MEMOVERUS ~幻異界転生~

中島 弓夜

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第一章 穂積海斗 22歳

vs 獣の原生種

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女性医師は医務室から500mほど離れた地下水路の管理ルームへ行き、扉を開けて海斗と部屋に入った。
管理ルームの窓から水路を見ると、膝下くらいまで水が残っていた。
だが、水棲型すいせいがたの原生種が泳いでいる様子はない。

「どうやらここまで手が回らなかったようですね、相手は」
「そのようね。後30分後には完全に水が抜かれるから、急いで第一シェルターへ向かってちょうだい」
「分かりました!」

海斗は女性医師に軽く一礼すると、ドアを開けて水路に足を踏み入れた。
パシャパシャと音を立てて歩いてみたが、やはり原生種が襲って来ることはなさそうだ。

(よし……このまま第一シェルターまで一気に突っ走ろう!)

海斗は走り出して水路の奥へと向かった。

――しかし30分後。

海斗が想像していたよりも水路は迷路構造になっており、行き止まりの壁に10回ほど捕まってしまう。

(くそっ! 水は完全に抜かれたけど、何処から進めばいいのかまったく分からない)

おおよその方角は分かるのだが、道が細かく分岐し行き止まりも多いため、時間だけが悪戯いたずらに過ぎてゆく。
何か目印のようなものを探しても、同じような景色ばかりで壁に数字が描かれている様子もない。

(侵入者を迷わせるためか……こいつは想定外だったな)

海斗の額から汗がにじみ出た。
残り2時間で脱出できるか怪しいため、海斗は管理ルームまで一旦いったん戻ることを考えていた。

……だがその時である。
遠くからカチャカチャと爪で何かを引っくような音が聞こえた。
その音はどんどん大きくなり、こちらに迫って来るのが分かる。

(……なんだ?)

海斗は音がする通路の突き当りの壁を見た。
すると大きな影が横切り、そのシルエットは巨大な狼のような姿を思わせた。

(くそっ!中型の原生種だ!)

海斗はさやから日本刀を引き抜いて構える。
幸い海斗の足元は水で濡れていないため、『兼佐陀・紫電』の電撃を使用しても巻き添えを食うことはないだろう。

――ドン!

鈍い音がして、海斗の目の前に噛み千切られた人の腕のようなものが落とされた。
見ると薬指に覚えのある結婚指輪がめられている。
……その腕は女性医師のものだった。

「ちくしょう! おまえら殺したんだな!」

海斗は女性医師を殺した原生種を追い掛けた。
そして広い通路へ出ると、中型の原生種が地面を這うように動いているのが見えた。
原生種は上半身が魚のような形をしており、毛の生えた身体から長い爪を備えた人間の腕と足が8本ほど飛び出している。
口を開ければ鋭利な牙が無数に生え、噛まれたらひとたまりもないだろう。
だが、怒りで頭に血が上った海斗には関係のない話だった。

「たぁぁぁ―――!」

海斗は飛び上がり、動いている原生種に向かって日本刀を横薙よこな一閃いっせんする。
原生種はかろうじて海斗の攻撃を避けたが、指の何本かは切り落とされてしまった。
ギィィ、ギィィと原生種は唸り声を上げながら、後ろに下がって海斗から離れようとする。

「逃がさねぇぞ!」

海斗はさらに横跳びして原生種との距離を詰める。
だがその時、頭上から襲い掛かった他の原生種に、爪で背中を引っ掻かれてしまった。
海斗は「ぐわっ!」と叫びながら、地面を何度も転がってそのまま壁に体を強く打ち付けた。

原生種は傷口から寄生虫を埋め込むタイプもいる。
幸いながら、海斗が今対峙するのはそのタイプではないため、過去の陽介のように体を乗っ取られることはないだろう。
しかし、軽く引っ掻かれただけでも全身に激痛が走り、油断した海斗へのダメージは大きかった。

(しまった……どうやら囲まれたらしい)

冷静に周囲を見ると前方に3匹、天井に張り付いているものが2匹、後方に2匹の原生種がこちらをにらんでいた。
海斗は痛みを我慢しながら立ち上がり、まずは前方の3匹を倒すことに集中する。
そしてホルスターからリボルバーを引き抜いて、素早く3回引き金を引いた。
3発が原生種の脳天にそれぞれヒットし、銃弾の威力で3匹同時に2メートルほど吹き飛んだ。
その直後、天井に張り付いていた原生種1匹が海斗に襲い掛かったが、素早く横へ避けながら頭を日本刀で切り落とした。

(残り3匹……)

後方の2匹は1匹が大きく飛び上がり、もう1匹は地面を這うようにこちらへ向かって来た。
海斗はリボルバーで地面を這う原生種を撃ち殺したが、飛び上がった1匹を外して弾切れとなってしまう。
弾をかわした1匹は、そのまま海斗に覆い被さり巨大な口を開けて噛み付こうとしたが、海斗は冷静に日本刀を口の中へ突き刺し、凄まじい電撃を原生種に食らわせた。

ギィィィエエエェェェ!

原生種は叫び声を上げると、力尽きるように地面に倒れ込んだ。
そして海斗は素早く立ち上がり、天井に張り付いている最後の1匹を睨んだ。
残った原生種はガタガタと震えながら海斗を見ている。

「下りて来ないのか? 同じ手は食わないからな」

海斗にすごまれた原生種は、破れかぶれになったように天井から襲い掛かって来たが、日本刀で頭を切り落とされコロコロと地面を転がった。

(終わったか……それに、こっちが正しいルートのようだ)

不幸中の幸いか、目の前に今まで通っていない一本の水路が現れたのだ。
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