虹かけるメーシャ

大魔王たか〜し

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職業 《 勇者 》

43話 雷の技

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 初級魔法を習得したメーシャは、あれから2日間簡単なモンスターが出てくるクエストを受けては魔法のみで討伐、もしくは弱らせて捕獲を繰り返していた。1日目はプルマル、トレント、ロックサラマンダー、ロックタートルと今まで確認したことがあるモンスターのクエストを10件。2日目の今日はそれに加えて岩を含んで硬質化したスライムモンスターの"プルゴロ"を含めたクエストをかけ持ちで受けていて、現在クリア数が15。
 今目の前にいるトレントを倒したら今日の分は終わりだ。


「よっ。 ──初級風魔法ヒュル!」

 メーシャはジャンプと同時に風魔法を足の裏に展開。風の回転を利用して空中に飛び上がる。

「ギギ!」

 トレントが枝を伸ばしてメーシャを捕まえようと試みるも失敗。続けて頭の部分を揺らしてドス黒いリンゴのような果実(毒あり)を飛ばして追撃する。

「熱消毒だ! ──"初級炎魔法アチ"!」

 メーシャは果実とちょうど同じくらいの大きさの火の玉を、果実の数だけ出現させて撃ち出し、器用にも全ての火の玉を外すことなく焼き尽くした。

「ギリュギィ!」

 負けじとトレントは枝を伸ばしたり、果実を生成して飛ばしていく。

「そろ新技実験いくか! ──"初級雷魔法ゴロ"!」

 メーシャはホバリング移動で難なく回避。そのまま魔法で電気を作り出してウロボロスのチカラで形を整えていく。

「討ち滅ぼせ……!」

 そして、できあがった日差しがかすむまばゆさを放つイカヅチの手投げ槍を、メーシャは地上のトレントに狙いをつける。

「ギギ!?」

「──"雷霆らいてい……くっ?!」

 放たれたその雷光は周囲を照らす破壊の稲妻となり、爆発を起こしてトレントを飲み込んだ。

「ギシュァア……!!」

 閃光に包まれたトレントはなすすべもないまま、素材も塵も魔石すら残さず消え去ってしまった。

「お嬢様……今の……!」

 横で見ていたヒデヨシが、雷霆のあまりの威力に呆然としてしまう。

『周囲の魔力を吸収して、放たれた後も威力が上がる雷の技か。副作用としてある程度の魔法防御も貫通できそうだな。ただ、成功していたらの話だが…………』

 デウスはどこか満足していない様子だ。

「……うん、失敗しちゃった」

「え!? そうなんですか? 十分すごかったですけど」

 メーシャとデウスの見解にヒデヨシは驚いてしまう。

「多分、トレントだから十分だっただけで、もっと強い敵には効かないかも」

『着弾した時に槍の形が保てずに、雷が破裂するみたいに威力が色んなところに散ったんだ。そのせいで本来なら貫通してもおかしくない鋭さなのに、最後は威力でゴリ押しして倒すしかなかった。途中までは完璧だったんだけどな。まあ、手を離した槍を安定させた状態のまま維持できるように練習だな』

「うん。風は不安定ながら力の向きに素直で流れをコントロールしやすいんだけど、雷はどうしても色んなところに向かおうとするから難易度高いんだよね……」

「完成間に合うんですか? キマイラに挑むの、ですよね?」

 ヒデヨシが少し不安そうなかおでメーシャを見た。そう、キマイラに戦の日程が決まったのだ。

 今までキマイラに特筆して動きはなかったものの、なぜか昨日から活発に動き出し、木々や岩、洞窟まで破壊してしまい、さらに今日は結界に攻撃を始めているとか。
 今すぐに破壊はされないものの耐久値からして良ければ1週間後、悪ければには破壊されてしまうとか。それに、どこから侵入したのか不明だが、ラードロの反応まであったらしい。

「やるっきゃないでしょ」

 メーシャの顔にも自ずと気合が入る。

『……本来なら作戦前日はゆっくり休めと言いたいところだが。メーシャ、シタデルに言って明日はちょっと難易度が高いクエストを受けとけ。そうだな……コカトリスとかどうだ? クエスト一覧にあっただろ』

 コカトリスとは大蛇の尻尾を持った銀色の軍鶏型モンスターで、羽毛には生命力の流れを阻害する"呪い"、爪は即効性の麻痺毒を持ち、クチバシには石化効果があり、尻尾も強靭な上に金属のトゲのような鱗が無数についているので近距離戦闘は極めて危険。

 しかし、遠距離であれば安全というわけでもない。羽ばたきによるカマイタチ、混乱ブレス、火炎ブレス、麻痺ブレス、それに加えて長距離石化光線まで備えているのだ。しかもそもそもの魔力総量が多いので、魔法防御も高く遠距離でも苦戦必至。半端な火力では押し切る前にジリ貧で負けてしまう可能性も高い。

 そしてこのコカトリスは、岩山のヌシでありここら一帯の食物連鎖の頂点。上手く連携の取れる相性の良い星4パーティでもようやく倒せるかどうか。星5以上のパーティでも状態異常回復の準備を怠れば全滅するという厄介なモンスターだ。

「そんな危険なモンスター大丈夫ですか……?」

 コカトリスの危険性はシタデルのデータで知っていたヒデヨシが心配してしまうのも無理はない。

「確かに危険かもしれないね。でも、雷霆が完成したら……!」

『相性抜群だ。どれだけ苦戦したとしても、完成品をおみまいすりゃ必殺の一撃になるはずだ』

「おお! 腕試し前の最終試練にはもってこい、というわけですか……!」

 コカトリスは毒も麻痺も呪いも魔力で作り出している。なので、雷霆の魔力吸収という特性と、それにともなう威力上昇効果はコカトリスにとって天敵と言っても過言ではない。

「そうと決まれば、すぐ帰ろ! 今日は作戦会議&体力回復して明日に備えないとね!」

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