上 下
20 / 42
クッコロ洞窟の冒険者

20「スライムストライクスバック」の巻

しおりを挟む

「むぐぅうぅ!」

 舌の根も乾かぬうちに、地上に戻る道の途中でスライムの群れに凌辱される女戦士(悪気はない)。
 女戦士に襲いかかるスライム達の冴えわたる10本の触手|(ゴッドハンド)。
 ここぞとばかり、解説を始めるバカ二人(悪鬼)。

「奴らスライムはダンジョンに特化し、『対人間』に特化した恐るべき生物!」
「…どういうことだ、サクラっ」
「…気付かぬか、なぜ布などの植物性のものを主食とするスライムが布面積の多い私達ではなく、いつも女戦士ばかりを狙うのかを…!」
「まっ、まさかっ」
「そう、スライム(奴ら)は本能的に気付いているのだ。『自分達を真に必要とする者』が誰なのかを、見ろ…」

 サキュバスが指し示した先には、さっきカフェルが拾っていた薬草が落ちていた。スライムは植物性のもの『だけ』を養分とする。
 ならば、ふつうの布地よりも栄養価の高い『薬草』を持つ女戦士を狙うは、自明の理…!!

「つまり、これは!この状況はっ…!」
「…そう。まさしく『撒き餌』だ。スライムに自分を襲わせるための、…用意周到なまでの『撒き餌』。問題は、これがカフェルちゃんの『故意』か『過失』か。ということだが、これは言いにくいことだが…」

 サキュバス(肉嫌い)がその顔に苦渋をにじませる。女魔術師(野菜嫌い)の顔も青ざめ、苦悩の表情で女戦士を見つめている。女戦士(魚嫌い)は、ちっ、ちがうぅ…、わたし、そんなんじゃないぃ…!と、いう顔でこっちを見ている。こっち見んな。

「女戦士を襲うスライム。襲われると分かっていながらダンジョンに挑む女戦士。…どちらも業深きことよ!」

 目の前の恐るべき光景を見ながら腕を組み、額に汗を浮かべながら解説するサキュバス(金属アレルギー)と、目と同じ幅の涙を流す女魔術師(猫アレルギー)。なぜか、二人ともアゴが割れ眉毛が海苔のように太くなっている。

 オレ(猫派)は、バカどもには目もくれずに、女戦士にたかるスライムの触手集めに精を出した。
 触手は全部で100本はある。
 女戦士の献身のおかげで、しばらくいいものが食べられそうだ。



 続く…
しおりを挟む

処理中です...