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 大丈夫……何度もプレイしたからしっかり覚えている。

 この後『ティリティア』は国外追放になる。さらに盗賊に攫われ、娼館に売られて男たちの慰みものになり、最終的に死んでしまうのだ。ああ……ザマァエンド。
 でも、やり過ぎではないだろうか? 
 そもそも『私』は、ヒロインに対して本当に大した嫌がらせはしていない。
 前世の記憶を思い出す前から、元の小心者の性格を受け継いでいたのかも。
 ゲームでは確かに『ティリティア』はヒロインを集団で虐めたり、階段から突き落とそうとしたり、あげく男達に襲わせようともしていた。そういうことが発覚してこの婚約破棄にいたるワケなんだけど、私が行ったのはせいぜいヒロインに「殿下にあまり近づかないで」と口頭で注意した程度。
 けれどゲームの強制力というものなのか、私はいままさに殿下に婚約破棄をされている。
 何でも私が自分の取り巻きに命じ、ゲームでの嫌がらせと同じことをヒロインにしたことになっているみたい。もちろん、私は人に命じたりもしていないんだけど……。
 つまり、この後もゲームと同じことが起こる可能性が高いのでは?

 殿下たちの裸どころじゃない。
 なんとかしなくては……。
 でもどうやって?

 私はぱっと指を開くと、視界がぼやけるまで薄目(セルフモザイク)にしてから周囲を見渡した。
 走って逃げる? いや、無理だ。
 会場には警備の兵がたくさんいる。殿下の命令があれば、私なんてあっという間に捕らえられてしまう。
 そもそも会場を逃げ出した所で、駆け込む場所がない。実家であるアルマリエ侯爵家は、王家を敵に回してまで私を庇うことはないだろう。だからこそゲームの『ティリティア』もああなったわけで……ああ、どうすれば!

 なにか打開策は無いかとキョロキョロ薄目を動かしていた私は、周囲の人々の中から一際強い視線を感じ、動きを止めた。この場に集まる貴族たちはみな正装で、裾の長い黒のコートに、赤や白、グレーのベストを着こなし、女性らもまた華やかなドレスを纏っている。まさに色とりどりの装い。赤、黒、紫、青、黒、黄色、白、黒、裸。貴族たちを一人一人見つめて視線の主を探していた私は、そこでハッと息を呑んだ。

 裸だ、裸の人がいる……つまり彼も攻略対象者。

 その彼が、私に強い視線を向けている張本人だ。私は彼が誰かを確かめるため、ゆっくりと瞼を開いた。

 まず目に入ったのは裸体……からさっと視線を上げて、彼の顔面を見つめる。
 この方は――宰相の息子ギプリス・オーゲン様。
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