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2. 彼と離れるために
「こんにちは、ケイン様」
私は緊張で手に汗握りながらケイン様に挨拶をしていた。
もっと幼いころからの仲ではあるが、許嫁となってから会うのはまだ数回だっただろう。
やはり私よりも年上なだけあってケインは大人びて見えた。まだ14のはずなんだけども。
お父様から仲を深めるためにも二人で散歩でもしてきなさい、と言われたので今は二人で庭の噴水の前を歩いている。
「少しあそこのベンチで休もう」
彼は優しい。今だって私が歩きにくいヒールを履いていることを配慮してくれたのだろう。
でもこの優しさは私だけに向けられたものではない。だから勘違いしてはいけない。
「…ケイン様はどんな人が好きなんですか」
唐突過ぎただろうか。案の定相手は驚いた顔をしている。普通は幼い少女の戯言だと思うような質問にもきちんと考えてこたえようとしてくれている。
そんなところが好きだったな、と思う。
いつからか彼は冷たくなってしまった。まあ、私が騎士になったことで上司と部下のような関係になったのだから仕方がないといえば仕方ないのだが。
「強い人」
…やっぱり。
同じ返答が返ってきた。分かっていたことだけど、本当に私は過去に戻ってきたのだと実感する。
ここで私が同じ質問をすれば、彼はあの騎士の像を指さすだろう。しかしもう同じ未来をたどるつもりはない。
「…私はあなたの隣にはふさわしくないと思います」
これまた彼はきょとんとした顔をする。つい最近許嫁になったが、それ以前から大好きだったため会うたびに彼にべったりだった。なのに今日は距離を取っている。彼も少し不思議に思っていたのかもしれない。
「今日はいつもより静かだとは思ってたけど何かあった?」
「・・・・許嫁をやめたいんです」
彼からの返事はなかった。私も地面を見ていたから彼がどんな顔をしていたのかは分からない。
許嫁をやめたいというのは本心だ。そもそも彼は私のことなんて好きじゃないし、手放すのであれば早い方がいいだろう。
そうわかっているのに胸はずきずきと痛み、何故か二度目の失恋をした気分だった。
********
あの後、侍女が私たちを呼びに来てケイン様は帰っていった。今頃は向こうの家の人にも伝わっている頃だろうか。
彼はどう思ったんだろう。こんなちんちくりんの許嫁から解放されて嬉しい?それともこんなやつに許嫁の解消を申し出られて怒っている?
私のことはどう思っていてもいい。
ただ、お互いの幸せのためにも彼とははやく離れなければいけない。
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