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∞29【姉と弟のスキンシップ】

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「お早う、我が家族諸君! いい朝だね!」

 アゾロは寝間着姿で髪に寝癖をつけたまま、一階の台所で朝食を摂っている家族に声をかけた。そして、そのまま自分の椅子に座り、自分のためにテーブルの上にすでに用意されていた母が作ってくれた朝食を食べ始める。

 アゾロが椅子に座り朝食を食べ始めてから数秒後。

「……あれ? 父は?」

 朝食の席には『母』と『エミル』の二人しかいない。今気付いたのか…という目でアゾロを見る母子二人。
 二人を代表して、弟のエミルが朝食に遅れてきた姉に教えてくれた。

「きのう、【竜の御座石みくらいし】が何者かに埋められた件と、それと同時に起きた【竜】の行方不明事件の調査のために、朝早くからレオ山に行ってるよ。“……すげえめんどくさい”って言ってた」

 今朝覚えたばかりの言葉を使って15歳のアゾロに説明してくれる5歳のエミル。弟は最後のセリフは父の口調を真似しながら言った。
 さらに、エミルの言葉に母も被せてきた。

「そうよ~。『誰かさん』が寝ている間にね……」

 おっとりとした母がおっとりと言う。
 母はすでに朝食を平らげ、台所の自分の椅子に座りゆったりとお茶を飲んでいた。エミルの方も、もうすでに朝食を食べ終えているらしく、小さな体にそぐわぬ大きなカップで牛乳を飲んでいる。

 二人の話にふむふむ…と目を閉じて頷き、朝食の目玉焼きを一口で食べながらアゾロが言った。

「ふーん、大変ですね、伯爵様は。……エミル、食べ終わったら『お相撲スモウ』取ろっか?」
「とるっ!」

 牛乳の白い膜を口の周りいっぱいにくっつけたまま、エミルは元気よくアゾロに返事をした。
 久しぶりに姉の方から挑まれた『勝負おすもう』に対して、弟の目はキラキラと輝いている。

 アゾロとしては、昨日の父との手合わせで喫した敗北の味を可愛い弟とのスキンシップで癒やしたいだけなのだが、エミルの方は姉とは違う解釈をしているらしい。

 ……お姉ちゃんの方から『勝負おすもう』を挑まれるのは随分久しぶり。ちょうど『子豚との戦い』にも飽きがきていたところだ……。
 ……この前やった時は4歳だったが、『5歳』になった今むざむざとやられはすまい!
 ……あわよくば、お相撲中にお姉ちゃんの『小さいおっぱい』にさわってやる……。
 ……いや!
 ……むしろ『鷲掴わしづかんで』やる!!

 真っ直ぐな瞳でアゾロの胸を見てくる5歳の弟が、心の中でそう思っていることが実姉あねの直感で伝わってきた。

 母が出してくれた食後のお茶を飲みながら、アゾロは瞳の中に炯々けいけいと闘志を燃やす弟を横目に心の中だけでこうつぶやいた。

 ……やってみるがいい、実弟おとうとよ。
 『やれるものなら』、な……。



…To Be Continued.
⇒Next Episode.
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