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「もっと締めろや」

「ふぁぁっ、や…あっ、あ!もぉ、どうしちゃったん今日っ!剛くんっ…」

「どうもしてへんやろ」

さっきと同じ様に、剛くんがあたしの中に入れながら何度もお尻を叩いてくる。叩かれすぎて肌がぴりぴりして痛痒いし、熱くなってきた。

「だって!こんな意地悪ばっかり…」

「いっつもこんなんやん」

「違うやんかぁっ…あっ、あ」

「うるさい」

「あっ待ってっ奥そんなにしたら…」

「気ぃ散るやろ、ちょっと黙っとけ」

「あぁあ!!」

激しくされすぎて、剛くんのモノが奥に届く度に痛みさえ感じる。こんなに力任せにしたら体が壊れちゃう…

「めっちゃ締まってきた。やれば出来るやん」

「あぁ!!」

ぱしんっ!って思いっきりお尻を叩かれて、痛みで体が仰け反った。きつく締まったあたしの中で剛くんが欲望の塊を放ち、それからあたしの腰を離した。

「あっ、あっ…はぁっ、はぁ…っ」

力尽きたあたしは上半身をベッドに投げ出し、過呼吸を起こしたのかというぐらいにずっと息を弾ませていた。

苦しい…

***

その日は珍しく、すぐに2回目を求められた。というより無理矢理犯されたって言う方が正しい。こんなに元気になっちゃうなんて、剛くんってコスプレ好きなんだ…

でも、バックでしかしてくれない。顔が見えない状態だと誰とセックスしてるのかわからない。それぐらい今日の剛くんはいつもと違う…

「剛くんっ、正常位したいよぉっ」

「お前は犬やからバックしかせんってば」

「顔見たいの…」

「ったく言うこと聞かへん犬やなー…しゃーないな」

剛くんがモノを抜いて、あたしの体をぐいっと起こした。

「ほら、こっち来い」

剛くんがあたしの手を取って先頭を歩き、窓のカーテンを開けた。夜とはいえ、窓ガラスが鏡の様にうっすらと2人の姿を映す。

「そこに手ついて俺にケツ突き出せ」

「え…」

戸惑うあたしに剛くんは言葉を続ける。

「言う通りにして、早よせなやめんで。菜々も何されるかわかってるやろ」

言われる通りに窓に手をついてお尻を突き出すと、剛くんがもう一度あたしの中に入ってきて思いっきり奥を突き上げ、激しく動かし始めた。

「あぁぁ!」

「何目閉じてんの?俺の顔見たかったんじゃないの」

「見たいけどぉっ」

「ほなちゃんと目ぇあけ?」

おそるおそる目を開けると剛くんの顔が見えるけど…それよりと剛くんに犯されている自分の姿のほうが目に入る。

「見えるやろ?」

「…見えるよぉっ…」

「自分がおっぱい丸出しで気持ちよくなってるところもちゃんと見えてる?」

「んぅぅ!やぁぁ!見えるよぉっ…でもっ」

「何?」

「他の人にも、見られちゃうっ…」

「あー窓の向こうの?」

「見られたくない…」

「あー…ほんまや。向かいのビルの人菜々のことガン見してる。俺めっちゃ目いいから見えるわ」

「いや!もう無理っっ」

「けどめっちゃ締まってきてるやん。ほんまは見られたいんちゃうん?」

「いやや、見られたくないもんっ、嫌やもんっ」

「そんなこと言いながらいきそうになってるやん」

誰かにこんなの見られるなんてヤダ。そう思うと涙が出てきた。

「何やな、泣いてんの?」

「恥ずかしい、いや、いや!」

涙が滲むぐらい嫌なはずなのに、気持ちよくなってる自分がいる。もう手をついてるだけじゃ体を支えきれなくて、自分の上半身を窓に押し付けた。熱くなった肌に当たるガラスがほどよく体を冷やす。

情けないながらもあたしの体は頂点を迎えようとしていた。

「あ…きもちいい…あ…あっ…んぅぅっ…いっちゃう…」

「知らん人に見られながらいっちゃうんや。俺もいきそうやけど」

「あ…いく…」

「俺も…あっ…」

「あ、あぁぁー!!!」

あたしと剛くんは、ほぼ同時に絶頂した。

「きもちぃいっ、…きもちいいっ…」

中で剛くんの精液を受け止めながら、うわごとのように気持ちいいって呟き続けた。

けど知らない人に見られちゃったんだ…

体の火照りが少しずつ引いていくにつれ心も冷静さを取り戻し、自分が情けない姿を知らない誰かの目に晒してしまったことが恥ずかしくなってきてまた涙が出てきた。

ぐすっ、すすっ…鼻を啜るあたしを剛くんが後ろから抱きしめた。

「いつまで泣いてんの。嘘やで」

「えっ…」

「向かいのビルなんか一個も電気ついてないやん」

「あ…」

視線を逸らしていたから気付かなかったけど、確かに向かいにあるビルは真っ暗だった。ちらっと見たときに電気が付いているように見えたけど、光の反射でそう見えただけなんだ…

剛くんがあたしの体を自分に向けさせて、もう一度ぎゅっと抱きしめた。

「意地悪しすぎた。犬扱いされて嫌やったな、ごめんな。よー頑張ったな」

剛くんがあたしの頭を撫でて、優しくキスをした。あたしもぎゅって抱きしめ返したら、また涙が出てきた。

「菜々ちゃん、ほんまごめんっ。嫌いにならんといて!」

あたしは剛くんを見上げて、首を横に振った。

「ならへん…好きやもん」

「え?」

「あたし、剛くんが好きみたい…」

恥ずかしかった。嫌だった。…でも、興奮した。…こんなことされても嫌いになれない程あたしは剛くんが好き。そんな思いが溢れて言葉にしてしまった。

「初めて好きって言ってくれた」

剛くんがにこっと笑った。

「…そうやっけ」

「俺が何回好きって言ってもスルーしてたやん。…ちゃんとしたら、迎えに行ってもいい?」

「どういうこと?」

「ちゃんと離婚して…菜々ちゃんと結婚したい。蓮くんにプロポーズされたって聞いて頭おかしくなりそやった」

「…嘘ばっかり」

「やし、菜々ちゃん虐めちゃった。好きな子は虐めたくなるってほんまやな。ごめん」

「…いくらあたしが好きって言ったからってそんなリップサービスいいよ…」

「そんなんじゃない。俺は菜々ちゃんがいい。俺じゃあかん?」

「あたしも剛くんがいい。あたしもちゃんとする…蓮くんのプロポーズ、断る…」

「ありがとう。愛してる」

剛くんがもう一度笑って、あたしを抱きしめた。

蓮くんに結婚しようって言われたときに、プロポーズを受けて結婚すれば、蓮くんと幸せになれるんだな…って思いながらもやもやしてたのはやっぱり、剛くんが大好きだからだったんだ。

あたしは剛くんと、幸せになりたい…
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