MEMOVERUS ~幻異界転生~

中島 弓夜

文字の大きさ
82 / 85
第六章 コールダスク 18歳

Someone's Stooge

しおりを挟む
(子供が何故……?)

コールダスクは日本刀を正眼に構えて相手の出方を待つ。
すると、死人のような子供は懐から何本かのクナイを取り出し、コールダスク目掛けて投げ飛ばした。
飛んで来たクナイを避けずに日本刀で弾き落としたが、その隙を突いて、相手はコールダスクの懐に入り込む。
(は、速いっ!)
先ほどのパントマイムのような動作とは違い、あまりに俊敏しゅんびんな動きに切り替わったので、コールダスクは横跳びして子供の攻撃をかわした。
見ると、子供の手には武器のファルシオンが握られている。
「ぐはっ!」
攻撃を躱したと思ったが、脇腹をわずかに斬られていたため、コールダスクは痛みでうずくまってしまう。
だが、子供は追撃の手を緩めず、地面を蹴って加速しながら襲い掛かって来た。

ガキィィィン!

子供はファルシオンを縦に斬り下ろし、コールダスクの頭を割ろうとしたが、寸でのところで日本刀を使って弾き返した。
だが、凄まじく重い一撃だったため、腕がビリビリと痙攣けいれんしてしばらく力が入らなくなる。
(あの小さい体で、何処からこんな力が生み出せるんだ?)
可愛らしい見た目に騙されそうだが、子供の戦闘スキルは手練てだれの暗殺者に匹敵ひってきし、少しでも気が緩めば、首を簡単に斬り飛ばされてしまう可能性がある。
コールダスクは腕の痙攣を誤魔化ごまかしながら、再び日本刀のつかを力強く握った。
(原初の力を使うしかない。相手は子供だが……油断したらすぐにやられてしまう)
……それに、倒れている門脇のことも気になる。
早く決着をつけるため、コールダスクは修業の成果をここで試すことにした。

ドン!

コールダスクは床を力強く踏み、地脈の流れを足元からつかもうとする。
だが、ここは高層階にある場所なので、衝撃波を放つには相応の時間が掛かりそうだ。
そんな状況を逃すはずもなく、動きの止まったコールダスクに子供が襲い掛かる。

「キィエエエエエ!」

子供は奇声を上げながらファルシオンを横に振り払い、コールダスクの首を切り落とそうとした。
その攻撃に対し、彼は日本刀を縦に構えてファルシオンを受け止め、しばらくジリジリと鍔迫つばぜり合いをしたが、力勝負なので子供の方が根負けする。
やがて不利だと思ったのか、子供は日本刀を弾いて後ろへ下がった。
(やはり衝撃波を放つまで待ってくれないか……ではこれならどうする?)
コールダスクは日本刀の刀身に原初の力をまとわせ、正面からの勝負を挑んだ。
少しだけ威力の上がった日本刀は、何度も斬り合いを行う内に、徐々にファルシオンに刃毀はこぼれを起こさせる。

「たあああぁぁぁ―――っ!」

そして、ついにコールダスクはファルシオンを真っ二つに折り、その衝撃で子供は後方へと吹き飛ばされた。
……すると子供は涙目になり、許しをうような態度を見せる。
(終わったな……さすがにこれ以上戦うのは無理だろ)
コールダスクは日本刀を鞘に納め、子供に背を向けて門脇のいる場所へ向かおうとする。
「コール、後ろっ!」
油断したコールダスクに、子供はクナイを手にして突き刺そうとしたが、横跳びして攻撃を躱すと、彼は日本刀の鞘でクナイを叩き落とした。
もはや手段がなくなったのか、子供はコールダスクの肩へ噛み付こうとしたが、その奇襲をもヒラリと躱して床に体を押さえ付けた。
「な、なんだこれ!?」
見ると、子供の体は腕や脚がバラバラになっており、細い糸のようなもので繋がっているだけだった。
何人かの欠損した部位を繋ぎ合わせたかのようで、この子供自体の性別すら分からない。

「痛い、痛いよう。苦しいよう。助けて……」

今まで聞き取れなかったが、子供はこの言葉をずっとつぶやいていたらしい。
「コール……この子に止めを刺して。苦しみから解放してあげるの」
「で、でも……」
「辛いのは分かるけど、この子はもう死んでいるのと同じだから」
「分かったよ……」
そう言うと、コールダスクは日本刀を引き抜いて子供の首を切り落とした。
「こうしても……まだ意識は残ってるんだよな」
「恐らくね。全身を燃やさないと明確に死んだことにはならない」
「ちくしょう! マラーニャの奴、ひどいことしやがる」

――コールダスクは日本刀を強く握り締め、マラーニャに対する怒りを露わにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...