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∞28【わたしはわたし!父は父!】
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父との手合わせの翌朝。
アゾロはベッドから起き上がると、ベッド脇のちいさな木の机の上に置いていた『鉄球』を手に取った。昨夜、半年早い誕生日プレゼントとして父がアゾロにくれたあの『鉄球』である。
「……コレ叩いて骨密度上げろ…って言ってたわよね、父」
アゾロは試しに、黒くて硬そうな『鉄球』を拳でコツンと叩いてみた。
……痛い。当たり前だけど。
“コレ”を拳で叩いて骨密度上げろって?
「……『そうかな~そうかな~?』とは思ってたけど、『やっぱりバカ』よね。あの父」
実父に対して情け容赦のない感想を抱く娘。骨よりも『鉄』の方が硬いに決まってるし、さらにそれを『叩いて拳を鍛える』なんて実際常軌を逸している。
しかし、現役の騎士である父が勧める鍛錬方法である。何かしらの効果はあるのだろうが……。
「……う~ん?」
いまいちこの鍛錬方法に納得のいかないアゾロは、唸りながら色んな角度から父から貰った『鉄球』を矯めつ眇めつし続ける。
その鉄球の大きさは大体『リンゴ』くらい。形は『球状』で黒く酸化した表面が少し削れてザラザラしており、鉄球表面の何箇所かが『凹んで』いる。
鉄球を全体的によく観察してみればその『凹み』には一定の規則性があるようだ。
大きくて丸い形の凹みが『一箇所』。そして、その周りには細長い形の凹みが『五箇所』。
……なんとなく全体的に歪な形の『眼球』のようにも見える鉄球である。
「?……なんでこんな変なカタチしてんの鉄球?」
アゾロが見た感じだと、この鉄球表面に付けられた様々な『凹み』は元々からあるものじゃなくて『後から付けられたもの』であるようだ。
「……まさかね。……そんな訳ないよね」
笑いながらそう言って、アゾロは鉄球表面の『凹みの形』に沿って右手で鉄球を握ってみた。
……細長い方の凹みの形に『指の形』がピッタリと当てはまる。
さらに、左手で拳を作って大きくて丸い方の鉄球の凹みに自分の拳の人差し指の付け根を添えてみた。
……これも凹みと指の付け根の形がピッタリと当てはまる。
どうやら、鉄球の凹みの形は『父が』鉄球を『片手で握って』、もう片方の手で『コツコツ叩いて』いるうちにできた痕跡。
つまり、アゾロの父がつけた『五本の指で握った跡と拳の打撃痕』である様だ。
……『握力』で鉄球凹ませるんだ、父。
アゾロは試しに右手に持った鉄球をギュッと握ってみた。当然だが凹まない。『鉄』だし。
「……う~ん?」
アゾロはもう一度唸った。
本当に鉄球を拳で叩いて『拳の骨密度』が上がるのかどうかは、アゾロには分からない。
しかし、騎士である父は実際に『この鍛錬』をやったことがあり、実際に『強い』。
問題なのは、
『アゾロがあの父と同じようなことをやって、父のように強くなれるのか?』である。
言うまでもなく娘と父は『全く違う』。
女性のアゾロと男性の父。15歳のアゾロと35歳の父。民間人のアゾロと騎士の父。悩むアゾロと悩まない父。
アゾロは、父に勧められたこの『鉄球を拳で叩く鍛錬』を様々な角度から頭の中で検討してみた。
「………………うん」
アゾロは、言葉少なに鉄球を机の上に戻した。
……この鍛錬はヤメとこう。
強くなる前に拳こわしちゃう多分。
父も言ってたけど『達人じゃないし』わたし……。
いくら自分が《スキル》持ちで『常識外れな強さ』の持ち主だったとしても、強さのレベルが『常軌を逸している父』のマネはできない。
自分なりの結論を見出したアゾロはすぅ…と大きく息を吸い込み一旦留めて、そして元気に宣言した。
「よし!他の方法を考えよう!!『わたしはわたし!父は父!』。『規格外な父』の言うことなんてイチイチ聞く必要なし!」
そう宣言すると同時にアゾロのお腹がキュルル…と鳴った。規格外な父の常軌を逸した理屈について考えるよりも、まず『ごはん』だ。
『鉄球』叩いて強くなるかどうかなんて正直分からないけど、『ごはんを食べれば』確実に空腹の今よりも、わたしは強くなれる!
どうせやるなら、『確実な方』!!
「ごっはんーごっはんっ!」
アゾロは陽気に歌いながら、一階の台所へ『キーンのポーズ』で向かった。このポーズは夢のおっさんから仕入れたものだ。元ネタは知らないが、やるだけで元気になれるような『いいポーズ』だとアゾロは思っている。
…To Be Continued.
⇒Next Episode.
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父との手合わせの翌朝。
アゾロはベッドから起き上がると、ベッド脇のちいさな木の机の上に置いていた『鉄球』を手に取った。昨夜、半年早い誕生日プレゼントとして父がアゾロにくれたあの『鉄球』である。
「……コレ叩いて骨密度上げろ…って言ってたわよね、父」
アゾロは試しに、黒くて硬そうな『鉄球』を拳でコツンと叩いてみた。
……痛い。当たり前だけど。
“コレ”を拳で叩いて骨密度上げろって?
「……『そうかな~そうかな~?』とは思ってたけど、『やっぱりバカ』よね。あの父」
実父に対して情け容赦のない感想を抱く娘。骨よりも『鉄』の方が硬いに決まってるし、さらにそれを『叩いて拳を鍛える』なんて実際常軌を逸している。
しかし、現役の騎士である父が勧める鍛錬方法である。何かしらの効果はあるのだろうが……。
「……う~ん?」
いまいちこの鍛錬方法に納得のいかないアゾロは、唸りながら色んな角度から父から貰った『鉄球』を矯めつ眇めつし続ける。
その鉄球の大きさは大体『リンゴ』くらい。形は『球状』で黒く酸化した表面が少し削れてザラザラしており、鉄球表面の何箇所かが『凹んで』いる。
鉄球を全体的によく観察してみればその『凹み』には一定の規則性があるようだ。
大きくて丸い形の凹みが『一箇所』。そして、その周りには細長い形の凹みが『五箇所』。
……なんとなく全体的に歪な形の『眼球』のようにも見える鉄球である。
「?……なんでこんな変なカタチしてんの鉄球?」
アゾロが見た感じだと、この鉄球表面に付けられた様々な『凹み』は元々からあるものじゃなくて『後から付けられたもの』であるようだ。
「……まさかね。……そんな訳ないよね」
笑いながらそう言って、アゾロは鉄球表面の『凹みの形』に沿って右手で鉄球を握ってみた。
……細長い方の凹みの形に『指の形』がピッタリと当てはまる。
さらに、左手で拳を作って大きくて丸い方の鉄球の凹みに自分の拳の人差し指の付け根を添えてみた。
……これも凹みと指の付け根の形がピッタリと当てはまる。
どうやら、鉄球の凹みの形は『父が』鉄球を『片手で握って』、もう片方の手で『コツコツ叩いて』いるうちにできた痕跡。
つまり、アゾロの父がつけた『五本の指で握った跡と拳の打撃痕』である様だ。
……『握力』で鉄球凹ませるんだ、父。
アゾロは試しに右手に持った鉄球をギュッと握ってみた。当然だが凹まない。『鉄』だし。
「……う~ん?」
アゾロはもう一度唸った。
本当に鉄球を拳で叩いて『拳の骨密度』が上がるのかどうかは、アゾロには分からない。
しかし、騎士である父は実際に『この鍛錬』をやったことがあり、実際に『強い』。
問題なのは、
『アゾロがあの父と同じようなことをやって、父のように強くなれるのか?』である。
言うまでもなく娘と父は『全く違う』。
女性のアゾロと男性の父。15歳のアゾロと35歳の父。民間人のアゾロと騎士の父。悩むアゾロと悩まない父。
アゾロは、父に勧められたこの『鉄球を拳で叩く鍛錬』を様々な角度から頭の中で検討してみた。
「………………うん」
アゾロは、言葉少なに鉄球を机の上に戻した。
……この鍛錬はヤメとこう。
強くなる前に拳こわしちゃう多分。
父も言ってたけど『達人じゃないし』わたし……。
いくら自分が《スキル》持ちで『常識外れな強さ』の持ち主だったとしても、強さのレベルが『常軌を逸している父』のマネはできない。
自分なりの結論を見出したアゾロはすぅ…と大きく息を吸い込み一旦留めて、そして元気に宣言した。
「よし!他の方法を考えよう!!『わたしはわたし!父は父!』。『規格外な父』の言うことなんてイチイチ聞く必要なし!」
そう宣言すると同時にアゾロのお腹がキュルル…と鳴った。規格外な父の常軌を逸した理屈について考えるよりも、まず『ごはん』だ。
『鉄球』叩いて強くなるかどうかなんて正直分からないけど、『ごはんを食べれば』確実に空腹の今よりも、わたしは強くなれる!
どうせやるなら、『確実な方』!!
「ごっはんーごっはんっ!」
アゾロは陽気に歌いながら、一階の台所へ『キーンのポーズ』で向かった。このポーズは夢のおっさんから仕入れたものだ。元ネタは知らないが、やるだけで元気になれるような『いいポーズ』だとアゾロは思っている。
…To Be Continued.
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