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一つに束ねた黒い髪は、まさにカラスの濡れ羽色とでもいうべき艶やかな黒。
顔つきは非常に整っており、切れ長の双眸には、珍しい銀色の瞳が未明の月のように静かに輝いている。その両目には銀縁の眼鏡がかかっていて、何というか……ザ・インテリという感じ。
歳は二十五歳。
オーゲン公爵家の嫡男であり、彼の父は国王の弟で、宰相を務めている。つまり非常に王家と近く、権力を持つ家の息子なのだ。ギプリス様も大変優秀な方で、次期宰相は彼で間違いないと言われている。国王からも信任も厚く、殿下も従兄弟であるギプリス様には容易に逆らえない。
また顔つきや視線の鋭さから非常に冷たい印象を受けるが、実際にも彼は冷酷な人物だ。
王家や、オーゲン公爵家の敵には一切の容赦がなく、一度でも牙を剥いた者は徹底的に追い詰め、破滅に導く。ゲームでも超のつくドSキャラ。『ティリティア』の悪事を暴き、国外追放に処したのも彼の仕業だった。その後の悲惨なエンドも彼が意図的に起こしたのではないかと、こちらは公式ではないけど、ファンの間では有名な仮説だった。
つまり『ティリティア』にとっては天敵と言える人物――だけど。
『私』にとっては最推しのキャラだった……!
知的でドSな性格が私の性癖のど真ん中にヒットをし、夢中になってグッズを買いあさったりしたものだ。彼は宰相の息子でありなら体を鍛えているという設定があって、私が必死に筋肉の勉強をしたのは、ギプリス様の裸体の再現度を上げるためでもあった。
私は、ゆっくりと視線を下ろした。
普段は服の下に隠したいやらし……いえ、逞しい体。
胸板には硬そうな筋肉がしっかりとついて盛り上がっていて、さらにその下には六つ割れた見事な腹筋が見える。
夢にまで見たギプリス様の、まさに想像通りの美しい肢体に、私は天に昇るような心地だった。
目を閉じ、その場に跪いて眼前に手を組む。
――ありがとう、神様。
もうこのままザマァされちゃってもいいかな? そんなことを考え始めた時、脳裏に邪な考えがよぎった。
どうせ死ぬなら……もうちょっとだけ、ギプリス様の裸体を楽しませて頂いてもよいのでは?
『攻略対象者が全裸に見えるチート能力を持って転生』なんて奇跡が起きたのも、前世の私を哀れんだ神さまのお慈悲に違いない。
私は神に深く感謝しながら、目を見開いた。ギプリス様の美しい体を死してなおこの瞼に焼き付けておけるように――そして彼の全身を見つめた瞬間、気付いてしまったのだ。
その股の付け根で、ギプリス様のギプリス様が、雄々しく天を向いていることに。
顔つきは非常に整っており、切れ長の双眸には、珍しい銀色の瞳が未明の月のように静かに輝いている。その両目には銀縁の眼鏡がかかっていて、何というか……ザ・インテリという感じ。
歳は二十五歳。
オーゲン公爵家の嫡男であり、彼の父は国王の弟で、宰相を務めている。つまり非常に王家と近く、権力を持つ家の息子なのだ。ギプリス様も大変優秀な方で、次期宰相は彼で間違いないと言われている。国王からも信任も厚く、殿下も従兄弟であるギプリス様には容易に逆らえない。
また顔つきや視線の鋭さから非常に冷たい印象を受けるが、実際にも彼は冷酷な人物だ。
王家や、オーゲン公爵家の敵には一切の容赦がなく、一度でも牙を剥いた者は徹底的に追い詰め、破滅に導く。ゲームでも超のつくドSキャラ。『ティリティア』の悪事を暴き、国外追放に処したのも彼の仕業だった。その後の悲惨なエンドも彼が意図的に起こしたのではないかと、こちらは公式ではないけど、ファンの間では有名な仮説だった。
つまり『ティリティア』にとっては天敵と言える人物――だけど。
『私』にとっては最推しのキャラだった……!
知的でドSな性格が私の性癖のど真ん中にヒットをし、夢中になってグッズを買いあさったりしたものだ。彼は宰相の息子でありなら体を鍛えているという設定があって、私が必死に筋肉の勉強をしたのは、ギプリス様の裸体の再現度を上げるためでもあった。
私は、ゆっくりと視線を下ろした。
普段は服の下に隠したいやらし……いえ、逞しい体。
胸板には硬そうな筋肉がしっかりとついて盛り上がっていて、さらにその下には六つ割れた見事な腹筋が見える。
夢にまで見たギプリス様の、まさに想像通りの美しい肢体に、私は天に昇るような心地だった。
目を閉じ、その場に跪いて眼前に手を組む。
――ありがとう、神様。
もうこのままザマァされちゃってもいいかな? そんなことを考え始めた時、脳裏に邪な考えがよぎった。
どうせ死ぬなら……もうちょっとだけ、ギプリス様の裸体を楽しませて頂いてもよいのでは?
『攻略対象者が全裸に見えるチート能力を持って転生』なんて奇跡が起きたのも、前世の私を哀れんだ神さまのお慈悲に違いない。
私は神に深く感謝しながら、目を見開いた。ギプリス様の美しい体を死してなおこの瞼に焼き付けておけるように――そして彼の全身を見つめた瞬間、気付いてしまったのだ。
その股の付け根で、ギプリス様のギプリス様が、雄々しく天を向いていることに。
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