう。ロベリア……それから、クローゼ」
見世物は、いつの間にかアッシュベリー母娘にすり替わっていた。居た堪れなくなったのだろう。
夫人はそそくさと逃げ去り、ロベリアも羞恥心からか、さっさと会場を出て行った。
クローゼは手を差し伸べてくれたルディウスと家族、どちらを追いかけるべきかおろおろとしていた。
「クローゼ様」
そんな彼女に、ユーミリアはそっと声を掛けた。
「宰相閣下は私の婚約者です。言伝があるならお伝えしておきましょうか?」
「ユーミリア様っ。あ……では、助け舟を出してくださってありがとうございましたと、お伝えください」
「承知しました」
微笑んで応えながら、あっと思いつく。
「そうだ。よければ、今度クローゼ様をお茶会にお誘いしても? 閣下との約束を伯爵夫人が守ってくださっているか、確認のためにも」
琥珀の瞳が瞠られーークローゼはほわりとはにかんだ。
「またお話しできる機会に恵まれるだなんて、とっても嬉しいです、ユーミリア様」
「ユミィと。近しい方からはだいたいそう呼ばれていす」
「ではではっ、あの、私のことはクローゼと……」
「クローゼ、早くいらっしゃい」
夫人に急き立てられ、クローゼは慌ててはい、と返事をする。
「それでは、ユミィ様。何から何まで、ありがとうございました」
「私はほとんど何もしていませんけど。またお会いしましょう」
はいっ、と無邪気な微笑みを残して、クローゼは広間を出て行った。
こうして。この日、ユーミリアのお友達が増えたのだった。
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