わたしがわたしをわすれるひ【R18】

仲村來夢

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最終話

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「お疲れ様でしたー。撮影終了でーす」

裸でベッドに横たわりながら、ぼーっと天井を見ていた。

寧々さん、風邪ひきますよ。そう言って誰かがあたしの体を拭いて、タオルをかけてくれた。

相手は絶対に絶対に嫌だった大嫌いな、キモいオッサンだった。だらしない体で頭が薄くて、顔も気持ち悪かった。

自分のタイプの相手と出来るはずなんてないことはもちろんわかってたけどやっぱり嫌悪感がすごかった。

まだ作品が決まる前にメーカーさんとした会話の中で今までどんな人と、何歳位の人と何人くらいセックスしてきたかって聞かれた時に自分と歳が近いイケメンとしかしてないって言ったからわざとなんだろうな。

女性向けの作品も最近は多いからイケメンの男優も最近は多いみたいだけど、あたしの出る作品はがっつり男の人向けだしイケメンとやらせても面白くないだろうし。

オッサンに胸をいっぱい揉まれながら服を全部剥ぎ取られて、オッサンのモノを胸で挟みながら咥えさせられて、全身を舐め回されオッサンの加齢臭と涎の臭いに何度も吐きそうになった。

本番は何回も体位を変えられて3回もやられた。お腹に、胸に、最後は顔に出された。そんなの聞いてなかった。…打ち合わせ中は上の空だったし、話が頭に入って来なかったから思い返せばちゃんと話はされていたのかもだけど。

苦痛だった。本当に本当に嫌だった。

一番嫌だったのは、そんなオッサンにやられて感じてしまった挙句に潮を吹かされたこと。嫌なはずなのに気持ちよすぎて、それが悔しくて、“気持ちいい”って泣き叫びながら何回もいってしまったこと。どれだけ心が嫌と言っても、気持ちよければ濡れるし感じちゃうし、いってしまう。体は嘘をつけない。

いつだか将くんに、知らない人達に水着姿とか見られたくないって言ってたのにな。カメラの前で知らない色んな人たちに水着どころか裸も、セックスしてるところもいってる顔も見られて、それを全部撮られて。それをこれから、想像もつかない数の人達に見られるんだ…。

心をすり減らし、体力を全て使い果たしたことで起き上がれないあたしを尻目にスタッフさん達がさっさとセットを片付けていく中でバスローブを着た、さっきまであたしとセックスしていたオッサンがあたしの方に来てペットボトルの水をくれた。

「大丈夫ですか?きつかったでしょ、最初がこんなオッサンで!あはは!ごめんね」

そう言って大きく笑う声が頭に響く。

笑うな笑うな笑うな笑うな。何がおかしい。笑うな。笑うな。

「シャワー先どうぞー。僕は後で入りますんで」

あたしまだまだ動けそうにないんだけど…男優さんの気遣いってやつか。オッサンが風邪引かない為にも早くシャワー入らなきゃ…

***

「寧々さんいつまであのままなんですかね」

「デビュー作撮り終わった後なんか皆あんなもんだろ。もうちょっとあのままでいさせてやれって」

「まぁそうですけどー、途中からノリノリだったじゃないですか。あれ演技じゃなくて全部本気でいってましたよね」

「あれは本気だね。元々好きな子なんじゃない?」

「にしてもあそこの事務所は相変わらず容赦なしですね。いらなくなったら平気でこっちに売ってくるし」

「それなりに金払ってるからしっかり回収しなきゃね」

「にしてもあの男優相手はだいぶ辛そうでしたね、今までイケメンとしかしてません!とか言ってたもんなー。元彼のバンドマンも相当イケメンですよね」

「そんなこと言ったらキモイ男優と絡まされるに決まってるのにね。嫌がるところが撮りたいんだから」

「イケメンが嫌いなんて人はいないから仕方ないっすね」

「…ま、しょっぱな3Pとかレイプものよりはマシだろ。勿論今後それも撮るけどすぐ慣れるでしょ。女の子は強いからね」

スタッフさん達何話してるのかな…。あんまり聞こえないや。

ああ。あんなオッサンに舐められて、セックスさせられて体にも顔にもかけられて気持ち悪くて仕方ないのに。早く洗い流してしまいたいのに。

体に鉛が入ってしまったかのように動けないあたしの目からは、再び一筋の涙が流れた。

***

それから、約1ヶ月後。

ー剛久しぶりー。メール見てくれた?

「久々ー。同窓会のメールありがとう。なんとか帰れるように調整して連絡するな」

剛の電話の相手は高校時代の同級生。

ー子供2人目生まれたんやっけ?

「うん。ほんで3人目出来てん」

ーマジで?おめでとー!ていうかそれ、こっち帰って大丈夫なん?

「行っといでって。安定期入ったけどまだ生まれへんし逆に今のうちに行って来いって言われた。ベビーシッターも雇ってるし」

ーさすが社長。

「別にそんなことないわ。やし後は俺の予定次第やな」

ーいい奥さんやな!ほんまに剛が落ち着いて良かったわ。皆心配しててんで、あいつにフラれた時。

「あー…あいつな」

ーほんまにあん時のお前おかしかったしな。あいつと別れてから女の子ヤリ捨てしまくってたやん。

「やー、忘れてやそんな昔のこと…」

ーいやいや忘れへんぞ俺は!ヤリ捨てするわちょっと付き合ったと思えばお前にハマった途端冷たくしてボロ雑巾みたいに捨てるわ。

「人聞き悪いなあ。大丈夫やって、今は嫁のことめっちゃ愛してるもん」

ーそら良かった。…じゃあ、なんとか頑張って予定空けてや。あ、そういえばさ。

「ん?」

ー俺らの地元の後輩で最近AV女優なった子おんねんで。

「へぇ…」

ーお前も知ってるやろ?ヤリマンで有名やった子!

「あー…おったっけ、そんな子…記憶ないかも」

ー顔見たら思い出すし見てみって。めっちゃいいから!

「あはは、めっちゃいいって何やねん。見たんお前」

ー当たり前やん。知ってる子のAVは興奮すんでー。可愛いしおっぱいでかいしめっちゃエロいねん!地元おった時に一発やらしてもらっといたら良かったわ。

「相変わらずやなお前」

ーいやほんまやって。さすがヤリマンやっただけあるわ、生まれつきなんか誰かに仕込まれたんか知らんけど。皆AV見たけど全員めっちゃエロいって言ってたし!

「皆ってどの皆やねん。中学生かお前ら…もー、忙しいし切んで」

ーごめんごめんどうでもいい話して。とりあえずなんとか予定空けてや!皆剛に会いたがってるし。

「俺も皆に会いたいわ。地元に帰って友達と会えるなんて嬉しいことやしな」

剛が電話を切ってすぐ、バスルームのドアががちゃり、と音を立てて開いた。

「剛さぁん、誰と電話してたんですかー?」

「高校の時の友達。いつから聞いてたの」

「嫁のことめっちゃ愛してるって言ってたあたりからですっ」

「そんなにふくれないでよ。聞かれたから言っただけだよ、おいで」

「剛さんのばか…」

「もー。いい子だからこっちおいで」

「…あたしの前で奥さん愛してるなんて言ったらほんとに嫌いになっちゃいますからねっ」

「拗ねるなって。愛してるのはミサちゃんだけだよ」

「ほんと?」

むくれた表情を一転させて嬉しそうに笑うバスタオル姿のミサが、ベッドにいる剛に抱きついた。剛はミサの体を受け止めて、ミサの頭を撫でた。

「いい子いい子」

「…剛さんのこと大好きだもん。ほんとに、あたしのこと愛してますか?」

「うん。俺はミサちゃんのことだけを愛してるよ」

ミサが満面の笑みを浮かべ剛にキスをした。

ミサの纏っていたバスタオルを剛が取り去り、ミサの白く美しい肌が露わになった。

初めて裸を見られるわけでもないのに恥ずかしそうにするミサを抱きしめてそのままベッドに押し倒し、次は剛の方からキスをした。

「あ…剛さぁん…あ…」

剛の優しくて長いキスに酔いしれながらミサは小さく喘ぎ声を漏らし始めた。

「ミサちゃん、愛してるよ」

-END-
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